※この作品はR-18です。

東方銀翼伝 side story ~轟アズマ争奪戦!~   作:命人

3 / 12
 鬼に絡まれ、天狗の弾幕ごっこに巻き込まれた末に地霊殿のお空とさとりに助けられたアズマ。

 お空の無邪気だがとんでもない一言で妙な空気になってしまうも、さとりの「第三の目」のおかげで事なきを得る……。


Chapter3 ~白と黒と紅~

 さて、鬼に説教されるわ天狗にさらわれそうになるわ地霊殿に婿入りさせられそうになるわとかなり絡まれてしまった。やはり俺一人で見回るのは無理があったのだろうか。

 

 そう不安になっていると。間抜けな悲鳴というか泣き叫ぶ声が聞こえてきた。何事かと思い声のする方へ近づいてみると……。

 

「まったく貴女はサボってばかりで……くどくど……。そう、貴方は少し……ぐちぐち……ねちねち……」

 

 うへぇ、閻魔様だ。きっと説教の最中なのだろう。内容から察するに相手は死神だろう。巻き込まれたくないから見なかったことにして立ち去ろうとしたが……。

 

「まったく小町ときたら……その大きな胸は飾りなのですか?」

「ふぇーん! 人違いですよ閻魔様~!」

 

 いやいやいや! よく見ると美鈴じゃん。映姫様ってば関係ない人を説教しているじゃん! 閻魔様ともあろうお方が人違い!? いくら長身でグラマラスで赤毛でサボり癖があるからって小町と美鈴は別人である。これでは関係のない美鈴が不憫だ。

 

「ちょっとちょっと、相手を間違えていますよ!」

 

 遮るように俺は映姫に説教を止めるようにと要求する。思わぬ邪魔が入り顔をしかめる閻魔様。

 

「おや、誰かと思えば今回の宴会の主催者ではありませんか。わざわざ寺で酒池肉林の乱痴気騒ぎを起こすとは、やはり妖(あやかし)と寝食共にする人間というものはロクなものが……」

 

 わわわ、こっちに説教の対象が移ったぞ。面倒くさい!

 

「そう言う閻魔様だってこの宴会に来ているではありませんか」

「監視の為です!」

 

 そう言う割には周囲には空の酒瓶が相当な数転がっている。恐らく彼女が飲んだのだろう。こんな状況で宴会の監視などおかしな話である。ここで映姫が誰と卓を共にしているかを確認してみよう。何か真相が見えるかもしれない。

 

 ええと……まず目に入ったのが天人の天子。ああ、確かに説教することが多そうだな、納得。そして見知った顔のぬえ。こいつも説教の餌食になりそうなタイプだな、納得。なるほど、確かに問題児っぽいのが揃っている。

 

 そして今しがた捕まっていた美鈴。どうやら宴会の席で説教したい奴を呼び出して回っているようだ。正直はた迷惑な話であるが、きっと彼女も普段の仕事が忙しすぎてストレス発散させているところなのだろう。

 

 だが、あからさまに人違いな美鈴だけは助けてやらなくては。小町がどこにいるかは分からないが、相手は酔っぱらい。何か隙を見せるはずだ。

 

「それじゃあ、あちこちに散乱している空っぽの酒瓶は何なんですか?」

 

 痛いところを突かれて一瞬表情がこわばる映姫。しかしすぐに平静に戻るとツカツカとこちらに迫ってくる。

 

「さっきから人の揚げ足取りばかり。これが飲まずにやっていられますかっ!?」

 

 逆ギレ!?

 

「そう、貴方は少し屁理屈が過ぎ……」

 

 だが、閻魔さまのありがたい説教は聞けずじまいだった。更にこちらに詰め寄る映姫は転がっていた酒瓶に足を取られてすっ転んでしまったのだ。素面の閻魔様ならこんなことまずありえない。今が好機と後ろでアワアワしている美鈴の手を取りこの場から脱走した。

 

 

 

 逃げるとはいえここは宴会の席。狭い道を二人で抜けるのだから思ったよりも速度が出ない。それにただ転んだだけの映姫はすぐに起き上がるとズンズンとこちらに迫って来たのだ。

 

 それでも俺は美鈴の手を引いて前へ前へと突き進む。だが、このままでは捕まるのは時間の問題。

 

「不当な裁きは絶対に受けさせない!」

 

 いよいよ腕を伸ばせば捕まってしまうまでに追い詰められた俺は、美鈴を庇うようにズイと前に出ると、真っ直ぐ酔いどれ閻魔を睨みつける。だがそんなもので彼女が怯むはずもなく、こちらを捕縛せんと腕を伸ばしてきた。もはやこれまでか……。

 

 いや、俺の体は高く跳躍した。俺の意思とは関係なく。いったい何が起きたのかと、周囲を見渡すと、なんと美鈴が俺を抱きかかえて大ジャンプをしていたのが分かった。

 

「二人とも黒です! 降りてきなさいっ!」

 

 手にしていた棒状の道具を(確か罪の数だけ叩く的なアイテムだった筈)象った弾をこちらめがけて数発飛ばしてきた。ブンとうなりをあげて撃ち込まれた弾。対応できない……!

 

「はいっ、はいっ、はいーっ!」

 

 それらを拳や脚技で弾き飛ばしていく。俺は美鈴のことを居眠り癖のある呑気な門番くらいにしか認識していなかったが、その考えは改めるべきであるとひしひしと感じた。頼もしいし、何よりもカッコイイ!

