黒川あかねさんが昔うっかり濡れ場でイカされてしまったウワサ 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
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『【続報】黒川あかねさんが昔うっかり濡れ場でイカされてしまっていた件について』のつづきです。
※備考 今作と、中出し中毒ルートの黒川さんは
どちらも前作『【続報】黒川あかねさんが昔うっかり濡れ場でイカされてしまっていた件について』の後日談です。
人は無限に堕ちきれるほど堅牢な精神にめぐまれていない。何物かカラクリにたよって落下をくいとめずにいられなくなるであろう。
――坂口安吾『続堕落論』
※
「ということで、この件は今日から8時上がりとなりました。いいね?」
「あ、ありがとうございます」
「喜ぶこっちゃないわ、上がりが早くなるぶん上がるまでがタイトになるの、撮影と一緒」
昨日までこの宿で黒川さんがされていた行為はなんだったのか。私は他人事のようにそう心中でツッコミを入れてしまいました。
「8時までっておわかりでしょう、あなたも」
「きっちりしてるね、銀行とかお役所みたいだ」
「聞きましたよ、完全に六十一条に引っかかってるじゃないですかっ」
やってきてすぐの女優・有馬かなさんと、その有馬さんに抗議されている〝彼〟の有り様を前にした私たちは、大小はあれどそれぞれ困惑を露わにしていました。
「今更、って気がしてさ。毒を喰らわば――」
「――毒を消化できたからって皿まで消化できる保証にはなりません」
「それも……そうか、はい、これからは8時上がりね……僕が皿まで食って腹ぁ壊したら君も困るもんね」
黒川さんは部屋とおみやげ屋で痴漢され何度も無理やり絶頂させられていました。
それについて有馬さんが彼をたしなめていました。たしなめ方がちょっとズレている気がしますが。
「ところでなんで私を呼んだんですか。おかげさまでタダで来られるほどヒマだったころがずいぶん昔だなぁって思えるスケジュールなんですよ」
「有馬さんの言う昔って何年前かな」
「温泉入ってごはん食べて寝てていいですか?」
午後8時以降の就業を禁止するというのは、有馬さんが指摘した通り、未成年労働を禁止・規制する労基法六十一条によります。有馬さんは子役としてかつて一世を風靡しただけに、よくご存じなのでしょう。
それで法令を今日から守る、と言われても白々しい彼の偽善としか思えない。
それだけのことを昨夜までの黒川さんはされてきました。
「黒川さん相手だとね……あんまり自分で相手していると若い人の勢いに飲まれちゃうんだ」
「私相手だったらだいじょうぶなんですねぇ」
昨夜、宿のおみやげ屋の店内で、黒川さんは彼に痴漢され絶頂させられていました。
有馬さんの〝聞きました〟はどこまでの範囲でしょうか。スタッフとして私が見ていたすべてか。
あるいはそれ以上か。
「有馬さんは、慣れていらっしゃるから、安心できる」
「格別の御厚情痛み入ります、ね」
黒川さんは部屋で散々責められた直後に休む暇もありませんでした。足取りが覚束なく、浴衣の襟元も乱れていました。
店内に入ると、彼は黒川さんの背後に回りこんで、浴衣の合わせ目から、そっと手を差し入れたのです。黒川さんの体がびくりと震えました。店員や他の客にいつ怪しまれ気づかれてしまうか、という状況でした。
彼の指が黒川さんの太腿の内側を這い上がっていきました。黒川さんは棚に並んだ菓子箱のパッケージを凝視したまま、動けません。指先が秘部に触れました。直視しなくても察せられるほど彼女の反応が雄弁でした。まだ部屋での愛撫の名残で、そこは濡れているらしく、彼が微笑を浮かべながら、敏感になった部分を軽く撫でます。
「黒川さんね、名前は聞いてるけど事情は聞かないわ」
「……では、私も聞かないようにします」
黒川さんの呼吸が乱れました。膝が震え、浴衣の裾が揺れます。彼女は必死に平静を装おうとしましたが、指の動きが執拗で、快感が波のように表情や手足に浮き沈みします。いつ他人に気づかれてしまうかわかりません。抑えているものの、声が上ずっています。
そのうち快感が限界に達しました。黒川さんの腰が小さく揺れ、膝も折れかけます。彼が彼女の体を後ろから支えました。そのまま、彼女は人目のある場所で、懸命に押し隠していましたが、絶頂してしまったのです。体が震え、浴衣が濡れてほんの少し薄布が透けていました。失禁でした。わずかな量でしたが、恥辱は計り知れません。
「それがいいわ。この人も、性癖がアレだけど、まぁ当てになるほうの大人ではあるの」
「この業界で長生きしちゃってるなりに、さ」
黒川さんは若手女優として名前が売れているほうです。しかし、それでも何かと苦労がある立場と聞いています。何やら、事務所の上層部がプレッシャーをかけてきていて、それをマネージャーに庇ってもらっているので、早くもっと売れて立場を強くしたいのだとか、そう彼から私は聞かされています。彼に従っているのも仕事で便宜を図ってもらうためです。
有馬さんももっと幼かったころは、子役として国民の大半が知るほど名が売れていました。子役でなくなった今は黒川さんと同様、彼に頼るところがあるようです。
「でも性癖終わってるわよ、処女じゃなきゃ興奮しないとか」
「……そうなんですか?」
「バイブや指ならノーカンらしいの、ご都合主義と言うべきかしら……理解に苦しんでるって顔。安心なさい、苦しんでる黒川さんのほうがまともよ」
また部屋に戻り黒川さんへの責めが重ねられました。度重なる恥辱と絶頂で感度が上がっている黒川さんに、彼がマッサージ師に指図して、さらに過酷な愛撫を加えたのです。
