※この作品はR-18です。

魔法少女まどか☆マギカ 未来   作:kuroto xanadu

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オリジナル魔女を出します。
クオリティは期待しないで下さい。

今回の未来は一部情けないです。


陰キャと不良少女は相性が悪い!?

 ほむらに助けられた美樹さやかはその後、自宅に帰ってきた。

苛立ちをぶつけるように自室のドアを乱暴に閉めてデスクのスタンドライトを点けて、自身の心臓とも言えるソウルジェムを雑に転がした。

 

「騙してたの…あたしたちを」

 

さやかは部屋の中にいるキュゥべえに問いつめる。

 

「僕は魔法少女になってくれってきちんとお願いしたはずだよ。実際の姿がどういうものか説明を省略したけれど」

 

キュゥべえは全く悪びれる様子はない。

そもそも悪意という感情がないのだろう。

さやかは椅子を蹴りつけるとキュゥべえの前に両手をバンッと手を置く。

 

「何で教えてくれなかったのよ!」

 

「聞かれなかったからさ。知らなければ知らないままで何の不都合もないからね。そもそも君達人間は魂の存在なんて最初から自覚できていないんだろ?」

 

まるでAIのように答えたキュゥべえはさやかの左胸を指すと、

 

「そこは神経細胞の集まりでしかないし、そこは循環器系の中枢があるだけだ。その癖、生命が維持できなくなると人間は精神を消滅してしまう。そうならないよう僕は君達の魂を実体化し手に取ってきちんと守れる形にしてあげた」

 

キュゥべえはさやかの両手の間を抜けて走り出す。

 

「少しでも安全に魔女と戦えるようにね」

 

キュゥべえは感謝して欲しいくらいだと言わんばかりにさやかを諭そうとする。

 

「大きなお世話よ!そんな余計なこと!」

 

さやかの怒りにキュゥべえは呆れたように首を横に振る。

 

「君は戦いというものを甘く考え過ぎだよ。例えばお腹に槍が刺さった場合、肉体の痛覚がどれだけの刺激を受けるかっていうとね」

 

キュゥべえがそう言ってソウルジェムの近くに座るとそれに前足を乗せる。

するとソウルジェムが強い光を放った。

その直後、さやかが急にお腹をおさえて苦しみ始めた。

その痛みのあまりに立っていられない程。

 

「…うぐっ!うぅぅぅ…あぁぁ…うぅ…」

 

「これが本来の痛みだよ。ただの一発でも動けやしないだろう」

 

まるで授業をするように連ねるキュゥべえの言葉が耳には言っているのかさやかの目から涙が流れ始める。

 

「君が杏子との戦いで最後まで立っていられたのは強すぎる苦痛がセーブされていたからさ。君の意識が肉体と直結していないからこそ可能なことだ。おかげで君はあの戦闘を生き延びることが出来た」

 

キュゥべえがソウルジェムから前足を離すと光が弱まる。

それと共にさやかの痛みもおさまった。

 

「慣れてくれば完全に痛みを遮断することも出来るよ。もっともそれはそれで動きが鈍るからあまりおすすめはしないけど」

 

「何でよ…どうしてあたし達をこんな目に…」

 

「戦いの運命を受け入れてまで君には叶えたい望みがあったんだろう?それは間違いなく実現したじゃないか」

 

己の運命を嘆くさやかにキュゥべえは無感情な目でそう口にした。

 

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 放課後。

学校からの帰り道を歩く未来は昨日のことを考えていた。

 

「(あれがキュゥべえの本性…いや俺達が勘違いしていただけか。あいつのことを感情がある生物でアドバイザーのように見ていたことが…同じ言語を喋っているはずなのに通じないような苛立ちと肩透かし感がある…さやかは…魔法少女の皆は大丈夫なのかな…)」

 

長考に至っていた未来は近道を行こうと路地裏に入る。

いつも使っている近道。

だが今日に至ってはそれがいけなかった。

 

「見つけたぜ!回復アイテム!」

 

突然、目の前に降り立った佐倉杏子に驚く間もなくその腕に掴まれ拉致られた。

 

