"Keep looking below surface appearances. Don't shrink from doing so just because you might not like what you find." - Colin Powell
物事の裏側を見極めろ。もし見たくないものがあっても尻込みしてはいけない。 ―― コリン・パウエル
"わたし"はある難病を宣告されてから十数年。
義体化とそれに伴うメンテナンスが重くのしかかることとなってしまう中…〔兄さん〕は言った。
『お前の病気は筋萎縮性側索硬化症…つまりALSと言う。神経系に著しく影響し、筋肉等の痩せ細りが起こってあらゆる生物的反応が出来なくなる…何れは自己呼吸もままならなく…』
悲しい瞳のまま、わたしに嘘なく包み隠さず話してくれた兄さんには本当に感謝している。
何れ手で言葉を綴れず、言葉を述べれず、ただ排泄と無駄飯食いのままで死んでいくだけだと知って、わたしは決めた事を言った。
兄さんは驚いたが、その可能性もあったと直ぐに理解していた。
手術費用よりも、兄さんの負担になる方がよっぽど大変であると考えて、わたしは全身の9割以上…つまり脳殻のフレッシュな大脳等以外を全て義体化することとなりました。
尚、卵子などは凍結保存してあるので子供を産むことは出来るそうです。
その後、今度は義体を上手く動かす訓練を行うのですが…。
口では簡単に言えるけれど、義体を動かすと言うのは並大抵の物ではありませんでした。
生卵を割ってボウルに落とす。
この動作をするのにとても根気が要ります。
力が弱すぎれば持つことも出来ず、強すぎればグシャグシャに割れてしまいます。
何よりも手で持つには不向きな曲線を描いている卵を何度も滑らせて床へと落とすこともしばしばありました。
歩く事も、何かをする事も、ありとあらゆる事が自分には出来ない事を知ると、思わず涙が出ることだってありました。
それでも、兄さんはわたしに優しく根気よく一緒に居てくれて。
「………なっ…なんじゃこりゃ…!?」
お兄さんからお姉さんにチェンジした事には大変申し訳無いとは思います。
いや、だって脳殻撃たれた以上、スタック(精神や記録のデータ化された外部記憶装置)経由で再生するしかない。
問題なのは兄さん…いえ、姉さんの行き先が前に拾得した侍女型奉仕自動人形しかなかった。
出来る限り死亡してから日数が経つのは避けたかったからでしたが…。
「おい…〔アリス〕!!どうしてこんな…!?」
「しょうがないじゃないですか〔シャルル〕兄さん。いえ…ここは〔シャルロッテ〕姉さんって呼びましょうか?」
「呼ぶなァァァあああ!!?」
義体化した人間は擬似的な不死身になれるとはよく言ったものです。
ただ、義体先を選べるかどうかは別問題ですけれど。
「でも良いじゃないですか?重力制御とか使えますし、大口径の機関砲もなんのそのでしょ?」
「対人には過剰過ぎるだろうが…!!」
と頭を抱えると、腕周りにムギュリと大きく実った胸が見える。
ちょっと其処が羨ましいとは思いません。
成長経過でこれ以上は望めないと言われて少々怒りたくなりましたが、搭乗型義体をタダで貰ったのでヨシとしました。
「そもそも口が過ぎたのが良くなかった訳ですし」
「………くっそあのガキ見つけたら転がしてやるっ…!!」
「はぁ…」
明らかにシャルロッテ姉さんの方が悪いに決まっていますが、このストライダー界隈では舐められたら意地でもはっ倒すが常識。
まぁ一種の面子保ちと言う訳ですが…。
(……一応相手の言い分は聞きますか)
と言うことで転がすかどうかの判断は相手の言い分含めてするつもりで居ます。
この状況でなかったら。
