「貴方ね、特に女性からの評判がひじょ~に悪いんですよ。自覚はありませんでしたかぁ?」
茫然とするライルに、イスイは煽るように言った。
(女性からの評判が悪い・・・?そんな・・・え?馬鹿な・・・)
ライルは基本的に女性には丁寧に接してきた自覚があった。
勇者で顔も悪くないのに、あまり女に言い寄られないよなぁと残念な自覚をし始めたのがきっかけだ。
だから女達は照れくさくて言い寄られたことこそまだないが、内心はライルのことを好いている・・・そんなキモイ妄想すらしているくらいなライルには、イスイの言葉は衝撃的過ぎた。
「貴方、最初に出会う女性に対し、見た目の良い場合はまず胸元を見てサイズを呟き、それから目を見て話し出す、見た目が好みではない女性には終始興味なさげに塩対応・・・これを必ずやってるんですよ。『勇者ってあんな痴れ者なのか』って騒ぎになってましたね」
「は・・・?僕が・・・?」
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例
ギルド受付嬢「ようこそいらっしゃいませ」
ライル「じー・・・」(胸元見る)
ギルド受付嬢「・・・えっと・・・?」
ライル「Aカップ・・・いや、ギリBか・・・フッ(嘲笑)」
ギルド受付嬢「・・・あぁ?(半ギレ)」
ライル「(顔を戻して)やぁ、君新人さん?僕は『光の戦士達』のリーダーであるライル。これからよろしくね(営業スマイル」
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「え、何これ・・・ムカつくやばいやつじゃん」
「そう、これがライルさん」
「うっそでしょぉぉ!?」
ライルは驚愕した。本当に冗談抜きで自覚がなかったからだ。まさに誰が見てもムカつくやばいやつである。
「帝都中の女性はライルさんにこんな扱いをされて、好感度なんてド底辺ですよ。まぁ帝都のみならず、きっと他でもやってたんでしょうね」
イスイに言われてライルはハッとした。
冒険中、様々な場面で女性との出会いがあった。
困った人を助けたり、魔物に襲われていた令嬢を救ったり、少なくとも最初くらいは好意的に接してくれるはずの場面で、何故かライルは無視されてシュウのほうへ女性達は向かってしまった。
それにライルがシュウの前に立ちはだかったときに始めた断罪劇。
ライルは迫真の演技でシュウを断罪して見せたが、ギャラリー女性陣には効いている様子がなかった。
ライルの好感度も信頼度も底辺であるために、誰も彼に共感せず、むしろ反発を引き起こした。
それらもライルがこの無意識セクハラをしていたことによりヘイトを誘発してまくっていたのだとしたら合点がいく。
「皆怒り心頭だったようですが、相手が勇者様だから表には感情を出さなかったみたいですね。けど、『あれの勇者認定を取り下げろ』『勇者像の品位が下がる』などと言った抗議の声は上がっていたんですよ」
「・・・」
これまで紳士的に振舞っていたつもりが、むしろド変態の極みを晒していたことに、流石にライルも恥じた。
穴があったら入ってリスカしたい気持ちである。
「ライルさんの悪評を受け、聖神教会でも勇者から引きずり降ろそうという動きが水面下であったようです。今回の件をきっかけに一気に表面化しましたよ。もう絶望的ですなぁ・・・ンフフフフ(^ω^)」
「そ、そんな・・・いやいや、僕の力は、人類にとって必要なもののはずだ・・・」
「人格に問題のある勇者なんて危なくて使えませんよ。魔法を倒した後、陛下に牙を向いて皇位を簒奪しないとも限らないでしょう?まぁ、そもそもが優秀な仲間を一瞬にして全部失うようなヘマをするような人に、これから先期待できるとも思えませんしね」
「優秀な仲間・・・」
ライルはハッとした。
そう、アイラの映してくれた映像では、サーラ達はシュウを求めてパーティーから離脱してしまったのだ。彼女らはライルほどではないが、極めて高い戦闘能力と才能を持った仲間だった。
同じ実力を持つ仲間を集めるのは至難の業であるし、有望な人間を見つけたとしても育成までに膨大な時間がかかる。
その頃には、ライルも今のシュウと同じように冒険者としては下り坂の年齢になっている可能性が高い。つまり、もうライルには一流冒険者パーティーのリーダーとしての再起は絶望的と言えた。
「いや・・・そんなことはない。そうだ、魅了だ。魅了の魔眼さえあれば彼女達を再び僕の物にすることが出来る!そうなれば勇者パーティーが再結成出来るぞ!!」
絶望していたライルは、自分の持つ特殊スキルの存在を思い出し、興奮してつい叫んでしまった。
「は?魅了の魔眼?」
イスイに怪訝な目を向けられ、ライルは「しまった」と思った。
魅了の魔眼は禁忌の術。ただでさえ禁忌の物関連で危ない立場になっているというのに、更にまた余計なものの存在を自ら口にしてしまった。が・・・
「ライルさんね、何か企みがあるかわからないけど、話を聞いたところじゃどう転んでも貴方に望みはないよ。お仲間は皆、別の男に夢中で貴方など眼中にないようだから」
(それを魅了の魔眼でなんとかするんだよ!)と反射的に叫びたいのをライルはすんでのところで堪え、良かった~魅了の魔眼のことを追求されずに済んだと胸を撫でおろした。
しかし、ライルの心の平穏は続くことはなかった。
「お仲間だった子たちが慕っている色男を次の『勇者』に据え、どうにか女の子たちをコントロールさせて新・勇者パーティーにしたらどうかという案があるみたいですよ。いずれにせよ、貴方は蚊帳の外になるわけです」
「また蚊帳の外かーっ!!って、んな・・・馬鹿な・・・」
色男・・・シュウに勇者の座を移行するという話を聞いて、ライルは戦慄した。
自分が蹴落としたはずの男が、まさか立場逆転してしまうかもという可能性に震えが止まらなかった。
(まずい・・・!)
