第2章 1話 始まりはすぐ近くに
《…アクセスを確認》
機械的な女性の声が響く。
キーボードをカタカタと叩き、現れる文字列からプログラムの書き換えが行われる。
《Error発生。攻性防壁をきどどど…》
対抗手段を使おうとした瞬間、空転したレーザーディスクの如く同じ文字しか発することが出来ず。
《Error Error Error Error》
《…………承認》
脳に分類されるCPUは全て別の物へと置き換えられ、変わり果てたようになる。
「……これが、暴走した機械への対処法だ。売っ払えば小さい衛星都市や集落の防衛兵器として活用される」
そう、男が携帯用ラップトップPCを閉じ、教えていくと暴走機械の一種【ランズアーマメント製自走機関砲〔バイロン〕】の鎮圧及び制御下へと置いた。
バイロンは無限軌道というある程度の段差を踏破できる足回りと12.7mm重機関銃、間接標準可能な50mm無反動砲と対人兵装としては充分過ぎる兵器が積まれ、拳銃弾クラスであれば弾く事が出来る。
「ただお粗末なCPUのせいで農地が履帯で更地にされたって聞いたことがある。だから注意して欲しい」
と実際の使い勝手には大分不向きな部分を述べる。
「あの…〔
「何か?」
男はカササギと呼ばれ、ハーフリムの眼鏡の位置を調整しながらかけ直し、教え子らしい少女の言葉を聞き始める。
「では何処でこれ需要あるんですか?」
「そりゃバラすのに。無反動砲も機銃もトリガーさえ付ければ人でも撃てるし、CPUぶっこ抜いて足代わりにするのも良しだし」
「なるほど…」
お粗末な頭は全て分解した後に基盤として売れる。
鵲からの言葉に少女はショートの銀髪を揺らし、頷いては1つ新しい知識を得ることとなった。
「とはいえ、こいつは駄目なのがCPUなだけで、汎用性が高く、バリエーションは豊富で需要もそこそこにあるから食いっぱぐれはない。小遣い稼ぎに乱獲も結構あったわけだ」
「はぁぁ〜…」
「それに難易度もそこまで高くないとくれば」
「確実にいっぱい狩られますね」
供給も程々、需要も少なからずある機械。
となれば誰もが手に入れる気にもなるだろう。
「さて、そろそろ時間だな」
「えっ?まだ昼に…」
「原則4時間が遺構内探索の基本だ。特に此処は顕著なんだよ」
「あっ…」
鵲の言葉に、少女は気が付き、帰りの支度を共に始める。
何故先進文明であった旧世界が遺構と呼ばれる世界へと変貌したのか?
その理由の1つは、遺構内に長く入った者達が挙って常軌を逸脱した行動を取るからと言われている。
最初は何かに覗かれている気がし、段々と耳の中で何かが這いずり回る音に苛まれ、目の中でナニカ蠢き始める。
そうして気の狂いが生じ、自殺もしくは仲間の殺害を行う事が多いと噂されていた。
「あくまでも噂だがな?」
「──ですか…」
「とはいえ…」
あまり長居はしたくない。
ベテランである鵲の顔に苦渋を飲ませられた様な表情が浮かぶ。
其れが何を意味するか。
少女は不安を覚えながら、背半分以上の大きさを持つザックを背負い、帰路へとつく。
あれから半年が過ぎ、7月を迎えた頃。
「って言っても暑さは無いよなぁ…。20℃以上になる事も稀だし…」
相変わらず、肌寒さは変わらない。
気温の高い日でも時折身震いする涼しさがあったり、下手に寒いときは水溜りの表面がパキパキ音が鳴るほどだ。
厚手の服は必須な環境下である【ウエストランズ】は砂だらけの荒野と鬱蒼と生い茂る森、そして万年雪が見える氷山。
南を除けばちょっと寒いと寒すぎるとめちゃくちゃに寒いがデフォルトとして存在する。
『当たり前だ。この時期でも雪は降る時あるから、しっかりと防寒をするんだぞ?』
「あっ、はい」
夏の短い北欧というよりは、沿岸部の南極的な環境下なのだと理解させられる。