失敗した。
そう思う時は基本、後手に回る時と明らかに失敗したと理解させられた時の2つ。
特に、後者の場合は心身共に締め付けられるような感覚を覚えるから尚更キツイ。
「……駄目か」
右腕側は瓦礫でぺしゃんこになっている。
左脚も同様で、引き千切って出れば一応チャンスはあるかもしれないけど、其れを見込んでも助かりそうにない。
唯一、.爆裂徹甲仕様の454カスールを撃つことが出来る6連装リボルバーは使えるので、狙いを定めれば一泡くらいは吹かせられるかもしれない。
そう思っていると。
《…対象発見》
このビルを倒壊させた張本人が現れる。
その強力な兵器を見せびらかす様に現れては、黒い砲身を此方へと向け、構える。
ものの数秒で赤い閃光が目の前を覆い、全て消し飛ばさんとする威力を食らわせるだろう。
もう諦めるしかない。
左手で撃ち込めるかどうか分からない射撃能力に賭ける気持ちも薄れ、強く目をつぶって恐怖から逃れようとし。
…………
最初の投擲。
EMPグレネードが空中で起動。
放たれた強烈な電磁波で体内のセンサーやその他機能に妨害を起こし、動きを取れなくさせる。
《…!!!?》
セーフガードのボディがガタガタと古びたゼンマイ人形の様に動き、自身の電脳にErrorの表示が出ているだろう。
その隙に次の投擲として
《!?対象確認…!回避?》
顔にぶち当たり、ピンの抜けたグレネードはレバーが抜け、数秒経った後、爆発。
華奢そうな身体の割には重い音を鳴らしながら倒れたセーフガードへ
UMP-45の後継として開発されたこの銃器は、フルオートでも親であるMP-5並みの精度で当てることが出来る。
故に、より当てられる単射撃…つまりセミオートでの単発撃ちで破損した左腕や顔面部といった弱点箇所と思われる部位へと撃ち込んでいく。
《は、排…じょじょ…じ…ょ…かかか…開始ししし》
撃ち切る前に次弾装填。
拾う暇もないまま引き金を絞る。
《禍架香蚊勝っ…!!!?》
近づきながら、同じ場所へと撃ち込む。
残り少ない弾丸を消費し続け、焦燥に駆られながら弾切れまで引き続ける。
ボルトが後ろに後退したまま、カチャンと空撃ちが起こる。
「…ふぅ…ふぅ…」
煙を上げる銃口を降ろし、何十発もの.45ACP弾を叩き込まれたセーフガードの頭部は煙を上げて物言わぬ姿を晒していた。
「………」
腰のマチェットナイフを抜き、1つ小突く。
パチパチ火花が鳴る音を発しながら、動く様子は見られない。
其れでも場合を考えて短機関銃をスリングベルトで肩に下げ、両手でナイフの柄を持ち。
「ふぅぅ……ふんっ…!!」
頚椎へ狙い定めて振り下ろす。
如何に頑丈と言えども、強化ポリマー系素材であれば肉厚の刃であるマチェットナイフで叩き斬る事が出来ると思っている。
案の定、刃はそのまま頚椎表面を割りながらケーブルやその他の基幹を引き千切り、断頭台のギロチンの気分を味わいつつ、事が終わったのを確認した。
「………はぁ…」
背中にびっちょりと汗が張り付いている。
緊張と疲労の双方が泥のようにへばりついて離れない感覚は嫌な初体験だと思いつつ、僕は立ち上がり、瓦礫の中の
「……大丈夫?」
「………無理」
「だよね」
よく見ないでも厳つかった顔と頭が大きめの岩に潰れて中身の少女の顔が丸見えだ。
中に誰もいませんよ?ってパッカリ開いて確認してたのを思い出してしまうがどちらかといえば着ぐるみの頭が取れた方が意味合い的に正しいと思ったり。
「…べ、別にわたしは騙してたとかそう言うわけじゃ…」
「とりあえず外せそう?腕とか潰れて使えないとか無いよね?」
「それは、一応四肢の伝達ケーブルを手動切断をすれば……」
それはつまり…。
