黒川あかねさんが昔うっかり濡れ場でイカされてしまったウワサ 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
ご依頼は http://skeb.jp/@freege_affected か、 http://twpf.jp/freege_affected からどうぞ。pixivリクエスト https://www.pixiv.net/request/plans/7443 も受け付けています。 ※pixiv、ハーメルンとくるっぷに転載しています。
「黒川さん、本当におみやげを選んでたんだね」
本当に、という“彼”のつぶやきに、私たちがこの場でウソをついている自覚がありありと裏写りしていました。
このくつろいだ雰囲気の空間にまったく不似合いな目的で、私たちはここを訪れていました。
「やあ、お悩みで。おみやげ選びはセンスを問われるからね」
「……おすすめの品でも、ありますか?」
「残念ながらお力になれそうもない。僕はここでおみやげを買う必要がなかったから」
おみやげ屋といっても、太平洋沿岸の某温泉地のホテルに併設されているもので、売り物はキーホルダーやタオルなどの小物と箱入り菓子ぐらいの、10分もあればすべて見て回れる程度の広さでした。
そこで女優・黒川あかねさんは、変装用のセミロングのウィッグと伊達メガネをつけて、白く薄い布地の浴衣と、その上に茶羽織をまとっていました。
その立ち姿を背中側から見ると、私はつい、白襦袢を着て犯されていた彼女の姿を連想してしまいます。
「劇団と、事務所と、お家と……ほかにも? お代を僕につけておくといい」
「……それでは、お言葉に甘えて……まだ決めていませんが」
黒川さんはとある映画で彼と共演して、白襦袢を汗だくの肌に貼りつかせながら痛々しく犯される濡れ場を演じていました。その映画がクランクアップして、慰労の名目で温泉旅行に来ています。少女と初老男性が2人で、というとあまりにも不自然であるため、私はカムフラージュ兼周囲の見張り役として同行しています。
夕方にチェックインして、いったん分かれてこちらは大浴場で移動の疲れを癒やし、合流してバイキング形式のレストランで夕食をとりました。
「黒川さんはふだんからああやって節制しているのかな」
「……そうですね」
「もっと食べたら? ……って、年食うとみんな言いがちらしい。言われ慣れてるかな」
近年の温泉宿、とりわけオールインクルーシブだと各部屋に御膳を運ぶより、広いレストランでバイキング形式にて食事を提供する形式が多いようです。部屋まで運ぶ負担を減らせる、家族連れ相手に子どもからお年寄りまでめいめい好みの食事を提供するにも客にとらせるほうがやりやすい、という狙いのようです。この宿のレストランにも和洋中、肉や魚や野菜、甘いもの、お酒までまんべんなくそろっていました。
そのせいで、中華粥やお味噌汁などの軽いものだけ口にして、『おみやげを選んできます』と先に席を立った黒川さんの振る舞いが浮いていました。
「温泉で疲れはとれたかな、僕はけっこう長湯してしまった」
「……眺めを見てきましたよ」
「露天風呂の?」
「朝なら、日の出が見えるんでしょうか」
「見たいなら早起きしなければね」
ホテルのセールスポイントの一つであるオーシャンビューが、黒川さんの慰めになったか怪しいものです。
「……ん、ゃ……っ……」
「もう少し待たされるんでね、退屈しのぎに付き合ってくれるかな」
黒川さんをそばで見るのはきょうが初めてですが、慰み者にされるのがわかっていて温泉や眺望や食事を堪能できるほど神経が太く見えませんでした。
「ここのおみやげは鈴を推してくるんだ。ご当地モノだから」