「ちょ…なに…うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

地面を蹴り建物の屋上を跳び移る杏子。

未来はその高さに悲鳴を上げていた。

 

「暴れんな!」

 

「いや無理無理!高いって!落ちる!」

 

「んなヘマするかよ。お前にやってもらいたいことがあるるんだよ」

 

「…はい?」

 

杏子の言葉に未来は呆けた声を出した。

 

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 未来が連れてこられた場所は隣町の風見野市だった。

 

「…はぁ…はぁ…死ぬかと思った…」

 

「情けない奴だな男のくせに」

 

「男女差別!」

 

膝に両手をついて呼吸する未来はクワッと杏子を睨みつけて反論した。

未来は思った。

この陽キャ不良少女は陰キャの自分とは相性が悪いと。

 

「(童貞を卒業して自信がついてきたと思ったけど…やっぱり陰キャは陰キャ…調子に乗ってはいけなかったんだ…)」

 

未来は心の中で涙を流す。

 

「…それで頼みなんだけどよ…どうした?」

 

話を切り出す杏子はショックを受けている未来の様子に声をかける。

 

「…何でもない。それで頼みって?」

 

「ああ、ここんとこグリーフシードの残りが減ってきたからな。集めておきたい。お前、ソウルジェムの穢れを吸い取れるんだろ?」

 

「ああ」

 

「グリーフシードを集めるのに魔力を消耗してグリーフシードを使うよりお前の力を使った方が節約できるからな。頼むぜ!」

 

杏子がそこでニカッと笑う。

さやかに匹敵するくらいの眩しい陽キャだ。

 

「拒否権は…」

 

「ない」

 

「ですよね~」

 

即答する杏子に未来が苦笑いしているとスマホの着信音が鳴り響く。

未来は発信者の名前を見る。

 

「マミ?」

 

疑問を抱きながらも電話に出る。

 

「はい」

 

《ダーリン、今風見野市にいるのよね?ならそこに佐倉さんもいるわね?》

 

開口一番に現在地が知られていた。

 

「何で知ってるの?」

 

《ダーリンがどこにいるか何てすぐに分かるわ》

 

未来は位置情報アプリを付けられているか発信器を付けられているのではないかと思い嫌な汗が出始める。

 

《言っておくけどアプリも発信器も付けていないわ。ダーリンがどこにいるかは私の『ダーリンセンサー』にかかれば一瞬よ♥️》

 

初めて聞く単語が出たが未来はスルーした。

 

「それで…佐倉さんはいるけど」

 

《代わって》

 

マミの指示に従い未来は杏子にスマホを渡した。

 

《どういうつもり?》

 

普段からは想像出来ない冷たい声で杏子に問いつめるマミ。

 

「な~にちょっと貸してもらうだけだ。用が終わったら返すよ」

 

ここで陽気に返す杏子は大した強心臓だろう。

 

《ふざけないで。ダーリンは私のもの、私はダーリンのものよ》

 

声を荒げることなく冷たい声で淡々と口にするマミは恐怖を感じさせる。

 

《そこで待ってなさい。すぐに取り戻すから》

 

「はっ!上等だ!かかってこ…おい!」

 

受けて立とうとした杏子のスマホを未来が慌てて取り返して電話を代わる。

 

「俺なら大丈夫だから!マミはそこにいて!そっちにもいつ魔女が出るか分からないから!」

 

《でもダーリン》

 

マミが心配そうな声を出す。

 

「それにちょっと気になることがあるんだ。だからここは俺に任せてくれ」

 

《…ダーリンがそこまで言うなら》

 

マミは渋々、未来のお願いを受け入れてくれた。

 

《でも危なくなったらいつでも電話してね。すぐに駆けつけるから♥️》

 

「うん。ありがとう」

 

《ダーリン、愛してる♥️》

 

「俺も愛してるよ」

 

愛の言葉を囁き合って2人は通話を切った。

 

「…何ですか?」

 

「お前らを見てると胸焼けしそうなんだよ」

 

杏子が胸をかきむしる仕草を見せる。

 

「ほっといて下さい」

 

「まあいいや…それじゃ行くか!」

 

「どこに?」

 

