天才魔術師の女の子が幼馴染の男の子を捨てて屈強な騎士のお嫁さんにされちゃう話 作:pocket_manimu
二次創作ものを新しく書いたのでハーメルンにも過去作を載せておきます。
僕はヘンリー。
アムズ村出身の騎士見習いだ。
15歳の時に騎士見習いになってから6年以上ずっと見習いのままだったけれど、最近副団長のユージーンさんも褒めてくれるようになったし下級騎士になる日も近いかもしれない。
でも、同じアムズ村出身で幼馴染のセントーレアは今じゃ宮廷魔術師の次席だ。
セントーレアはすごい。
僕らが9歳か10歳くらいの時だったと思う。村に来ていた行商人のおじさんに少し魔術を教わるとすぐにその才能を発揮した。
魔術師を志す者は皆、王都にある王立魔術学校を目指すことになる。私塾のような魔術学校はいくつかあるけれど、それらは特殊な流派を教えるためのもので例外のようなものだ。
王立魔術学校は才能ある若者を集めるべく受験料は無料で、成績優秀者には学費の免除もある。
セントーレアの家は裕福ではなかったから魔術の教本は基礎を学ぶ1冊か2冊しか買ってあげられなかったそうだけれど無事に魔術学校の入学試験を優秀な成績で突破し、学費を免除してもらっていたらしい。彼女が入学した12歳という年齢は魔術学校の入学条件の最下限だそうで、大体は15,6歳くらいで入学するそうだから、この時点で天才といっていいだろう。周囲と年齢も離れ、いつも図書館に籠って魔術の勉強をしている彼女はさぞ浮いていただろうが、彼女の魔術の才はとどまるところを知らなかった。在学中に発表した論文『魔術現象の体外干渉時に発生する力場の解析』によって通常10年のカリキュラムの組まれている魔術学校を飛び級し4年でさっさと卒業。校長であり宮廷魔術師長であったホレイシオ・マクファーレン候の推薦によって16歳で宮廷魔術師となった。
これはさすがに異例というほかなく、不世出の天才魔術師誕生の噂は魔術師や冒険者の間だけでなく民衆の間でも話題になったくらいだ。
僕に才能はないけれど、セントーレアの隣に立てるように努力してきたつもりだった。
彼女が12歳で魔術学校に入学し、僕には魔術の才能はなかったからひたすら剣を振った。努力を認められ、15歳で騎士見習いになれたときはとてもうれしかったんだけれど、セントーレアが16歳で宮廷魔術師となったときは彼女との間に開いた差にくじけそうになった。
でも、彼女は家族からの手紙で僕が騎士見習いとして城に来ていることを知っていたそうですぐに僕に会いに来てくれたんだ。
会うのは4年ぶり。彼女のアイボリー色の長い髪と濃い蜂蜜色の涼しげな瞳は変わっていなくてすぐに彼女だと分かった。
僕は彼女がずいぶんと遠いところに行ってしまったように感じてもしかしたら僕のことなんて忘れてしまっているんじゃないかと思っていたのに、彼女は「ハリーと一緒にお城で働けるなんて嬉しいよ」と言ってくれたから、僕は彼女の隣に立てる騎士になれるようずっと剣を振り続けた。
僕たちは時々会って話をしたり、ご飯を食べたり、街でデートをしたりした。
手をつなぎながらウィンドウショッピングをしたり、夕陽を見ながらキスをしたりした。
村にいた時より僕たちはいくらか大人になっていて、昔みたいにかけっこやかくれんぼをしたり川で水遊びをしたりすることはなくなっていたけれど、長い時間を共に過ごした。
そしてある夜、ずっと君の隣にいられるように努力し続けると彼女に告白し、朝日を一緒に見た。
でも、彼女が宮廷魔術師となって2年ほど経ち、当時宮廷魔術師長だったホレイシオ・マクファーレン候が亡くなってからは頻繁に会ったりはできなくなってしまっている。
原因は騎士団長のランドルフ・ブロックルバンク候にあった。
僕らのアムズ村は団長の治める領地の中にあり、それもあって団長は騎士見習いながら僕の顔と名前を憶えてくれている。