「……何か……んっ、いわれ、でも……?」
彼の手つきは、性欲よりも単純な嗜虐心を感じさせます。浴衣越しの、ふくらみかけといった黒川さんのお尻を無造作につねったりつついたりしています。おみやげの陳列と私の立ち位置で死角を作って彼の狼藉を隠します。
店員は見てみぬふりです。宿のスタッフには私たちの目的が必要なだけ知らされています。
「このあたりは、紀州から出てきた熊野水軍が最初に開発した土地らしい。つまり鈴木氏……雑賀衆の鈴木、とかきみの年じゃ知らないか」
「っ……それで、鈴が……?」
「熊野水軍は、紀の川をさかのぼった山奥の熊野大社が由来。神様には鈴の音がつきもので」
股の下での痴漢行為を紛らわすつもりか、やたら饒舌に彼が語ります。対して黒川さんは言葉ではうまく合わせていますが、あまりに彼の手が無遠慮に触れてくるせいでしょうか、ときに声を途切れさせます。浴衣の帯が緩められてその内側の白い下着がちらりとのぞかされ、さすがにあわてて整えるさまを彼に薄笑いで見られています。
「……本坪鈴とか、でしょうか」
「よく知ってるね、あれの名前……で、熊野水軍も一部が鈴木氏を名乗ってて、ここに住み着いたときにも名乗っていたらしい」
黒川さんは、お尻の肉を揉まれたり、お尻の肉と太ももの境目をなでられるがままです。くちびるを強張らせたり、目を伏せて眉をひそめるばかりです。それで彼もいまのところ満足しているようです。シチュエーションを拘束具として彼女の抵抗を封じてもてあそべる、という悪趣味を味わっているようです。
「鈴のアクセサリーとか小物では、事務所とかへのおみやげには不向きだね」
「んっ……だいたい、お菓子が定番、です……ね」
私は黒川さんのすぐ後ろで、彼女の息遣いの乱れがわかる近さで、その場面を見守っています。彼女の後ろ姿に彼の手つきが絡みついて彼女を嫌がらせるさまが、まざまざと見えます。痴漢の手つきが強引で無造作で、それを受けている少女らしく弱々しい繊細なようすを引き立てています。
「無難すぎてかぶりがちなのが気になるけど」
「……配りやす……い、ですから、ね」
「どこの土地でも無難な味にするし、配るとき『またこの手のか』って顔をされるのが」
彼の指がお尻からウィッグへ矛先を変えて、さらりとセミロングをかきあげて彼女の耳をあらわにさせます。皮膚の薄いところがすっかり紅潮して熱くなってまるで湯上がりと見紛うばかりです。
「ん、んっ……」
「ここで買えるおみやげは、そういうものと、あと鈴か……」
黒川さんが耳殻をなぞられ、声をかすかに震わせます。薄布と下着だけの下半身がもじもじ居心地悪そうに揺れ動きます。親しい相手にいじられてもくすぐったくてたまらないところを、まして自分を凌辱した相手に……想像するだけでも耐えがたいことです。それでも黒川さんは悲鳴の一つもあげられません。
「……鈴は……いろいろ、っ……ある、ようです、ね」
「ヘアピン、イヤリング、ペンダント、あと手首にも……全部つけてしまったらさぞ騒がしかろうね、ネコでもそんなにつけられたら嫌がりそうだ」
鈴をあしらったアクセサリーがいろいろ架けられている陳列台の前で、耳穴に指先を入れられて、思わず彼女が首を振って彼から一歩離れます。
しかし二歩目を続けられません。
温泉宿で親子ほど年が離れた俳優に迫られて凌辱されているなどのスキャンダルが漏れたとして、もともと仕事に困っている女優ならともかく、黒川さんはこれからの女優です。逸失利益があまりに大きい。
「あぁ、そろそろいい時間らしい」
「……時間ですか?」
加えて、彼女は親や劇団、マネジャーなどに心配されたくない、という気持ちがいささか強すぎるようです。
「マッサージ師さんの準備が。温泉だからね」
「……はい」