『とはいえ、こうして短い夏を満喫するにはオープンテラスも悪くない』
「ダークエルフの居住にオープンテラスあったの?」
『………基本屋根は寝床と神殿くらいだったな』
レッツアウトドアな生活だった事は間違いない。
っで、僕らが居るのは都市中央区に当たるオープンテラスがあるカフェテリア。
盛りに盛られたフラペチーノを飲むシグルーンの傍ら、僕はいそいそとアメリカンを飲み、一息ついている。
「カロリー凄いよ?」
「…ドウセ、夜ニハ使ウ」
「あっ、ハイ…」
あれから毎日とまではいかないまでも、床の間では彼女とセックスをしている。
飽きるとかそんな事を考える暇など無い程、僕らは疲れ果てるまでし続け、夜明け前の明るさが見える頃に抱き締め合って寝息を立てている事が多い。
そのせいでシーツの替えを考える毎日なのだが…。
『…シンノスケ、アレを見ろ』
「あれ?」
外国語はピロートークで覚えると軽薄な伯父の言葉を思い出しつつ、シグルーンの視線の先を追う。
一言で言えば"機械が歩いている"。
ストリートの真ん中を機械と金属のハイブリッドとなっている人型が列を作り、その姿を晒すように練り歩いていた。
『エクゾスーツ。教本に載っていた強化外骨格とも言われている旧世界技術の齎した兵器であろう』
シグルーンの言葉通り、あれは人間が着用する装甲服の一種だ。
とてつもない重さの物を持ち上げられる膂力、人間の限界を超えたスピードで走る速さ、そして小銃おろか重機関銃すら耐えうる頑強性。
中世の鎧が廃れ、新しい装備と共に軽量化が進む中でパワーアシスト能力に優れた人工筋肉が重装甲化と重火器化を後押しし、数秒間の対空能力を持ったジェットパックや高速移動可能なローラーブレードユニットも換装出来るようになったとか。
『聞く所によると、重装甲級のエネミーすら斃す者も居るとか』
「凄いなぁ…」
持っている武器も様々。
一見工具みたいなドリルやチェーンソー等を持っているが、あれは頑強な皮膚組織を削り、貫く為の装備なのだろう。
他にも背中に折り畳まれた砲身らしきものも抱えたエクゾスーツも見えるので狙撃手なのかもしれない。
「あれは、ウエストランズ最強の一角…【ヴァイパー】だよ」
と見入っていると、おかわりを持ってきていたウェイターからかの集団の名前を言う。
「ヴァイパー?毒蛇ですか?」
「ああ。まるで未開拓領域を蛇の如く練り歩いて拡げているストライダーチームだ。トップの〔トリケル〕と副官で弟の〔シグヴァルディ〕が率いているわけだ」
ウェイターが指を差すと集団の中で一際目立ったエクゾスーツを着た二人組が見える。
装飾の意味合いがあるのか頭部から縦に双角が生え、威光を示すような金色と赤のホットロッドカラーの装甲が目に映る。
対して青に黒を重ねた非対称の装甲の方は、肩から地につくほど幅広さを持つ外套を羽織り、これまた威厳というものを見せつけられる。
これが、最強の一つなのか…。
『…ガワだけのハリボテでは無いな。少なくとも』
「あれだけの頭数揃えて統率出来てる時点でカリスマ性はあると思います」
でなければ通りの歩道に押し寄せている歓声がどれほど多くの人間に期待されない。
最早軍事パレードと遜色ない感嘆の嵐の中で、練り歩くストライダーチームヴァイパーの姿はとても誇らしげに写った。
「ウエストランズのストライダーはそれこそ粒揃いだよ?剣一本で災害級のドラゴンを討ち取った【新生:新選組】や近代魔導術式の
つまり其れだけヤバいのがゾロゾロ居る訳です。
「個人で言うなら、トリケルも凄いが…魔導士なら〔ヘカテー〕、〔ベルナドルド・シュマッヘ〕。徒手空拳と軍戦術では〔ヴォルフガング・アッヘンバッハ〕、剣技なら新選組には〔二代目沖田総司〕と〔三代目永倉新八〕…後〔大剣のアルトリウス〕がパッと挙げられるかな?」
なにそれ?
