元いじめられっ子TS美少女ぼく、ぼくをいじめていた一軍イケメン男子が雑魚ちんぽだと知り、(性的に)いじめ返すことを決意する 作:虫野律
TS(transsexual)してTS(to sadistic)したプロローグ
「ぎゃははは」
「マジでオナるんかよ、きんも!」
上月はぼく──
「おいおいひでぇな!」上月のグループの男子が言った。にやにやとした笑みを浮かべている。「お前がやらせてんだろ」
「そうだったか?」上月は、全裸で床に正座して必死にペニスを
ぶっ、と別の男子が失笑するように噴き出した。ぺちっとぼくの顔に彼の唾が掛かった。
思わず手が止まった。ぼくはうつむき、悔しさと屈辱で唇を噛みしめた。
しかし上月は、ぼくの髪を乱暴に掴んで無理やり顔を上げさせた。目の前に心憎いまでに整った憎い顔があった。
「なぁ、そうだよなぁ?」上月は嗜虐的な目をしていた。「お前は人に見られたほうが興奮する変態だもんなぁ」
「……」答えられずにぼくが口をつぐんでいると、
「返事はどうした」上月のドスの利いた低い声が言った。
ぼくの体がびくりとおびえた。
こえー、と楽しげに茶化す声が飛んだ。
「……そうです、ぼくは人に見られて興奮する変態です」そう言うほかなかった。
ぼくはいじめられっ子だ。上月のグループやほかの一軍の子たちだけでなく二軍からもいじめられている。臆病で言いたいことを言えない性格と不器用でいろんなことが上手くできない無能さのせいだとぼく自身は思っているけれど、真相がどうなのか正確なところはわからない。
ただ、上月はぼくが射精するまで許してくれないということははっきりしていた。
はぁ、もう死んじゃおうかな、こんな人生に意味なんてない。
何とか事を終えて帰宅したぼくは、ベッドに倒れ込んでほんやりとそんなことを思っていた。
死にたい。死んで解放されたい。
スクールバッグに視線をやった。ペンケースにはカッターナイフが入っている。それで頸動脈を裂けば、すぐに自由になれる……。
けれど、そんな度胸もなかった。自分を慰めるために考えてみただけ。
気がつけば、日付が変わっていた。スマホは午前零時二分を表示している。寝入ってしまっていたらしかった。
ぐぅとお腹が鳴り、空腹を感じた。
「ははっ」
自嘲の笑いが
「あー」
と声を出してみて、「……」すぐに閉口した。
ぼくの声は男子高校生の平均的な高さだったはずだ。しかし、今自分の声帯から聞こえてきたのは、やや鼻に掛かったような甘く高い女子の声だった。
「何だこれ……」という困惑もやっぱり女の子のものだった。「喉の病気かな」と最初は思ったのだけれど、まさかね、という予感を否定するために胸に手をやると、温かい水風船を潰すような感触がした。むにゅっとしていて、とにかく柔らかい。だけど、弾力もある。そして、結構でかい。
さぁー、と血の気が引いていくのがわかった。夢だよね、と思おうとするも五感は明瞭で、その可能性は低そうだった。
ぼくは洗面所に駆け込んだ。鏡には見知らぬ少女が映っていた。艶やかな黒のボブカットの、小柄なのに胸だけは大きい小動物めいた雰囲気の美少女だった。
「嘘でしょ……」
翌朝、女の子になってしまったことを両親に伝えると、「へぇ、TSしたんだ」「くだらんことで話しかけるな」と、まるでTSが何てことのない割とよくある現象であるかのような反応をされた。
ぼくは混乱した。そんな常識知らない。初耳すぎる。
女子用の制服なんて持っていないので、この日は体操着で登校した。
学校でも同じような扱いだった。「TSなら仕方ないですね。女子用の制服が用意できるまでは体操着でいいですよ」と担任の数学教師、
数日が経ち、ぼくへのいじめがなくなっていることに気づいた。
クラスメイトとは、仲良しこよしというわけではないけれど、適度な距離感というか、特に仲が良くも悪くもない他人同士の常識的な関係になっていたのだ。
これが美少女の魔性なのか、みんなから一目置かれているのは感じていた。
けれど、今までのことがあったから急にちやほやするのも