「僕よりずっと上手だろう」
泣き叫ぶより弱々しいところをフィルムに収められ映画館で上映されているのに、ここで弱音一つ吐けない。その逆説が、いっそう痛ましく思われました。
※
「っ……んっ……ぅ、んっ……!!」
棒状電動マッサージ機の非人間的な振動音の向こうに、黒川さんのうめきが聞こえます。彼の手配で部屋にやってきた壮年の“マッサージ師”が、マッサージ師というより昔の作業療法士のような、白く機能的すぎてしかつめらしいほどの着衣で、布団に寝かされた黒川さんの体に無言で施術を行っています。
「………ッ!!」
彼と私にそばで見られているのを意に介さず、マッサージ師が電動マッサージ機を片手で操作して、黒川さんの敏感なところに当てがって彼女を刺激しています。彼女はすっかり頬を紅潮させられています。茶羽織をすでに脱がされ、薄い浴衣が汗を吸ってところどころ肌へ張りついて、細い肩や背中、お尻の線がくっきりと浮き上がっています。
おみやげ屋でのある意味で澄んだ痛ましさが、そうした艶かしさと混ぜられじっとり濁っていきます。それは驚くのを忘れるほどあっという間でした。
「彼女は、敏感なほうですか?」
「ぁ……くっ、ふぅぅう……っ!」
「こういうものは、体調で大きく変わるというのが、しょうじきなところで。もう少し長湯してくださっていたら、スムーズだったのですが」
「へぇ、ここの温泉にそういう効能が」
「っ……っうぅー……ぅ……!」
「効能というより、血行と申しますか……湯船に浸かって芯まで温まっているかどうかですね。ご自宅でも違うと思いますよ」
「ははは、こんなロートルの家にこんな若い子は寄り付きませんよ」
黒川さんは声を押し殺していても、表情や呼吸が見るからに切なく震えています。施術でうつ伏せにされて肩や腰骨の上から太ももまでを丹念に刺激され、ときどき耐えかねたらしく肩や腰をもぞつかせます。マッサージ師がそれを咎めることもなく、黙って彼女のヒザなどを押さえつけて刺激を再開します。
「ふはっ……はぁっ、はぁっ……む、んっ、ぁッ……」
汗の一筋ずつが見えない理性の一線をじりじり焦がすように、だんだんと黒川さんが息を呑んだり、手足を強張らせたり、シーツに指の爪を立てたり、と反応が艶っぽくなっていきます。浴衣越しに白い下着や肌が露わになってきます。その肌や神経をかき回すように、電動マッサージ機の振動が行ったり来たりを繰り返します。
「えぅ、うううーっ……!」
やがてマッサージ師が頃合いと見たのか、ついに浴衣をくつろげてデリケートな部分へ施術をエスカレートさせます。太ももが2回ほど手の動きを拒むように内股に閉じられますが、3回目は抵抗を止めて割り開かれます。いくら閉じても、電動マッサージ機の振動が響いてしまって刺激を感じてしまうようです。
「ん、ぁぁ……っ……!!」
「強張ってるね、疲れを中まですっかりほぐしてもらったほうがいいんじゃないかな」
「……そう、かも、です……ね……くっ、ふーっ……!」
彼との間に何か約束――強制的なものでしょうが――でもあるのか、黒川さんはマッサージをされているという体裁に言葉の上では合わせています。しかしお尻や内もも、ときに首筋や腋の下などに、電動マッサージ機の振動や指先のくすぐりなど硬軟織り交ぜた責めを加えられると、言葉と体の反応がずれていってしまいます。
「ん、ぁぁ……っ……そ、こ……は……」
「何かツボでもあるのかな、どうです?」
「緊張されているようですね」
顔や腕の反応は抑えられても、反応を隠しきれていないらしいのが足先です。裸足の足指が何かを握ろうとしているように力んだり、土踏まずにシワがよるほどもだえたり、細い足首にピンと張ったアキレス腱が浮き上がったり、と細かい反応が見てとれます。