「…まっ…!まぁ!!わたしのちんまい身体を見られたって別に恥ずかしくありませんわ!!どうせ誰にも見られていましたね!!」
マジかぁぁ。
いや、緊急事態である以上仕方がないだろうし。
「……早く外して下さりませんか?」
「あっ、はい」
確かにこのままじゃ埒が明かいので瓦礫の中から出れそうなスペースを作り、手動で開けるレバーらしき部分を手で触れる。
「………えんがちょ」
「仕方がありませんわ。手で持てるレバーの偽装なんて其処しかありませんですし」
まさかのムスコ開閉式とは思わなかったよ。
と言うことで縦だったのを横に回して押し込むと、胸元のハッチらしき部分が開き、空気圧が抜ける音を出して開帳される。
(本当に裸…ってあんまりジロジロ見るものじゃないだろ)
性別がどうか分からないまでも今のところは少女型である以上、あまりそういう目で見ないように目をつぶりつつ、接続部を探す。
「あの…其処はお尻と言いますか…」
「あっ、御免…!?」
「別に見たって構いませんし…やりづらいでしょう?」
「………すいません」
至極ごもっとな言葉に致し方なく目を開けて作業を行う。
髪の毛やまつげみたいな部分以外は体毛というものは一切ない手触りの良さが感じられる肌。
その肌に見える大豆サイズのワンポイント乳首と薄いピンク色の乳輪が見える。
「…見すぎです」
「すいません」
流石にやり過ぎだと思いながら、右脚の接続部を外す。
「…っづづ!!?」
「あっ、御免…」
「いいえ…次は外す事を言ってくださいね?」
「はい…」
神経接続されてるのを思い出し、着けるにも外すにも痛みが生じる為、もうちょっと優しくするべきだった事を噛み締めながら。
右腕。
「…んっ…///」
左脚。
「んお゛っ゛…///」
左腕。
「ぉお゛お゛ん゛っん゛ん゛〜〜♡♡!!」
全部外すことが出来た。
痛いというより何か別の感覚に切り替えたのか、抱き寄せると身体中が震えて痙攣している気がする。
「……大丈夫?」
「す…少…し、このまま…でっ…お゛う゛っ♡!?」
義体ってこんなに汗ばんだりするものなのかな?
というよりちょっとべちゃべちゃになってるんだけどめちゃくちゃ。
「ホント大丈夫ですか?」
「…な、中々…テクニシャン…ですね…♡♡」
何が?
いや待って?何が??
これって外す時の方法で色々変わることあるの??
「もう少し、ギュって強めに抱き締めて貰えば…不安でして…」
「あっ、はい」
流石に四肢が無い以上、不安で仕方がないと感じつつ彼女の身体を抱きとめながら這い出る事が出来た。
まぁ色々疑問は浮かぶけど。
おっとその前に上着を彼女に着せて…。
「テクニシャンの次には男気見せてくるなんて…///」
「いやいや、普通ですって」
一応防弾ベスト位は着けさせないと駄目だとは思いますよ?
裸にベストって何かその色々と来そうなスタイルなのは目を瞑っておくとして。
(………あれ?)
ふと思い出してみる。
セーフガードの姿形をじっくり見たわけでは無いものの、今倒れているものがセーフガードだったのか?
黒い胴体、顔の表面は白い陶器みたいなツヤ肌で細目をした女性型の自動人形だが。
倒れているのもかさねその特徴を捉えている様子を見せるが。
「……糠喜びさせてこれはナンセンスですわ」
「えっ…?」
抱えていた彼女から1つ嫌な表情と皮肉を発し。
《…回避行動!》
エレンの一言で僕は何も出来ないまま。
ただ1つ良かったことは、彼女にベストだけでなく上着も着せて居たからまぁ受け身が取りづらい状況も衝撃軽減してくれたと思う。
まともに受けた僕としては、脇腹に不穏な音と濁流の如く立ち上った吐き気に口から胃液混じりの血を吐く。
恐らく、食道か胃の何処かから出血したのだろうか?