ぼくとしては、いじめがないだけでも生活のしやすさが段違いなのでTSにはそれほど不満はなかった。童貞のまま女の子になっちゃったことは少し悲しいけれど、総合的にはプラスである。女の子の体にも生活にもそのうち慣れるだろうとおおらかに構えていた。
しかし、TS美少女となり三週間が経っても慣れないことがあった。
それは女子更衣室である。ぼくの中では女子更衣室は禁忌そのもののような場所で、いると落ち着かないのだ。けれど、そういう人に限って着替えなければならない状況になるもので、というのも、教室の自分の席──入り口の近くだ──で昼ごはんを独りで食べていると、色素の薄いポニーテールがよく似合う一軍女子、
「わっ、冷たっ」砂糖たっぷりのピンク色の液体のように甘い声でぼくは、思わずそう言っていた。
「あっ、やばっ」朝比奈は気まずそうに頬を歪めながら言った。「ごめん!」
ぶつかった男子も、「わりぃ」と謝ってきた。
以前だったらわざとだと迷いなく判断していたけれど、今はそうでもない。
「いいよ、大丈夫」
元より争い事の苦手なぼくは、愛想笑いを浮かべて答えた。
と、何やらむずむずする感覚があった。その理由はすぐにわかった。男の子たちの視線がぼくの胸に集まっていたのだ。
ああ、と察した。しとどに濡れたブラウスが張り付いていて、Fの65とかいうサイズの、こっそりと立派なお山の形がはっきりとわかるようになっているからだろう。もちろんブラはしているのだけど、それでも十分に官能的だった。原因である男子も鼻の下を伸ばしている。
中身は男のままだからどうということはない、というか気持ちはよくわかるのだけど、ぼくの腕は反射的にさっと胸を隠していた。
「着替えてくるっ」
食べかけのお弁当に片手で蓋をして席を立った。
で、体操着片手に向かったのは、くだんのメスくさい禁断の花園──ではなく旧音楽室だった。ここなら滅多に誰も来ないだろうし、心穏やかに着替えを済ませられる。
とはいえ、広々とした空間で半裸になるのは抵抗があったから、旧音楽室からドア一枚隔てただけの音楽準備室という名の物置で着替えることにした。
ぼくが少年漫画のヒロインだったらここはラッキースケベイベントをこなさなければならないのだろうけれど、どちらというと少年まんこのぼくにはそんなありがたくない義務はあるはずがない。
と油断していたのがよくなかったのか、あるいはマーフィーの法則は世の本質を
どくん、と心臓が跳ねた。キャミソールを握ったまま胸を押さえ、耳を澄ました。
足音から判断して、入ってきたのは一人らしかった。そろりとドアに近づき、くすんだ小窓から覗き見る。
そこにいたのは、食堂でお昼ごはんを食べているはずの上月だった。彼もアクシデントに見舞われたのか、着替えをしに来たようだった。学生服のズボンを下ろしていた。
えぇ……。
ぼくは天を仰ぎたい気持ちになった。
これは俗に言う逆ラッキースケベというやつではなかろうか。まったくうれしくない。体が女の子になったといっても、男の子の体、たとえそれが美男子のものであったとしても興奮したりはしない。恨みしかない上月のものとなれば、なおさらだ。
こっそりと溜め息をついて目を離そうとし──しかしその時、ぼくのぱっちりお目々に驚愕の光景が飛び込んできて視線が釘付けになった。
「え、ちっさ……」
パンツをも脱いだ上月の股間にあったそれ、そのサイズのあまりの小ささについついそうつぶやいていた。
下向きだったから勃起してはいないのだろうけど、親指の先ぐらいしかなかったのだ。TS前のぼくの三分の一もない。
上月は、ぼくに見られているとは知らないはずなのに恥ずかしそうにそそくさと予備らしきパンツに足を入れた。
その瞬間、ぼくの脳裏にある考えがひらめいた。
──そうだ、上月に復讐しよう!
体の芯、お腹の奥のほうに、今まで生きてきて経験したことのない波打つ収縮を感じ、甘く痺れる戦慄がぼくの華奢な体を駆けた。
「はふぅ……♡」やけに湿った熱い吐息が洩れた。
あいつの泣き顔が見れるかもしれないと思うとぞくぞくとした甘美な快感が背筋を這い上がってくる。
「ふふ……」口角が吊り上がる。
込み上げてくる情動に従ってぼくは、旧音楽室へと続くドアを勢いよく開けはなった。