「くひっ、ひんっ! はぁぁっ、んぅぅぅっ……!」
それからも責めが続いて、にちゃにちゃ、くちゃくちゃとおよそ彼女に似つかわしくない不調法な音までが聞こえてくるようになります。マッサージ師が潤滑剤をつかったのか、とさえ思うのですがあたりをうかがってもマッサージ師の手が届く範囲に容器などが見あたりません。信じがたいのですが彼女の体液のせいでした。秘所に電動マッサージ機が近づくと、音の気配だけで接近がわかるのか、触れる前から肌が引きつります。汗を吸ってすっかりぴったりくっついた浴衣の薄布にもシワがよって、彼女の動揺を先ほど以上に強調します。
彼がそれを不気味なほどじっと見守っています。
「ク、あっ……うっ……!!」
「……まぁ、あれだけ水っぽいものしか食べてなければ、ね……マッサージ師さん? この子が粗相をしても構わないよね」
「替えが不要であれば用意を止めておきます」
粗相、という言葉の意味を、頭で理解していても体がすぐには信じられません。女優・黒川あかねが失禁か何かをここでさせられるのでしょうか。
「パンとか食べてると実感できるけど、炭水化物ってよく水を吸うでしょう。それをあまり食べないと近くなっちゃう。映画館でポップコーン食べさせるのも、それを利用して客が途中でトイレに立ちにくくするようにしてるとか、してないとか」
彼のつぶやきが、私だけでなく黒川さんにも聞こえたようです。びくりと身をすくませます。さっきから息を詰めたり口を開いてうめいたりと反応がせわしないのがさらにひどくなって、手足がもどかしく布団やシーツをこすって音を立てます。尿意をがまんしている、と聞くと、腰がおののき、か細い太ももが震えて、ヒザががたがた笑ったり、一挙手一投足がすべて尿意を追い払おうとする足掻きに見えてしまいます。
「ひっ……ま、まだぁ……もう……ん、ぅ……!」
マッサージ師が電動マッサージ機を構えます。こちらはもう体裁などお構いなしなのか、黒川さんの秘所を露骨に付け狙って振動を押しつけます。黒川さんの腰がますます逃げてくねって、ときどきお尻を高く突き上げさえします。体の反応に合わせて浴衣や下着がずれて、白い肌が見え隠れするのを彼がまぶしそうに目を細めてしげしげと見ています。
「すみませんね、手こずらせて」
「……手こずると言うほどでは……存外、粘られてしまって、いますが……ねっ」
「彼女もいっぱしの役者なので」
黒川さんが悲鳴にも似たうめき声を漏らしつつ、内ももの筋肉がひくひく引きつって、足先が何かにしがみつくような仕草を繰り返します。失禁寸前に追い詰められてぎりぎりで耐えているようにしか、私には見えません。
「涙を流すか流さないか、みたいなことでしょうか」
「生理現象で出るものは止められませんが、出してしまうときも、どこか役者なんです」
「……私はそちらのプロでは……ありません、のでっ」
「どんなときもどこかそうです、役者と乞食は三日やったらやめられない、とも……死語か、この言い方は」
黒川さんがいよいよ不随意運動ばかりになりつつあるようです。少し前まで水面でもがくように浮き沈みしていたのが、目に見えてびくり、と強張る頻度が増えていきます。ウィッグはすっかりずれて外されて、ボブカットの地毛がべっとり濡れて真っ赤に染まった頬にかかっています。物狂おしい女の顔と、羞恥に震える少女の顔が無理やり混ぜられたふうに見えます。
「そ、れ……っ、ンああぁああ……っ!? あ、ぅ、あぁああぁっ……」
女とも少女ともとれてしまうのは、下腹部も似ています。お尻や太ももの肉付きなんて、マッサージ機で責められ張りつめると棒みたいにか弱くなるのに、女性のあそこがにちにち、ぬちゃぬちゃと粘っこい音を立てて、いやに熟れて見えます。