まだ消化しきれてなかったらしいチョコレートの風味が酸味の効いた所と混ざり合って不快さを増す。
「があっ…!?」
地面に叩きつけられ、土埃を立てながら身体半身が引っ張られるように引き摺られて転がると、ようやく止まったかと思えば。
《………》
ヤクザが倒れた滞納者に蹴りを入れるように、胸部に足背が入ると、またもやプリッツェルの砕けたような音を鳴らして身体が宙を舞い、壁へと激突。
「ぉぉ゛……!?」
背中に鈍い痛みと左手首があらぬ方へと曲がっているのを見ながら、再び地面へ叩き落ちる。
血の沫が口端から幾重にも垂れ落ち、床に朱く斑点が出来るのを見えると、次第に視界のボヤケが起こる。
脳震盪だ。
頭もズキズキする事から、酷く打ち所が悪い当たり方をしたのだろう。
立つにも立てそうに無い。
内臓も破裂していてもおかしくないだろうし、このまま血の海に溺れて死ぬ事も頭に浮かぶ。
(……ああ。此処で終わりか…)
動かない身体に恨めしく感じながらそう思う。
何時も終わりを意識して仕事をするのはある意味正しいことだろうが、それを意識し続けるのも無駄な労力でもあり、片時だけで充分であろう。
でも、此処でって思うと力が抜けながら静かに目を閉じかけてしまう。
必死に生きるのも結構辛い。
この世界に来なければ死なずに済んだのでは?と考えた事は何度かある。
借金を地道に分割払いですれば良かったんじゃ無いか?
他にもまともな生き方はあったんじゃないか?
普通の暮らし。
普通の生き方。
高校を出て大学を卒業して、そこそこ良い会社に入って出世すればまともな人生を歩んでいけると思ってはいた。
でも。
この痛み以上に僕の
硝煙と古びた世界の黴臭さ。
脅威の存在とのビリついた空気。
ラプターに追われていた時もウルク=ハイと鬼ごっこした時も。
ギリギリのラインでしか僕は生きている保証が感じられなかった。
そうだ。
「……ふぅぅ…」
呼吸を整える。
折れた箇所は筋肉で覆われているから補強し、破裂した箇所も集中し、塞いで出血を止める。
肉体と其れ等を理解すればある程度の感覚器官を操れる。
お陰でぶれていた視界もピントが合って鮮明な状態へと戻すことが出来た。
「……あっ…や…止め…」
彼女の頭を踏み潰さんとセーフガードが脚を上げる。
ほんの一瞬で終わるであろうその動作はゆっくりと恐怖を煽るように行われる。
1秒。
動けるとすれば一回。
少なくとも其れだけで全てを"打ち込む"しか無い。
2秒。
限界まで上げられた脚が無情に踏み込まれようとしていた。
3秒。
即座に立ち上がり、僕は地面を"陥没"させる程の踏み込みを行い。
《…脅威判定更新…!?》
吸った空気を噛み締めるように全身に力を込め、踏み込みと共に跳躍。
其れは〔師匠〕から教わった歩法術【蓮華歩舟】は、何もない場所に架空の階段を造るという宙を浮かぶ歩法らしく、極めれば瞬歩と大差ない動きを行える。
鍛錬では一度も出来なかった技なれど、此処に来てからは何か蜘蛛の糸みたいな感覚を掴めた気がし、ぶっつけ本番の今に成功するとは思わなかった。
でも、喜ぶ暇はない。
たった一回。
唯一打てるであろう術を当てるべく、全神経を全て注ぎ、残る全ての機能もその一撃に賭ける。
正真正銘これが生死を賭けた瞬間だ。
右腕をしっかりと構え、空を切るように振るう。
《回避不能。防御シークエンス》
セーフガードが両腕をしっかり固め、僕が狙う頭部を守り始める。
その体勢は言わば相手の攻撃を抑えるボクサーのディフェンスそのもの。
ただ一撃しか打てないと考えて回避ではなく、防ぐ方針を取ったのだろう。
失敗させ、トドメにミンチ肉まで殴り続ける事は間違いない。
「…それを選ぶと思ったよ」
僕はそのままガードされた真正面へ右正拳突きを放つ。
師匠曰く、【九頭竜】は如何なる防御も貫く対仙人用仙術。
【通し】という技術は。
【通常の物理攻撃と違い、九頭竜の攻撃はよほど特殊なものを除いて力の解放点が相手の体内に設定してある】
【そのため、超常能力や特殊な体術によるものを除くいかなる防御・ガードも素通りし、体内から破壊することができる】
【ガードしても、腕も鎧も、打撃エネルギーの伝導体として使われるだけ】
【九頭竜自体がこのような攻撃を受けることも想定していると思われる】
これらから、たとえ相手が機械の身体を持った自動人形と言えども。
《防御点崩壊を確認…!?》
上腕部に拳が当たった瞬間、亀裂が蜘蛛の巣状に走り、次には音を立てて粉砕が始まる。
勢いは止まらない事にセーフガードは驚愕しているかも知れないし、冷静に次の策を練ろうとしているだろう。
しかし其れをさせる前に僕は破壊しなければならない。
この後倒れても良い。
だが今だけは…この一瞬だけは全てを捧げてでもやり遂げねばならない。
右脚の地面が陥没。
その勢いのまま、迫った拳撃は。
《回避不能…》
セーフガードの頭部を貫き、文字通り木っ端微塵に吹き飛んだ。
奇跡を見た。
満身創痍といった状態の中で少年が無茶な事をして、セーフガードを破壊した。
まさか、
なんの為に?