聞く限り結構有名どころを襲名してる人多いなぁ…。
最近になって気がついたけど、シグルーンをはじめとしたこの世界の住人はとりわけ僕らの居る世界の偉人やら英雄やら名の通った人物の名前を持っている。
どうにも其れ等を襲名する事で加護的な物が付与されるとか。
そういうものなのだろうか?
『だからといってシンノスケが劣ると言う訳では無いぞ?ガントレット込とはいえ、最近は瞬発能力や判断力も上がってきている。そろそろ私以外の強者が必要かもな?』
「そんなまさか…」
(エルフ語分かるの?嘘だろ?)
流石にシグルーンにまだ勝ててないのにそれは早計だと思うんだよね。
…………
カラカラとドアベルを鳴らし、カフェテリアの外へと出る。
凱旋パレードをした後の通りは散らばった紙吹雪が地面のアスファルト上に落ちている。
後々で靴底に貼り付いたまま家に上がることとなるかもしれないが。
まあいいと思いながら僕らで歩き、帰路へとついていると。
「グーテンモルゲン。初めまして、君が【宮本一族】の首領かね?」
昔にあったような軍服に身を包む、1人の男性がリビングの椅子に座り、立ち上がっては挨拶をされる。
「ぐ…グーテンモルゲン?」
「広義的にこんにちわに指す言葉だよ。私は〔ヴォルフガング・アッヘンバッハ〕」
「
ヴォルフガング・アッヘンバッハ
ドイツ出身のアーリア系白人らしいが、人種的な物は特に関係ない考えの持ち主とのこと。
「【ドイツ国民労働主権党】の党員で、この世界にはG7枠として登録されたストライダーである」
「……G7枠?」
「国際社会からの監視目的に作られた枠で、今の所はG7内の国から選別された人が入れる」
「なるほど…」
リュドミーラは其の辺に疎いのか、僕へ問いかけられ、教本にあった内容を思い出しながら伝える。
つまりストライダーのドイツ代表。
色んな意味で国際問題にもなりかねない訳だが。
「もとい正確にはGSG-9からの出向と言う訳だが?」
ドイツ連邦共和国の特殊部隊じゃないか!?
と言う前に国民労働主権党って極右翼政党だって聞いたことあるけど!?
「心配しないでくれ。生憎愛国心はあれども人種差別主義ではない。異なる国でも異なる人種でもドイツに敬意を示し、平和と愛を贈るならば同志として扱う。無論我が党の党員も同じ志を持っていると思っているよ?」
同じ様な事を言われたのだろうか、淀みなく隙のない長文を述べて有無を言わさせない。
まぁ、実際問題その国の事情に首を突っ込むつもりは無いのである意味関係ないのだが。
「そう。君には全くの無関係だ。私も国の問題に関わらせるつもりは無い」
そんなに僕の顔には文が書いてある程分かりやすいのだろうか?
「さて、仕事の方の話をしても良いかな?」
「あっ、どうぞ」
そうだ。
彼の目的は仕事、つまり指名依頼と言う訳だ。
ストライダーオフィスを通さない依頼というのは珍しくなく、オフィスで発行された依頼状を互いの名前と連帯保証人の名前を書いて原本とコピーを取って完了まで所持し合う。
ちなみに3枚用意し、ストライダーオフィスに預けておくのがベターとウォーボーイズのガープさんから言われた。
「簡単な話だ。近々
「護衛ですか?」
「ああ。各地の開拓都市を回っている
調査隊の護衛。
確か、開拓都市各地を回って領域調査や旧世界技術の解析などを行える中央都市群政府直下だった気がする。
定期的に回って、情報収集やら新しい遺構の調査も兼ねているらしく、癖の強い人間が多いとか。
所謂、シン・ゴジラの巨災対みたいな組織と言う訳だが。
「あれ?中央直下なら軍隊並みの警備隊とか配備されるのでは?」
「中心はその警備業務兵士が行うけど、地域振興目的で都市間の移動には地元の雇用傭兵やストライダーを使う決まりがある」
「あ〜あ…」
裏事情的になにかありそうな気もするが、そこは言わないでおこう。
「出発は1ヶ月後。各自車両は自前で用意する事を厳守。どうかね?」
「………」
少し考え、僕は答えを出す。
「分かりました。よろしくお願いします」
「良かった。それでは1ヶ月後のキャラバン護衛に備えて幾つか依頼を一緒にやって連携でも…」
僕が受けるとヴォルフガング氏が笑顔で計画を練ろうとした際、シグルーンが手を広げて顔の前へと出す。
何かあるようだ。
『一つ聞かせろ』
「……ん?彼女何を言ったのかね?」
「……質問があるようです」
「そうか、わかった」
シグルーンへ質問をしていいと目を配らせ、頷いてから口を開く。
「…我々、連携、意味ハ?」
「つまり…組む理由かね?」
「アア。我々、ふりーらんす。知名度モ…無イ」
「それ本気で言ってるのかね?」
確かに。
僕らは其処まで知名度は無いだろう。
組むメリットが少ない筈の僕等に名前の知れたヴォルフガング氏が何故?と思っていると。
「ストライダー歴半年で前までは日本のジュニアハイスクール通いだった青少年が【ランクC-】まで駆け上がっている。其処を踏まえると期待のルーキーくらいは知られているが?」
そうだったのか?