責めには、筆が使われました。細い毛先が黒川さんの肌や粘膜に押しつけられ柔らかくひしゃげます。黒川さんは浴衣を脱がされ、布団の上に仰向けに寝かされました。マッサージ師が両手足を押さえてきて、彼女は抵抗しようとしましたが、力が入りません。既に何度も絶頂させられた体は、疲労で震えていました。
筆先が黒川さんの乳首に宛てがわれました。それだけでくすぐったそうに体が跳ねます。筆がゆっくりと乳首の周りを撫で、乳輪をなぞり、固く尖った先端を軽く叩きます。黒川さんが小さく声を漏らしました。彼もマッサージ師も答えず、もう一方の乳首にも筆を這わせました。
そういう昨夜までの黒川さんの有り様を聞き知っているはずの有馬さんは、まだ私服でした。これから浴衣に着替えさせられ、黒川さんのような責めを受けるのでしょうか。あるいはそれ以上の責めまでとっくに何度も経験済みなのでしょうか。
私も彼の一部を見知っているに過ぎないのです。
「僕への貸しは早く取り立てなきゃダメだよ。証文つきの債権と違って、焦げ付くどころか、僕が灰になったと同時に煙と消えるよ」
「やけに含蓄深そうに……若いころ、あなたが誰かに踏み倒されたとか」
昨夜のことがまだ思い出されます。
筆先で弄ばれるくすぐったさと快感が混ざり合い、黒川さんの呼吸が荒くなっていきました。筆先が脇腹を撫でると、彼女の体がビクビクと痙攣しました。丁寧に、胸の谷間、へその周り、太腿の内側へと筆を滑らせていきます。あんまり黒川さんの反応が敏感そうで、肌に筆の軌跡が赤く浮かび上がるよう錯覚してしまいました。
そして筆先が秘部に達しました。クリトリスを避けて、その周囲をゆっくりと円を描きます。黒川さんの腰が浮き上がりました。わずかな声が漏れます。筆先がさらに下へ、膣口へと滑らされました。濡れた粘膜に筆の毛が触れ、黒川さんの全身が震えます。
「良くも悪くも死人に口無しなんだよ」
「あなたへの貸し、利子がつくならホールドしててもいいかな」
「当てにならないほど高い利子がつくんでしょう」
筆責めだけで、彼女は何度も絶頂の寸前まで追い詰められました。しかし直前で筆が離れます。黒川さんが『お願い……もう……』と懇願しても、彼は首を横に振るだけでした。
やがて筆が置かれ、次に電動マッサージ器の責めが始まりました。こけし型の、振動が強力なものです。スイッチを入れると、低い振動音が部屋に響きます。黒川さんの顔が赤らんだまま恐怖で引きつりました。
マッサージ器の頭が、黒川さんのあそこに押し当てられました。黒川さんの腰が激しく揺れ、足がバタバタと布団や畳を叩きました。
「そうそう、有馬さん。黒川さんって、有馬さんに憧れて芝居を始めたんだと。この機会に会ってもらおうかと」
「……ねぇ黒川さん、今あの人の言った話って本当?」
強い振動にさらされて、黒川さんがどこもかしこも汗や愛液でびっしょりになります。彼女は歯を食いしばり、絶頂を堪えようとしましたが、限界はすぐでした。刺激が怒涛のように押し寄せ、黒川さんの背中が弓なりに反りました。喉から絞り出すような声が漏れ、胴も手足も大きく痙攣します。他人の目でも明らかにわかる絶頂でした。間を置かずさらに追い打ち。たまらず黒川さんが『もう無理……死んじゃう』などと泣き声で訴えても、彼はどこ吹く風で続けさせました。
二度目の絶頂が襲いました。三度目も、四度目も。黒川さんの意識が朦朧とし、目の焦点が合わなくなっていきます。浴衣は汗と愛液でぐっしょり濡れそぼり、いつしか数歩離れた私のところまで水滴が飛び散っていました。彼女は体をもう自分の意志では動かせず、ただ振動に翻弄されるだけでした。
ようやくマッサージ器が電源を切られたとき、黒川さんは虚ろな目で天井を見つめていました。呼吸は浅く速く、全身が小刻みに震えています。彼は『また、まんまと飲まれてしまったかな』と自分がしてやられたかのように嘯きました。
黒川さんは何も答えられず、ただ涙を流していました。
「本当です……ああ、憧れて始めたのは、というのは、です」
「……複雑だわ」
「疑ってくれるね」
「あなたの言いそうな冗談だったので」
昨日までそんな調子で、今日からは憧れていた先輩女優の前でもそんな痴態を晒すことになるのでしょうか。
「とにかく8時には上がります。上がるって言ったら上がります。黒川さん、スマホか何かある?」
「アラームですか」
「雰囲気ぶち壊しになってとても続けられなくなるようなのを、お願い」
有馬さんは小さく笑っていましたが、黒川さんの表情は曇ったままでした。私と同様、昨日までのことを思い出してしまっていたのかも知れません。
『んっ、うっ、あ、あっ……! あぁっ、はぁぁぁぁ……!』
黒川さんは見返りのため、おみやげ屋さんからどうにか部屋まで戻ったあとも責めに耐えていました。
彼が指図するマッサージ師はいつのまにか二人に増えていました。彼の痴漢行為のあとだと、マッサージ師たちの動きはひどく事務的に見えて、そのくせ彼女がどう感じさせられるかすら既に決まっているかのような威圧感を醸し出していました。布団の上に座らされた黒川さんは、ただ小さく首を振るだけでした。
『僕は、ここからは見て学ぶほうに専念させてもらうよ。演技は何十年かやってきたけど、すけべは未熟者もいいところだから』
旅館の白い手ぬぐいが用意され、黒川さんの腕や手首に絡まされる動作は、丁寧すぎるほど丁寧でした。そうやって物理的な逃げ場まで塞いでしまう、という残酷な意図に不似合いでした。
『目も隠すのかい?』
『敏感になりますので。慣れさせないため弱めの刺激にしつつ、感じさせるのです』
『役者が目隠し、か。手足を縛られるようなもんだね』
『必要ならばそちらも』
手ぬぐいの白が黒川さんの目を覆いました。生地が薄く覆っていても黒川さんの表情筋がうっすら透けています。黒川さんには、ぼんやりと視界を塞がれた具合だったでしょうか。