「魔女探しに。そうだ!お前のその左手ってソウルジェムみたいに魔女を探知出来るんだろ?せっかくだからそれで行こうぜ!」

 

そう言うと杏子はソウルジェムをポケットにしまったまま未来の手首を握って肩くらいの高さに上げて歩き出す。

 

「え、ちょっ!」

 

突然触られたことに驚く未来。

 

「(佐倉さんの手って意外と…)」

 

あれだけのパワーがある杏子のことだからもっとアスリートのような筋肉質だと思っていたがその手は女の子らしい柔らかな手だった。

 

「ん?どうした?」

 

「…いや別に」

 

首を傾げる杏子に未来は少しドキドキしていることを誤魔化す。

 

「そうか?」

 

杏子は未来の左手を金属探知機のように前に突きだしながら歩いて、未来も杏子の手に引かれてついていくのであった。

 

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街の中を未来は杏子に手を引かれて歩いていた。

その様子は周囲からどう見えているのか。

強気な彼女に手を引かれている彼氏?

ペットのような主従関係?

どちらにせよ彼らは周囲の人間から好奇の視線を向けられていた。

 

「魔女を探知するブルブルするんだっけ?」

 

「あ、ああ…」

 

「おっ!今ブルってなったぞ!」

 

「いやそれは違うから!」

 

「あん?」

 

杏子は訳が分からないような反応をする。

今、未来の手が震えたのは魔女ではなく杏子と触れ合っていることに対する緊張からであるからだ。

 

「あたしじゃ分からねぇな。おい、どっちだ?」

 

「…そこ右」

 

「右だな。よし」

 

杏子は未来の左手ごと右折する。

そうして繰り返していくと次第に、

 

「お、今のはあたしでも分かったぞ!こっちだな!」

 

未来の特性を理解し始めた杏子が誘導していく。

 

「(この人は…そんなに悪い人じゃないのかもしれない)」

 

未来も杏子の人柄を少しずつ理解しようとしていたその時、左手の感覚が強くなった。

 

「…ここだな」

 

人がいない場所に辿り着いた杏子の言葉と共に周囲が魔女の結界に現れる。

 

「いっちょ、やるか!」

 

杏子はソウルジェムを取り出して魔法少女に変身する。

現れた魔女は甲冑を着て巨大な木馬に乗り、弓矢を構えていた。

 

『流鏑馬の魔女』

 

「お前、ソウルジェムの穢れの魔力も吸い取れるなら魔女の攻撃もできるんじゃないか?」

 

唐突に杏子がそんなことを言い出した。

 

「は?」

 

「というわけで物は試しだ!やってみろ!」

 

杏子が横に跳ぶと向こうにいる魔女が構えてこちらに矢を放とうとしていた。

 

「え、ちょっと!」

 

未来は慌てて左手を前に突き出す。

魔女が放ったのは金属製や木製ではなくエネルギー体の矢だった。

それが未来の方に迫ってくる。

未来は左手を構えて待ったが、

 

「やっぱ無理!」

 

真横にダイブして回避した。

外れた光の矢が地面に当たって爆発する。

未来は素早く立ち上がって走り出す。

魔女がそれを追いながら矢を連射するが未来は全力で走って何とか直撃を避けている。

彼の後ろでは外れた矢が爆煙を上げている。

杏子はそれを高所から観察していた。

 

「へぇ~結構足速いじゃん、あいつ。めっちゃ魔女引き付けてるし」

 

杏子は改めて必死に逃げている未来を見下ろす。

 

「あいつ、おもしれぇな。…けどそろそろ助けてやるか!」

 

杏子はジャンプして魔女の上から現れると槍で胸を一突きする。

魔女は激痛の悲鳴を上げた後に地面に倒れ消滅した。

地面に着地した杏子は上から落ちてきたグリーフシードをパシッと片手でキャッチする。

 

「いっちょあがり!」

 

八重歯を見せた杏子は四つん這いになって荒く呼吸する未来に、

 

「お~い!大丈夫か?」

 

「死ぬわ!」

 

未来がツッコミを入れる。

 

「元気そうじゃねぇか。にしても攻撃の吸収はやっぱりダメみたいだな」

 

「はぁ…はぁ…こっちは普通の人間だぞ。下手したら死ぬんだよ…」

 

