東方銀翼伝 side story ~轟アズマ争奪戦!~ 作:命人
俺はこの宴会の夜の間に何回達したのだろうか? そしていくら達してもまるで収まることのない「異変」。本当にこのまま続けて異変は終わるのだろうか?
「ゼエゼエ……」
白蓮と紫と幽々子というそうそうたる面々相手にまぐわい続け、流石の俺にも疲れが見えてきた。
もともとお酒が飲めないのに無理やり飲まされていた白蓮は既にダウンしており、服を着せられたうえで命蓮寺で寝かせられている。紫が言うには「目覚めた頃には覚えてないだろう」とのことだが……。
相変わらず「異変」は自己主張を続けており今も元気な紫と幽々子を俺は相手している。
「さあ、今度はどんな方法で搾りだしましょうか? やっぱりさっき断られたけど、私が生やしてアズマを後ろからトコロテンのように押し出すことで……」
「それは絶対嫌!」
押し問答を続ける紫と俺を無視して俺の周りでクンクンと鼻を嗅ぐ幽々子。
「うーん。体液の媚薬化はまだ治ってなさそうねぇ。さっきも言ったけれど、これを治さないと周りの子が大変なことになってしまうわ? だから……」
こちらの疲労などお構いなしにまたしても迫ってくる紫と幽々子。せめて少し休ませてくれと逃げようとした矢先、遠くから鋭い声が響き渡る。
こちらを小馬鹿にするようなものでもなく、甘ったるいものでもない凛とした声が。
「騙されないで!」
蜜のように甘ったるくてネットリした空間を引き裂いたのは凛とした声。夜空の月をバックに大きな弓矢を構えるのは永遠亭の院長である永琳であった。
「話はウドンゲから聞いたわ。アズマはその二人に騙されているのよ! 何度か射精したところで体液のフェロモン化は全然収まらないわ」
ええっ、そうなの? 急にそんなこと言われても混乱してしまうが、誰よりも事情を知っているのは永遠亭のドクター達。俺はこちらの言うことを信用したい。
「やっぱりおかしいと思ってたんだ。お前ら、俺をハメやがったな!?」
「違うわよぉ。ハメたのはアズマ君のほうじゃない。あんな情熱的に……きゃ~♪」
「お望みならば私がアズマをハメることも可能だけれど……」
「だまらっしゃい!」
だが、どうして永琳はこちらに弓を向けているのだろうか? 俺がそう疑問を抱くということは永琳も予見していたのか、すぐに説明が入った。
「特製の弾幕矢に中和剤を仕込んであるのよ。この薬で体液のフェロモン化は収まるわ。今から飛ばすからそれに当たりなさい。大丈夫、痛みは普通の注射レベルだから」
痛いのは嫌だが恐らくこうやって邪魔が入ることを予見しての処置なのだろう。これなら遠くから投薬できるし。
「分かった、この二人が黙って見ているだけとはとても思えない。サクっとやってくれ」
俺の反応を見て永琳はサムズアップすると、傍らで一緒に浮遊していたウサミミの少女に割と無茶な指示を出す。
「ウドンゲ、あの二人を相手して注意を引きつけて頂戴」
「あの二人ってまさか……ええっ!? お師匠様、無理無理無理無理!」
まあまず弾幕では勝てないだろう。実力者が二人がかりだし、この二人は妙に息ぴったりだし。
「元をたどればウドンゲが食べ合わせの悪い物を患者さんに食べさせてしまったのが……」
「だってアレはアズマが勝手に食べ……うぅ、わかりましたよぉ」
しぶしぶと二人に弾幕勝負を挑む鈴仙。案の定すぐに劣勢になったが、永琳が処置をする時間はできた。
「他の邪魔が入らないうちに済ませましょう。よーく狙って……」
痛みが少ないとはいえ矢で貫かれるのだ。鈴仙が稼いでくれた時間の間に服を着こむと矢を受ける態勢に入る。怖いので両目を固く閉じつつ……。
そしてシュッと矢を射る風の音がした。ああ、これで元通り……!
中和剤入りの矢に貫かれ、すべてが元通りになる筈であった。鈴仙の捨て身の囮作戦(紫と幽々子にもうボコボコにされてた)、永琳の必死な治療をもってしてこの忌まわしき異変が収まると誰もが思っていた。だというのに……。
「なっ、コンパク!?」
だが、実際にはそうはならなかったのだ。誰が予想できたであろうか、このような事態に陥ってしまうとは。
「……!」
どこからか真っ白い霊魂が俺の目の前に浮遊すると、妖夢の姿を取る。そのまま小さな剣士の姿をした霊魂が永琳の放った矢を切り伏せてしまった。
鬼の形相で月の頭脳を睨み付ける元半霊。彼女の目には俺が永琳にトドメを刺されそうなっているように見えたのだろう。
普通ならファインプレーなのだが、今回ばかりは事情が違う。だが、彼女にその真実を知るすべがないので責めようがない。しかし放っておくわけにもいかないだろう。このままでは余計な戦闘が始まってしまう。
「やめるんだコンパク。永琳は敵じゃない!」
抜身の刀を手に飛翔するコンパクは永琳に斬りかかる。それをゆらりゆらりと回避していくとレーザー主体の弾幕でコンパクの動きを封じた。ハニカムの中に囚われたコンパクは動けぬまま魔力切れを起こして元の半霊の姿に戻る。
「はぁはぁ……。ウドンゲもあれくらいガッツがあればいいんだけどね……」
「ごめんなさい……」
「まあいいわ。念のため中和剤はもう一つ用意したから」
次こそはと弓を構えてる月の頭脳。よし、来るなら来いと今度は目を見開いて待つ……が、肝心の矢を取り落してしまった。永琳が吹き飛ばされた雛とぶつかって手元が狂ってしまったようなのだ。
「な、何事……?」
彼女の視線の先には満面の笑みを浮かべ、日傘を雛に向ける幽香の姿があった。
雛に続いて衣玖も吹っ飛び、地面に膝をついていた。あの二人を倒してしまったのだろうか。
「話にならないわね。二人がかりだというのにその程度?」
うずくまる二人になおも日傘を向けている。その真っ白い得物が白く発光した。マスタースパークの前兆……!?