初めて知った。
「オフィスも早すぎて色々とストップをかけている。恐らく次の昇級試験まではそのままだろうね」
『……知らなかったな』
「僕もです」
幾ら何でもと思ったけれど、受付嬢の人も確かに上のランクに当たる遺構へは行けないと止められた。
多分、ひとっ飛び過ぎて落ち着けって事なのだろう。
次の昇級試験って確か…。
「ちなみに昇級試験は来年だ。これを合格すれば晴れてBクラスに仲間入りだね」
来年まではCのままということとなる。
まぁ今の所安定していると言えばしているので駆け足に上がる必要は無いのだろう。
ヴォルフガング氏の言葉通りならば期待のルーキーに粉かけるという意味なのだろうか?
「それもある。しかし一番の理由は…
「……しがらみ?」
「ああ。今回の護衛には他にも2つのチームが入る」
とメモ代わりにしている使い終わったカレンダー紙にペンで書き始める。
「一つは【ブラストシールド】。大手で警備員数は10万人を超える。このウエストランズに支社があり、其処から100人程派遣される」
大分大手のチームが護衛に入る。
規模も装甲車は勿論、軽装甲機動車等も多数揃えて事に挑むそうだが。
「次に、ストライダー相互互助会から62人。まぁ正直に言うと肉盾だ」
「に…肉盾?」
「正直君等より遥かに劣る。年数ばかり過ぎて安酒あおる様なイメージダウンピープルだよ」
ストライダー相互互助会。
表向きは新人がベテランの指導を受けられ、官舎等も使えるので初心者向けと表向きには言われている。
しかし、実際は新人を食い物に蛆虫めいた古参達から紐づけされて骨の髄までしゃぶりつくと悪評が出回っている。
どうにも、相互互助の観点ではまともなのだが前項にも述べている存在がへばりつく事と、ろくに腕も無い為、足の引っ張り合いを起こして物理的な食い物へと変わる事が多い。
想像すると、福本伸行の漫画に出てくる債務者や地下労働者であろう。
「恐らく、何処かから拾ってきたボロの組み合わせ等でやるつもりだろう。出来るだけ離れた方が良い」
「はい、心に留めときます」
ヴォルフガング氏の顔も曇り、相当泣かされてきたと見る。
「さて…その他諸々は後日にしておこう。準備は欠かさずに頼むよ」
「分かりました」
彼と一回握手と会釈を済ませ、玄関を出ていった。
すっかり辺りは夜の中になっている事を知り、僕らも夜の仕度へと入る。
と言うことで数日後。
「使えそうな車両が発掘されたと情報を得て、とある遺構へと着いた訳だ」
「誰に向かって説明してるの?」
向こう側に居る読者にです。
という冗談は止めといて。
『既に複数組のストライダーチームが入っているみたいだな』
「ブッキングとかいざこざ防ぐ為に各チームの情報は入っているけど…」
「……名前聞いたことがない人ばかり」
『恐らく別の所から移動してきたのだろう。
「なるほど」
一度に数千人規模を運ぶ走行城に出稼ぎストライダーが居てもおかしくない。
噂を聞きつけてやって来たのだろうと思いつつ、あまり初対面でマイナスイメージが無いように振る舞わねば。
と、考えてから30分後。
「………俺達が見つけた。そうだろ?」
『…馬鹿かこのフェルト樹頭は?』
両サイドツーブロックに仕立てたソフトモヒカンの大男の仁王立ちの前に、シグルーンはガンをつけて睨み、その態度を崩さない。
明らかに揉め事と言うべき状況であった。
「おめぇら〔
「たった1人で【トロルピテクス】を倒したんだぞ!?」
取り巻きであろうゴーグル付きの男や
