いつの間にか、気を失っていたみたいだ。
意識が浮上する直前の揺蕩う感覚がふわふわと心地良い。
「……ぁ」
体がビクンと跳ねる。
じわっと体中に掻いていた汗が垂れる感じ、素肌に空気が触れている違和感がまずは最初だった。
「魔理沙ぁ、おきたぁ?」
すぐ傍で甘ったるい声。
耳を吐息が撫で、それを敏感に感じながら首を竦める。
「こ、ここ……は……?」
「うふふ。お姉様たちはまだ言い合っているから、今のうちにね」
フランの顔がすぐそばでこちらを、じっと覗き込んでいる。
瞳孔が縦に裂け、紅い瞳が猫みたいだ。なんて痺れた頭で思う。
「ふらん?」
「うん。そうだよ、魔理沙。魔理沙、魔理沙……! 辛そうだね、苦しそうだねぇ」
ニコニコと邪気のない笑みを浮かべながら、しかし目だけはちっとも笑っていないその顔でちろりと舌を出して舌なめずり。
「わたし……あれ?」
腕が動かない。
ベッドに寝かされているが、両腕が枕の方に上げられていて、何かに縛られているみたいだ。
敏感になっている肌の感覚が、なにも纏っていないことを主張して恥ずかしくなる。
「ごめんね、暴れたら危ないから」
言いながら、ちっとも申し訳ないと思ってなさそう。そのままフランが顔を近づけてくる。
すでに接しているようなものなのに、頬ずりするように顔をごろごろとくっつけられる。
やっぱり猫みたいだ、なんて思っていると、そのまま頬を舐められる。
ぞくぞくとした感覚が、舐められた肌を走る。
「んぅ……」
気を失う直前の事を思い出し、徐々に取り戻してきた体の感覚がまだまだ足りないと、情欲の炎が燃えていることに気が付く。
なんていやらしい。パチュリーの言葉を思い出して、顔に血が上る。
「かわいい私の魔法使いさん。そんな顔をしないで……」
気が付けば馬乗りにされて、フランが私を見下ろしながらその縦に裂けたキラキラの瞳で私を見下ろしていた。
「優しくしたいのに、ひどい事をしたくなっちゃうから……!」
ああ、食べられちゃうんだ。
どこか他人事のようにぼうっとした頭が諦めを吐き出す。
「お、おいしくないぜ……」
いつものように軽口を言おうとしたが、観念してしまった私は他に何も言えないみたいだ。
ここで終わってしまうんだ。私は、魔理沙になれなかったんだ。
つぅっと雫が頬を流れる。
知らず溢れてしまった涙を自覚したが、手も動かせないしそれを拭うことも隠すこともできない。
フランが、その口からあふれる涎をぺろりと可愛らしく舐める。
そのまま再び顔を近づけてきて、まるで犬のように私の涙を舐めとり始めた。
「ふ、ふらん……」
全部を舐めとって、再び目を見つめられる。
じっと狂気を孕んだ瞳は、その奥にめらめらと欲望を灯している。
「泣かないで、本当にやさしくするんだから……!」
そのまま、唇を重ねられた。
「……んぉ!」
驚き、声を出そうとするがそれすらも口内に入り込んだ舌で絡めとられる。
くちゃっといやらしい水の音が痺れた頭の中で反響し、ぞくぞくと背筋から全身に甘い痺れが走る。
「ぁ……」
「……ふふふ」
顔を離したフランと、私の口の間を唾液が結び、そのまま重力に従って途切れて落ちた。
キス、された……?
気が付いた瞬間、今まで以上の熱が顔に集まる。
「な、ななんななぁ……」
言葉にならない声が口からそのまま漏れ、その様子を見下ろすフランがその幼い見た目からは想像もできない、妖艶な笑みを浮かべた。
「今から魔理沙はたべられちゃうんだよ。わるぅい魔法使いさん、あなたがそんな顔をするから」
どんな顔をしているんだろう。
呆けながらフランの、濡れた唇から目が離せない。
にっこりと笑うその口元の、奥にある牙がてらてらと濡れている。
「うふふ、とびきり優しくするんだから」
言って再び顔が近づき、次はちゅぅと音を立てて咥内を吸い取られる。
「ぁ……はぁ……」
口の端から音が漏れ、遠慮なく私の口の中を暴れるフランの長い舌が頬の裏まで舐め、そのまま私の舌を絡めとる。
じゅるるぅっ!