黒川さんのくちびるが『やだ……』と呟いたように見えました。それでいて、彼女の引きかけていた頬の赤みや汗がじわりとぶり返していました。
『ん……く……っ……』
マッサージ師の一人が黒川さんの乳房に手を伸ばしました。手の平全体で包みこみ、それから揉みしだきます。もう一人が太腿の内側を、膝からあそこへ向かってゆっくりと撫で上げていきました。黒川さんがとっさにそちらを見ようとして、固まります。愛撫の気配がしながら、どう来るかわからない。それが、わざわざ薄い手ぬぐいで目隠しした狙いだったようです。
『ここからは、僕は見学とさせてもらおうかな……ここまで好きにやりすぎた』
『まず全身の感度を上げます。そのあと性感帯を刺激して、達する寸前で止めます』
彼は黒川さんのそばに座り、視線を黒川さんに注いでいました。表情は仕事中に劣らず真剣に、一方で右手は物足りないのかもぞもぞ緊張と弛緩を繰り返して彼自身の左手に押さえつけられていました。まだ黒川さんに触れたくてたまらないのでしょう。
『んぁ……っ!』
彼の手つきと比べて、マッサージ師の手つきがいっそう淡々と、けれど滑らかにも見えました。乳首を指先で転がし始めました。優しく、しかし執拗に。黒川さんが声を漏らしたあと、すぐにくちびるを噛んで声を殺そうとします。
『上げると言っても、黒川さんの場合は既に十分な感度があります。ですので、感じることへの抵抗を、どうにかして和らげます』
『リラックスでもしてもらうの?』
『それは少し難しいので、別の方向から』
マッサージ師の声音は、お料理番組で下ごしらえを説明するかのようでした。
目隠しされた黒川さんの腋の下が、快感より痛々しく引きつりました。マッサージ師の一人が手ぬぐいで何かをつまんで黒川さんに触れさせていました。
冷蔵庫の製氷機で作っていたらしき氷の一粒でした。熱を持った肌の上で、白くくすんでいた氷の表面が溶けて透明になっていきます。水滴が黒川さんの脇腹を伝い、彼女の肌の張りを引き立てました。
『ひ……っ、や、あ……!』
腋窩の薄い肌に、氷の鋭い冷たさとマッサージ師の指先が代わる代わる迫ります。肉体にこもる熱が、氷によって強制的に奪われました。
さらに脇腹を、別の手が這い回ります。指先が肋骨の輪郭をなぞり、くすぐったい場所を的確に突きました。
『くふっ、ひゅっ……! はぁぁっ、んんんぅぅ……!』
こちらまで身悶えしてしまう反応でした。強制的に笑わされる被征服感と、背筋にまとわりつく快感が、姿を思い出すだけで蘇ってきてしまいます。
『くすぐった……い、です……やめ……ひゅっ……!』
逃げようとしても、手首に巻かれた手ぬぐいが彼女の自由を奪っていました。
懇願は無視されました。腋の下を弄る指づかいが、執拗に皮膚を震わせます。むんむんとした熱が氷で冷やされ、それが愛撫でまた温められ、感覚が乱されていくようです。
腋から脇腹へ、そして腰のくびれへも続けられます。
『こんな声も出せるんだね、黒川さんって』
『声帯を閉じて声を出さないようにしていますが、くすぐったりして内側から出させると、こうなります』
『こういうほうがいいのかい?』
『愛撫と違って、くすぐりは慣れにくいのです』
『それは厄介だ』
マッサージ師が氷を黒川さんの乳首に押し当てました。悲鳴が漏れ、体が跳ね上がり、布団から腰が浮きました。表面が溶けてつるりと布団に落ちた氷が捨て置かれ、また新たな氷が乳首の周りをゆっくりと転がされます。黒川さんの顔が悲痛に歪み、首を左右に振りました。
『んんぅっ……!』
マッサージ師が氷を離し、すぐに温かい指先で黒川さんの乳首を挟みました。何度も突いて撫で、控えめなサイズの乳房がぷるぷると揺れ、汗か氷か、また雫をいくつも振り落としました。
『ぇ、あっ、んくっ……あ、つ……』
急激な温度変化という不慣れな感覚に、黒川さんは撹乱されているようです。氷の直後では、いくら無理やりであっても、人肌の体温が心地よく感じられてしまうのでしょうか。繰り返されるうちに、乳首がぷくんと膨らんで、こりこりと固そうに尖っていました。それを隠すように黒川さんが身を縮こまらせると、白い目隠しのそばにぴょこんと飛び出ている耳が真っ赤になっているのが視界に入ります。寒いのか興奮しているのか、白と赤が互いに妙に目立ちます。
『こんな小さい氷でも、寒いのかな』
『太腿が震えているのは、足を閉じたいのに閉じられないようにされているからですね』
もう一人のマッサージ師が、黒川さんの両膝の間に居座っていました。それから氷を太腿の内側に滑らせていきます。ひんやりとした感触が秘部へ近づき、黒川さんの脚が逃げるように動き、押さえつけられます。
マッサージ師が膝を押さえて開かせ、氷をクリトリスに押し当てます。
『あああっ!?』
部屋の外まで届きそうな悲鳴ですが、無理もありません。暴力的なまでの冷たさが敏感な部分を襲い、これまでよりぎこちなく、水揚げされた魚のような震え方をしています。氷がゆっくりとクリトリスの周りを転がされ、膣口へと滑り降りていきました。黒川さんの呼吸が浅く速くなり、胸が激しく上下します。
『人間の体は、肉体的な刺激にすぐ慣れますが――』
氷を離し、マッサージ師が温かい指でクリトリスを挟みました。冷え切った部分に血流が戻り、感度が跳ね上がる錯覚を起こします。黒川さんの太腿が悩ましくくねり、『んっ……あっ……あっ……』と抑えきれない声が連続して漏れました。
『――少しの工夫で回避できます。それが手早く感じさせるポイントです』
『そうか……肝に銘じますとも』
彼がメモに何か書き込む音が聞こえました。わざと立てたのでしょう。黒川さんが歯を食いしばって首筋のくぼみまでくっきりさせています。自分の恥ずかしい経過が記憶されて耐えがたいのでしょう。涙が目隠しの手ぬぐいを濡らしていきました。
『そういえば、だいぶ前の映画にあったんだよ。氷を使うの』
