※この作品はR-18です。

崩壊系異世界でお人好しが生き延びるには   作:グリーヴ

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第六話 Prologueが終わりを迎えて

 

 

異世界へ来てから1ヶ月。

 

そろそろ貰ったお金が少なくなってきたとか僕らの拠点を手に入れたいと言うこともあって、遺構へと向かっていた最中。

 

「オンナノコ…拾ッタノカ?」

「あっ…ハイ」

「マッタク…ハァァ…(ため息)」

 

お嫁さんに呆れられながらも苦言は言わない辺り、短いながらも僕の性格を熟知した結果とみている。

 

『…まあ良い。助けたのだから最後まで責任を持つことだ。良いな?』

「…ハイ…『リョウカイ』」

 

最近はシグルーンのノルド語も聴き取れるようになってきた。

同時に彼女も僕の言葉が理解できるようになってきたのでエレンとの翻訳活動も少しずつ減っているが。

 

《なるほど。これが寂しい気持ちというわけですね》

 

ボソリと小さく述べる辺り、その哀愁は僕にも伝わってくる。

 

『だが、シンノスケの突っ走り癖を止めてくれるならば重要だと思うぞ?』

《『その点は確かに』》

 

少ししか聞き取れなかったけどどうやらディスられてる事は分かる。

 

『さて、今その娘は?』

《『現在病院にて治療していますが…』》

『どうした?』

 

エレンの言い淀み、シグルーンは問いかけると。

 

《ユーザー。どうやら違(・)法(・)な(・)転(・)送(・)行(・)為(・)でやって来たと考えられます》

「………はっ?」

 

そんな馬鹿なと思った。

 

だが同時に。

 

「……"ガントレット"をしてなかった」

 

必要時にはブレスレットになるストライダーの証であるガントレットを着けていない事。

 

其れは、遺構に入る事どころかこの世界に来ることすら違法行為に当たるのである。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

目が覚めて、直ぐにこの状況はマズイと理解した。

 

見知らぬ部屋でベッドに寝ていた自分は直ぐに周りを見渡して状況を調べる。

 

確か、同業者とはぐれてしまい、何処か地上に出れる所を探していたけれど、一向に見つからず、アノマリーの餌食にされかかっていた所までは覚えている。

 

けれど、この場所は一体?

 

 

私が生まれた国では、隣国との関係悪化とロシアの脅威で世情不安に陥っていた。

 

その為、当時の与党政権による一律統制法による強権的な秘密警察が誕生し、不平不満を洩らす者から革命思想を持つ者をことごとく監獄へ幽閉させていた。

 

そして20年前、日本で起こった異世界人とのファーストコンタクトと、有益な労働力確保として定期的な技術支援交流会という名目の傭兵契約がされたと聞き、アメリカを中心に大国からの圧力で日本に法人契約している企業を条件に交流会の一員となったのだ。

 

未知なる大地に野心を抱いた者は多く、独裁政党であれば尚更利権に食い付こうと監獄の囚人達を送らせ、農場やスカベンジャーをやらせている。

 

祖国ではない土地で無理矢理働かされ、命懸けで戦い、虫けらの様に死ぬ。

 

そんな人生を送りたくはなかった。

 

だから国境を越え、秘密警察の追ってから逃れ、日本までやって来た。

 

けれど日本国内で難民認定がされなければ強制送還が決まっている。

どうすればいいか?

ならば自発的に行くしか無かった。

 

『向こうの偽造パスとガントレット、拳銃を含めて79万だ』

 

日本のブラックマーケットで手に入れたガントレットと偽造パスで異世界へと向かう。

 

強制労働と自発的とでは雲泥の差であり、少なくてもお金を貰う事は出来た。

 

ただ今の所は使いっ走りと荷物運びだけど、それでもまともな日常生活を目指してこれまで生きてきたけれど。

 

どうしよう。

 

頭を悩ませ、考え事をする中。

 

「あっ、目を覚ました?」

 

部屋に突然入ってきた自分より少し年上の少年と目が合う。

 

「あっ…そ…その…」

「良かった。怪我も大した事無かったみたいでドクターも少し休めば良いって言ってたから」

 

にこやかに話す青年(少年?)を見て、信用していいのか迷ってしまう。

 

そもそも一体誰?

 

「あっ、僕は宮本シンノスケ。君と同じストライダーです」

 

そう思っている内に向こうから自己紹介をされると、少し戸惑いながら。

 

「えっ…と…、私は…」

 

話していいのだろうか?

