「・・・ノックもせずに誰ですか?」
シュウは突然の闖入者に対し、そう問うことしか出来なかった。
これまで『光の戦士達』の一員として冒険を通して様々な経験をしてきたシュウでさえ、あまりの超展開に頭が回り切らなかったのである。
というのも、ジードはブーメランパンツ一丁という恰好だったからだ。
いろいろな意味でわけがわからない。
誰だってパンツ一丁の顔も知らない筋肉ダルマが部屋に突如としてやってきたら驚くだろう。
(何故に変態がこんなところに!?)
シュウが混乱していると、ジードは笑顔を浮かべて言った。
「失礼。ノックをしたつもりだったのだが、私のあまりの筋力ゆえに勢い余って扉を破壊してしまった」
そう言ってジードは「ふふ、こやつめ」などと独り言を言いながら、自分の拳を眺めている。
「いやそうはならんやろ」とシュウは言いたかったが、とりあえず会話するより先に彼にはやることがあった。
それをやろうとする矢先、ジードはシュウの股間へ目を向け、苦笑いを浮かべて言った。
「失礼。どうやら取り込み中だったようだ」
「わかっているのなら、とりあえずズボンを穿かせてください」
シュウは、自分が勢いに乗って手の届かない場所まで放ってしまったズボンに目を向けながら言う。
本来ならば人前で下半身裸は恥ずかしいから、お伺いを立てるまでもなくさっさとズボンを穿くべきだろう。だが、シュウはそうしなかった。
(この男・・・私に殺気を向けている・・・!)
シュウは、ジードから凄まじいまでの殺気を感じていた。
不用意にズボンを穿くためにジードへの集中を切らしたものなら、その瞬間に襲撃される・・・そんな予感がしてならなかった。
ジードの顔に覚えはないが、帝都からやってきた追っ手であるとシュウは認識する。隙を見せたら躊躇いもなく仕掛けてくるだろう、そう思うとフルチンのままでもシュウはそのままの状態でい続けるしかなかった。
「ふむ、これは私が悪かった。どうかズボンを穿いて欲しい。用件はそのあとで」
シュウの頼みを聞いたジードは、予想とは裏腹にズボンを穿くことを容認する。
警戒したいが、流石にいつまでもフルチンというのは恥ずかしいシュウ。ジードが股間をガン見してくるのも気になった。
「それでは・・・」
シュウがいたたまれなくなってズボンを拾おうと視線を移した、その瞬間だった。
「などと言うとでも思ったかーっ!!」
ジードは叫ぶと、シュウの隙をついてタックルを仕掛けた。
シュウは武術の達人であり、筋肉は身に着けていても武術を嗜んでいないジードのタックルなどくらうはずもない。
だが、今のシュウは下半身を丸出しという恥ずかしい状況。一刻も早くズボンを穿いて露になっている下半身を隠したいという弱みを突かれ、不覚にももろにジードのタックルを受けてしまった。
(この者っ!半裸の状態でありながら、フルチンの私に躊躇いもせずにタックルするとは!出来る・・・っ!それか、ホモか)
シュウは咄嗟に衝撃を逃がすようにタックルの進行方向へ向けて跳躍したが、ジードに捕まった状態なので彼と共に宿の壁を突き破り、屋外へと飛び出してしまう。
「きゃあああああっ!!(歓喜)」
「親方!宿屋から裸の男がっ!(舌なめずり)」
外は暗くなってはいたが、それでも町の中でも賑やかな場所であったために、まだ人通りは多く、派手に登場した上に半裸のシュウ達は格好の注目の的になった。
「おい、あの細目・・・さっき食堂で盛ってたカップルの片割れじゃないか?」
「え、ほんとだ。じゃあ、あの女の子はどうしたんだ・・・?も、もしかしてあの筋肉ダルマがそう・・・?」
「あの子着やせするタイプだったのか。びっくりだな」
「着やせするにもほどがあるけど、なんで暴れてるんだ?激しい痴話喧嘩か何かか?」
「あれがもしかしてアイツラなりのセックスなんじゃないか?」
「マジかよ宿の中でやれよ・・・(困惑)」
エクストリームな誤解をされながらも、ギャラリー達はシュウ達が何をするかを興奮しながら見ている。
衆人環視の中、裸の男二人が対峙するという意味の分からない状況でシュウが混乱する中、ジードは言った。
「シュウ!貴様に決闘を申し込む!!」