『ナインハーフ、でしたっけ』
『映画、お好きですか』
『温度差のほか、ありふれた品物を敢えて使う、という効果もあります』
マッサージ師が新しい道具を取り出しました。旅館のアメニティーである使い捨て歯ブラシです。透明なビニールの袋から出され、白いブラシの毛先が照明を受けて光ります。
『歯ブラシ……刺激的だね』
『筆よりコシがあります』
マッサージ師が歯ブラシの毛先を黒川さんの乳首に当てました。細かいブラシの毛が敏感な突起を覆い、軽く擦ります。
『ひっ……!?』
歯ブラシがゆっくりと乳首の周りを這い、乳輪をなぞっていきました。チクチクとした刺激が連続し、黒川さんの呼吸が乱れます。『や……それ……』と訴える声が、悲痛を通り越して諦めの響きを帯びていました。
『こんなものでも感じるんだね。歯みたいにしゃかしゃか磨いてみようか』
彼の揺さぶりに、黒川さんの表情がくしゃくしゃに歪みます。羞恥と快感と恐怖とがぐちゃぐちゃ入り混じっている、と目隠しごしでもわかってしまいます。マッサージ師は容赦なく歯ブラシを動かします。もう一方の乳首にも同じように当て、両方を同時に刺激し始めました。
『う、うっ……うううっ、ぐっ……う、ふううっ……!』
歯ブラシの細かい毛先が、逃げ場のない刺激を与え続けました。
『喉が渇いているのかな』
『唾を飲み込んでますね。緊張すると口が渇くんです』
女性にも喉ぼとけがありますが、男性と違ってふだんはほぼ見えません。首を可動域いっぱいまで曲げたり、首筋がひどく緊張したりすれば肌の上に現れます。
それを黒川さんから見て取ったのでしょう。
『なんでか、水をあんまり飲んでくれてないし』
黒川さんが尿意を少しでも抑えようとしていたのです。その意図を知りながら、彼は白々しく言いました。
『もう少し強く責めていきます』
歯ブラシの毛先が、今度は黒川さんのあそこへと向けられました。クリトリスの周囲を、掃除でもするかのように細かく、執拗に掃き清めていきます。
『ひ、ぎぃっ……! あ、あぁぁっ!』
筆よりも弾力のある毛先が、濡れた粘膜を容赦なく弾きました。音までしゃりしゃりと不気味に響きます。黒川さんの腰が布団の上で激しくのたうちますが、拘束されているせいで音がパタパタと妙に呑気な響きでした。
マッサージ師の指が、ブラシの刺激のあとから追撃して膣口をこすり、中までぐりゅぐりゅと掻き回します。
『はぅ、ほぁっ、はぁっ……あああっ!』
『歯磨き粉でも追加してみようか』
『メントールの清涼感は、一度塗るとなかなか抜けません。今回はやりすぎかと思います』
『これはこれは、勉強になります』
歯ブラシの毛先がクリトリスの周囲を不気味な音を立てて掃くたびに、黒川さんの下腹部がぴくぴくと跳ねました。
『お腹が震えてるな』
『腹筋が勝手に収縮してるんです。快感が来ると、体幹を守ろうとして腹筋が緊張します』
『面白いな。本人も気づいてないだろうに』
絶頂の火種が灯りかける直前で、ブラシの動きはふっと止まり、また太腿の内側へ氷が滑らされます。
「ひ、あ……あ、っ……!」
沸騰しそうな熱が無理やり冷やされました。急激な温度変化に血管が収縮し、感覚が研ぎ澄まされます。
マッサージ師は、黒川さんが寒さに震えているのか、あるいは与えられない刺激を求めて震えているのかを冷徹に観察していました。
『ぁ、う……ぐ、ぅ……っ』
再び乳首に当てられた歯ブラシが、今度は毛先だけでなく、プラスチックの柄で突起を刺激しました。細かくチクチクした摩擦のあとの圧迫。淡々とした動きの中に、黒川さんへの慣れをわずかも許さない、との断固とした意思が裏写りします。
『……使わなくてよかったね、これに歯磨き粉の匂いが混ざったら台無しだったろう』
私の鼻腔にも、黒川さんからあふれ出した汗と、かすかに混じる愛液のむんむんとした熱い匂いが届いていました。
マッサージ師の一人が、黒川さんの膝をさらに割り、剥き出しになった秘部をぬぷぬぷと音を立てるほど濡れた指でなぞりました。
挿入をたっぷりと思わせておき、指は膣口を素通りして、再び腋の下や脇腹を撫でたりタップしたりしました。
『い、ぃ……ひ、はは、あ……っ!』
くすぐったさが笑いを誘い、横隔膜を揺らし、体内から動揺を誘います。やがて快楽と不快が、本来ならありえないはずですが、どちらともとれてしまう混沌に変わりました。
絶頂の崖っぷちまで連れて行かれて瀬戸際でごろごろ転がされる。その繰り返しに彼女の精神はすっかり摩耗したようでした。もとよりこれまでの絶頂でひび割れていた女優・黒川あかねという殻が、またもパラパラ崩れて剥がれ落ちました。
『……っ、もう、やめて、おねがい……っ!』
黒川さんは、ついに涙ながらに声を上げました。
『まだ演技していてもいいよ、できるのなら』
マッサージ師の手がさらに速度を上げました。
一人が乳首を歯ブラシで磨き上げ、もう一人が責め手をマッサージ器に持ち替え秘部に押しつけます。しかし動きをぴたりと止めました。限界を一瞬で超えられるが、敢えて超えさせない生殺しでした。
『あ……が、はぁ……っ、はぁ……』
絶頂の崖っぷちで放置された彼女の体は、ひどい有り様でした。
浴衣が乱れてほとんど剥き出しにされた肌が熱を帯びて赤く火照り、不規則な波紋を描くように小刻みに痙攣しています。
特に腋の下や脇腹にくすぐったさの残滓がこびりついているせいか、彼女は指先一つ触れられていないのに、何かに責め立てられているかのようにひどくもだえています。
乳首は歯ブラシの刺激で乳輪までぷっくりしてしまって、今にも弾けそうなほど固く尖っていました。
秘部から、ぬるぬる白濁した蜜があふれ、太腿の付け根やお尻を伝い、旅館のシーツに無様な汚れを作っていました。
『本気汁……? 彼女は処女だと思っていたんだが』
『理屈の上では出てもおかしくありません。月経のとき、子宮から経血が出るぐらいです』
