TS転生してHな退魔少女になったのでメ〇堕ち……しないよ!? 作:H・I
扉を開けた先の部屋は今まで以上に濃い冷気に満ちており、奥の窓際に男性と思われる人影がこちらに背を向ける形で立っているのが見えた。
輪郭はだいぶぼやけているが強烈な霊気を感じる。間違いなくラスボスだ。
夏なのにセーターを着ているのは、亡くなったのが冬だからだろうか?
(……まあ、考えても仕方ないか)
意志疎通できるほどの知能と冷静さがある霊なら、会話で霊の未練を解消し成仏に導くという1番穏当で好ましいやり方もある。しかしこれは未練の内容にもよるが難易度が高く、それ以前にこの
部屋に入って扉を閉め、腰のホルダーを全部外して扉の脇に置いてからゆっくりと彼に向かって歩いていく。
幽霊は反応しない。ぼーっと外を見つめている。
しかし不意打ちは窓際だとちょっと危険が伴う。破魔札を投げるなら安全だが、お札は結構いい値段するのだ。持ってはいるが、あまり使いたくない。
なのでそのまま進んで部屋の中央まで来たところで、私は足を止めて幽霊に声をかけた。
「……こんばんは」
すると幽霊はのろくさとした動きで体ごと振り返ってきて、私と目が合った。
数秒ほど無言で見つめ合った後。
「■■■■■■ーーーー!!」
幽霊は言葉にならない叫びと共に襲いかかってきた。性的な意味で。
幽霊や妖怪には法律や世間体は関係ないし、この
え、女性的な感性があるなら気持ち悪いとかおぞましいとか思わないのかって? うん、それはまあ退魔師たる者このくらいは平気かな。
というか紋様出してる間はそういう感覚ほとんどなくなるんだ。
「……っくぅン! はふぅ」
剥き出しのプリミティブな欲求を正面からぶつけられて子宮がちょっとうずいたけどガマンガマン、ってそれは女性の感覚、じゃなくて女性でもダメなやつ!
とにかく私はすっと腰を落として、手甲と脛当てに霊気をこめた。
「ごめんなさい。どうか安らかに」
先ほどと同じ謝罪と鎮魂の言葉を述べてから、1歩踏み込んで幽霊の胸板に右ストレートを叩き込む。人型を保っている霊の
だから心臓を狙って、なるべく痛い思いをさせないよう一撃で祓い切る!
「■■■!?」
カウンターをまともにくらった幽霊の突進が止まり、後ろによろめいてたたらを踏む。痛覚は残っていないらしく悲鳴は上げなかったが、思わぬ反撃に戸惑っているようだ。
私としては今ので彼を祓えなかったどころか、胸板がちょっとへこんだだけで済んでいるのが驚きなのだけれど。
「紋様の副作用で体が気持ち良くってなかなか全力出せないというのもあるけど……あの
しかし彼の今の動きを見る限り、私より遅いし武術の技や特殊能力もなさそうだ。双和家式除霊法でいけるだろう。
……痛覚はなさそうとはいえタコ殴りすることになって申し訳ないと思うが、本当に房中術やるわけにはいかないし。
「はぁぁっ!」
彼が掴みかかってきた両腕をアッパーで跳ね上げ、続けて顎と胸板にも追撃を加える。4連コンボで姿勢を崩させたところに、また胸板に3発目を入れた。
この感触だと、心臓部は半分くらいなくなっているはずだ。
「■■■……」
痛覚はなくてもダメージを受けると苦しいのか、彼が傷跡を手で押えて悶える。
私も(精神的に)胸が痛いが、私にできるのはなるべく早く成仏させてやることだけだ。
ただ彼が逃げ出すと厄介だが、その気配はない。というか今、その視線は私の胸元に注がれていた。
「この服装だものねえ」
アクションするたびに派手に揺れながら見え隠れするおっぱいから目が離せないようだ。私の動きによっては乳首まで露出しそうだし。
なお身体強化がクーパー靭帯にも効いているので、ちょっとノーブラで暴れたくらいで将来垂れ乳になるようなことはない。むしろ鍛えられて形がさらに良くなるというものだ。
