※この作品はR-18です。

追放の破戒僧は女難から逃げられない   作:ミステリードール

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もっと痛みをくれ

ジャックの頭が粉砕されたことで、明らかに勝負は着いた。

仕方がなしに「それまで!」と声をかけて、エリーザを止めようとしたフェルディナントであったが・・・

 

 

「みね打ちよ!」

 

 

エリーザは剣を振るう手を止めず、棒立ちになるジャックの右肩に打ち込んだ。

 

 

「みね打ちよ!」

 

 

次に左肩。

みね打ちとはいえ、結局は鈍器による打撃である。打ち込まれるたびに骨が粉砕し、ジャックの体が破壊された。

 

 

「みね打ちよ!みね打ちよ!みね打ちみね打ちみね打ちみねみねみねみねみねみね」

 

 

次第にみね打ち(?)を打ち込む感覚が高速になり、やがてジャックが一秒間に十数回打撃を受けるようになった。

いっそ一思いに斬られたほうがマシだと思うほどの人体破壊に、流石のフェルディナント達も慌ててエリーザを止めに入る。

 

 

「もう逝ってる!もう逝ってるからぁっ!!」

 

 

フェルディナントが悲痛な声を上げながらエリーザを羽交い絞めにして、どうにかして彼女の手を止めると、連続打撃から解放され、すっかりぼろ雑巾のようになったジャックがズシャリと床に突っ伏した。

体中の骨がやられ、糸の切れたマリオネットのように体の節々を折られたジャックは、当然ながら意識がない。泡を吹いて完全に白目を向いている。というか生きているかも怪しかった。壊れた人形もとい壊れた人間だ。

 

 

「さぁっ、次はどちらが私の相手かしら?」

 

 

体中にナイフが刺さって流血したまま、エリーザは剣を構えてフェルディナント達を睨みつける。

 

 

「えっ・・・」

 

 

「まだやるんでしょ?一度そちらから始めたんだから、勝手に終わらせたりしないわよね?もっと私に痛みを頂戴!」

 

 

「ファッ!?」

 

 

目を血走らせながら、エリーザはフェルディナント達に迫る。口元には笑みが浮かんでおり、見る者を戦慄させる狂気に満ちていた。

 

 

「こ、これは・・・」

 

 

ガルソニックは僅かに後ずさる。

百戦錬磨の彼らとて経験したことのない、未知との遭遇にすっかり気圧されていた。

魔物とは違う何か・・・否、魔物以上の魔物を目の前にしているということを認識する。

 

実際、手負いになり、毒も受けているエリーザならばガルソニック達なら勝てるはずなのだが、彼らにはどうしてもエリーザに対して勝利できるビジョンが浮かばなかった。

純粋な戦闘力だけではない、それを上回り戦況を覆すだけの、圧倒的な気迫。そのようなものをガルソニックはエリーザから感じた。

 

結論、戦うべきではない。ガルソニックはそう思った。

 

 

「エリーザ、君も大けがをしているではないか。後日改めてということでどうかな・・・?」

 

 

恐る恐るガルソニックが言うと、エリーザは激昂した。

 

 

「勝手なこと言ってるんじゃないわよ!私はもっと痛みが欲しいって言ってるのよ!お前の都合は聞いてない!いいからさっさとかかって来なさいよぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

全身から血を吹きながら、全くそれを意に介さぬ様子のエリーザ。言っている言葉もおかしいし、関わって良いタイプの人間ではない。

あかんこれ。

 

 

「すまない、家に帰って犬にご飯を上げないと」

 

 

ガルソニックはそう言って、恐ろしいまでの俊足でその場から逃げ出した。

一人残されたフェルディナントは「えっ?」「えっ?」とキョロキョロとしだした後、「ごめん、昨日オナニーしてなくてもう我慢できないから帰るね」と言ってガルソニックに続いて同じように逃げ出す。

 

 

「待ちなさいよっ!!」

 

 

エリーザも後を追おうとするが、足に受けたナイフと、体に回り始めた毒で追っても追いつけないと判断し、舌打ちしながら追跡を断念した。

 

 

「ちっ・・・こんな中途半端な痛み、こんなんじゃ、こんなんじゃシュウ君の受けた痛みを共感することは出来ないのよぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

エリーザは体に刺さったナイフをそのままに、フラフラと歩きだす。

 

 

「シュウ君、待っててね・・・今度こそ行くから」

 

 

うつろな目でそう呟いたエリーザは、血痕を地面に残しながら一人歩き、教会内の神官達を戦慄させた。

 

 

 

なお、一人打ちのめされて放置されていたジャックは再起不能となり、十三騎将は一人欠員が出ることになるのだが、これについてメリアは「あら、じゃあ今度からは名前を『十二破聖』にしましょうか」と軽く受け止めた。私闘についても一切お咎めなし。

少しかわいそうなジャックである。

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