『あれって本当に子宮から分泌されるのでしたっけ』
黒川さんは、苦しげな吐息、喘ぎと嗚咽とで、また枯れ果てていました。唾液がくちびるから糸を引いて垂れ、必死に酸素を求めるくちびるが空気を食んでいます。
目隠しの手ぬぐいは涙と汗でじっとりと濡れ、悲痛な目つきが透けて見えてしまっています。
随意運動が無理になって、彼らの刺激から逃げようとしても逃げきれず、反応するだけの肉塊へ作り替えられていく。屈辱的な変化を、彼女自身が何よりも鮮明に体現していました。
『も、もう、ゆるし……許して、ください……』
『ここからは、すぐ気絶するほどハードにイカせてもらうことになるよ』
『よろしいのですか』
『明日もあるから』
無慈悲な彼の宣言を聞かされ、目隠しの下が絶望に染まりました。しかし、限界を超えた欲求が、彼女の意志を支配していました。
『……ほしい、です……』
『絶頂は小さな死、とフランスでは言うそうな』
『……いかせて……ください……っ』
『若ければ、このぐらい死んだって生まれ変われる。生まれ変わりたいほうに生まれ変われるかは、別だが』
ついにマッサージ師たちが一斉に襲いかかります。黒川さんを改めて押さえつけ、強烈で正確な手技を見舞います。
『……あ゙ああああ゙ッ!! は、あ、おっ、お゙ォ゙ッ!!』
黒川さんの喉から、人間離れした濁った喘ぎがあふれ出しました。一度目の絶頂が収まる前に、二度目の波が彼女を打ちのめします。それからも何度も重ねられ、ひたすら体をガクガクと震わせていました。押さえつけるのに二人がかりでも苦労する暴れようで、彼女の肉体が水際で最後の抵抗を見せているようでした。
それがだんだん途切れ途切れになり、やがて失禁した熱い液体がしとしと布団に落ちて染みを広げました。いつの間にか目隠しが外れて、白目を剥いているところを見てしまいました。美しい若手女優の面影が消え失せ、ただ快楽に叩き伏せられた、無力な肉塊が横たわっていました。
※
「まぁ、あんなのはね、北風なのよ。吹いてるときだけなの」
「あ、あぅ、んんっ! えう、んんっ……」
「自分でコントロールできるほうが、心地良いに決まってるわ……病みつきになっちゃうかもね?」
「んくぅっ、んんんっ……み、みない、で……」
「こんなシチュエーションで教えてあげるのは不本意だけど、〝吸うやつ〟は品物そのものは割とオススメよ」
〝今日から〟の責めは、食事、温泉、昼寝を挟んで夕方から始まりました。
有馬さんが部屋の布団で黒川さんの浴衣をはだけさせ、垂れ落ちかける雫のようなフォルムで手の平サイズの器具をあそこに近づけながら語りかけていました。
「最近は女性用の、そういう……ええと」
「プレジャートイと呼びますね。あれはウーマナイザーです。吸引で刺激を与えます」
「……いろいろあるものだね……いかんいかん、心まで年寄りになってしまった」
有馬さんが器具のスイッチを入れました。〝吸うやつ〟という有馬さんの呼び方に反して、電動カミソリか電動毛玉取り機に似た少し高い音が部屋に響きます。電動マッサージ器より軽そうでしたが、黒川さんの顔の引きつり具合は似たりよったりでした。
「これは真空を使って、クリを空気に引っ張られるようにする作りらしいの」
「……直接触れるものじゃないんですか」
「あぁ、何か返事してくれると私としてはやりやすくて助かるけど……強くもできるけどソフト、って不思議な感じなのよ」
有馬さんは器具を手に持って、黒川さんのあそこにするりと近づけます。黒川さんは恥じらいつつ背筋がびくりと震えて、凄惨な昨日の続きが始まると肉体でも理解しているようでした。
「ひ、あぁっ……!? なに、これ……っ」
黒川さんの呼吸が荒くなりました。脚を閉じようとしますが、有馬さんが膝を押さえて開かせます。昨夜マッサージ師たちに蹂躙され、開発されていた場所が、新しい刺激に早くも反応し始めます。
「強弱の調整が細かくできるの。私はそこのマッサージ師さんたちより不慣れだけど、これなら、ね」
「憧れの先輩に感じさせられるご気分はいかがかね」
「お、ねが……とめぇ……んんっ……!」
「ちょっと静かにしてもらえません? 私が黒川さんとお話してるんです~っ」
「おやおや、従順になってくれてたと思ったけど」
「目的に従っても、手段までそうとは限りませんので」
黒川さんがもがくのも、有馬さん相手だとどこか遠慮がちでした。次第に、部屋の空気も甘い靄がかかったように変わっていきます。快感が徐々にですが積み上がっていく、と空気を隔てた私にまで感知できます。
「ちょっとじっとしててね」
「ンああぁああ……っ!?」
「新型だったらあそこにくっつけてハンズフリーってマネもできたのに」
有馬さんがもう一方の手で黒川さんの乳首を軽く転がしました。両手で上下を同時に、または交互に刺激され、黒川さんの呼吸がさらに乱れます。
黒川さんの太腿の内側が震え始めるのがはっきり見て取れました。筋肉がむずむず細かく痙攣し、脚を閉じたいのに閉じられない葛藤が現れています。有馬さんは構わず器具を当て続けます。
「……あ、っ、んんぅ! 有馬、さん……っ」
「黒川さん、こう言っちゃなんだけど舞台で見るより明らかにぎこちないわね……こっちは苦手で?」
有馬さんがライバルにあたる黒川さんのお仕事をどこまでチェックしていたかわかりませんが、かつて憧れた相手から淫行を手ほどきされていると、演技だろうが素だろうが厳しいのでしょう。
黒川さんの冷静さは昨日にも増してあっさりと揺らぎ、肉体のあちこちに動揺が散らばって現れます。特に誤魔化しが効かないのが足のようです。有馬さんに頬を寄せられ何か囁かれると、足の指がぎゅっと丸まり、土踏まずが張り詰めました。
「あ……あっ……ダメ……!」
やがて明らかな限界の気配を漏らします。
