【R-18】TSホビアニ転生 作:Whatsoon
「ん……?ここは?」
私は目を擦りながら、顔を上げる。
金属製の床に転がり、意識を失っていたようだ。
床の触り心地は……なんだか、あの頃の研究室のような肌触りだ。
……知らない場所だ。
周りを見渡し……隣に誰かが倒れている事に気付いた。
見覚えのある姿、ヒイロだ。
私は自身の身体に怪我がない事を確認して、立ち上がり……ヒイロの側に歩み寄った。
そして脈拍と呼吸を確認し、ただただ寝ている事に安堵の息を吐いた。
「……はぁ。ヒイロ、起きて」
そして、寝ているヒイロを揺すった。
「んぅ……あ、あれ……?ニーナ?」
少しずつ覚醒していったようで、ヒイロが目を擦りながら上半身を起こした。
寝ぼけたような顔で周りを見渡し……少しずつ表情が険しくなっていく。
「……あ、あれ?ここ、どこ……?」
「……さぁ?私もさっきまで寝ていたから」
部屋から得られる情報を整理する。
広さは、学校の教室の半分ぐらいか。
一人で寝るには大きすぎるベッドが置いてある。
洗面所らしき物もある。
……用途不明の部屋だ。
そして、ドアは一つ。
左右に開くタイプらしき、金属製の自動ドア。
私はそれに近付き……センサー類がない事に気付いた。
「……チッ」
私は舌打ちをして──
「え?ニーナ?ちょっ──
自動ドアの隙間に指を突っ込んで、無理矢理開こうとする。
私は素手で鉄の板を曲げられるほどの力がある。
しかし……ビクともしない。
歪む音すら鳴らないし、非常に堅牢だという事が分かった。
「な、何してるの……!?」
「いや、脱出しようと思って」
「脱出って……あ、そうか……ぼ、僕ら誘拐されたのかな?」
「多分」
諦めて、私はドアから離れる。
閉じ込められた、にしても……これは……何が目的なんだ?
身代金目的……なら、私に家族はいないし。
悩んでいると──
「……ニーナ、あれ。何か書いてないかな」
「む?」
ヒイロが指を刺した方へ、視線を向ける。
ドアの上に文字の書いてあるプレートが貼ってある。
そこには──
【キスしないと出られない部屋】
と書いてあった。
その内容に気付いたヒイロが呆然とした表情を浮かべた。
「……え、キス?な、なんで?出られないって……ど、どういうこと?」
ヒイロは分かっていないようだったが……私は頭を抱えた。
この世界はホビーアニメ、カードゲームの世界だと思っていた。
だが、ここは……そうなのか?
エッチな創作の世界なのか……?
◯◯しないと出られない部屋。
それはR-18創作ではよくある設定だ。
だが、まさか、そんな……ここが、そんな世界だとは。
だがしかし、頭を抱えてばかりではない。
安堵の息を吐いた。
『そういう』世界なら、命の危機はなさそうだ。
適応力が高いのが、私の取り柄なのだ。
それに不幸中の幸い、この部屋は『キスしないと出られない部屋』。
そんなにハードルは高くない。
「ヒイロ」
「え、なんっ──
ちゅっ♡
唇を重ねた。
ヒイロの目が驚愕に開かれる中……ドアが開いた。
「よし、開いた」
「なっ、なな、なっ……なっ!?」
ヒイロが慌てた様子で自分の唇に指で触れて、そして私を二度見した。
何かショックを受けた様子で……あ、いや、そうか。
「ごめん、ヒイロ……勝手にしちゃって」
「え」
「嫌だったよね」
好きでもない異性に無理矢理、それも不意打ちでキスをされたんだ。
ショックを受けても仕方ないだろう。
私は別に構わない。
確かに、進んでキスしたいとは思わないが。
ここから出るためならば仕方ない、と納得できる。
しかし、ヒイロは違う筈だ。
もっと、前もって説得しておくべきだったか──
「そ、そうじゃないよ!嫌じゃ……嫌なんか、嫌じゃないけど……」
それは私に罪悪感を抱かせないための発言だったか。
「……まぁ、とにかく出よ」
「そ、そうだね……」
少し気まずく感じながら、ヒイロと共にドアを出る。
そこには真っ暗な空間が広がっていて──
◇◆◇
「んぁ……?」
また、目が覚めた。
だが今度は見知った部屋、見知った天井だ。
ヒイロの家……そして、私が借りている部屋か。
「……?」
私は後頭部を掻きながら、身体を起こす。
ベッドの上、寝巻きを着ている。
時間は……朝。
記憶している昨日から、日にちが1つ進んだ朝だ。
寝ぼけた目を擦りながら、私は立ち上がった。
……夢だったのだろうか。
しかし、夢にしてはやけに現実味があった。
だが、現実ではないだろう。
……なんで、あんな夢を見たのだろうか。
夢とは無意識の具現とも言う。
ならば、私はヒイロとキスをしたいと思っている事になる。
苦笑する。
そんな馬鹿な。
私は彼に恋愛感情を抱いていない。