時折、電動マッサージ機の振動が止まります。マッサージ師が逆側の手に持ち替えて構え直します。責めている側も、あの振動に連続してさらされているとつらいのでしょうか。
「ぅク、っっっ……!」
振動音が消えるわずかなあいだ、黒川さんの荒れた呼吸がいっそう目立ちます。私も彼も飲まれたように息を潜めています。黒川さんにとって、ひと息つけたというより、いまにも決壊しそうな瀬戸際で生殺しにされている状態でしょう。呼吸を整えても決して休めはしない。休ませようという努力が彼女の肉体をさらに消耗させているようでさえあります。
「は、ぉ、ァ、あ……ッ!!」
ほんの一瞬、恥丘に振動がかすめただけで、ぞくんっ、と白布を貼りつかせた体の曲線がピンと張りつめます。
「ぁ、ぃ、や……ぁ、ああっ、う、く、ぐぐ、ふぅううっ……!」
ぶじゅぶじゅぶじゅ、と何かの水が振動とぶつかって飛び散る音が聞こえます。とうとう失禁してしまったのか、肌の凹みにさんざんたまった汗の幾筋かが立てたのか。
「ぅぅ……ぁ、っく……ぅぅうんっ、あ……あはあっ……」
出しっぱなしの水道を無理やり抑えたように、聞いているだけで目を背けたくなる粘液の音がします。マッサージ師が粗相にも無頓着に、こんどは黒川さんの腰を持ち上げてヒザをつかせます。布団に四つん這いの姿勢。腰の細さも際立ちます。
「……はぁっ、はぁっ……!」
「黒川さん、もう限界かな。粗相もしてしまって」
「……何の……話、ですか……ん、くっ……」
彼に煽られた彼女は気丈な言葉を絞り出します。いっぽうお尻がぶるぶる微痙攣して、マッサージ師につかまれていてようやく腰が落ちないでいる、というありさまです。下着もとうに用をなさず、ついに乳房や陰唇が私たちの目にもあらわです。
「く、く、ぅうっ…………!!」
マッサージ師が道具を持ち替えます。力強くも大ざっぱそうだった電動マッサージ機から、こんどは小学生の図工にぴったりな細い絵筆に。
「筆先で刺激が生易しくなる……のは確かなんだけど、もちろんそれだけじゃないよ」
「は、く……っ……っうぅー……ぅ……!」
「電動マッサージ機じゃ塗れないものを塗ってもらおう」
マッサージ師が白い軟膏を取り出して、絵の具のように筆に薄くとります。目を疑う私の視線はもちろん無視して、黒川さんの愛液――汗も混じっていたはずですが、もう愛液にしか見えませんでした――にまみれた敏感なところに塗りこんでいきます。陰唇に陰核にと筆先が触れると、彼女の腰がはね上がってシーツを揺らします。
「く、く、ぅうっ…………!!」
触れるか触れないかの具合なのに、黒川さんは悲痛なうめきをあげて全身を硬直させます。きっと神経をさらにかき乱す作用があるのでしょう。
彼女の口からも言葉らしい言葉がなくなります。いやらしい水音の間に、かろうじて噛み殺される悲鳴と、ひゅうひゅうとした喘鳴とが漏れ聞こえます。まぶたがぐらぐら震えながら細められて、濡れた黒目が見え隠れします。
「ぁ……はあっ、ぅ……っ……!!」
「いまはまだがまんできているけど……それはいまだけのものじゃないよ」
マッサージ師が淡々と、容赦なく愛撫を続けます。筆が細かい泡のつくほど愛液にまみれると、無言で軟膏をまたとりなおして、再び黒川さんに塗りつけていきます。演技を通そうとしていた黒川さんも、たまらず腰を上下左右にくねらせて逃げ場を求めかけ、手と目線で捕まって悲鳴のような吐息を漏らし、震えあがり、また塗られるのを繰り返して、彼女らしくもないみだらな姿に堕ちていきます。彼女が耐えれば耐えるほど、こちらにはいよいよ惨めに、いっそう艶かしく見えてしまいます。
「んんんん゙っ……ん゙、ぐくっ……ぅ、く、は……ぁ……!」
