「先輩。さぁ、今度は私の番だ。体と体で交わろうではないか」
言ってることはホモだが、恐ろしいことにジード自身にその気は全くない。純粋にシュウと筋肉を通じて筋肉談義しようとしている・・・まぁ、平たく言えばズブの変態だった。脳まで筋肉に侵され始めた後遺症である。
ジード自身、既に若干本来の目的を忘れつつあるが、しかし決闘をしようが、肉体談義しようが、結果としては同じことであった。
何故なら、ジードと体で語り合いをすれば、必然と殺し合いになるからである。
「フンッ!!」
ジードの肉体の語り合い・・・それはシュウがそうしたように、打撃を持って互いの肉体の強度を確かめ合うこと。
だが、ジードの打撃は語り合うにはあまりにも重すぎた。
「ッ!?」
ブンッ と、図太い腕がシュウの傍を掠めた。
ジードは肉体を極限まで鍛え、籠った山に出現した魔物や獣は相手をしたことはあるものの、戦闘そのものはまだ素人の域である。
速度も足りなければ、動きも無駄があるし、あくまで直線的。テクニックも何もない。
武術を極め、数多の魔物との死闘を制したシュウに当たるはずもない。実際、シュウは危なげなくジードの大振りの攻撃を避けられたのだが・・・
(これはっ・・・!)
シュウはジードの攻撃が空ぶった直後、まるでそこにあった空間そのものがごっそり削られたかのような感覚を覚えた。
「そらっ!」
さらにまたジードの大振りの拳。
これも躱すが、シュウは冷や汗がブワッと出るのを感じた。
「むうっ・・・なんという重い打撃・・・」
自分の攻撃が通じづらいところで察してはいたが、ジードの筋肉は見た目だけでなく質としても異常に発達していることをシュウは確信する。
シュウはこれまで力自慢の冒険者に何人にも会ってきたが、そのどれとも違う。
規格からして違うというか・・・まるで巨竜が筋力はそのままに人間のサイズに縮まったかのような、そう、一言で言えば人間ではないとシュウは感じた。
規格外の肉体を持った変態。最悪の相手だった。
ちなみにあまりのオーバーアクション故にジードの股間の立派過ぎるモノもブルンブルン動き、シュウやギャラリー達を萎えさせた。シュウのイチモツも萎えた。でも一部のギャラリー達(男)は興奮した。
「私のパンチを受けてみろ!!」
ぐるぐると腕を振り回し、大げさなアクションからのパンチ。
動きは単調故に躱せたが、何度もいなしているうちに、ジードの動きが徐々に改善していっていることに気が付いた。
シュウという相手から攻撃を受け、そして自身も攻撃を繰り出しているうちに、凄まじい速さで実戦のセンスが磨かれ動きが洗練されているのだ。
(なんという学習能力・・・ッ!これは、認めたくはないがッ)
シュウは気付いた。
ジードは肉弾戦の天才・・・いや、もしかしたら体作りから何から、とにかく肉体に関するモノ全てに人並み以上の適正があるのだと。
シュウは格闘術の達人だが、自分を天才だと思ったことはなかった。ひたすらに肉体と技を研鑽し、見て読んで聞いて学んで今の彼がある。
それをまさかこんな筋肉ダルマのホモの変態が天才だなどと、悔しくて仕方がないではないかと怒りが沸いた。自分もフルチンのまま戦っているので、傍から見れば変態なのだがそのことは隅に置いている。
だが、感情的になってはいられない。
ジードの攻撃は鈍いが、一度でも受ければ爆発四散しかねないほどのオーバーキルの破壊力を持っている。あくまでも冷静に処理しつつ、どうにか反撃して倒さなければならないのである。
「変態だ!変態が戦ってる!」
「ファッ!?あの筋肉ダルマの股間・・・なんだあのおっきいの・・・」
「あれがあいつらなりのセックスらしいぜ」
シュウ達が起こしている騒ぎに反応し、徐々にギャラリーが増えている。
追われている身だというのに最悪な状況だった。
「どうする・・・っ」
シュウは考えた。
急所を打っても倒れない、殺すつもりで打っても通用しない。
こんな化け物を速やかに制しなければならないこの状況・・・どうすれば良いのかと、シュウはすぐに答えが浮かばないことに焦りを感じ始めていた。
そのときだった。
「シュウ様っ!」
バスタオルを体に巻いたフローラが姿を現した。