激しい水の音が頭の中に響き、甘い痺れがじんっと下腹部に溜まっていく。
これは、今日一日中悩まされている痺れだ。
ずっとこれが溜まって、私はおかしくなってしまう。
「ぁ……たすけ……!」
「んぅ。うん、助けてあげる……!」
フランが私の口を貪りながら、合間で、はぁっと息継ぎをするように耳元で息を吐く。
いつもと同じ声なのに。ズンと重く響くその音を感じながら、私は顔を背けることしかできない。
「ぁ……」
ぐいっと、頬を片手で掴まれて正面を向かされる。
そのまま、再び口をつけられてより激しく咥内を蹂躙される。
「……っはぁ、これ、すっごい……!」
頬を赤く染めて、目に獣のような光を宿しながらフランが声を出す。
私は息も絶え絶えに呼吸を繰り返し、酸素が足りなくなってきた頭で、もっとしてほしい、なんて思いが浮かぶ。
それを見下ろすフランが、ごくりと唾を飲み込みながらより激しく、乱暴に口を付ける。
「はぁっ……あ、んん……!」
キスをしながら、フランの手が私の体を這う。
遠慮がちに触れられ、普段ならくすぐったいとも思えるその感覚が酷くもどかしい。
そろーっとわき腹に置かれた手が、そのまま上に進んで胸の横、そして私のささやかな胸をおっかなびっくりと触り始める。
「あっ……」
咲夜にもパチュリーにも触られていたそれは、すぐに体中を痺れさせた。
隠しようも偽りようもない、快感が背筋を上って脳を突き抜ける。
「あはっ……!」
フランが笑う。
羞恥で顔を目を伏せている私にはその顔は見えない。
遠慮がちだった手が、すこしづつ強気に周囲を揉むようにしてじわじわと快楽を貯めた。
口をふさがれているのに、それでも口の端から声が漏れていく。
それすらも吸い取る様に、長い舌が喉まで舐めるように奥に入り込む。
「ふっ……はぁぁん!」
ようやく話された口からは意味をなさない声が漏れて、それが自分の口から出たなんて信じられない声で。
パチュリーが、発情した雌だなんて言っていたことを思い出し余計に恥ずかしい。
「魔理沙、魔理沙。ねえ、名前を呼んで。フランって、その口で呼んでよぉ……!」
「ふ、ふら……んぅう!」
荒い息を吐きながらフランの手に翻弄されていると、同じく息を荒くしたフランが見下ろしながら顔を寄せてくる。
ただ、求められるままにその名前を口にすると、我慢ならないといった様子でその口を再び塞がれる。
口を離される。銀の橋が、私とフランの間に架かる。
「はぁ、ああ!」
指が私の乳首を撫で、その強い刺激に体中が跳ねる。
それを悪戯が成功した猫みたいに、にいっと顔を歪ませながらフランが満足そうに笑う。
「すごいよ魔理沙。とってもいやらしい!」
「そん、なぁ……あぁ!」
抗議はすこしだけ強く摘ままれることで押し殺されてしまい、繋がれて動かせないままの腕に顔を隠しながら顔を横に振る。
もう、色々なことに頭がいっぱいいっぱいで、自分がなにを口走っているのか、どうしてここにいるのか、なにもわからない。
フランが笑いながら顔を首元に寄せて、首から鎖骨のあたりを丹念に舌で汗を舐め取られる。
いちいちそれに反応してしまいながら、せめてもの抵抗として顔を腕で隠すしかできない。
まるでおもちゃにされてしまったみたいで。
私が反応をするのを、フランは楽しそうに、たまらなく興奮した様子でじっと見つめている。
「はぁっ、魔理沙、名前をよんで……?」
「んぅっ! ふらん、ふらん……!」
舌を鎖骨に這わせながら、荒く息を吐いてフランが声を出す。
その意味を理解する前に、ただ反射で脊髄が反応を返していく。
楽しそうにそれを見る視線が熱を帯びて突き刺さる。胸を触る手と反対の手が内ももに置かれる。
今まで以上に、ぞくっと重い期待感が走る。
ずんっとした重たい快楽が溜まり、下腹部があつくなる。