黒川さんの動きが激しくも弱々しくなって、呼吸がどんどん速くて浅くなり、汗の粒も病的な量が垂れ落ちて、こちらは不安にもなってきます。
「つらいでしょう。休憩するかい?」
「……そんな……ぁあ、そんなっ……こと、は……」
「そうだね。休んだらむしろ……」
涙とよだれの間から、揺らめくろうそくの炎ぐらい消えかけて消えない声が帰ってきて、彼が凄絶な笑みを浮かべます。
「もう少しかな」
「………う、ああ……あく……っ……」
朦朧としているようで、彼にのぞきこまれると、黒川さんはまだ目に力を取り戻して見つめ返します。それ以外がぐずぐずに蕩けさせられていて、あまりのアンバランスさにこちらまで息苦しくなります。
「彼女の胸にもお願いしますよ」
「……よろしいのですか」
「用法・用量の範囲ならば」
マッサージ師が筆を胸にも這わせます。黒川さんががまんしてもしきれない、といった風情で肩や首をよじらせその動きに合わせて乳房が揺れます。揺れる、といってもゼラチンを入れすぎたゼリーのように生硬な印象で、乳首が痛々しいほどつんと張りつめています。
「あっ、ふっ……!!」
「お辛いですか」
「……ん、っくっ……おかまい、なく……んっ……!!」
いくらプロの女優といえど、まだ少女という年齢で性経験もろくにないでしょう。それで責めに耐えようとする。乳房に軟膏と汗の混じった白濁を塗り拡げられながら、彼女の顔つきはいっそう切迫感を帯びています。それでいて神経をかき乱され引きつった表情でこちらを見上げる様が、一瞬何かの間違いのように妖艶で好色そうにも映って、思わず生唾を飲んでしまいます。
「やっぱりね、役者はぎりぎりまで追い詰められても、どこか役者だよ」
「……彼女も、ですか」
「まだまだ。僕の父親も映画の役者だったが、最後には耄碌してセリフも覚えられなくなって、それを言われると怒ったり泣き叫んだり……それにまで芝居が染み付いてた」
彼の独り言のような声色が、女優としての黒川さんが壊れていくのを期待する嗜虐心なのか、それとも彼が役者としての黒川さんを見極めようとしているのか、判然としません。
不意に、マッサージ師が責めをとめます。黒川さんがぐったり布団に沈み、絶えず聞こえていたにちにちという粘っこくなった衣擦れが止まって、部屋が静寂に塗り替えられます。
「浴衣を直して、道具もつけてもらいなさい。おみやげ選びの続きとしゃれこもうか」
彼の言葉は、まさか言わないだろう、と私が思っていたものでした。
※
「ぁ、ああっ、う、く、ぐぐ、ふぅううっ……!」
「声を落として」
先ほどのお土産屋さんはすでに営業時間終了のスタンドを立ててシーリングライトも消灯していましたが、彼がマッサージ師に言伝を頼むと、ものの数分で店員が戻ってきて、スタンドがどけられライトも点灯させられました。
そこで黒川さんが、例の汗で体にぴったり張りついてしまう浴衣姿で、彼と並んで品を吟味しているかのように陳列棚の前に立っていました。
彼女がまともに立っていられたのは数分でした。
「んっ、うっ、あぁぁっ……すみま……すこし……これ、が……」
先ほどと違っているのは、下着の着用を許されていなくて、近くだと乳房やお尻の谷間まで半ば透けて見えていたこと。股間に電動バイブレータを埋めこまれて、ぐぷぐぷとこもった振動音が聞こえていることでした。いや、よく観察すると、彼女が履いているホテル備え付けの軽い履物にまで何かが垂れ落ちて、彼女の素足とのあいだで妙な足音を立てています。
「……そうだね、つけてあげようか」
「んっ、な……何、を」
「これが気になっているんでしょう」
黒川さんはもう立っているのも辛いらしく、おみやげの装身具が架かっている壁の陳列に手をついてどうにか体を支えています。その装身具の中から彼が鈴付きヘアピンを手にとって店員に確かめもせずタグを千切って、彼女の髪に挟んでしまいます。