それはそうと胸を注視されるのは別にいいが、上半身に注目している相手にパンチばかりというのは良くないかも知れない。たまには違う攻撃もした方がいいだろう。
「はあっ!」
意表を突いたローキックで、右膝の横側に痛打を受けた彼ががくりとよろめく。ついで左膝も蹴ると両膝を床についた。
彼の頭が低くなったところに、顔面に前蹴りを2連打した。
……ひどいことしてるね。本当にごめんなさい。
ただこの辺りの動作はスカートの中を見られたかも知れないが、パンツを見せるくらいならお詫びの一環ということで受け入れようと思う。
そしてとどめの爪先蹴りが、彼の心臓を真裏まで貫いた。
彼の身体がほつれ始め、朝靄のように消えていく。中枢部を破壊され、霊体を維持できなくなったのだ。
つまり除霊成功ということである。私は黙ってその光景を見届けた。
救いだったのは、彼から私への怒りや憎しみを最初から最後まで感じなかったことだ。私の気持ちが通じていたのだろうか。
―――いや、ちょっと待て!!
消えていっているのは胸部と腹部だけで、頭部と両腕と足腰はそのまま残っている。これはまさか……!
私が霊感に従ってバックステップした直後、その頭部と両腕と足腰が胴体から分離して襲いかかってきた。しかも頭と腕は宙に浮いている。
「合体霊……! 初めて見るけど本当にいたんだ」
複数の霊が合体して1体の強い霊になるというケースを聞いたことはあるが、まさか自分の初仕事で遭遇することになるとは。しかも今の今まで気づかないほどぴったりフィットしていたのは驚きだ。
でもこれで彼が頑丈だった理由が判明した。現に今残っている4体は、さっきまでよりパワーも硬さもだいぶ落ちているように見える。
「……速い!?」
しかしスピードはむしろ上がっていた。初撃は躱せたものの、すぐ追いつかれてしまう。
「くっ!」
両腕が左右から掴みかかってくるのを、こちらも両手のパンチで打ち払う。頭部と足腰が斜め上と斜め下からぶつかってきたのを二段蹴りで撥ね飛ばした。
これでこの場は凌いだが、姿勢が崩れていた上に相手は野球のバットで打たれたボールのように飛んでいって衝撃を逃がしていたので大したダメージは与えられていない。すぐ戻ってきた。
「むう、なかなかやる……」
それに彼らから感じる「プリミティブな欲求」が4倍、いやそれ以上になったので下半身がますますうずいてしまう。
ただ彼らにとって自分がただの痴女であったなら、欲求は弱まるはずだ。それが逆に強くなる一方なのは、ただの痴女ではなく魅力ある女性だと思ってくれている証だからそれは嬉しい。
幽霊は欲望や執着が増すとその分強くなるから除霊にはマイナスなのだけれど……じゃなくて! 私は男性だから、魅力ある女性と思われても嬉しくなんかないのだ!
「あ」
考え事というかセルフツッコミしたのが隙になって、4人に囲まれてしまった。迂闊!
まずは頭部がまた斜め上から急降下して頭突きを繰り出してきた。さっきより速いのは、1度迎撃されたので生半可なことでは私には触れられないと学んだからか?
殴るのは間に合わず左腕の手甲で受けたが、今回も姿勢が崩れていたのでよろめいて後ろに片膝をつく形になった。そこに足腰が吶喊してきたので、とっさに右手のひらをかざして止める。
「……ん?」
それで足腰の吶喊は止まったが、彼が蹴りを繰り出すでもなく一旦下がるのでもなく、じりじりと前進して私の手に体を押し付けてきたのは何故だろうか。
「……って、あ、きゃあ」
思わず女の子っぽい悲鳴を上げてしまったが、それは私の手のひらが当たっているのが彼の股間だったのに気づいたからだ。私の手甲は手のひらと指の腹は肌を出しているので、じかに彼のズボンに触れておりアレが硬くなっているのが分かる。
しかも両手がふさがったところに両腕が襲ってきて、お尻を左右から鷲掴みにされてしまった!