俺がたじろいでいると雛が転がり込んでくるように俺の片腕に抱き着いてきた。
「本当の目的を忘れてはダメよ? いくら弾幕ごっこで優勢でもアズマ君をゲットできないと無意味なんだから。それに、これじゃあ攻撃できないでしょ?」
ギリと歯ぎしりの音を立てながら幽香は日傘を降ろした。あんな極太レーザー撃たれたら俺まで黒焦げである。一方の雛は勝手に腕を組むと満面の笑みで俺をどこかに連れ出そうとする。いつの間にか反対側にはリュウグウノツカイの妖怪もいた。
「さあ、貴方の体をむしばむ『異変』を追い出しましょう? 大丈夫、今度も優しくするから」
「これは良い空気ではありませんね。私も付き添ってちゃんと『異変』が解決できたかチェックしましょう」
そうやってフリルな二人に連れ出されようとするが、その二人の目の前に立ちはだかったのは紫と幽々子であった。
「貴女では危なっかしいわ。さっきから異変だの悪霊だのって言っているけれど、本当のことなんて何も知らないでしょ?」
「そういうわけだからアズマ君は私たちに任せなさいな」
唖然とする雛から引き剥がされた五大老のお二人に優しく抱き止められる。仮にも一度屈服した相手。先ほどの蜜のような出来事がフラッシュバックして顔が紅潮する。
「なんてこと! 轟アズマのフェロモンでみんなおかしくなっているのよ! 早くさっきの矢を回収して彼を助けてあげないと。ウドンゲ、動ける?」
幻想郷きっての実力者二人を一度に相手した月のウサギである。一人を相手するだけでも命がけなのに、二人同時となれば当然満身創痍だ。力なく地面に突っ伏しているのは俺も見た。永琳はガクリと肩を落とすと腰をかがめて落とした中和剤入りの矢を探し始めていた。な、なるべく早くして……。
幽々子に抱かれて桜色に包まれる意識。しかしその桜色は地獄の太陽によって引き裂かれてしまった。お空が太陽型の弾幕をこちらに放ってきたのだ。
「ナデナデもっとしてもらうのー!」
そんな地獄鴉の暴走を引き留めんとサトリ妖怪も降りてくるようにと喚いているが聞く耳はないようである。
「さとり様も待ってるよ。いーっぱいナデナデしてほしいな」
やっぱり幽々子から俺を奪い取ると地上に降り立ちさとりに差し出そうとする。
「だ、駄目よお空。轟アズマが迷惑がっているわ。好きな人ならなおさら困らせては……あ、あれ? 今好きな人って……」
さとりが頭を抱え始めた。次第に俺の周囲が騒がしくなってくる。遂には閻魔様までやって来たではないか。
「何ですかこれは! 宴会とは建前で少女を侍らせて酒池肉林とはなんという腐った根性の……」
「だぁー、俺に言われても困る! 全部異変の仕業だっての!」
「ええい問答無用! 貴方はしっかりと油を搾る必要があるようですね。みっちり説教しますからこちらへ……」
しかし俺はまた閻魔の説教を回避できそうだ。目の前の地面がポッカリと穴が開き、あの青娥がニタニタと薄ら笑いを浮かべながら閻魔を見ていたのだ。
「あらあら、アズマ君と二人っきりで朝まで『大人のお説教』? くすくす……。でも、それって職権乱用ですわね。そうは問屋がおろしませんわ」
青娥の発言を受けて恥ずかしさからか、怒りからか顔を真っ赤にする閻魔様。
「普通の意味のお説教ですっ! 貴女のようなふしだらな女と一緒にしないで下さい!」
青娥は相変わらずニタニタと薄ら笑いを浮かべている。映姫も痛いところを突かれて動けないでいるようだ。おいおい、まさか本当に「夜のお説教」をやるつもりだったのか?
そんな疑念を検証する間もなく、空から轟音が響いてきた。見上げるとガントレットの
「ですから
「彼の、アズマさんのピンチなんです。私一人ではどうにもならないので何とかしてください。奇跡、魅せてください!」
フラフラとしながら風祝と門番が近寄ってくる。
奇跡と言ってもこれだけ集まった少女を無力化する奇跡などどれだけ大がかりなものになるのやら……。
「騒がしすぎます! いったい何が……ええっ!?」
そしてここに来て白蓮が復活した。動機は違えど誰もが俺をゲットしようと躍起になっているのだ。今は睨み合いが続いているが、非常にピリピリした空気であることは言うまでもない。
「ちょっとアズマさんっ! これだけの女性を口説いたのですか? 貴方という人は……南無さ……」
「全部異変のせいなんだよ。俺も被害者の一人だ!」
「えっ、それってどういう……?」
やはりまぐわっていた時のことを白蓮は覚えていないようなのだが、更に悪い状況を見られてしまった。
そんな彼女が姿を現したのがすべての引き金となった。睨み合っていた少女達は俺を獲得するために弾幕で弾幕を洗う仁も義もない争いの渦中へと巻き込まれていった……。
そんな中、当事者たる俺は……。