彼の曲解に抗うよう黒川さんが首を振りますが、不釣り合いなほど軽く涼やかな音がちりんちりんと鳴り響きます。羞恥の手足に力がこもると、足元からきゅ、きゅっと奇妙な音も重なります。雨が降ったときにスニーカーなどで硬い床を歩いたときのような音です。雨ほど濡らしてしまっているのでしょうか。
「あっ……あうッく、ああっ……!」
彼女が腰をもぞもぞさせる動きが部屋よりもはっきりしていて、お尻の肉が震えてお尻の谷間がはっきり見えて、部屋を出るときにぬぐわれた太ももからヒザ裏がまたぐっしょり濡れているのもわかります。その痴態は私とお菓子箱の陳列とに隔てられ、ちらほら店の横を通り過ぎるほかの宿泊客から隠されています。もう夕食時も過ぎて大半の同宿はくつろいでいる時間なせいか、こちらを気にする素振りをいまのところ誰も見せていません。しかし、もし私のところまで近づいてきたら、間違いなく異変を感づかれてしまうでしょう。
「くっ、ふ……あゔ……!!」
「この程度で音を上げる女優じゃあないでしょう、きみは」
びく、びくと肩、背筋、太ももが震えて波打つさまが、布団に寝転されていたときよりはっきり見て取れます。お尻もきゅっと力んだりふるふる震えたりしています。それらの後を追って、ちりんちりんと鈴の音が響きます。彼女が抑えている嬌声の代わりに鳴いているようにも聞こえます。
「くひぃっ……!! ハッ、はァッ……」
さらに時間が経つと、黒川さんの手首あたりに薄紅の筋がいくつか垂れてヒジまで奇妙な線を描いているのも見えました。手に力を入れるあまり、装飾品か陳列のどこかとがっているところが指か手のひらを傷つけてしまったのでしょうか。
「ああうっ……は、ぉ、……ふーっ、ふ、ぅっ……!」
黒川さんの口からこぼれるのは苦しそうなうめきがほとんどです。苦しみのあまり漏れてしまっているというより、うめき以上のものが出てしまいそうなところをどうにか押しとどめている、と私の位置からでも察せられます。その上に鈴の音とバイブレーターの騒音が重なって奇妙な合奏となります。体を震わされるたび、布地に肌がこすられるのがまた快楽に拍車をかけるらしく、黒川さんの顔色がいっそう朱を増します。
薄布の向こうで太ももの肉が震えたりくっつきあったりして、肌までがうっすら透けて肉まで見える錯覚に陥りそうです。高ぶりを押さえつけるためか、ときどきヒザを擦りあわせてくちくちと音を立てながら背中を丸めます。かと思えばかかとを浮かせながら脚がぴんと伸ばされ、バランスを崩しかけて彼の肩に支えられどうにか立っているというありさまも見えます。
「浴衣に血じみができちゃったら、どうしよう……黒川あかねの血だったら、かえってよろこばれ……ないだろうな、さすがに」
限界寸前の状態に追い詰められつつある黒川さんを眺めて彼が呟きます。もうそれに黒川さんは反応する余裕がなく、ただ必死に息を整えようとしつつバイブレーターの刺激と羞恥に耐えています。また足元からぱたぱたと何かの滴が落ちて弾けた音が聞き取れます。床に水たまりを作ってしまってないか、他人事なのに心配になってきます。
「もっと少し強くしてみようか」
バイブレーターの振動音が一段と目立ってうるさくなり、鈴の音も高く鋭くなった気がします。黒川さんの口が大きく開いて荒い息が吐き出されます。お尻の肉も太もももがくがく震えて、彼に体重を半ば預けていてすら立っているのが辛いといった風情です。
「あぐ、うううああっ……!」
「もっと脚を閉じて」
不規則に荒ぶったり収まったりするバイブレーターの音が、聞いているだけのこちらの腰にまでずしりと重たい気分にさせられます。彼の指示に従えばますます下腹部への刺激を強めるだけとわかるはずなのですが、彼女は言われるままに従ってしまいます。