そもそも、私の性別は女だが、男でもある。
どちらを性的趣向としているかというと「どちらでもない」が正解だ。
そういう欲求はないに等しい。
思考しながら、私は部屋を出る。
早朝、そして今日は休日。
ヒイロはまだ寝ている……と、思ったのが。
「あ、ニ、ニーナ……?」
何故かパジャマ姿で、ポッドのお湯を沸かしている姿があった。
「ヒイロ、おはよう。朝早くなんて、珍しいね」
「おは、よう……そ、そうだね。珍しいよね、はは……」
何だか、妙に余所余所しい。
いつもの彼らしくない。
私の顔を見ようとしないし。
不思議に思いながらも、私は朝食の用意を始めた。
ヒイロの分を含めて、だ。
その頃には今朝見た変な夢については、もう忘れていた。
◇◆◇
「……ん……あれ、また?」
変な夢を見た翌晩。
自室で眠ると……再び、あの空間で倒れていた。
横を見ると、やっぱりヒイロが眠っている。
私は後頭部と耳の裏を掻いてから、ヒイロの背中を揺らした。
「……っ、あ、ニーナ?」
驚いたような顔で、ヒイロが起き上がった。
そして周りを見渡して……顔を顰めた。
「ま、また……この部屋……」
どうやら、このヒイロ。
夢の中のヒイロは、昨晩の夢と引き続き記憶を持ってるらしい。
それはそうか。
このヒイロは夢の中のヒイロ。
私の記憶から作られた虚像なのだから。
「……まぁ、いいや」
私はそんな困惑しているヒイロを放置して、ドアの前に立つ。
少し視線を上げれば……あった。
昨日と同じ位置に、指令の書かれたプレートが。
今日は──
【ディープキスしないと出られない部屋】
……昨日よりハードルが上がってるな。
流石にちょっと抵抗がある。
少し眉を顰めた私の横で、ヒイロは険しい顔をしていた。
「こ、こんな命令に従う必要なんかないよ……何か他の、脱出する方法を調べよう」
しかし、その発言には同意できなかった。
昨日、ドアを無理矢理開けようとしたが無理だった。
部屋内に他に出口はない。
ならば……はぁ、やるしかない。
部屋から出るためには、指示された事を熟すしかないのだ。
「ヒイロ」
「あ、ニーナ……何か、脱出する方法が思いつい──
「ヒイロはしたくない?」
ドアの上にあるプレートを指差した。
【ディープキスしないと出られない部屋】
「い、いや、それは──
「しないと出られないなら、私はしても良いけど」
「……で、でも……」
渋るヒイロに、私は目を細める。
「……そんなに、嫌?」
「い、嫌なんかじゃないよ!でも、ただ……こ、こういうのは恋人同士でやるべきで……」
何とも……貞操観念がしっかりしている。
そういうところは嫌いではない。
巷ではヘタレだと言われるかも知れないが、誠実で貞淑なのはいいことだ。
……私がリードするしかないな。
「……ヒイロは、そのままでいいから」
「え、ちょ、ぅぷ──
ちゅぅ♡
私が唇を重ねると、先程の言葉とは裏腹にヒイロの口が開いた。
観念したのだろうか。
私はそこに舌を入れて──
くちゅ♡
舌と舌を絡める。
ざりざり♡
ずるずる♡
ざらざらとした舌の感触を感じながら、ヒイロの口の中を弄る。
まるで無理矢理、口の中を犯しているかのような感触。
背徳感を感じながら、密着したままディープキスを続けて……。
「っは……♡」
舌を離して、顔を離した。
これでディープキスは十分に行った……筈だったのだが。
一向にドアが開く気配もない。
「…………?」
「ぅ、ニーナ……」
私は少し悩んで、一つの結論に達した。
「……ヒイロも、ちゃんと舌を動かして欲しい」
「え、僕……?」
「うん。どっちかが一方的にやってるだけじゃ、いつまで経っても開かなさそう」
「え、そんな……」
「いいから、して」
そう言って、私は再びヒイロと唇を重ねた。
今度はヒイロも舌を出して、私と舌を絡める。
互いに互いを求め合うように。
……少し、ヒイロは気遅れてしているようで遠慮気味だけど。
くちゅ♡くちゅ♡
ちゅっ♡ちゅぅ♡
唾液が混じり、淫らな音が響く。
何だか空気に流されて、少し私も、そう、少しだけ……気持ちいい、気がしてきた。
じゅるる♡
舌を吸って、吸われる。
強烈な刺激に、私は思わずヒイロの背中に手を回す。
転げてしまいそうだったからだ。
すると、ヒイロも……私の背中へ手を回した。
互いをガッチリと抱きしめ合う形になる。
そして──
「ん……♡」
「ニーナ……」
くちゅ♡
ちゅぱ♡ちゅぱ♡
抱きしめ合いながら、何度もキスを重ねる。
そして、口の中を犯し合う。
昨日の、普通のキスとは全然違う。
こんなのって……。
「っ……♡はぁ……♡」
ちゅぅ♡ちゅぅ♡
くちゅ♡くちゅ♡
息も出来ない。
お互いに呼吸を乱しながら、乱れて……そして──
ガシャン!
