「ちっ・・・なんだったんだ?コイツら」
シュウ達が帝都を脱した頃、オーバーキル達の波状攻撃によって動きを止められていた『光の戦士達』のサーラ達は、僅かな隙を見つけ攻勢に転じ、いささか時間はかかったがオーバーキルの全員を打ちのめしていた。
オーバーキル達は連携によりうまく立ち回ってはいたが、しかし相手は勇者パーティー『光の戦士達』のメンバー達である。流石に制圧しきれることはなく、最後は返り討ちに遭ってしまった。
「へっ、へへっ・・・ざまぁねぇぜ・・・」
レーナの炎魔法に焼かれて髪はチリチリ、服は焼け焦げて全裸になった構成員は、地面に突っ伏されながらもサーラ達に笑いかけて言った。
返り討ちにされたとはいえ、オーバーキルの目的はあくまでサーラ達の足止め。目的は十分に達している。
ガッ
「ぐっ・・・!?」
サーラ達を煽ったオーバーキルの構成員は、レーナによって顔面を踏まれ、地面にグリグリと押さえつけられた。
レーナはそれでも気が晴れないようで、爪を噛みながら少し眉を寄せる。
「なんてこと・・・シュウを完全に見失っちゃったじゃない」
ガスガスガス・・・
晴れない怒りを乗せて、何度も連続で構成員を踏みつけるレーナ。
「痛っ・・・痛っやめて・・・痛っやめっ・・・・・・あっ♡もっと、もっと強めに(豹変)」
「くっ、いいなぁ」と、レーナのような美人に踏まれることに悦に浸る構成員を見て、少し羨ましそうにする構成員がチラホラ視線を投げかける。
「邪魔しやがったし、なんかムカツクしもう少しとっちめとくか?」
そんな構成員達を見て不快になったサーラが剣に手をかけていると、そこへサーラ達と同じくオーバーキルに攻撃され、ボロボロになった聖騎士がやってきた。
「すみません皆さん・・・助けていただいてありがとうございます」
聖騎士はそう言って頭を下げる。
サーラ達からすれば自分達の邪魔になるオーバーキルらを撃退しただけなのだが、それは同時にオーバーキルにやられていた聖騎士達を助けることに繋がっていた。
「どうということはありません。私達は人として当たり前のことをしたまでです」
ついでに助けた形になっただけなのに、ちゃっかりそれに乗っかったアリエスが満面の営業スマイルで微笑んだ。
美少女に微笑まれ、頬を赤く染めた聖騎士は少しばかり視線を逸らし、頬をかく。
お礼はいいから、早くシュウの追跡をしなくては・・・とやきもきするアリエスだが、次に聖騎士の口から出て来たのは意外な言葉だった。
「それでですね・・・助けられておいて、本当に申し上げにくいのですが・・・」
他の聖騎士達も何が気まずそうに視線を落としながらゾロゾロと現れ、いつの間にかアリエス達を取り囲む形になっている。
この事態にアリエス達も首を傾げていると、聖騎士はキリッと真顔になり、意を決したように言った。
「貴方方全員、騒乱罪で逮捕です」
「えっ」
流れ変わったな・・・と思う暇もなく、「確保!」の叫びと同時に聖騎士達がアリエス達に飛び掛かる。
アリエス達は聖騎士達の恩人ではあるが、同時に帝都を騒がせた罪人でもある。
何しろ帝都の往来で一般人を巻き込むほどの破壊活動をしてきたので、当たり前と言えば当たり前である。しかも自分で治療することを前提にしているとはいえ、被害者が出てもやむを得ない旨の発言をしていたのだから極めて悪質だ。
「逮捕って、なんでそうなるんですか!」
手に持つロッドで聖騎士達を薙ぎ払いながら、アリエスが抗議する。
「「「なんでそうならないと思うんじゃーっ!!」」」
聖騎士達は一斉にツッコミを入れながら、次々にアリエス達に飛び掛かる。
オーバーキル達の猛攻に晒された今なら、数による力押しでどうにか出来るのではないかと考えてのことだった。
「ずらかるわよ」
レーナはいつのまにかまたも杖に跨り、フヨフヨと上空を漂っていた。
手を出せないところに逃げられた聖騎士が「逃げんじゃねーっ」「降りてこいやコラァ!」「俺と勝負しろコラァ!」「パンツ見えたありがとうございます!」「俺にも見せんかい!」などと口々に叫んでいる。
シュウのことですっかり熱くなってしまってはいたが、時間が経過して冷静になってくると、もしかして自分達はかなりヤバいことをしたのではないか?と悟ったレーナは、我先にと逃亡することを決意したのだ。
「えっと、じゃあ、アタシも・・・」
まとわりつく聖騎士達をあしらいながら、サーラもようやく自分の置かれた状況に気付いて逃げる決断をする。
「は?ちょっと置いてかないでくださいよ!!」
サーラやレーナのような有効な攻撃方法をあまり持たない魔法障壁芸人と化してるアリエスは、逃走を開始するサーラに必死に縋りついた。
消耗したサーラ達でも逃走に徹しさえすれば、聖騎士達ではその行く手を阻み切れるものではない。サーラ達は力づくで包囲網を突破し、シュウ達と同じく帝都から逃亡した。
結局、この日『光の戦士達』のメンバーは、ライルとアイラを置いて全員が帝都が消えてしまった。
多くの・・・それはもう本当に多くの問題を残して。