ズタボロもズタボロ、徹底的に自身の存在価値が無いようなものと蔑まれ、地の底までプライドを叩きつけられていたライルは、アイラの告白に天にも昇るような気持ちになった。
そして、他の誰もが自分を認めてくれず(自業自得)、シュウにばかり愛を向ける状況の中で、唯一愛の告白をしてくれたアイラのことを急に強く意識するようになる。
(僕のことを愛している・・・?この美少女が・・・?本当に・・・?)
これまでライルはアイラのことを意識したことはなかった。
最初にパーティーに入れたときは「可愛いね」とは思ってはいたが、他女性メンバーと比較してあまりに無口で思ったようなコミュニケーションが取れない様に興ざめしていたからだ。
しかし、こうしてアイラの気持ちを知ることが出来た今、それまで彼女のマイナス要素だったその面も、途端に「ミステリアスな魅力」と可愛く思えてしまう。
「僕のことを愛してるというのは・・・本当?」
これまでとことん自分を否定されて疑心暗鬼になっているライル(自業自得)は、もしや「殺し合いしてぇと思っています」とかの聞き間違えではないかと疑い、恐る恐るアイラに訊ねる。
「はい、私は勇者様のことをお慕い申しております・・・」
「おっしゃーっ!」
やや俯きがちに、頬を染めて言うアイラの返答に、ライルは興奮を堪え切れなくなって天に向かって叫ぶ。
アイラがライルを愛していたとして、ライルの身の破滅に一役も二役も買っている事実に変わりはないのだが、そんなことはもはやどうでも良かった。
むしろサーラ達の暴走の結果危機的状況に置かれたライルのために奔走し、どうにか仮出所にまで漕ぎつけさせてくれたアイラのことが、急に献身的な女性として盲目的に愛おしくさえ感じるようになっていた。
「私もサーラ達のことを悪く言えません。二人きりになりたいからと、愛ゆえに暴走してしまいました。今の勇者様の危機は、私のせいと言っても過言ではありませんから」
「いやいや、そんなことはないよ。人は誰しも愛には狂ってしまうものなのさ」
アイラの懺悔に対し、ライルは首を横に振って微笑を浮かべる。全てを許すという構えだ。
「君こそ、僕なんかが良いのかい?その・・・セクハラ野郎だとか、女性からの評判が良くないけれど」
「良いのです。そういうところも、全部ひっくるめて私は勇者様を好きになったのです。むしろ良い声で鳴いてくれそうな予感がしますし」
「そ、そうか・・・全部好きか・・・そうか・・・」
自分に無意識セクハラをする癖があったことなどはショッキングであったが、それすら受け止めてくれるというアイラの態度にライルは深く感激した。聖母だと思った。
慣れない愛の告白にすっかり盲目的になってしまったチョロイ彼には、アイラがポロっと変なことを漏らしたことが気にならなかった。
「嬉しいよ。君のような可愛い子に、こんなにも強く想ってもらえるなんて」
「勇者様・・・」
「まぁ・・・今の状況になってしまったのは残念だけど、それでも勇者である僕、そして賢者である君がいれば・・・二人でも何とかなるさ。僕がこれまで以上に頑張れば良いだけだ。だから二人で頑張っていこう」
「こんな私でも、受け入れてくれるのですか?」
「もちろんさぁ!」
ライルは強がりだけで言っているのではなかった。
今の自分ならば、愛の力で本当にこれまで以上の力が出せそうだと本気で思っていたのだ。
「ただ一つだけ問題が・・・」
「何だい?今の僕は体(頭も)が軽い・・・こんな幸せな気持ちなんてはじめてな気分なんだ。もはや、何も怖くない。なんだって乗り越えられる」
視線を逸らし、言いづらそうにして懸念を表するアイラに対し、満面の笑みで何でも受け止めるとばかりに両手を広げ「さ、言ってごらん?」とライルは続きを促した。
「私は男です」
「ん?流れ変わったな」
しばし流れる沈黙。そして・・・
「・・・そういう冗談は感心しないな」
冷や汗を流しながら、ライルはそう言うが、アイラはいたって真顔のまま。
冗談を言うような雰囲気ではないし、そもそも冗談を言う性格ではないことは良くわかっていた。
「いや・・・だって、アイラって名前じゃん・・・女でしょ・・・?」
「アイラが男の名前で何が悪いんですか。私は男です」
「いや・・・いやいやいや、男だったなんて、どうして今まで言わなかったんだよぉ!?」
「だって聞かなかったじゃない( ● ω ● )」
「ファッ!?何その鬼畜回答??どうして急に口調変わった!!?あとその何かムカツク顔やめて!!」
ライルの頭は混乱した。アイラの見た目は完全に女。それも美少女。それが男だなんて、そんなの絶対おかしいよ!と、ぐるぐると思考が頭の中で渦を巻く。
そして混乱の中、ついにライルは暴挙に出た。手っ取り早く真相を確かめようと。
「あっ」
ライルはアイラのローブを無言でめくりあげた。股間がどうなっているかを確認するためだ。
万が一にこれがアイラのくだらない冗談だったとしたら、千年の恋も一瞬で冷めるような愚行だが、一刻も早く男か女かを確認したいライルにはそれを気にすることがない。そういうとこだぞ。
そして、残酷な現実が心の準備の出来ていないライルの目に映る。
意外!それは男根ッ!!
「な・・・なんだこのでっかいもの・・・?子供の腕くらいはあるぞ・・・形もえぐい・・・こんなのが本当に入るのか・・・?」 ※別にライルが入れる必要はありません。
ローブをめくりあげたライルの目のまえには、彼自身が持っているそれより遥かに大きなイチモツが存在した。
ていうかローブの下はフルチンという、アイラもかなりの変態である。
「・・・見ましたね。責任を取ってください」
アイラは顔を赤らめながら、もじもじと身をよじらせて言う。
反対にライルはすっかり顔を青ざめさせていた。
「いやいやいや・・・男は無理」
首を横にブンブン振って、ライルは後ずさる。
「可愛いって言ってくれたじゃないですか」
「ゆーて男じゃん」
それも凶悪なイチモツを持った。
「受け入れてくれると言ったじゃないですか」
「ゆーて男じゃん!」
ライルは部屋を飛び出し、全力で逃げ出した。
関わろうなどとは思わなかった。男の娘という、ライルからしてみれば未知なる恐怖を眼前にして、彼の理性が「これ以上いけない」とアイラとの接触を拒絶したのだ。
何も怖くない?いやいやいや、ナニが怖い。アイラが怖い。
だが、アイラの本当の恐ろしさはこの後にわかるのであった。