 

 全ての弾を迎撃すると再び俺を抱きかかえてまるで忍者のように跳躍しながら閻魔から逃げ切った。

 

 気づくと宴会会場を少し離れてしまったが、ほとぼりが冷めるまでここで身を潜めておこう。まともにジャッジできていない閻魔様のことだ、じきに俺たちのことなど忘れて他の奴の説教に入るだろう。ちゃんと回らない呂律で。

 

 大きめの木がデンと1本だけ立っており、ゼエゼエと息の上がっていた俺達はそこで息を整えることにした。どういうわけか美鈴は俺を抱っこしたままで。後頭部に柔らかくて大きいのが当たってるんですけど……。

 

 俺はそのことを注意してその両腕から離れようとしたが、その腕がわずかに震えていることに気が付いた。本調子ではなかったとはいえ、相手は門番などよりもずっと格上の相手。恐怖するのも無理はない。

 

 俺は震える彼女の手を取り、優しく心を込めて声をかけた。

 

「貴女の勇気ある行動に感謝する。おかげで助かった、ありがとう」

 

 武人のそれといった感じでキリリと引き締まった表情の赤毛の少女は、そうやって優しい言葉を投げかけられたと同時に顔の筋肉から一気に力が抜けたようだ。

 

「あー、怖かったー。でも無事に逃げきれてよかったですね♪」

 

 だがそれは恐怖に打ちひしがれるものではない。あくまで自分は何ともないと言わんばかりに笑顔を見せてくれたのだ。ただ軽そうに「怖かったー」と口にするだけで。

 

 なるほど、彼女は門番。何かを守ることに関しては特に秀でているのだろう。さすがに相手が悪くて恐怖を感じてはいたようだが。

 

「でもまだ心臓がバクバク言っているんでしばらくこうさせてくださいね? こうやって抱っこしてると落ち着くんです」

 

 平静を保てるというのなら仕方あるまい。彼女には恩があるんだから。

 

「無理しないで。相手が悪すぎたんだ、本当は怖かったんだよね? でも恐怖に打ち勝って決意してくれてよかったよ。あと少し判断が遅れていたら……」

 

 今もまるで抱っこされている大きなぬいぐるみみたいに、その両腕に抱かれている俺。彼女の為とはいえちょっと気恥ずかしい。やっぱり頭に当たってるが多分本人は気付いていない。

 

「アズマさんが必死になっているのを見ていたら、私も何かしないとって思ったんですよ。それに昔のことを思い出しちゃって」

 

 昔の話? 俺がそのことを詳しく聞こうとする前に彼女は頭を撫でながら続けてくれた。

 

「今でこそ容赦ない感じでナイフを投げつけてくる咲夜さんですけど、小さい頃は本当に可愛らしかったのですよ。まるで私に妹が出来たみたいでした。いつだったか、『私も門番やるー』って言って私と一緒に立っていた時も、まるで私を庇うかのように立ち塞がるなんてこともありました」

 

 今の門番とメイド長の関係を見ているととても想像できないが、これだけ懐かしそうに語っているのだし、確かに過去はそうだったのだろう。

 

「アズマさんが身を挺して私を庇ってくれた時にそのことを思い出しちゃって、それでキュンとしちゃったんです。『この子は何があっても守り通さないと』って」

 

 愛おしさからか、さらにぎゅーっと抱きしめてくる。頭もナデナデされてもう完全に子供扱いだ。だからそんなにしたら胸が押し付けられて……。

 

「今度は弟が出来るってのもいいですね」

「いや俺には……」

「ふふふ、冗談ですよ。でも、もしも気が変わったときにはいつでも私のところを訪ねてくださいね。私、門の前でいつまでも待っていますから」

 

 門の前で立ち続けるのは待ち人を待つからじゃなくて不審者を追い払う為だろうに……。そう指摘しようとしたが、答える返事は何もなかった。

 

「ふわわ、それにしても安心したら眠たくなっちゃいました。すぅ……すぅ……ZZZ」

 

 滅茶苦茶なこと言うだけ言って俺の頭を枕にして寝息を立て始めた。寝ながらも頭をナデナデする手は止まらない。相当気に入られてしまったようだ。

 

 随分と幸せそうに眠っているしあんまり邪魔はしたくないが、このままでは俺もここを出られない。仕方ない、満足して解放するまで俺も待つか。いい「枕」も後頭部にあるし俺も一眠り……と思った矢先、彼女の雇主がひょっこりと現れた。飲み過ぎて夜風にでもあたりに来たのだろうか?

 

 俺を抱っこして寝息を立てている美鈴を見つけてこの幼い吸血鬼は相当驚いているようだ。

 

「どこにいるの美鈴……って、どんな状況よ!?」

「あー、責任者の方ですね。実はかくかくしかじか……」

 

 眠る美鈴に背中から抱き付かれながら、ありのままの出来事を話すとレミリアはやれやれと頭を抱える。

 

「つーかアンタも実はまんざらでもないでしょ? 顔がにやけているわよ? ったくブツブツ……」

 

 両手を胸のあたりに垂らす(カリスマポーズというらしい。本人はこれがカッコいいと思っているらしい)と不機嫌そうにしている。

 

「ま、まあ否定はしないけどさ。でもいつまでもここにいるわけにはいかないんだ。というわけで……」

 

 すっかり眠りこけて力のない腕を俺はスルリと抜け出すと、レミリアの背後に回り込み、空いた「美鈴ベッド」に強引にねじ込んだ。

 

「ど、どういうつもりよ!?」

「一応ここは会場の外だしさ、彼女が起きたら宴会会場まで連れてきて欲しいんだ。保護者でしょ? 安心しな、寝心地は俺が保証する」

 

 これだけ騒いでいても美鈴は起きる気配がない。さすがだぜ……。

 

「そう言う問題じゃ……ってうわぁ! よだれ垂れてるし、その凶器を顔に押し付けるのは……」

 

 何か修羅場になってるが、あとは保護者に任せよう。俺は見回りを続行する!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。