少し悩み、彼がどんな人物であるか分からないけれど。

 

「〔リュドミーラ〕。〔リュドミーラ・アドゥスカナ〕です」

 

素直に自分の名前を明かした。

 

「リュドミーラ。スラブ語かな?」

「どうして知ってるの?」

「あっ、いやね?父の知り合いがスロベニア出身の人でね?ロシア語とか聞きかじり程度に教えてくれたんだ」

「な…なるほど…」

 

多分日本人であろう彼の語学力は相当なのでは?と思われるが、今はそれよりもこの状況を把握しないといけない。

 

「あの…、此処は?」

「ああ。僕の家だよ?ちょっと値は張ったけど大きい荷物置けるし屋内駐車も出来るからね」

 

どうやら開拓都市の住居エリアみたいだ。

 

カーテンの隙間から窓の外を見ると既に暗く、各家々らしき所から煙が上がっているのを確認できる。

 

と、宮本は一つ眉を顰めながら口を開く。

 

「…何で1人で?って聞いたらマズイかな?」

「あっ…その……」

 

言うべきか?

彼が言うかどうかは兎も角、誰かに喋って聞かれればどうなるのか想像出来る。

 

「……ごめんなさい」

「いいよ。まぁ…気長に待つさ」

 

悪いことをしてしまった。

ここまで助けてくれて、介抱もしてくれたのに。

 

「それじゃあ…ミルク粥作ったから食べてね?」

 

と言って、そさくさと部屋から出ていく。

 

見てみるとテーブルに置かれている鍋にはミルクポリッジが湯気を立てていた。

 

「………頂きます」

 

同じように置かれている取り分ける用の器に貝殻杓子で掬い、添えてあるスプーンで食べる。

 

「あちっ…」

 

出来立てのポリッジは流石に熱かった。

けど、不思議と身に沁みる味がした。

 

そう言えば此処に来る前でも後でも携帯用の固形食しか食べてなかった事を思い出し。

 

「………ふぐぇっ…」

 

思わず涙が溢れそうになる。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「…ワタシ、反対」

 

ズイッと刺すような視線と怒りを込めた表情を突きつけられる。

 

こういう時のシグルーンが怖い事はよく分かる。

でも一応僕も色々と考えがある事を…すみません考えなんて無いですごめんなさい。

 

『明らかにあの娘は何かがある。敵対部族に追われて逃げている流民の顔だ』

《国境越えをしている不法移民と考えられます》

「そんな事分かるんですか?」

《ガントレットの機能にはユーザーではない人物以外には殆どの機能がロックされており、彼女の場合はただの飾りでしかありません》

「だからアノマリーを倒せなかったのか?」

 

そう。

ガントレット内には僕らの身体能力を向上…と言うよりゲームとかの経験値的な物が身体に入ってレベルアップする感じにしてくれる機能がある。

 

そのおかげでどデカい怪獣めいたヤツとかアノマリーを倒せるわけだ。

 

えっ?銃器とかの攻撃力が上がる理由?

システム上の都合とかじゃないかな?全く理解できないけど。

 

《現在、リュドミーラ・アドゥスカナという登録者は確認出来ず、日本での偽造パスではこの世界(九つの世界)は利用出来ませんので》

「ほぼ不法移民って訳か…」

《ですので、早急にオフィスへ連絡を。場合によっては強制送還と我々への罰則が行われます》

「わぁ…わぁぁ……」

 

思わず泣いちゃった。

 

『ではどうする?面倒な事になるだろうが…』

《『しかし法的解釈という面では方法があります』》

『ん?掟を捻じ曲げるのか?』

《『いえ。法に準ずる解釈で進めれば我々は合法的に対処したことと、彼女の身柄を当局に渡す事はせずに済む事。この2つがなされるわけです』》

 

何やら1つ策があるみたいだけど。

 

《先ず、ユーザーにしてもらう事は1つ》

「うん?なんだい?」

 

リュドミーラさんを助けられるなら出来る限りの事をしよう。

なんというか、彼女の今までを想像するとはっきり言ってムシャクシャと苛立ちが募りそうになるからだ。

 

ただこれは目から鱗な提案と言うより。

 

《Ms.シグルーンとの正式な結婚の提出をお願いしたく存じます》

「……ハイ?」

 

 

 

…………

 

 

 

ここで纏めて説明する。

 

九つの世界では部族社会が共同で都市を築いたり生活圏を創り上げるのが古来から続く規範となる。

 

かつて他の部族のテリトリーで自分達は普通に狩りをしていても違法行為と私刑的処罰を行なわれ、部族間抗争に発展したケースが勃発。

 

イメージ的にはアフリカの内戦が最もな例だ。

 

其処で近隣部族が寄り合って共同テリトリーを作り、その中でのルールに従って行動する事となる。

 

いわば万国公法、国際法と言える規範だ。

 

結果的に部族間の諍いも少なくなり、自然と同化が始まったりするなど、領域も拡大したとか。

 

部落差別とかは学校や何かの資料等で読んだことはあるけど、口伝としては伝わっていないのか、シグルーン曰くその様な事は聞いたことが無いらしい。

 

部族的な階級としては上の位置に居た知識人でも聞かないならば意外と曖昧なものだったのだろうか?

