魔法少女まどか☆マギカ 未来 作:kuroto xanadu
ほむらは1人思い出していた。
ここではない時間軸で鹿目まどかと出会い、魔女に襲われ、巴マミと魔法少女になった鹿目まどかに助けられ、ワルプルギスの夜にマミとまどかが殺され、そんな運命を変えるためにキュゥべえと契約して魔法少女になり、時間を遡りマミとまどかと一緒に行動し、魔法少女が魔女になる真実を知り、それを教えようとするが途中の時間軸で知り合ったまばゆ以外信じてもらえず、魔法少女同士の殺し合いにまで発展したり、さらには一番の友達であるまどかをこの手で…
ワルプルギスの夜に挑んだが歯が立たず、結局まどかは契約してワルプルギスの夜を倒し、そしてほむらは今の時間軸にいる。
「時間遡行者、暁美ほむら。過去の可能性を切り替えることで幾多の平行世界を横断し君が望む結末を求めてこの1ヶ月間を繰り返してきたんだね」
語りだしたキュゥべえにほむらは何も返さない。
「君の存在が1つの疑問に答えを出してくれた。なぜ鹿目まどかが魔法少女としてあれほど破格の素質を備えていたのか。今なら納得いく仮説が立てられる」
ほむらはキュゥべえの言葉をジッと聞いている。
「魔法少女としての潜在力はね。背負い込んだ因果の量で決まってくる。一国の女王や救世主ならともかく、ごく平凡な人生だけを与えられてきたまどかにどうしてあれほど膨大な因果の糸が集中してしまったのか不可解だった。だが…ねぇほむら、ひょっとしてまどかは君が同じ時間を繰り返すごとに強力な魔法少女になっていたんじゃないのかい?」
キュゥべえの問いにほむらの目が見開き、その反応にキュゥべえはニマッと口元を緩ませた。
「やっぱりね。原因は君にあったんだ。正しくは君の魔法の副作用というべきかな」
「…どういうことよ?」
ほむらが初めて問い返す。
「君が時間を巻き戻してきた理由はただ1つ。鹿目まどかの安否だ。同じ理由と目的で何度も時間を遡るうちに君はいくつもの平行世界を螺旋状に束ねてしまったんだろう。鹿目まどかの存在を中心軸にしてね。その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら彼女のあの途方もない魔力係数にも納得がいく。君が繰り返してきた時間、その中で循環した因果の全てが巡りめぐって鹿目まどかに繋がってしまったんだ。あらゆる出来事の元凶としてね」
キュゥべえの仮説にほむらは悔しさを表すようにスカートの裾を握り締める。
「お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」
キュゥべえは勝利を確信してほむらに感謝の言葉を送った。
「そして、もう1つ仮説がある。明日川未来のことだ」
キュゥべえは話を続けた。
「彼に対する君の言動からして他の平行世界で彼は存在していなかったんじゃないかい?つまり彼はこの時間軸にしか存在しない人間ということになる」
その仮説にほむらは立ち上がる。
「あり得ない。まばゆは彼と1ヶ月以上前から知り合っていた。辻褄が合わないわ」
「彼についてはあまりにもイレギュラーだから僕の予想でしかないけど、時間遡行者の君と違ってまばゆは言わば二次被害者だ。おそらくこの時間軸の明日川未来の記憶に引っ張られたんだろうね」
「…まばゆの記憶が偽物だと言いたいの」
「僕を責められても困るな。あくまで仮説だしね。そして、僕はこう結論づけた。もし君がもう一度時間を遡った場合、この時間軸にしか存在出来ない彼は置き去りかもしくは消滅してしまうんじゃないかな」
「っ!」
キュゥべえの結論にほむらは戦慄した。
今まで彼女は何度も時間遡行してきた。
鹿目まどかを救うために。
躊躇いはなかった。
死んだ人間も時間を巻き戻せば元通りに生きているから。
だが、今回は違う。
己の選択1つで1人の命を完全に絶ってしまうことになる。
明日川未来は知り合って1ヶ月にも満たない人間だ。
それでも関わって、自分のことを認めてくれた人間だ。
鹿目まどかは彼女にとって最優先事項。
しかし、2人を天秤にかけるとしてどちらかを選ぶことは出来なかった。