口元だけ笑みを浮かべたフランが、そのまま内ももからいやらしく手を上に這わせ、ついに体の中心までその手がたどり着く。
「~っ!」
声も出せず、息が止まるほどの衝撃で体がびくっと跳ねた。
腰を逃がそうとするが、絡められた足が強く押さえつけてきて許してくれない。
「わぁ、ねえ魔理沙」
人差し指と中指が、私の女性器に触れた。
触れた箇所にジンっと熱を感じながら、ただ震えている私にフランが囁くように声を掛けてくる。
「すごい濡れているよ。ねぇ、期待、してるんだね……?」
もう、恥ずかしくて死んでしまいそうだった。
誰も触れたことがないような場所を触られながら、淫らにそれを期待しているなんて。
声も出せず、ただフランの目を見上げる。
妖艶な笑みを浮かべる幼い吸血鬼が、私を見下ろしながら舌なめずりをした。
ああ、たべられちゃうんだ。
*
かわいいかわいい、私の魔法使い。
全身震えながら、幼稚な私の愛撫に全身で反応を返してくれる愛おしい人間。
胸いっぱいに広がる幸福感と、同時に沸き上がる嗜虐心を深く息を吸うことで落ち着かせる。
壊してしまいたくなる。
全部全部、私で満たしてあげたくなる。
指を魔理沙に這わせ、気持ちが良い箇所を傷つけないように探る。
「ぁあっ! ふらん、ふら……んぅ!」
息も絶え絶えに、真っ赤な顔がこちらに懇願するように視線を向けている。
たまらない……っ!
「あはっ!」
自身の口から漏れた声が、自分のものじゃないみたいに聞こえる。それくらい酷く興奮を孕んでいる。
能力で自分が纏う服を消し去り、肌をより一層重ね合わせる。
じとっとした肌が、同じく濡れた肌に重なる。
気持ちが良い。融けてしまいそう。
溺れてしまいそう。このまま墜ちてしまいそう。
汗が肌と肌をより密着させて、お互いの熱を交換し合う。
自分の下腹部から、重く熱い劣情が全身を支配していく。
舌を魔理沙の胸に這わせ、指はそのまま魔理沙の女性器に這わせてより快楽を探る。
片方を魔理沙に這わせながら、もう片方で自分自身を慰める。
「~っ! ぁ、んぅぅ!」
「っぁ、んふふ! はぁ、魔理沙……」
ぐちゅぐちゅと濡れたそれは、どうしようもなく自分の欲望を反映しているようで欲望を溢れさせている。
このまま重ねたら、どんなに気持ちが良いんだろう。
思うがままに行動し、自分と魔理沙を重ね合わせる。
まるで繋がったようにぴったりと隙間なく埋め、そのままお互いをこすり合わせてみる。
「ぁぁあっ!」
「はぁ……!」
そのまま腰を上下に動かして、気持ちが良い部分を探りながら魔理沙の反応を見てより劣情を昂らせる。
真っ赤な顔をくしゃくしゃにしながら、聞いたことのないような女の声を出す魔理沙に興奮が抑えられない。
たどたどしく、こちらの腰の動きに合わせるように動く腰が可愛くて仕方ない。
「ぁ、あ、ああ! あぁんっ!」
びくっと体をのけ反らせて、魔理沙が声を掠れさせてぶるりと震える。
今までで一番大きな反応、達したようにもみえるそれ。
それを為したという満足感が私の胸に満ち、堪えきれず笑みが浮かぶ。
「ねえ、イっちゃったの?」
「い、イく……?」
なんと幼い人間なんだろう。
何もしらない無垢な新雪を踏み荒らすような、楽しさと下劣な満足感が満ちていく。
疲れ切ったように息を荒くつき、目を半分閉じながらぼうっとしている魔理沙を見下ろしていると背筋がゾクゾクと震える。
「うふふふふ……!」
「ぁ、……ま、まってぇ……し、しんじゃうぅ」
可愛らしい反応を返すこの子が悪いので、私も自分が満足するまでその体に欲望をぶつけていく。
より強く腰を押し当てて、より激しく上下に動く。
「は、あはっ! はぁっ、ねえ! 魔理沙、気持ちいい?」
「~っ……ぁ……! はっ……! ま、やっ……とめっ…ぇ!」
止まらない。
魔理沙が可愛すぎて、もう止められそうにないっ!