もっとも、騎士見習いである僕に団長が稽古をつけてくれるわけでもなく何か雑用があるときに優先的に声がかかるくらいだ。
他の見習いたちは僕を憐れんでくれるけれど、団長に顔を覚えてもらっていることは大きなアドバンテージだと思う。
そんな団長は大の魔術嫌いで有名で魔術師は軟弱者だとよく言っていた。
もちろん宮廷魔術師も敵視していたのだが、今までは同じ侯爵家であるマクファーレン候がそのトップに立っておりあまり表立って強硬な態度は取っていなかった。
そこにマクファーレン候の訃報である。
そしてもう一つ、団長は徹底した男尊女卑思想の持主で、つまり若い女の魔術師で巷じゃ天才と持て囃されるセントーレアは目の上のたん瘤そのものだったというわけだ。マクファーレン候の肝入りだったためにセントーレアにちょっかいをかけられなかった団長はここぞとばかりにセントーレアに敵意をむき出しにしだした。
僕もセントーレアもまさかそこまでだとは思ってもみなかったが、なんと団長はセントーレアに決闘を申し込んだのだ。
もちろんセントーレアも断ったがあまりにしつこく、結局決闘が行われることになった。
結果はセントーレアの圧勝。最初に撃った土魔術の一つが団長の顎にあたって気絶してしまい、ユージーンさんの審判で終了した。
彼女もあまりにあっけなくて困惑していたが、団長が本当になめ腐っていた上にあたりどころが悪かっただけなのだ。
実際団長は物理的にはべらぼうに強い。天に与えられた肉体は他の追随を許さないといっていい。
身長213㎝、体重180㎏。筋肉の密度が常人とは違う上に、その量もまるで山かと見まがうほどだ。
最初の1,2発は受け止めてやろうと思っていたに違いないし、真剣すら通さない鋼の体をもってすればそれは慢心ではないのかもしれない。
反射神経や動体視力も化け物じみている団長ならあごに飛んでくる土塊をかわすなどわけなかったろうが、団長は強いがゆえに知らなかったのだ。人間は顎をかすめるように当てられると脳が揺れてしまうということを。かくいう僕もユージーンさんの説明を聞いて初めて知ったのだけれど。
当然、団長は恥をかかされたと激怒。すぐに再戦しろと叫んだが、騒ぎを耳にした国王陛下が「城の人間同士で私闘など何事か」と決闘を禁止。
さすがの団長も国王陛下には逆らえず、その日から団長の中で魔術師は軟弱で臆病な卑怯者と文言が追加されるようになった。
セントーレアと付き合っているというだけで毎日しごきをうけることになった以上セントーレアと会うのがバレたらどうなるかわからないので、密会のようにひっそりと会うくらいしかできなくなってしまったのだった。
彼女は今何をしているのだろうか。彼女のことを思いながら、僕は今日も剣を振るっていた。
俺はランドルフ・ブロックルバンク。
ブロックルバンク侯爵家の当主であり、マクナイト王国騎士団の団長だ。
大陸の6割を占める最大の国であるマクナイト王国の騎士団長であるということは、俺が世界最強であるということだ。
であるにもかかわらず、市井の間じゃあセントーレアとかいう小娘の話ばかりがあがっているらしい。
若干16歳で宮廷魔術師入りを果たした稀代の天才魔術師。単身で白金龍を討伐し二つ名”
気に入らない。龍の単独討伐くらい俺だってしたことがある。なのにこれだ。
遠距離からちまちまと攻撃する軟弱で臆病な卑怯者の癖に、俺の与えてやったチャンスで偶然勝利をつかんだからってこの俺を下に見やがる。
男に抱かれりゃあ媚びへつらうしか能のねぇ女の分際で、だぞ。
なんとかして叩き潰してやりたいが、名案は思い付かずイライラが募るばかりだ。
城にある自室に、ドアを蹴り開けて入る。
「……誰だ。さっさと出てこねぇと殺すぞ」
部屋の中に侵入者がいる。第六感がそう囁く。場所は……クローゼット横だな。
