ライルは惨めな気持ちを抱えながら、冒険者ギルドを目指す。
(待っていろジャック!今に僕はまた君の前で堂々と出来る立場に舞い戻ってみせるから!!)
今のままではジャック・・・どころか誰が相手であっても堂々と出来るような立場ではないライルは、必ず再起しようと強く心に誓う。
気合も充実、鼻息荒く冒険者ギルドの扉を開いた。
バァン!
興奮を抑えきれずに扉を開いたせいか、壊れたのでは?と思うほどの大きな音をさせてしまう。
喧騒に包まれていた冒険者ギルド内は、その大音に反応して「シーン・・・」と一瞬静寂に包まれた。
「ライルだ・・・」
「来やがった・・・」
冒険者達は遠巻きにするばかりで、誰もライルに話しかけようとしない。
ギルドの中は居心地の悪い緊張感が走っていたからだ。
何しろライルはギルドからも冒険者からも疎まれている。特に『光の戦士達』の暴走で多大な影響を与えたギルドからのヘイトは相当なものだった。
暴走の件で破壊された建造物の後処理から、多くの冒険者の廃業。これが冒険者ギルド職員全員の負担激増に繋がっており、職員の誰もがライルを恨んでいる。
それでも『勇者』の称号の剥奪をしなかった皇帝の決断に逆らうことは出来ず、職員達は嫌々ながらもギルドとしてライルに協力しなければならない。
「ん?今日は随分と静かだな」
空気の読めないライルは、ギルドの静寂が自分の出現によるものだとは結びつかず首を傾げる。
だが特に気にすることもなく、ライルはまっすぐに受付まで歩いて行った。
(お、今日は彼女か)
受付に立っている職員を見て、少しだけライルのテンションが上がった。
その職員はライル好みの美人な受付嬢で、専属というわけではないが『光の戦士達』とはそこそこ長い付き合いがあった。
ライルはいつも彼女の見せる笑顔で癒されていたのを思いだす。
(幸先が良いかもしれない。彼女の笑顔でまずは癒されよう)
ライルはそう考えながら、意気揚々と受付嬢へ話しかけた。
「新たにパーティーメンバーを募集したいんだけど」
「いらっしゃいませ糞野郎」
受付嬢は笑顔でこそあるが、実に刺々しい言葉で応対した。
「えっ・・・」
流石にライルは戸惑うが、(『あの日』かな?)などと最低なことを考えて受付嬢の態度に納得する。自分が恨まれているなど微塵も想像していなかった。
「メンバーの募集ですね?ではこちらの書類にさっさと記入して帰ってどうぞ」
「ああ、わかったよ」
いつもは100点満点の接客を見せる受付嬢でもこんなことがあるのか。新たな一面を垣間見れた気がする・・・などと、ライルは微笑ましい気持ちで受付嬢に微笑しながら答えた。
これがまた受付嬢の神経を逆撫でするが、受付嬢は表情筋を総動員してどうにか笑顔を保つ。
(さて、どういった仲間を募集しようか・・・)
ライルはフフフとほくそ笑みながら、書類に筆を走らせていく。
ジャックと会ったときの焦燥感は既に消え去っており、栄えある再出発に思いを馳せていた。
『光の戦士達』と言えば、世界で最も注目を浴びる冒険者パーティーだった。それは人類の希望とさえ言われたことのある勇者ライルがリーダーを務めるからだ。
『光の戦士達』の旧メンバーは散々帝都を散らかして姿を消してしまったが、それでもライルは残っている。象徴であるライルがいる以上、復活はたやすいとライルはそう考えていた。何しろ『光の戦士達』に所属するだけで、冒険者からすれば誉の極みになるはずであり、応募者は殺到するはずなのだから。
サーラ達のような優秀な冒険者を一時的(とライルは思ってる)とはいえ失っているのは痛手ではあったが、帝都には彼女達ほどでなくても優秀な冒険者は他にもいる。彼らは間違いなく『光の戦士達』のメンバー募集に反応し、応募してくるはずであるとライルは確信していた。
『メンバー募集。面談有り。女性は超優遇します。高収入が見込めます。寮有り。アットホームで遣り甲斐のある職場です。勇者と一緒に冒険してみませんか?』
「フッ、こんなものか・・・」
ライルは募集要項などの書類を記入すると、無駄に優雅な手つきと爽やかな笑顔で受付嬢に手渡す。ムカつき過ぎて受付嬢は思わず書類の棚でライルの頭を引っ叩きたくなった。
「君、栄えある『光の戦士達』の再出発に貢献できたことを、光栄に思うと良いよ」
バチィンと受付嬢にウインクをして、ライルは「これから面談とかで忙しくなるな」と呟くなど、しこたまフラグを立ててギルドを後にしたのであった。