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さやかの自宅。
杏子はさやかの自室にいた。
マミとまばゆは未来の自宅にいる。
ベッドに横たわるさやかの胸の上に、未来が命懸けで取り戻してくれたソウルジェムを置く。
しばらくするとさやかの目がゆっくりと開いた。
「ん…んん…」
「よぉ…寝坊助」
杏子はさやかの顔を覗き込んで微笑む。
「…杏子?…ここは…」
「お前の部屋だ」
「あたし…」
「覚えてるか?いや忘れてた方がいいかもしれねぇけど…」
杏子が目を逸らす。
あの悲劇は出来るなら思い出さない方が幸せだろう。
「あたし…」
「さやかちゃん!」
さやかが何かを言おうとしたその時、目を覚ましたまどかが部屋に飛び込んできた。
「まどか…」
「さやかちゃん!さやかちゃん!さやかちゃん!」
まどかはさやかに抱きついて泣きながらその名を連呼する。
「さやかちゃん!よがっだよぉ!」
まどかは涙声でさやかの体をギュッと抱きしめる。
「まどか…痛い…」
「あっごめん…さやかちゃん…」
慌ててさやかから離れたまどかはさやかの目を見つめる。
「ごめん…まどか。心配かけて…」
「ううん…いいよ。さやかちゃんが戻ってきてくれただけで…おかえり…さやかちゃん」
まどかは首を横に振ってさやかの帰還を祝福する。
「ただいま。杏子も…ごめん。面倒かけちゃって…ありがとう」
「別に大したことはねぇよ」
さやかの感謝の言葉に杏子はそっぽを向いて照れ隠しに憎まれ口を叩く。
「…あいつはどこ?」
さやかを周りを見渡してから訊ねた。
「あいつ?」
「未来はどこ?」
さやかの問いに杏子は目を逸らした。
「未来は…」
「杏子ちゃん?そんな嘘だよね…」
まどかが杏子に顔を向けて嫌な想像をしてしまう。
「死んじゃいねぇ…生きてる。けど…」
「連れていって」
さやかが杏子の続きの言葉を遮った。
「え?」
「未来のところに連れていって」
さやかは真剣な眼差しでそう口にした。
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未来の自宅。
その自室のベッドの上に未来は静かな寝息を立てて眠っていた。
「ダーリン…」
「未来君…」
マミとまばゆは横たわる彼を見下ろし、何も出来ない無力感を抱いていた。
死んだわけではない。
だが、いつ目を覚ますかも分からない。
このままずっとこのままなのかもしれない。
経緯が特殊過ぎるので病院にも連れていけない。
ガチャ。
背後でドアが開く音がした。
振り返るとそこにはまどかと杏子に肩を貸してもらっているさやかがいた。
さやかはまだ目を覚ましたばかりなので本調子ではないのだ。
「「美樹さん!」」
マミとまばゆがさやかの顔を見て喜ぶ。
「ただいま…」
さやかは照れくさそうに笑う。
「「おかえり!」」
2人は笑って返した。
「…未来」
さやかはベッドに横たわる未来に視線を移して歩み寄っていく。
まどかと杏子が肩を貸しながら歩幅を合わせ、まばゆが椅子を用意してさやかを座らせる。
「ありがとう」
「いえ」
さやかがまばゆにお礼を言ってまばゆが下がる。
改めてさやかは未来の顔を見る。
未来の部屋に静寂が流れる。
「邪魔するわ」
「急だなおい!」
静寂を破るように突然ドアの近くに現れたのは暁美ほむらだった。
反射的に杏子が突っ込む。
「どうした?」
「別に…ただ彼の働きを労いに来ただけよ」
そう言って髪を撫でるほむら。
「素直じゃありませんねぇ」
「何か言った?」
「いえ何も」
茶化すまばゆを一睨みしたほむらは視線を未来の机に移す。
机の上には1枚の絵が置いてあった。
ほむらはそれを手に取る。
「これ…」
そこには崩壊した街、巨大な怪物、そして6人の少女の後ろ姿が描かれていた。
「この6人は私達?それに奥にいるこれは…ワルプルギスの夜」
「なに!」
杏子がバッと振り向く。
「この絵は誰が?」
「未来が描いたって言ってた。何か夢で見た光景が頭に残ってたって。まさかそいつがワルプルギスの夜だなんて」
杏子はワルプルギスの夜の存在は知っていたが実物を見たことがないので気づかなかったのだろう。
「まばゆはこの絵見たの?」
ほむらがまばゆに訊く。