とドアが開いた。
その音で私達は一旦、口を離した。
「…………あ」
「……あっ、開いた……ね?」
抱きしめあっていた手を解いて、横に並ぶ。
ドアが開かなかったら……どこまで、いつまでしていたのだろう。
……気まずい。
気まずいが……まぁ、これは夢だ。
夢、夢。
私は息を深く吐いて、ヒイロを見た。
「……まぁ、いいか。ヒイロ、もう出よう……?」
「そ、そうだね……」
私とヒイロは【ディープキスしないと出られない部屋】を出た。
そこには真っ暗な空間が広がっていて──
◇◆◇
「……やっぱり、夢」
私は安堵の息を吐いて、ベッドから起き上がった。
今日も休日だ。
大型連休なのだ。
その事実に感謝しつつ、部屋を出る。
水を呑みたかったからだ。
汗も沢山かいていた。
……寝室は涼しかったが、きっと夢の影響だ。
そう考えながら、キッチンで水を──
「あっ」
声に振り返る。
ヒイロがそこに立っていた。
……視線が唇に吸い寄せられそうになっ──
いや、目を見て、私は口を開いた。
「おはよう、ヒイロ」
「お、おはよう……ニーナ」
今日も余所余所しい。
昨日は昼頃に戻ってたけど。
……寝起きで頭が回っていないのだろうか。
「ヒイロも水、飲む?」
「そ、そうしようかな……」
水を入れたグラスを二つ用意して、片方をヒイロに渡す。
それを彼が恐る恐るといった様子で受け取る。
挙動不審だ。
「……どうかしたの?」
「え?」
「何か様子がおかしいけど」
そう、私は自分のことを棚に上げて訊く。
私も正直、ヒイロの顔を見るのが恥ずかしい。
あんな夢を見てしまったからだ。
あんな、その、性的な……。
思考を端に寄せて、無理矢理、現状に思考を戻す。
「……そ、そうかな?」
「うん、変」
私がそう言い切ると、ヒイロは自身の頬を掻いて……苦笑した。
「変な、夢を見るんだ」
「変な夢」
「内容はその……えっと、詳しくは覚えてないよ。覚えてないんだけどね」
「……そう」
「でも、変な夢を見た……き、気がするんだ」
不思議な事もあるものだ。
互いに変な夢を見ているとは。
しかし、詳しくは覚えていないのに変な夢か。
……覚えてなければ変な夢を断定できない気がするけど。
ヒイロは私に何か隠しているのか?
そう考えつつ、水を口に含んだ。
◇◆◇
「……また」
その晩も同じ夢を見た。
白磁の部屋に私とヒイロ、二人っきりだ。
ヒイロを起こすと……彼も慣れて来たようで、納得できていなさそうな顔をしながらも、戸惑うような事はなかった。
そして、ヒイロを起こした私は自動ドアの上にある指令の書かれたプレートを見た。
【全裸で抱きしめ合わないと出られない部屋】
……まぁ、昨日よりマシか。
私は着ている服に手を掛け──
「ちょ、ちょっ、ちょっと待ってよ、ニーナ!」
「……なに?」
ヒイロからストップをかけられた。
「こんなのおかしいよ……だって、何でそんな事を……」
「おかしいのは分かってる。だけど、しないと出られないから」
「そうかも知れないけど……」
「……分かったら、早く脱いで」
思ったよりもヒイロの抵抗心が強いな。
普通、こういうの、男の子なら嬉しいと思うのだけれど……。
……あ、そうか。
ヒイロは私を傷付けたくないのか。
この状況で楽しむよりも、私の心身を心配してくれているのだ。
……そう思うと、少し心臓が高鳴った気がした。
顔を逸らして、私達は互いに背中を向けた。
今、私とヒイロが着ている服は学校の制服だ。
寝る寸前までパジャマだった筈なのに。
それでも深く気にせず、服を脱ぐ。
しゅるる……♡
ぱちん……♡
布の擦れる音が、ベルトの金具が外れる音がした。
そうか、ヒイロに私の裸を見せる事は理解していたが、私もヒイロの裸を見るのか。
ドキドキと、あれ、いや……何を緊張しているんだ?