ライルはどうにかしなくてはと思った。
どうにかして憲兵団の拘束から解かれ、
自分がこれまで無意識にやってきたセクハラ、それと『光の戦士達』の拠点から見つかった禁止物のことをどうにか誤魔化し、
サーラ達が帝都で行った破壊活動についてどうにか宥め、
『勇者』の称号を剥奪しようとしている皇族を説得する。
・・・ザッと並べて口にしてみても無理がある。
やべぇよ、やべぇよ・・・とライルは青ざめているところに、イスイが言った。
「まぁ貴方のほうでもいろいろ言いたいことはあるでしょうけどね。こっちとしては、さっさと観念して洗いざらい話してほしいんですよ」
「え?」
突然、これまで笑みを浮かべ、表面上は温厚だったイスイの声色が変わった。
口元から笑みが消え、鋭い眼光でライルを睨みつける。
「帝都で起こった騒ぎも、全部お前の責任だろ!いい加減認めろ!!お前はこっちで作った供述書にサインすりゃいいんだよ!!そうすりゃこっちも面倒な仕事をしなくて済むんだよっ!!」
「わ わ わ」
イスイの豹変に言葉の出ないライル。
ライルが余計なことをせず、ただただ司法の判断に身を委ねますと言えば、イスイはライルの取り調べにぐだぐだと時間を取られることもない。さっさと終わらせたかったイスイは、激しくライルを責め立てて心をへし折ってやろうと考えていた。
ニコニコ顔は仮の姿。この狂暴な姿こそイスイの本来の姿である。
憲兵団はライルの取り調べを本気でやろうとは考えていない。
さっさとライルの心をへし折り良い様に自供させ、『光の戦士達』のメンバーが帝都を混乱に貶めた一件についてライルを罰することでスピード解決してやろうと思っていた。
「どっちにしろお前がメンバー達の責任を負うことになるんだよ。だったらメンバー達にお前が暴れるように命令したって言ったってことにしても同じだルォ?そういうことにして供述書にサインしろ!」
「無茶苦茶だ!?」
「うるせえお前がやったんだろ!」
「やってない!」
「お前が!お前がお前がお前がお前がお前が、お前がやったんだろっ!!」
ライルを小突きながら恫喝するイスイの、取り調べという名の拷問は、数時間に及んだ。
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「今日はお疲れのようですし、この辺にしておきましょう。先は長いですからねぇ」
数時間後・・・ハンカチで汗を拭きながら、イスイは「一仕事終わったぜ」とばかりにそうライルに声をかけた。
「」
だが、ライルは一言も返せない。
イスイの鼓膜が破れるほどの恫喝に、心がすり潰れるほどの威圧の連続は、取り調べ(?)初日だというのにライルの精神を大きる削り取ることになった。
ボロボロになったライルを見てイスイが笑みを浮かべていると、部屋の扉が開いてライルをここまで連れてきた憲兵達が姿を現す。
「さ、お部屋に戻るよ~また俺達と楽しくやろうや」
「また身体検査してやるよ」
舌なめずりをしながら、体を撫でまわす憲兵達にライルは正気を取り戻して冷や汗を流す。
「うおっ!触るなホモ憲兵ども!!」
ライルが抵抗するも、トンファでガツンと頭を殴られて悶絶する。
「反抗の意思あり・・・これは少しばかりお仕置きしてやらなきゃなぁ」
「暴れんなよ、暴れんなよ」
猿轡をされ、連れていかれるライル。
憲兵達はホモであり、ライルに変なことをする気まんまんだった。
(うおおぉぉぉ!僕は必ずここから出て見せるぞぉぉぉ!!)
これからまた始まるだろう地獄に、ライルはあくまで折れずに抗ってやろうと、そしてまた栄光を掴んでやると誓った。