「すみません。未来君のことでいっぱいで気づきませんでした」
「その夢を見たのはいつ?」
ほむらは杏子に視線を移す。
「魔法少女を知る前って言ってた」
「…彼が私達を繋ぎ合わせてくれたってこと?」
ほむらは眠っている未来に視線を移す。
「未来君、ずっと戦ってたんだ。私達の知らないところで1人で…」
まどかは未来の苦労を思いやる。
未来は誰にも言わず彼女達を誰1人欠けることなく繋ぎ合わせてくれた。
今この場に勢揃いしているのが何よりの証拠である。
多少のわだかまりはあるだろう。
だが、もう彼女達はお互いに争い傷つけ合うことはない。
そんなことをしても何の意味もないのだから。
それを未来は命を懸けて教えてくれた。
「ダーリン…」
「未来…」
「未来君…」
「未来…」
「未来君…」
「明日川未来…」
マミ、杏子、まばゆ、さやか、まどか、ほむらは同時に未だ目を覚まさない未来を見る。
さやかが未来の前髪をそっと撫でる。
「未来…」
その様子を見たさやか以外のメンバーは、
「愛生さん、話があるの。私の家に来てくれないかしら?」
「え、はい。分かりました」
まずマミとまばゆが部屋を出る。
「まどか、私も大事な話がある」
「うん…分かった」
ほむらとまどかも部屋を出た。
まどかは少し名残惜しそうにしていたが。
「あたしも出てくる」
杏子はそれだけ言って部屋を出た。
あれだけ人がいた部屋があっという間に未来とさやかの2人きりになってしまった。
「気遣わせちゃったかな…」
さやかは未来に視線を移す。
「…聞こえてたよ。まどかと…あんたの声」
さやかはひとり語り始めた。
「暗い水の底みたいなところにいてさ。そこに光が入ってきたんだ…それでね。聞こえたんだ…まどかとあんたの声…あたしはもう諦めてたんだ。こんなあたしなんて誰にも必要とされない…助けられる価値なんてないって…」
さやかは未来の顔を覗き込む。
「あたし…恭介のことが好きで…でも勇気が出なくて…勝手にフラれて…諦めて…それで今度は…あんたのことを好きになろうとしてる。最低かなあたし…こんなあたしでもあんたを好きになっていいのかな?」
さやかの目から涙が溢れ出すように流れる。
「でもさ…しょうがないじゃん。あんなこと言われたらもう好きになるしかないじゃん。…あんたが悪いんだからね。あたしを好きにさせた責任、取ってよね」
さやかを未来の顔に近づくとその唇にチュッと唇を重ねた。
「あたしのファーストキス…ありがたく貰っておきなさいよね」
さやかは涙を手の甲で拭って笑みを浮かべる。
ドアを開けて部屋を出る前にもう一度未来の顔を見てから部屋を出た。
さやかは自身の唇に指で触れる。
「…しょっぱいなぁ」
ファーストキスは涙の味だった。
玄関を出ると杏子が壁に寄りかかりながら腕組みして立っていた。
「杏子…」
「話は済んだか?」
「うん。言いたいことは全部言った」
さやかはそう応えて歩き出す。
横に並んで歩く杏子は拳を横に出した。
「…なに?」
「まあなんだ…握手するようなガラじゃねぇだろ。あたし達」
「…ふふ…なにそれ」
さやかは吹き出して笑う。
「勝ってあいつのところに帰ろうぜ」
「…うん。絶対に勝つ」
2人はそう言い合ってグータッチを交わした。
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マミの自宅。
「それで巴さん。話って何ですか?」
リビングに入ってまばゆがマミに訊く。
「あなたに頼みがあるのよ。…まばゆさん」
「え…」
マミはまばゆを『愛生さん』ではなく『まばゆさん』と呼んだ。
「あなたの魔法で私の記憶を見て。それで分かるわ」
まばゆには記憶をカットする魔法がある。
その過程で記憶を覗くことが出来るのだ。
「…分かりました」
まばゆは一瞬躊躇ったがマミの覚悟が込められた眼を見て決心した。
まばゆはマミに近づいて魔法を発動した。
「…なにこれ?頭の中に私の知らない記憶が…」
まばゆの中に流れ込んできた記憶。