「きゃああ!?」
これは気持ちい、じゃなくてまずい。無抵抗でお尻を揉まれっ放しなのは危険だ。
しかしこの体勢では普通に反撃するのは難しい……いやあれならいけるか!?
私は左腕の力を抜くと、ぐいっと体ごと押し込んできた頭部を逆に胸元に抱え込んだ。
「くぅぅ……ッ、あっ、あぁ」
彼の強烈な欲望の波動が心臓に染み込んできて、私は思わずぶるっと身を震わせた。
しかし私の期待通り頭部の動きは止まったので―――正確には胸元でふにふに首振り運動されているが―――足腰に集中することができる。
「えええええいっ……!!」
意念を右手に集中し、
しかしただ奪うだけでは逃げられてしまうので、ちょっと工夫が必要だ。
「これなら、どうですかっ!?」
彼の霊力を奪うのと並行して、私の昂っている気分を乗せた霊力を送り込む。送っている量は奪っている量の半分以下だが、自分が気持ち良くなる上に私が悦んでるのも伝わるから、逃げようとは思わないはずだ。
先ほど述べた房中術的技法である。図らずもやることになってしまったこの作戦は幸いにも図に当たり、足腰はあっさり動きを止めた。
「■■■……」
彼は形状的に言葉は喋れないが、とても悦んでいるのは分かる。
その熱く脈打つ霊気が私の腕に入ってきて、私も熱い喘ぎをもらした。
「ふうぅっ……はぁ……はぁぁ。脚と腰だけなのにすごいですね。それともそこだけだからでしょうか?
それじゃこのまま……え、もっとハードに? はい、わかりました」
当人の了承どころか自発的な希望を得たので、フルパワーの吸収と送信を実行する。
足腰がびくびくびくっと痙攣し、その直後に私も同じように痙攣した。
「はーっ、はーっ。す、すごかった」
予想以上に大量の激しく迸るような霊気を一気に吸収したので一瞬意識が飛びかけたが、そのかいあって彼の姿はホログラフのように存在感のないものになり、先ほどの胴体と同じように消え始めた。
何もかも綺麗さっぱり吐き出して賢者、もとい精神的にも(一時的にだろうが)この世への未練はなくなったらしく、欲求も妄念も感じられない。
「よかった。おやすみなさい」
なので私も笑顔で彼が逝くのを見送った。何というか、満足感とか達成感とか、そういうものを感じる。
ただ私の下半身、特に股間の辺りがとろっとろになっちゃって力が全然入らないけど、相手の動きが止まっていれば困難はない。私はまず、頭部を両手で掴んで胸元から引きずり出した。
何か言ってるけど聞いてあげない。
「それじゃ、あなたもおやすみなさい」
そして先ほどと同じ方法で昇天させた。殴って祓うと不公平になるし、お互い気持ちいいしね。
足腰の
状況を理解していないのか、それとも私のお尻がよほど触り心地がいいのか、逃げようとしない両腕をがっちり握る。
といっても握り潰すとかじゃない。今の2人と同じように、気持ち良く、ね。
「……おやすみなさい」
こうしてどうにか両腕も祓うことができた。
あっついのを4回もいっぱい
その上でホルダーを回収して、念のため鬼火の時と同じ後始末をする。
あとは一応他の部屋を見て回れば終わりかな、と少しだけ気を抜いた時、大変なことに気がついた。
パ ン ツ 穿 い て な か っ た 。
…………まあスカートの中を見られたかどうかは分からないし、仮に見られていたとしても彼らはもう成仏している。こちらも忘れてしまうべきだろう。
数分ほど懊悩した後そんな結論を出した私は、予定通り他の部屋を全部回って異常がないのを確認してから、この「元」幽霊屋敷を後にしたのだった。
主人公はドジッ子かも。
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