※この作品はR-18です。

追放の破戒僧は女難から逃げられない   作:ミステリードール

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残った者達

アドネイド家とトンプソンの実質的トップであるウィンク・アドネイドの元に、聖神教会から完全武装した騎士が数十人規模で派遣された。

 

 

「ご同行願えますか?」

 

 

同意を求めていながら、実際には武力での脅しをチラつかせる強制である。

館の使用人も、いつの間にかやってきたトンプソンの構成員も、今にも掴みかからんとばかりに騎士達に対して殺気立っている。

いや、事前にウィンクから「何があっても動くな」と厳命されていなければ、実際に飛び掛かっていただろう。

 

 

「ボス・・・」

 

 

家令が神妙な顔で心配そうに声をかけるが、ウィンクは手をひらひらさせながら「大丈夫よ」とだけ答える。

 

 

「クレウス・アドネイドも・・・」

 

 

騎士達はクレウスの姿も探すが、車椅子に乗って廃人のようになっている彼を見つけて「あっ・・・(察し)」となって見て見ぬふりをした。

「教会がどのような責め苦を味わわせたところで、あんな廃人にはなるまい。一体ここで何があったのだ?」と騎士達は思いながらも、背筋が凍るような感覚に陥って考えることをやめた。

 

こうして愛娘の後始末をつけるべく、ウィンク・アドネイドは一人で聖神教会本部へと連行される。

 

 

 

 

-----

 

 

護送馬車に乗せられて聖神教会本部に到着したウィンクは、教会本部で最も厳重な警備がつけられる会議室に連れられた。

そこは聖神教会でも高位なる者達だけが使用する、特別中の特別・・・重大な議題が議論されるときに使われる会議室だった。

 

 

「本日はお招きいただきましてありがとうございます」

 

 

ウィンクは部屋に入ると、会議室のテーブルについている教会の重鎮達イ一同に嫌味を言ってからカーテシーをしてみせた。

重鎮達は冷たい視線を向けるだけで、一言も発することはない。

 

 

「よくぞおいでくださいました。どうか楽になさってください」

 

 

一人、長テーブルの上座に腰をかけている、ウィンクと同じくらいの歳の女が、重苦しい空気の中で場違いなほど朗らかな口調で話しかけた。

 

 

「えぇ、そうさせていただきます」

 

 

ウィンクはそう言って不敵な笑みを浮かべると、女と対面に位置する椅子に腰を掛けた。

 

女の名はメリア。

抜きんでた長身と短く切りそろえられているブロンドヘアで一瞬男と見間違えるが、並外れた美貌を持つ妙齢の女性である。

彼女は聖神教会聖騎士団最強と呼ばれる剣豪で、女性でありながら現場の叩き上げで出世し、今では団長を務めている女である。

聖神教会では実質的にナンバー2の権力者だ。

 

ウィンクもかなりの美貌の持ち主だが、メリアもまたタイプは違えど美人。そんな二人が互いに微笑を浮かべながら対峙する姿は中々に華々しく絵になった。

 

しかし、これから始まるのはウィンクに対する断罪である。

 

 

「本日はご多忙な法王様の代わりを私が務めます。どうかよろしくお願いします」

 

 

メリアがそう言うと、ウィンクは僅かに眉を顰めた。

聖神教会を代表する法王の代わりを務めてこの場にいるということは、これから始まる断罪劇において、メリアが全ての決定権を握るということ。ウィンクの運命はメリア次第なのである。

 

 

「ねぇ、メリア。今日のところはお咎めなしで許してくれないかしら?」

 

 

ウィンクが微笑を浮かべたまま、冗談めかしてわざとらしくしなをつくってそう言い、それを見たメリア以外の重鎮達はギョッとした。メリアは教会の絶対権力者の一人。そんな彼女に対等に口を聞くウィンクが信じられなかった。

 

教会の重鎮達からすれば、ウィンクはならず者を従える下衆の長。礼儀を弁えないにしても空気は読めるはずだと思っていた。

だが自分の命がかかっているこの状況で、平身低頭許しを乞うでもなく堂々としているのを見て、何という胆力なのだと息を飲む。

 

 

(というか、何なの?馬鹿なの??)

 

 

唖然とする重鎮達だが・・・

 

 

「フフッ」

 

 

メリアが思わず漏らした噴き出し笑いに、皆が一斉に反応する。

 

重鎮達が次に気にかかるは、メリアの反応。

メリアは騎士団長を務めるだけあって、教会に仇なす者に対する容赦がない。教会内であっても帯刀の許されている彼女は、教会の敵・・・『神敵』と称される者は即座に斬り捨てることもあり得ないほどに激情を見せるところがあると評判だった。

こんなところで血は見たくないぞと、ウィンクに激昂しはしないかとヒヤヒヤしていたが、メリアはウィンクの物言いに怒るでもなく、微笑を崩さぬまま答える。

 

 

「それは不可能です。やったことがやったことだけに、貴方を放免することは、許されることではありません。よって死刑です」

 

 

カ~~ン

 

 

どこからか取り出した木槌を打って、笑みを浮かべた口から放たれるは、実質的な死刑宣告。

 

 

(結論が早い!)

 

 

今度は重鎮達はメリアに対して驚愕した。

この場で斬り捨てはしなかったが、結論は極端だった。

 

 

「幼馴染の間柄じゃない。それで許してくれないかしら?」

 

 

めげずに両手を合わせてまたも冗談めかして言うウィンク。

ウィンクとメリアが幼馴染のいう事実にも驚愕だが、ウィンクの太々しい態度にも重鎮達は驚かされっぱなしである。

 

 

「幼馴染のよしみで、無闇に望みは与えないで死刑にしますわ。神に仇なす者は地獄の責め苦を味わわせた後に死刑ですが、それを免除してすぐさま死刑にして差し上げます。死刑です」

 

 

コントラストの無い瞳になりながら、そう言って木槌をまたカ~~ンと打つメリア。

物腰と言葉遣いは穏やかだが、妙な恐ろしさを感じる彼女に重鎮達は言葉を失った。

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