もしかしたら動かないでいれば助かったかも知れないのに?
わざわざ動いて死んでしまいかねない状況を作って何を??
重い機械の身体がその場に叩きつけられてそのまま砕ける音が響く。
もう動く事は無いだろうと機械の延命を絶った彼は口端から垂れ流す吐血を噛み締めながら此方へと目を向ける。
「……良かっ…た。生きてて……」
安堵。
そんな表情のまま、その場に倒れて身動きもしない。
「……ねっ…あっ…あの!!?」
気絶しているのか?
いや、もしかしたら瀕死かも知れない。
「お〜い!!起きてぇ!!此処で死んだらわたしも死んじゃうかも!!いやっ!?ホントに死んじゃう!!起きてーーー!!!」
生き残ったのに此処でジ・エンドはたまったものではない。
特に餓死は多分物凄く辛いと思うし、一人っきりなのはもう駄目だと思うんです。
「あーーー!!!神様!仏様!マーラ様!シヴァ神!ケツァルコアトル神!誰でもいいから誰か助けてーーー!!!」
もう手も足も出ないというより無い私が出来るのは声を出す事だけ。
誰でもいいから助けてというお決まりのセリフを言う羽目になるとは思ってもなかったからもう半分泣きベソ状態になってた。
もうヤダわたし死にたくない。
「…うぐぅ…ひぐっ…うぇぇぇ……」
でも此処まで頑張って戦った彼はもっと死んでほしくない。
これで無情に死に行くならば色々と申したい事ばかりだし、せめて何か良いことあったって良いと思うんです。
あ〜あ…。
もう駄目。
………
……
…
『……〔堂ヶ島〕。救助対象2名発見…緊急治療の用意を』
そう述べて、辛うじて生命活動をし続ける宮本と疲労で睡眠状態の〔アリス〕2人を抱える。
白い甲冑に背丈と変わらぬ長さの刀を背負った剣士は瓦礫を拳1つで打壊させ、自身の進路を確保する。
『…ん?』
急ぐ様に足早の歩みをしていたが、不意に感じた違う様子で一度立ち止まる。
『……成る程。此処は"貴様らの巣"か?』
甲冑の男はそう呟きながら、背中の刀を鞘から引き抜く。
闇に覆われた中で何かが走り姿が一瞬写っては煙を巻くように消えてなくなる。
相当なスピードで剣士の周りを回っている。
其れは獲物を追い立てる狩人の様だと剣士は思った。
『…矛を収めるつもりがないなら仕方がない』
確実に仕留める気のハンター達が囲む。
剣士は面頬越しにため息を吐きながら、片腕のみという不利な状況でも冷静に判断した。
『我が名は〔アラマサ〕。その
襲撃側は剣士から発された"聲"に寒気を感じた。
故に隙が生まれる。
『ヌンッ!!!』
野太刀に近い刃が一振り真横に薙ぎ払う。
辺り一帯に風を引き起こすその一撃は、一刻二刻と短い時間が流れてから。
ギャッっとうめき声を上げ、その胴体と首を捌き斬った。
『………消えよ。それが汝らへの全てだ』
アラマサと名乗った剣士によって起こされた一撃を遠くに見ていたハンター達は後退るようにその場を離れ、距離を取る。
決して勝てぬ相手では無い。
だが、本気で戦えば殲滅すらあり得る脅威である事も理解させられた。
故に一先ず引き上げる。
次に襲う機会を狙う為に。
『……さて…ゆくぞ』
アラマサは刀を仕舞い、即急に2人を運ぶ。