 

と、話を続ける。

 

そうしていく内に別の種族との諍いも増える事になったが、其処にアース人が現れ、各部族の代表者達を召喚。

 

其処から話し合いと妥協を重ねて国際連合的な組織、【自由都市同盟】が完成した。

 

 

 

…………

 

 

 

《自由都市同盟内の憲章には1つの構文があります。新たな部族の設立に関する憲法です》

「新たな部族?」

《はい。この世界にはアノマリーや大型化した怪獣その他が多くの危険性に満ちた存在があります。故に集落一つが一夜で消え去る事も珍しくはありません》

 

確かに。

僕はまだ目にしていないが、歩くだけでも大地震クラスの被害をもたらす巨竜が居るとか。

 

そんな物がゴロゴロしていたならばそりゃと思う。

 

《それらに踏まえ、部族は難民を迎え入れる義務が発生します。受け入れられない事はよくありますが、それでも出来る限りするのが習わしと言うことです》

「まぁ、難民問題を考えたらね…」

 

災害や紛争で命からがら逃げてきた人達を追い返すわけにも行かない。

彼等の今後の為にも大きな部族は助ける事も義務となる。

 

そういう訳だが。

 

《ただこれにも不都合があります。難民となった部族にとってのタブーを受け入れざる得ないというものです》

「イスラム教の人達が他の国で食べる物が少ないとか?」

《はい。もっともアッラーへの祈りが禁止されているという意味が最も適切な例ですが…》

「うわっ…」

 

下手したら暴動…いや、内戦勃発も辞さない事柄です。

 

《と言うことで、同盟内の憲章に新部族の設立が出来るように記載されています》

「はえぇ…」

《条件は多数ありますが、最も重要なのが全(・)滅(・)に(・)近(・)い(・)被(・)害(・)に(・)あ(・)っ(・)た(・)既(・)存(・)部(・)族(・)の(・)一(・)員(・)と(・)の(・)結(・)婚(・)関(・)係(・)を(・)持(・)つ(・)という条件を満たせば、最少人数である2人以上をクリアします》

 

だからストライダーオフィスで婚姻届を今書いているんだね?

 

「『署名は此方に。後部族長の名前はどうしますか?』」

『基本男がなるものなので我が夫のシンノスケに任せる。15歳以上に該当しているから大丈夫だろう?』

「『ソーデスネー、ハイ』…(ニッコリ)」

 

何か僕は受付の人に怒らせたのだろうか?

凄い勢いで睨まれたんだけど?

 

(……狙っていたのに…!?)

 

心の声なぞ聞こえる訳が無いけど何だかそんな声が聞こえたような気がしつつ。

 

『……よし。これで部族の設立が認められた』

《今後を踏まえて血判をお願いします。DNA情報を読み取りの為にも》

「あ〜、なるほどぉ…」

 

と言うことで清潔な針でちょっと親指の腹を刺し、小さく膨らんだ血液を見つつ、然るべき部分に押した。

 

「これで新しい部族…【宮本一族】を受領しました。今後勢力拡大や難民受け入れの際にはこの都市の中央にあります役所にて申請を行って下さい」

「………ハイ」

 

父さん。

いつの間にか僕にも家族が出来たよ。

 

孫の顔見せられるように…頑張ろう…って何言ってんだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「と言うことでウチの子になればストライダーの資格も手に入りますし、福利厚生も頑張ってやれる様にしますのでどうかご検討を!」

「いきなり何だかよく分からない状況に立たされてる?」

「事情は何となく理解してるから後は……ごめん、ちょっと僕も無茶振りっては思う」

 

リュドミーラさんを説得するため、僕らは先ず出来ることから順に埋めていく。

 

「部族に入れば身分証明が出来る訳だからってのは分かります」

「うんうん」

「でも良いんですか?明らかに怪しいって…」

「僕なんて普通に働いてたら返せない借金あるし、色んな所のブラックリスト入りしてるような物だよ?ここで心機一転してやらなきゃ切り取れる所全部売買される未来しか無い」

「えぇ…」

 

身の上話であれば僕にも武器がある。

父の借金返済しなきゃ僕に青春などないからね!

 

「と言うことでどうかよろしく!」

「……ま、まぁ…断るあれは無いし!抜けるのは別に自由なんだよね?」

《抜けた場合、保証が無くなるので意味が無いですが?》

「うぐぅ…」

 

少々無茶し過ぎたか?

 

やはり新興の組織では難しいのかな?

 

(…でも待って?新しくやっていくなら既存のクランとかチームで使いっ走りやるより遥かに良いポジション取れるんじゃ?)

 

うんうん唸る中、リュドミーラが1つ咳をした後。

 

「やるわ。貴方達の部族に加入する」

「……ありがとう」

「……そもそも私の為みたいなものなのにこっちがお礼言わなきゃでしょ?」

 

それもそうか。

 

「という訳で宜しく」

「此方こそ」

『良かったな。うんうん』

「なんて言ってるの?」

「喜んでいるよ」

 

と言うことで、リュドミーラ・アドゥスカナが部族(という名のチーム)に加入。

 

この時はまだ知らないが、色々とあって更に拡大していくとは思わなかったという話。

 

 

 

to be continued…

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