「はあ、はっ! ねえ! イキそう? もうダメ? また、イっちゃう?」
「ん! あぁんっ……だ、だめ……! も、イクっ……! イっ!!」
脳内で電撃が弾け、深く強い痺れが全身を駆け抜けた。
ぱちぱちと目の周りの景色が爆ぜ、眩しく感じながら魔理沙を見下ろす。
目をぎゅっと瞑り、私に縋り付くようにして全身でしがみついているその子を視界に収めながら、再びキスをして咥内を舐る。
あぁ、ダメだ。
まだまだ足りない。
息も絶え絶えの様子の魔理沙を見下ろしながら、ぐったりと脱力するその体を抱きながら。
あとからあとから欲望が生まれて、どんどんお腹がすいてくる。
人間なんだから、あんまり無理させちゃダメ。
冷静な自分が警鐘を鳴らす。
でも魔理沙が悪いんだよ。
こんなに可愛らしい反応するんだから、これって狙っているよね?
「フラン。もうそこまでよ」
肩に手を置かれて、ふつふつと湧く黒い欲望を心に抑えて振り返る。
涼し気に取り繕いながら、しかし姉妹だからわかる、その目にグツグツと欲望を煮え滾らせたお姉様が、私を諫めるように肩に置いた手でぐっと力を込める。
邪魔だな。
沸騰しそうな頭がその手を振り払いそうになるが、お姉様の目を見ていると心が落ち着きを取り戻してく。
「まったく。パチェとの話し合いの間に、すっかりやられたわね」
隠そうともしない苛立ちで、いつもよりも余裕がなさそうにしているお姉様。
そのままぐったりと動かなくなってしまった魔理沙に毛布を掛けてやり、私にもバスタオルを投げてくる。
「薬で前後不覚の相手を手籠めにするなんて、誇り高い吸血鬼のすることじゃないわよ」
「けどお姉様。魔理沙が……!」
あんまりに魅力的で、本能を抑えるのだって本当に大変だったのだ。
このまま血を吸ってしまいたくなる衝動と、壊してしまいたくなる衝動。
それらを抑えているだけでも褒められるべきだと思う。
「わかっているわ。だけどこれ以上はダメ」
きっぱりと言い放ち、魔理沙の全身を毛布で包んであげて、それを大事そうに抱える。
私も冷静になった頭で、これ以上は難しそうだと、優しいお姉様の忍耐の限界を感じて引き下がる。
「私たちは獣じゃないの。人間を伴侶とするなら、どれだけでも自分を犠牲にする覚悟をしなさい」
厳かに言い、翼を広げて浮き上がるお姉様。
そういう姿を、もっとたくさん魔理沙に見せてあげたらいいのに。
いつも変な笑い方して、それがカッコいいとでも思っているんだ。
魔理沙を館に招待しながら、隣に座ることすらできない臆病なお姉様。
すこし怖がられていることに落ち込みながら、なんとか距離を詰められないか、四苦八苦しているその姿は普段の威厳なんてない。
だからこうして、私にとられちゃうのに。
「とにかく、これ以上は本当に駄目よ。パチェに記憶を封じさせ、今日の事はなかったことにする」
「え~、そんなぁ! 記憶を消すなら、お姉様もすこしくらい楽しめばいいじゃない!」
「私を甘く見ないで」
滾る暴力的ともいえる魔力を内に隠しながら、大事に大事にその羽で魔理沙をそっと包みお姉様が威厳たっぷりに言う。
「私はきちんと私の魅力で、合意の上で魔理沙といちゃいちゃラブラブえっちをするんだから」
ずっと鼻から血を流す幼い姉を見ながら、私はため息を吐いた。
理想だけは高いんだから。
レミフラマリ……?
※予告詐欺注意