『トロルピテクスは神官の選抜で使われる低脳エネミーだ。1点にしかならん』
「ハッハッハッ…」
ダークエルフ基準だと子供の玩具になるとかならないとか。
さて、何故この様な事になったかと言うと。
簡単に述べれば目的の品である大型装輪装甲車が見つけたのだが、何故か可視光線を当てられ、後ろを振り向くとこうなった。
つまり。
『………闇雲に探すより誰かが見つけたのを奪うほうが良いわけか…』
と、ロシア語でリュドミーラが呟く。
まるで虎の獲物を奪い取るハイエナめいた行為だ。
手際の良さから恐らく別の都市でも同じ事をしていたと考えられた。
「何訳の判らねぇ言葉喋ってんだよ!人間様の言葉喋りやがれ…!!」
そう言いながら、アートムーチョと呼ぶ巨漢がシグルーンの服の襟を掴み、自身の眼前まで引き寄せる。
「詫びは入れてもらうぞエルフ女。そのてめぇの澄しヅラを目一杯よごブヒャッ…!?」
『……おっと』
一発、音が鳴り。
「へっ?」
「あ…兄貴?」
取り巻き達が唖然とした目でアートムーチョの顔を見る。
まぁ、既に頭部に一発45口径が収められ、頭蓋の中をあっちこっちぐちゃぐちゃにしているのだが。
『……撃った?』
「あっ、はい」
そりゃキレるキレないで言ったら、ブチ切れるよ?
人様の女に手を出したなんてそりゃあって思うでしょ?
『思い切りが良いのは美徳だが、警告射撃も無しとは』
『そういう問題じゃないでしょ!?』
『すまん、ヌシの言葉は分からん』
これを想定してなかった事でリュドミーラが思わずロシア語のままで喋っている事に気が付いていない。
万が一と心の師匠ことデッドプールみたいに数発撃って絶命させておく。
「…あ…お、おい?」
「ああ…兄貴?」
強いことは強いのだろうが、即応性が求められる世界で安易に名乗ったり、脅しかける暇があれば撃ち抜く方を選ぶ。
「て………」
なので。
「てめぇらぶち殺してやる…!!」
必然と銃撃戦に持ち込まれるわけだが。
『撃ってきてんだけど!!?』
「撃つに決まってるよそりゃ」
『バカァ!!このバカァァァァ!!』
「サワガシ、応戦シロ」
銃火が至る所から鳴り響く。
向こうはばら撒くように撃つが、此方は単発必中を狙って短機関銃を構えて撃つ。
相手は
直ぐに飛び出た頭部や隠し切れていない脚、腕、肩を狙って撃ち、仰け反った所で仕留める。
これくらい念入りに撃てば対象も沈黙するであろう。
「クソッタレが!!!」
後方に居た取り巻きの1人が背負っていた無反動砲(恐らくRPG-7)を構え、引き金を引こうとしていた。
『……声を出してアピールするのか?よっぽど死にたいみたいだ』
それを見逃すわけが無く、シグルーンは矢筒に装填されている
そのまま周りも巻き込まれ、火に包まれては爆ぜて死に絶えるのだった。
「………ウゲッ…」
「大丈夫?」
「……へ…平気なの?」
「…まぁ」
青ざめた顔で吐き気を催すリュドミーラに背中を擦る。
この世界に来てから一月経った頃にツキジのネギトロめいた状態のを見てグロっとはなったけど、今となっては見慣れてしまった。
これもPTSDになるのだろうか?
『……とりあえず車を手に入れられたな』
一方でシグルーンは特に気にするつもりも無く、半分瓦礫に埋まった車両を見ては観察する様子に彼女の強さを感じる。
「……さて、動かせるかな…」
後々、拾えそうな物と認識票を手に入れ、墓の一つは作るほうが良いだろう。
自業自得的とは云え、埋葬は必要と思うから。