「心配すんな」

 

杏子のその言葉に未来が四つん這いのまま見上げる。

 

「あたしがいる限りお前は死なねぇよ!」

 

杏子は笑ってそう言った。

 

「…イケメンだ」

 

「は?」

 

「イケ倉さ~ん!」

 

未来が感動して杏子のお腹に抱きつく。

 

「ちょ、お前なに抱きついてんだ!この野郎!」

 

杏子は未来の行動にびっくりしてその頭に肘鉄を入れる。

 

「あ、いった…」

 

未来は頭をおさえてうずくまる。

 

「ったく…マミも何でこんな奴に惚れたんだか…」

 

未来の情けない様子に杏子は呆れた目を向けたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 それからも未来の左手の力で魔女を見つけ、杏子が魔女を倒し、未来が杏子のソウルジェムの穢れを吸収するということを繰り返し夕方になった。

ある程度、魔女も狩り杏子に連れてこられたのは寂れた古い教会だった。

中はボロボロでステンドグラスも割れている。

 

「こんなところに連れてきてどうしたの?」

 

「ちょっとばかり長い話になる」

 

杏子はそう言って手に持っていた紙袋からりんごを1個、未来に投げつける。

未来はそれを両手でキャッチする。

 

「食うかい?」

 

杏子の言葉に未来は口をつけずそのまま続きを待つ。

杏子は息を吐くと、

 

「ここはね…あたしの親父の教会だった…正直過ぎて優しすぎる人だった…毎朝、新聞を読む度に涙を浮かべて真剣に悩んでる人でさ…新しい時代を救うには新しい信仰が必要だってそれが親父の言い分だった…だからある時教義にないことまで信者に説教するようになった…もちろん信者の足はパッタリ途絶えたよ…本部からも破門された…誰も親父の話を聞こうとしなかった」

 

そこまで言って嘲笑する。

 

「…当然だよね…端から見れば胡散臭い新興宗教さ…どんなに正しいことを当たり前のことを話そうとしても世間じゃ鼻つまみ者さ…あたし達は一家揃って食うものにも事欠く有り様だった…納得出来なかったよ…親父は間違ったことなんて言ってなかった…ただ人と違うことを話しただけだ…5分でいい…ちゃんと耳を傾けてくれれば正しいことを言ってるって誰にでも分かったはずなんだ…なのに…誰も相手をしてくれなかった…」

 

そこで怒りの感情を表していく。

 

「悔しかった…許せなかった…誰もあの人のことを分かってくれないのがあたしには我慢出来なかった」

 

そこでまた言葉を切る。

 

「だからキュゥべえに頼んだんだよ…皆が親父の話を真面目に聞いてくれますようにって…」

 

杏子はりんごに反射する自分の顔を見る。

 

「翌朝には親父の教会は押し掛ける人でごった返していた…毎日おっかなくなるほどの勢いで信者は増えていった…あたしはあたしで晴れて魔法少女の仲間入りだ…いくら親父の説法が正しくたってそれで魔女が退治出来る訳じゃない…だからここはあたしの出番だってバカみたいに意気込んでいったよ…あたしと親父で表と裏からこの世界を救うんだって」

 

そこで杏子はりんごを一齧り。

 

「でもね…ある時、カラクリが親父にバレた…大勢の信者はただ信仰の為じゃなく魔法の力で集まってきたんだと知った時、親父はブチ切れたよ…娘のあたしを人の心を惑わす魔女だって罵った」

 

杏子は乾いた笑い声を上げた。

 

「笑っちゃうよね…あたしは毎晩、本物の魔女と戦い続けてたってのに…それで親父は壊れちまった…最後は惨めだったよ…酒に溺れて頭がイカれて…とうとう家族を道連れに無理心中さ…あたし1人を置き去りにしてね」

 

杏子はもう一口、りんごを齧る。

 

「あたしの祈りが家族を壊しちまったんだ…他人の都合を知りもせず勝手な願い事をしたせいで結局、誰もが不幸になった…その時、心に誓ったんだよ…もう二度と他人の為に魔法を使ったりしない」

 

杏子は胸に手を置く。

 