分からない。
「……ヒイロ。もう脱いだ?」
「……脱いだよ」
「じゃあ……」
「うん……」
分からないが、私はヒイロへと向き合った。
抱きしめ合うには互いに真正面から向かい合う必要があるから。
「…………」
「っ……」
ヒイロの身体、思っていたよりも引き締まっているな。
ムキムキのマッチョ、ではないけれど引き締まっている。
無駄な贅肉はなく、ヘソのラインが綺麗に──
ヒイロの視線を感じる。
主に、胸……や下腹部辺りに。
やはり彼も男の子なのだ。
目の前の女の肌を見れば……。
あ。
ヒイロの下腹部、男性器が……先程見せあった直後よりも、大きくなっていた。
勃起、しているのだ。
そんな私の視線に、ヒイロは慌てた。
「ち、ちがっ、これは……」
私に嫌われたくない。
そんな感情が見えた。
……まぁ、そうか。
異性相手に、性的な視線を向けているなんて知られたくないだろう。
でも、これは仕方のない事だと私が思う。
うん、仕方ない。
「大丈夫、気にしてないから」
「う、うぅ……」
しかし……なんというか、久しぶりに見たな。
昔は毎日、自分の物を見ていたけれど。
こうして見ると、少しグロテスクな見た目だ。
……まぁいい。
取り敢えず指令を熟そう。
私はヒイロの正面に立って……。
「いくよ」
「う、うん」
互いに手を背中に回した。
昨日もディープキス中に抱きしめ合ったのだから、大した事はない。
……そう、思っていたのだが。
男性的な硬い筋肉質な身体が、皮膚を通してダイレクトに感じられる。
私の柔らかな胸が、ヒイロの硬い胸板に押し潰される。
そして、何よりも──
下腹部、腹の面に感じている硬い感触。
「……ごめんよ」
「……いい、気にしてない」
嘘だ。
気にしているとも。
ヘソの上まで感じている、硬い棒状の感触。
ヒイロの勃起した男性器だ。
大きく勃起した結果、私のヘソの上まで……その感触を感じられた。
「……っ♡」
心臓がうるさいほど鼓動する。
顔が少し熱い。
それは羞恥からか、それとも別の何かか。
……私のお腹の奥が、きゅぅ、とする。
ヒイロの硬い感触に触れて、彼がオスで……自分は異なる性別、メスであることを自覚させられる。
ドアはまだ開かない。
抱きしめる力を少し強めて──
硬い感触を感じて──
ガシャン!
と音が響いた。
「……開いた?」
「そう、みたいだね」
私は背中に回していた手を解き、ヒイロから少し離れる。
あぁ、よかった。
これ以上抱き合っていたら変になる所だった……変?
変になるって何が……?
よそう。
考えれば考えるほど、よくない方向に行く気がする。
しかし、なんというか……。
「……毎日、少しずつ過激になってる気がする」
「あ、ニーナもそう……思う?」
そう、この部屋の指令は日を追うごとにスケベになっている気がする。
明日は……明日はどうなるんだ?
…………っ。
ヒイロも気付いたようで、顔を赤らめた。
そして頭を振るって、私に視線を戻した。
「と、とにかく服を着て出よう!」
「……うん」
私は床に置いた学校の制服を……あれ?
ない?
「……あ、あれ?さっき脱いだ服は?」
「…………まぁ、部屋から出たら戻ってるし、別にいいと思う」
そう、この部屋から出れば寝室。
寝巻きで寝ている状態に戻るのだから、別に全裸だからと気にする必要はない。
私の言葉にヒイロは釈然としない様子だったが、二人で一緒に部屋を出た。
先程はあんな事があったが、部屋から出られるという安堵感を抱いていた。
翌日以降、現在の状態……互いに『全裸』という状態が引き継がれるのだと、私達は知らずに。