それはレコンパンスでマミと知り合い、魔法少女のことを知り、優しかった占い師の母が自分の死を占って別人のように豹変してしまったので『お母さんが未来を占った記憶を消して欲しい』とキュゥべえに願い魔法少女になり、マミと下の名前で呼び合う仲になって魔法少女として一緒に活動するようになり、戦いの中で未来視の魔法を自覚し、お金持ちになりたいと願った新人魔法少女とトラブルになる中で記憶をカットする魔法を自覚し、それから何人もの新人魔法少女と一緒に戦っては別れ、やがてまばゆは魔法少女が魔女になるという真実を知り、今まで後押ししてきた魔法少女に対しての罪悪感から自らの記憶を消した。
それがまばゆが忘れていた記憶だった。
マミはずっとそれを覚えていたのに他人の振りをしていたのだ。
「マミさん…ごめんなさい…私…」
「いいの。いいのよ…」
マミはまばゆを抱きしめる。
「辛かったわよね。でも大丈夫だから私達はもう絶望に負けたりなんてしない」
「マミさん…」
まばゆもマミの抱擁に応える。
「戦いましょう。そして、勝ちましょう」
「はい…」
お互いの気持ちを知った2人はしばらくの間、抱き合っていた。
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ほむらの自宅。
ほむらはまどかを自宅に連れてきた。
「ワルプルギスの夜って街中が危ないの?」
まどかが話を切り出した。
「今までの魔女と違ってこいつは結界に隠れて身を守る必要なんてない。ただ一度具現しただけでも何千人という人が犠牲になるわ」
「なら絶対にやっつけなきゃダメだよね」
まどかは元気よく返す。
「だったら…」
まどかは自分も戦おうとする。
「必要ないわ。あなたの助けなんていらない。今の戦力で十分よ」
「ほんとに?…なんでだろう。私、ほむらちゃんのこと信じたいのに…嘘つきだなんて思いたくないのに…全然大丈夫だって気持ちになれない。ほむらちゃんの言ってることが本当だって思えない。」
まどかは涙を流しながら返す。
「本当の気持ちなんて伝えられるわけないのよ」
ほむらは唇を噛みしめる。
「ほむらちゃん…」
「だって…私は…私はまどかとは違う時間を生きてるんだもの!」
振り返ったほむらの目から涙が溢れていた。
ほむらはまどかに駆け寄りその体を抱きしめる。
まどかは何も言えずたださせるがままで立ち尽くしていた。
「私ね…未来から来たんだよ。何度も何度もまどかと出会ってそれと同じ回数だけあなたが死ぬところを見てきたの。どうすればあなたが助かるのかどうすれば運命を変えられるのかその答えだけを探して何度も初めからやり直して…」
ほむらは今までまどかに打ち明けられなかった秘密を明かす。
「それって…えぇ!」
まどかは突然の出来事に戸惑いを隠せない。
「ごめんね。訳分かんないよね…気持ち悪いよね。まどかにとっての私は出会ってからまだ1ヶ月も経ってない転校生でしかないものね。だけど私は…私にとってのあなたは…」
ほむらは涙声でまどかに語る。
「繰り返せば繰り返すほどあなたと私が過ごした時間はずれていく。気持ちもずれて言葉も通じなくなっていく。多分、私はもうとっくに迷子になっちゃってんだと思う…」
「ほむら…ちゃん…」
「あなたを救う。それが私の最初の気持ち。今となってはたった1つだけ最後に残った道標。分からなくてもいい…何も伝わらなくてもいい…」
ほむらは抱擁を解いてまどかの目を見つめる。
「それでもどうか…お願いだからあなたを私に守らせて」
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数日後。
空が黒い雲に覆われ雷鳴も轟く嵐の日。
「雷雲がとんでもない勢いで分裂と改変を起こしています。明らかにスーパーセルの前兆です!直ちに避難指示の発令を!」
気象観測していた男がどこかに通信を取っている。
《本日午前7時、突発的異常気象に伴い避難指示が発令されました。こちらは見滝原市役所広報車です》
スピーカーを乗せた車が同じ内容を繰り返し放送している。
そんな嵐の中で5人の少女が何かを待つように立っていた。
ほむらは口を開く。
「来る」
ほむらとまばゆはほぼ原作通りなので省略しました。
さやかの告白と杏子とのグータッチが何気に気合い入ってます。
次回はついに最終決戦のワルプルギス戦です。