一方で彼が、マッサージ前と同じく黒川さんの背中やお尻をなではじめます。同じ仕草でも反応は歴然と違います。ぐっと固く身をすぼめるせいでお尻の肉がますます張りつめ、それをちらりとうかがうだけで陰唇がどれだけバイブレーターを噛み締めてヒクついているかまで思い浮かべられてしまいます。
「ぁ……だ、めぇ……も……っお、っ……!」
「……本当に?」
愛液が次々と垂れています。上体や首を揺らしすぎてかけ直した伊達メガネがだらしなくずれて、黒川さんの目からも涙がぼろぼろこぼれているさまも見えます。どちらが先に涸れるか、とでも思いたくなる無惨な乱れようです。こうなると浴衣で体を隠しているのがかえって淫らです。隠しきれない肌の紅潮を、浴衣の白と鈴のあしらいが引き立ててしまっています。もういつ限界が来てもおかしくないでしょう。
「ぇふ、ぇう、あ、うっ……! ……あ、あ、あああっ……!!」
そこに彼が黒川さんの背中やお尻を愛撫して、乳房にまで指をかけます。黒川さんの背中の震えがいっそうひどくなり、よろよろとヒザから力が抜けて崩れ落ちて、彼に無理やり立たされます。ヒザがたまらないと無言で叫ぶふうにかくかくと震えてだらしなくガニ股に開いてしまい、彼に耳打ちされてくちびるを噛み締めながら閉じる表情がうかがえます。
「いい子だ」
低く優しげな声があまりに不釣り合いに響きます。黒川さんが、はしたない姿勢を強制されながらなお彼の言うがままに動くさまを見聞きさせられ、私の頭もくらくらめまいがしてきます。飲まずとも塗られずともあたる毒のような光景です。彼どころか、だんだん黒川さんの正気さえ疑わしくなってきます。もし正気が残っていて、この自虐的に耐える姿がもし演技だったら、それはそれで底知れぬほど恐ろしい。
黒川さんはどこか受けてはいけない刺激を食らってしまったのか、何も飲んでいないのにむせて、ちりんちりんという鈴の音に対する重底音じみたコントラストを描きます。
彼の肩や腕によって強引に立たされていますが、快感に耐えかねてよろめき、腰がしゃくりあげるように浮き沈みします。浴衣が乱れ、ついにバイブレーターがぐぽぐぽと凌辱しているさままではっきり見えてしまいました。
「い……っく、い、い、い……ッ!」
「そんなものだったかな、きみは」
挑発と解釈するには、彼の声が遠慮がちで、黒川さんもかえって反発のしがいがつかめないのか、彼を一瞬見やっただけで俯いてしまいます。どうして彼がこうもしつこく彼女をなぶるのかわからないままです。役者として彼女を試すためとしたら淫らで残酷すぎますが、彼の嗜虐心を満たすためとしたら迂遠すぎて腑に落ちません。何か奥の思惑があるのではと勘ぐりたくもなり、それをのぞきこむのが恐ろしくもあります。
「くひぃっ……!! く、ぁ……ま、だ……っ……!」
彼の無体な行為に耐えながら、黒川さんが自分を抱きしめるように両手をそれぞれ自分の反対の腕につかませます。もう彼女の素肌のような浴衣がぎりぎりと引き攣れています。痛みと快感がないまぜの状態に置かれたせいか、彼女の全身が感電めいて震え、それからついに床へヒザをついてしまいました。
「また、まんまと飲まれてしまったかな」
そこでさすがに見かねたのか、店員が彼に声をかけました。
もう多くの宿泊客が就寝しているらしく、お土産屋の周りどころか、フロアの見える範囲にいる人影がホテルのスタッフだけになっていました。
「そろそろお床も直してもらってるだろうね」
彼の後ろについていく黒川さんの足取りにそって、雫がまだ垂れてところどころにわずかな跡を残していました。
(おしまい)