有馬さんがウーマナイザーだけでなく、残りの手で乳首への刺激を強めました。指先で挟み、軽く引っ張ります。黒川さんの背中が弓なりに反り、喉から絞り出すような声が漏れました。
黒川さんの細い下腹部が、肋骨の浮き沈みがはっきり目視できるほどねじれながらピクピクと震えました。それでも有馬さんが巧みに位置を取り、刺激から逃してくれません。
「イっちゃう……イっちゃいます、から……!」
「もっと反抗的にしたら? あの人、そういうのが好きなの」
黒川さんの湿り気を帯びた艶っぽい声に、有馬さんが演技指導のように返します。
昨夜の暴力的な連続絶頂とは異なる、じわじわと神経を焼き切るような快感の波が、彼女の理性を奪っていきます。有馬さんが、黒川さんの乱れた呼吸に合わせて、ウーマナイザーの強度を一段階上げました。吸い上げる力が強まり、黒川さんの膣肉が「きゅう」と音を立てるように収縮し、行き場のない熱に代わってか愛液がじわじわとあふれてシーツを濡らします。
「聞いてないけど、たぶん私が呼びつけられたのは、あなたをもっと反抗させるためなのよ」
「はぅ、ほぁっ、はぁっ……あああっ!」
「女どうしって独特の抵抗感があるよね。すっかり折れちゃったような子でも、抵抗を再開できるぐらい」
有馬さんの黒川さんにかける言葉は、理不尽な状況を説明して和らげる気遣いのようにも、理不尽な状況を飲み込むよう強いる揺さぶりのようにも聞こえます。
黒川さんのあふれ出す蜜で滑るのか、有馬さんはウーマナイザーを握り直しつつ出力を上げました。駆動音と黒川さんの声が一段と高くなりました。
「はぁっ、ぁう! あっ!」
黒川さんの体は、昨夜の執拗な寸止めに加えて、有馬さんの存在と振る舞いも効いているのか、極限まで感度が跳ね上がっているようでした。後頭部が布団に押しつけられたままずりずり動いて、ショートヘアをめちゃくちゃに乱します。喉の奥で押し殺された声が、逃げ場を失って鼻腔へと抜け、湿った震えとなって漏れ出します。
「もっと抵抗してくれるといいわ、8時までに巻かなきゃいけないぶん、もっと、もっと」
「有馬さんったら、律儀なことを言う」
「巻けって言い出した以上、巻けるよう協力するのが筋ですって」
ウーマナイザーに吸われる粘膜は、脈動を繰り返すたびにどろりと熱い蜜を吐き出し、有馬さんの握る器具の縁を際限なく汚していきました。同時に、全身の肌が汗ばんでいるにもかかわらず鳥肌が立ち、よほど感覚が倒錯しているものと見て取れます。
指先は何かを求めるように虚空を彷徨い、やがて自分の浴衣の裾を白くなるほど握りしめます。ピンと張ったアキレス腱から足の指先にかけて、耐えがたい刺激を逃がそうとするかのように激しく丸まり、爪がシーツや畳の目をがりがりひっ掻きます。
「……なんだか気を遣わせちゃってるみたいね、黒川さんに。どうもありがとう」
どうやら、黒川さんの爪は有馬さんの手や胴体を避けているようですが、それを有馬さんが一言ねぎらいつつさらに責めを加えます。
昨夜のくすぐったさの記憶が刻まれた脇腹や腰のくびれに、有馬さんがちらりと指先を迫らせるだけで、悲痛なほど過敏に痙攣を繰り返します。触れられていないはずの場所までが、快楽の余波でひりひりと熱を持ち、彼女の全身を通して感じている快楽が暴かれている、という強烈な印象をばら撒いています。
「おかげで、こっちも思ったよりやる気が出てきちゃう」
「っく、く…………くううう、うゔぅっ……!」
責めがクリトリスの最も敏感な部分を探るように動き、黒川さんの腰が激しく跳ねます。しかし有馬さんの手が追いかけてきて、位置を定められ、2回か3回大きく苦しげな呼吸が聞こえたかと思うと、黒川さんの全身ががくがくと震えだしました。
「いや、いや……こ、これいやあ゙ッ! あああっ……!!」
有馬さんの言う〝やる気〟のせいか、例の苦しみ混じりの嬌声が黒川さんから引きずり出されました。足がバタバタと畳を叩き、手が浴衣の端を引きちぎらんばかりに握りしめます。
それを受けてなお、有馬さんが乳首への刺激をさらに強めました。指先で挟んだまま、小刻みに揺らします。黒川さんの乳首が固く尖り、乳輪までぷっくりと腫れ上がっていました。有馬さんはそれを見逃さず、腫れた部分を指の腹で圧迫します。
「時間までがんばってちょうだい、仕事だし」
「ひぎゅぅ、うく……!? ぁ、あァ、ぉおおお゙っ……!」
黒川さんの目が潤み、涙があふれ出しました。快感と羞恥が限界を超え、もう何も考えられなくなっています。憧れの先輩にこんなことをされている屈辱と、それでも感じてしまう自分への嫌悪が、涙となって流れ落ちました。
「はぁっ、はぁっ…ぃ、いぐっ……ぐっ、んぐぅうっ、ううゔっ……!!」
ぷつん、と前触れもなく絶頂の波が高くなったようで、黒川さんの体が激しく痙攣し、声にならない叫びが喉から漏れました。背中が大きく反り、腰が浮き上がり、足がバタバタと暴れます。しかし有馬さんが器具を押さえ続け、絶頂が途切れません。
「……言っておいて悪いけど、ちょっと飛ばしすぎかも」
「だ、だめ……ひっ、い、息、できな……ひぬ、し、しんじゃ……んひぃっ、く、ぅ……!」
三度目の波が押し寄せます。かろうじて歯を食いしばっています。それで押し留められた声の代償か、汗やよだれや愛液や、とにかく悲劇的にいやらしい体液がじゅぶじゅぶとあふれ、痙攣のたびに飛び散って、有馬さんの浴衣さえびっしょりと濡らします。
「憧れの先輩にいやらしいことをされて、死ぬほど嫌かな」
「くっ……ま、まだぁ……もう、や、ぁ……」
「また頼んでみるかね、哀れっぽく」
「あらら、もっと聞き分けの悪い子がお好きでしたよね?」
「……有馬さん」
「あなたの性癖をくすぐれているかどうか、気にしているんですよ、こう見えても」
有馬さんが手を止めても、黒川さんは手足やデコルテ、ウエストのあたりがしばらく痙攣したままで、荒い息をなかなか整えられずにいました。