「ま、待ってください!さすがランドルフ様です!しかし私は姿も音も魔力も、すべて消えていたはず。一体どうやって見破られたので?」
ずかずかと近づいていくと透明な布のようなものを脱いで慌てた小男が姿を現す。
「そこだけ何もねぇ。ならそこに何かがあるんだろ」
簡単な話だ。というと小男の顔がひくひくと引きつる。
「さて、城への不法侵入は死刑だ。騎士団長の権限で刑を即時執行する……と言いたいところだが、一応お前がなにもんで、何しに来たのかくらいは聞いておかないとユージーンにネチネチ言われそうだな。自己紹介しろ」
「はい!私はアッシミリスと申しやす。『テトラオウル』の遣いでやってまいりました。ランドルフ様にとっても悪い話ではないかと」
『テトラオウル』といえばマクナイト王国だけでなくこの大陸全土の裏社会を牛耳る裏組織の名前だ。
曲がりなりにも城に侵入してきた以上それなりのバックグラウンドがあるだろうとは思っていたが、想像以上の大物だな。
「話は聞いてやる。とりあえず話してみろ」
「”
俺の眉がぴくりと動いたのを見てアッシミリスと名乗った小男が続ける。
「最近我々が新設した下部組織がありまして、そいつらは女魔術師専門の誘拐・調教・販売屋です。こいつらが”白金”を調教してお渡しいたします」
「代金はどうする?忌々しいことにやつは多くの人間に評価されている。安くはなかろう」
「我々の組織の黙認。協力者になっていただきたいとは言いませんが、この国の武力の頂点に立つランドルフ様にお目こぼしをいただけるなら我々にとってこれ以上のことはございません」
ふむ。別に悪くない話だ。セントーレアを受け取った後、こいつらを裏切って組織を潰してもいい。他の誰かに組織との繋がりがバレても泳がせてしっぽを掴むためだったとでも言って、セントーレアにいうことを聞かせて有利な証言を言わせればどうとでもなる。
「お返事はまた後日お伺いに参りますので「いいだろう」はい?」
「その話、乗ってやろう。それで、誘拐と受け取りの方法はどうするつもりだ?」
「え、えぇ、ありがとうございます。誘拐の方は魔術師の毒物探知にかからない遅効性睡眠薬がございますので使用いたします」
毒物探知というのも初耳だが、卑怯者同士姑息な手で小競り合いをしているらしい。
「睡眠薬を飲ませるのはどうするのだ?」
「必ず方法はございます。我々にお任せください」
「ふっ、俺の女を使え。少し待っていろ」
部屋を出ると食堂に向かう。
夜も遅く、食堂の利用者は少ない。すぐに目当ての女が見つかった。
普段給仕をしているメイドだ。顔は地味だが胸と尻が大きく抱き心地は悪くない女だ。
「あっ、ランドルフ様♡お食事ですか?」
「すぐに俺の部屋まで来い。お前に話がある」
「え、ランドルフ様のお部屋に!?承知いたしました!」
メイドは手に持っていた道具をすぐに片付けるとすでに歩き出していた俺の後ろをついてくる。
部屋に戻るとアッシミリスが居心地悪そうに縮こまっていた。
「アッシミリス。この女を使え。城の食堂の給仕係だ」
城中の人間を把握しているメイドは自分が知らぬ小男が部屋にいることに困惑し、アッシミリスもおなじく急に部外者が出てきたことに困惑する。
「女。今晩抱き潰してやる。が、そのあとやらせる仕事をしくじればもう二度と抱いてやらん。できるな?」
「ひぃん♡はいっ、もちろんです♡ランドルフ様のご命令なら必ず♡」
尻を揉みながら耳元で指示を出せば喜んで言うことを聞く。俺が抱いた女は決して俺を裏切らない忠実なしもべになる。当然のことだ。
「受け取りが面倒だから直接俺に抱かせれば済む話だろうが、お前らの調教とやらにも興味がある詳しい話をしろ」
アッシミリスもこのメイドが決して裏切らない手駒だと受け入れたのか誘拐のための手はずを話し始めた。