「私はサーラやアリエスから同じ内容で相談を受けていました。『勇者様がいよいよヤバくて貞操の危機すら感じるから、どうにかしてシュウと恋人同士になりつつパーティーを脱退したい』と言った内容です」
「えっ・・・」
アイラの言葉に、ライルは血の気が引いた。
しかし、ライルが自分達に対して魅了の魔眼を使って良からぬことをしようと企んでいるとわかれば、サーラ達がそう考えるのは当然である。ていうかパーティーを存続させるほうに無理がある。
「ですから私が提案したのです。『体よくシュウを追い出す形にして、こっそり後でシュウと合流するのはどうか。勇者様の狙いがハーレムなら、シュウ追放は時間の問題だからそれに乗っかるのが自然です』と」
無表情のまま、とんでもないことを言いだすアイラにライルは開いた口が塞がらない。
「で、似たようなことを考えていそうだと思ったレーナにも同じ提案をしてみました。そして彼女もあっさりそれに乗ることにしました。魅了の魔眼の件は、人望をガッツリ無くすきっかけになってしまっていたようですね」
「なんてことを・・・」
ライルは酷く困惑した。
自分に従順だと思っていた賢者アイラが、まさか水面下でパーティーを崩壊へ導いていたとは思わなかったからだ。
実際に決定打をキメたのはライルだが。
「どうしてそんなことをしたんだ・・・?」
「知恵を求められれば、それに応えるのが賢者ですから」
顔面を蒼白にして問うたライルに、アイラはどこか誇らしげに答える。
「自分のパーティーを崩壊に導く賢者がいるか!」と、ライルは怒ったりツッコんだりする気力も削がれた。
元はといえばライルの愚行が招いた結果だとはいえ、ライルからしてみればアイラに裏切られたようなものだ。
パーティーの誰もが自分を見限った。
ライルは深い孤独感に苛まれ、涙が出そうになった。皮肉にも追放したシュウと同じ気持ちを味わうことになったのだ。
・・・対人関係においては真逆になっているのだが。
「どうして・・・どうしてなんだ・・・」
深い絶望を感じ、ライルは虚空は見上げて呟く。
どうしてこんなことになってしまったのか。何もかもが順調だったはずだった。
「そもそもにおいて、勇者様はサーラ達からの人望が元々ありませんでした。最初に出合った時にセクハラされたからというのが大きな理由のようです」
「ぼ、僕は彼女達にも同じことをしたのか・・・」
「『F・・・いや、あるいはGの可能性も・・・?揉みごたえありそうだな・・・』と、サーラと初見の際に呟いたのちに舌なめずりをしていたそうです。初見の段階で好感度は地の底に落ちたとか」
「うわあああああああ!」
恥ずかしい、恥ずかしすぎる。
そんな無意識のうちとはいえ、そんなことを言ってしまった自分のことがライルは恥ずかしくて仕方が無かった。
「ちなみに、それでどうしてパーティーに残留したかというと、シュウに一目惚れしたからだそうです。アリエスも同様」
「あああああああああああああああAAAAAAaaaa!!」
聞きたくないことを聞いてしまい、ライルは胸が張り裂けそうになって叫んだ。
またしてもシュウ!お前かシュウ!
どいつもこいつもシュウシュウシュウ!
サーラのあの胸も揉み放題かよやってらんねーっ!
自分が手にするはずだった何もかもをシュウが持っていく。
ライルの頭の中はシュウへのコンプレックスでいっぱいになった。自業自得だとかそんなことは考えない。シュウのせいでこんなことになったのだと、すっかり他責思考になっていた。
「どうして皆シュウなんだ・・・僕は、僕は勇者だぞ・・・顔だって良いはずじゃないか・・・」
「初見セクハラとか魅了の魔眼とか、イケメンだろうと拒絶される要素は多いと思うんですが。むしろ勇者様と比較してシュウがより良く見えた可能性まであります」
「や、やめろぉぉぉぉぉ!!」
アイラの追撃に、ライルは頭を抱えてのたうち回る。
アイラは無表情ながらも、薄っすらと頬を紅潮させてそれを見下ろすのだが、それにライルが気付くはずもない。
「・・・っく、僕は・・・勇者だぞ・・・そのうえ、魅了の魔眼まで身に着けたというのに・・・ハーレムどころかどうして孤独を味わうはめに・・・」
あまりの惨めさに、ライルはもはや泣きわめく寸前だった。
自分が悪いだけなのだが、ライルにそんな現実を認められるわけがない。
だが、そこでアイラが意外なことを口にした。
「申し訳ありません勇者様。この事態を招いたのは、私の個人的な感情もあってのことなのです・・・(半分以上は自業自得ですが)」
「・・・えっ・・・?」
無表情なれど、先ほどよりどこか神妙な面持ちで語るアイラ。
ここで一旦言葉を切り、数秒が経過したところで、やがて意を決したようにアイラが続きを口にする。
「他の女性がいない状態・・・ライバルがいない状態のパーティーにしたいと・・・私が、勇者様と二人きりでいたいと、願ってしまってのことなのです」
「・・・なっ・・・」
ライルの顔が一気に紅潮する。
馬鹿なライルとて、アイラの言葉の意味はこの段階でもすぐに理解できた。
「私は、勇者様を愛してしまっているのです」
「お、おおおおおぉぉぉぉっ!?」
突然の愛の告白。
ライルは地獄から天国に昇るような気持ちになり、思わずガッツポーズを取っていた。