※
「で、こうなっちゃうかぁ」
「お、お願い、です……かなちゃ……有馬さんまで、こんな……!」
「だってさ。どう? 有馬さん」
「いただけるモノがいただけるなら。わざわざここまでやってきたんですから、行き掛けの駄賃を稼いでもいいかな、ぐらいは」
「有馬さんらしいね」
部屋に布団がもう1つ並べて敷かれ、裸の黒川さんと有馬さんが並べて寝かされていました。
「最初から、そのつもりだったのでしょう。そういうことするマッサージ師さんが二人いるんですもん」
「先に有馬さんが黒川さんをお相手する、って買って出たから様子を見たけど……有馬さんの演技も、見たくなっちゃった」
「この子の横で? 引き立て役じゃあないですか」
いつの間にか外は日がほとんど暮れかけていました。もう夜で8時が近づいているとも、まだ夕方が終わったばかりとも言える具合でした。
そこからの時間で彼が望んだ趣向は、二人がそれぞれマッサージ師から責められてイカされているところが見たい、というものでした。
「どうせなら勝負にしましょう。先に音を上げたほうが負け、はい決まり」
「……それは黒川さんが不利でしょう」
「そりゃあ気力、体力だけ考えたらそうですね」
有馬さんの提案を言葉どおりに受け取るなら、どれだけイカされながら時間までに彼の性癖をくすぐれるかの勝負だと〝本気〟で拒んでいる黒川さんに負けてしまうから、我慢比べの要素も加味してくれ、という意図でしょうか。
黒川さんがプライドを捨てて音を上げたら勝負ありとして責めもやめてあげなさいよ、という皮肉も声音からはうっすら感じました。有馬さんにもそのぐらいの心があるだろう、と私が思いたくてそう聞こえただけかも知れませんが。
「ひゃっ!? これ、ゾクゾクきちゃいますね……こんなの初めて……」
「そりゃあ、氷ってふつう使わないからね。有馬さんにも初めてかな」
昨夜に部屋で黒川さんに行われた責めを再演するように、氷を織り交ぜた愛撫が始まりました。けれど今日は、同年代の女性である有馬さんが同じ責めを受けていて、お互いの反応がお互いへと聞こえてしまいます。
「まぁ、勝負と言うなら、僕もそのつもりで拝見させてもらうよ」
二つ並べられた布団で、それぞれ横たわった二人の体に、マッサージ師たちがそれぞれ手をかけています。
有馬さんは薄くくちびるの端を吊り上げ、受けて立つような挑発的な視線を彼へ向けます。対して黒川さんは、昨夜の記憶が呼び起こす恐怖に歯までかちかち鳴らし、細い指を握りしめました。
マッサージ師たちの指先が、二人の腋の下と脇腹を同時に、羽毛で撫でるように軽く這いまわります。
「ひ……は、ははっ! やだ、そこぉっ」
「っ……っうぅー……ぅ……!」
有馬さんは、鈴を転がすような笑い声とともに、くねくね身をよじってみせます。黒川さんとまったく異なる反応が映えて、彼の視線のいくらかを黒川さんから奪っていました。
そもそも黒川さんは歓心を買う余裕がありません。脇腹を軽く指先で触れられただけで、びくりと反応したり悲鳴じみた吐息を漏らしたりしつつ、必死に無表情を保とうと奥歯を噛み締めます。
「つっ……た、い……何、これぇ、変よ……こんなんで感じて……んんっ……!」
「ん、ダメ、んっ、はぅ、んっ……んぅうっ……!」
また氷の粒が、有馬さんの乳首と、黒川さんの乳首に触れます。有馬さんは媚びと困惑と拒絶の入り混じった声を漏らしつつ、少女らしい控えめながら整った乳房のラインを薄く浮き沈みさせます。
「ふ、ひゃんっ……確かに、なんだか、新鮮な感じ、だけ、ど……あぃっ、ひ、ぁ!」
有馬さんの乳首は、氷の鋭い固さに触れた瞬間、防衛本能を示すようにキュッと尖ります。対照的に、黒川さんの胸は冷たさに驚愕したように白く粟立ち、逃げ場を求めるようにぶるぶると小刻みに震えました。
マッサージ師たちは、氷の角で乳輪をなぞり、冷気で皮膚の感覚を麻痺させた直後、その場所を温かい手の平で包み込みます。
「あ、っ……! つめたいのと、あついの、交互に……っ」
「お、ねが……それ、とめぇ……えああっ……!」
有馬さんは、いっそう説明的な喘ぎを漏らしつつ肌を震わせます。氷の無慈悲な冷たさと、直後に押し寄せる人肌の圧迫の落差に、脳の処理が追いつきません。冷たさに耐えるために張り詰めた神経が、温かな愛撫によって無理やり弛緩させられ、血が戻るのに紛れて望まぬ快楽がじわじわ染みこんでいきます。
マッサージ師の指先が、氷の雫を潤滑剤にして、二人の乳首を同時に指先で転がしました。
「ぃ、いま、こりこり、だめ……ん、ダメ、だめったらぁ……んっ、はぅ、んっ……んぅうっ……!」
「……んん、っ! これ、だめ……っ、ひぅ、うん……っ」
黒川さんが必死に反応を抑え、有馬さんがやや大げさに反応します。有馬さんは迫真より媚びだと割り切ったのでしょうか。二人の悲痛で淫靡な状況と対比とをこの空間に改めて刻んでいくようでした。
愛撫が重ねられ、たちまち甘酸っぱい匂いが立ちこめます。二人のそれが混ざると、立ち合っているだけの私さえ軽いめまいに襲われます。
「おっぱい以外も反応してるね」
「性感は体の一部でも、興奮や羞恥は全身です」
乳房を執拗に弄られ、二人の下腹部には逃げ場のない熱い塊が溜まっています。他人で素人の私がすぐそう見てしまうほど、それぞれの秘所の粘膜がひくつきながらぬらぬら濡れています。ひくつく1回1回が、快楽への抵抗を内側から激しく叩いているようでもありました。
「……おお、もうそっちを使うんですか」
「時間制限がありますから」
「君たちまで慌てなくても」
「お手本を見せてくれ、との仰せですから」
マッサージ師たちが電動マッサージ器を取り出しました。こけし型の、振動が強力なものです。スイッチを入れると、低い振動音が部屋に響きます。有馬さんの目がかすかに、黒川さんの目が明らかに引きつりました。