「この力は…全て自分の為だけにに使い切るって」

 

割れたステンドグラスから外を眺めていた杏子がこちらに振り返る。

 

「奇跡ってのはタダじゃないんだ…希望を祈ればそれと同じ分だけの絶望が撒き散らされる…そうやって駆け引きをゼロにして世の中のバランスは成り立ってるんだよ」

 

「何でそんな話を俺に…」

 

「さやかに言っといて欲しいんだ。あんたも開き直って好き勝手にやればいい…自業自得の人生をさ…って」

 

「さやかのことは気にするんだな…」

 

「あいつもあたしと同じ間違いから始まった…これ以上後悔するような生き方を続けるべきじゃない…あいつは対価としては高すぎるものを支払ちまってるんだ」

 

杏子はそこで笑みを浮かべる。

 

「だからさ…ここからは釣り銭を取り戻すことを考えて欲しいんだ」

 

「…君のようにか」

 

「そうさ。あたしはそれを弁えてるがあいつは今も間違い続けている…見てられないんだよ…そいつが」

 

「…やっぱり君は優しい人だ」

 

今度は未来が話を切り出す。

 

「まどかから聞いたよ。君とさやかが最初に出会った時のことを…疑問に思っていたんだ。マミが戦えなくなって君が見滝原市を奪いに来た時に君はさやかに色々教えたそうじゃないか。使い魔を倒しても無駄だと…やり方はどうあれ君はさやかがより魔法少女として生き残れるようにしようとした。もしナワバリを奪うだけならわざわざ話しかけず奇襲すればいい…あくまで俺の推測だけど」

 

未来はそこでフッと笑う。

 

「だけどあいつは…さやかはきっとこう言う。他人の為に祈ったことを後悔していない…高過ぎるものを支払ったなんて思ってない…魔法少女の力は使い方次第でいくらでも素晴らしいものにできるはずだから…ってね」

 

未来は言葉を切って手の中のりんごを見る。

 

「それとこのりんごをどうやって手に入れたの?ちゃんとお金は払ったの?」

 

その質問に杏子は次の言葉を言えなかった。

 

「…そこからか」

 

未来は杏子の手首を握る。

 

「おい!」

 

「どこで盗ったのか教えて。俺も一緒に謝るから」

 

「何言って、あたしは!」

 

「ダメだ!」

 

未来が強い口調で杏子の言葉を遮った。

首を横に振って、

 

「それ以上…そっちに行ってはダメだ」

 

杏子は目を見開いて驚く。

これが先程までの男と同一人物なのかと。

 

「…分かったよ」

 

杏子は未来の手を振り払って歩き出す。

 

「佐倉さん!」

 

「お前の言う通りにしてやるってんだよ」

 

そう言って杏子は教会の出口に向かって歩き出した。

未来は安心したように笑うとポケットからスマホを取り出す。

 

「…聞いてた?」

 

《…聞いてたよ、一応》

 

電話の相手は今日、学校を休んでいたさやかだった。

 

《びっくりしたよ。いきなり電話してきて通話状態のまま黙って欲しいなんて》

 

実は未来が教会に入る前に杏子の目を盗んでさやかに電話をかけて通話状態を維持していたのだ。

 

「どうだった?」

 

《あたしの言いたいことはほとんどあんたに言われちゃったけど…あたしのあたしのやり方で戦い続けるよ…それがあいつの邪魔になるなら前みたいに殺しに来ればいい…あたしは負けないし…もう恨んだりしない》

 

「殺し合うのはやめて欲しいな」

 

《…約束は出来ない…けど善処はする》

 

「今はその言葉を信じるよ」

 

「お~い!早くしないとトンズラしちまうぞ!」

 

杏子がこちらに呼びかけてきた。

 

「行かないと…じゃあ明日学校で」

 

《うん…》

 

そう言って2人は通話を切った。

通話時間は…忘れることにした。

 

 それから杏子が盗んだりんごの店に行き、杏子と一緒に頭を下げて(渋ったので杏子の頭に手を置いてだが半ば強制的にだが)代金は全額、未来が払った。

店主は未来の誠意を受けて許してくれた。




杏子はいい人。
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