「これさぁ……本来の、凝りほぐし用途のほうが向いてるわよ……んんっくっ……! だって、余計なところまで、ぶるぶるって、届いちゃうし……」
太腿の内側に当てられると、有馬さんがぴくりと跳ねながら愚痴がましくこぼします。軽い口調で言いますが、その声はわずかに震えています。
「ん……ダ、メ、んっ、はぅ、んっ……んぅうっ……!」
黒川さんは、マッサージ器の稼働音だけで全身がびくりと強張っていました。ひっ、ひくっ、と呼吸がしゃっくりのように奇妙に乱れます。しかしマッサージ師が構わずマッサージ器を握り、黒川さんの秘部へと迫っていきました。
二つのマッサージ器が、ほぼ同時に二人のクリトリスへ達します。
「あひっ、んひぃぃっ、んやっ……! これ、だから、クリにはっ、つよすぎ……は、ぉ、ァ、あ……ッ!!」
「っ……っうぅー……ぅ……!」
有馬さんの笑いながらの抗議が途切れます。敏感な部分への暴力的な振動に容赦なく襲われ、彼女の腰が逃げるように揺れ、けれどあっさり押さえつけられ追撃を見舞われます。
黒川さん担当のマッサージ師も続きます。二つの電動マッサージ器が唸りを上げ、二人の秘部を同時に蹂躙し始めました。ぶじゅ、ぶじゅ、と雫が弾けるのはどちらが立てた音か。すぐ考えても無駄だとわかるほどどちらも濡れていました。
「そ、そうね、ちょっと離してもらえたら、まだ……んきゅっ……!? あ、これ、あそこの奥も同時に、って……んぐぅうっ、ううゔ……っ!」
有馬さんは、どうやら膣内にまで波及する振動に身をよじりながら、目を白黒させつつ彼に声を投げます。
「ん、あぁっ……! これ、すご……脳みそまで、溶けちゃう、わよ……っ」
喉から漏れるのも、掠れた、それでいて少し甘ったるすぎる悲鳴でした。彼女にとってこの絶頂は、場を盛り上げるための小道具に過ぎないのか、そう言い張っている演技なのか。
マッサージ器のヘッドが粘膜を揺るがすたび、彼女はわざとらしく腰を浮かせ、絶頂の予兆を隠さず表現します。
対して黒川さんは、もはや言葉を紡ぐ余裕すら奪われていました。
強烈な振動がクリトリスと膣奥の芯をまとめて直撃し、昨夜のトラウマを強引に快楽へと書き換えていきます。彼女はくちびるを血が滲むほど噛み締めましたが、肉体は無慈悲な刺激に屈服し、ガクガクと不規則に跳ねました。
「ひ、ぐ……ぅ、あ、あぁぁぁっ……!」
黒川さんの目からは、屈辱と快感が混ざり合った涙があふれ出し、首が振られた勢いで頬や耳や額とあちこちに伝い落ちます。
対して有馬さんを担当するマッサージ師が、振動を当てたまま、有馬さんの腋の下を指先でくすぐります。
「は、ははっ! やだ、もう、おかしくなっちゃ……あ、あはっ、あぁぁんっ!」
有馬さんは笑い混じりの喘ぎ声を何度か上げたあと、声をいきなりこもらせます。細い手足をびくり、びくりと痙攣させ大きく背中を反らせました。誰の目にも明らかな絶頂を披露しました。
「んひゅっ……!? や、やだ、イッちゃったってば、これ、まだ……ちょ……きつい、ってば……い……っく、い、い、い……ッ!」
一呼吸も置かず、有馬さんの乳首をマッサージ師の指が、ぐりっと力強くひねります。
「はぅ、あ――あ゙っ、あはっあお゙おおっ!?」
下腹部では依然として電動マッサージ器が猛威を振るい、粘膜を震わせています。上下から交互に叩き込まれる苛烈な愛撫に、有馬さんの計算された腰の動きが、次第に制御を失った痙攣へと変質していきました。
「っく、う、あぁっ……! ちょっと、まって……これ、は……っこんな゙っ、ちょっ、や、め゙ぇ……」
乳首を弾かれるたびに腰が跳ね、クリトリスと下腹部を震わされるたびに指先がシーツにぎりぎりと食い込んでいます。黒川さんの絶頂を先に見ていなかったとしたら、私も心配で声ぐらいかけたでしょう。演技の余裕が薄れていました。黒川さんが隣にいて、有馬さんの理性にもどこか負荷がかかっていたようです。
「あ、あ゙ぁッ、うぐ……や、め……あ゙あああッ!! ん、お、お゙ぉッ!!」
隣で、黒川さんは演技すらできず絶叫しています。
喉が痛めつけられて濁音ばかり漏らしています。一度目の絶頂の余韻が収まる前に、マッサージ師の手指が強引に二度目、三度の波を引き起こします。彼女の体は、意志とは無関係にぴくん、ぴくんと大きく跳ね、失禁の熱い飛沫が有馬さんの太腿にまで飛び散りました。
「すごい声だね」
「声だけではありません。瞳孔が開いています。脳は確実に興奮しています」
「……ああ、そうなの?」
彼が疑問を言い終わる前に、黒川さんの瞳ががくんと上まぶたに隠れて白目を向く格好になりました。彼女にとっての絶頂は、もはや快楽ではなく、肉体を内側から焼く暴力でした。
「ひっ……ま、まだぁ……もう……ひゃはっ!? こ、こらっ、くすぐりと同時ってホントにズル……っく、く……くううう、うゔぅっ……!」
「んひぃっ、お゙っ、ほぉぉおっ――ぐ、んんっあ……あ、いっく……!」
それからも執拗な愛撫と絶頂が引っ切り無しに続けられました。
約束の8時になったとき、有馬さんはぜぇぜぇ、ひゅうひゅうとひどい喘鳴とともに息をついていました。黒川さんはとっくに失神しており、アラームだけがしばらく虚しく鳴っていました。
「ひゅ、ふ……この子が……こうまで、突っ張る、なんて」
「がんばるもんだよね。お嬢様育ちなのに」
有馬さんは起き上がって何かを言おうとしますが、起き上がりきれず、ついにがっくり首を布団に投げ出しました。
「……負けちゃったら、どうしよ」
「君らお若いし、勝負は何度もできるよ」
「……大っぴらにできない勝負は、もう、いい、です」
「イカされ続けての失神ぐらいじゃ、死に尽くせないよ、たぶん」
見ているだけだったのに、彼は大儀そうに深く息をついて、眩しげに目を細めて二人を眺めていました。
(おしまい)