「フローラ!?」
突然のフローラの登場にシュウは驚き声を上げるが、元いた宿屋から離れたところでもなく、クッソ目立つ格好でクッソ目立つことをドカドカやっていれば当然である。
「シュウ様!私が書いた台本はどうしたんですか!?」
「えっ、そっち?」
宿屋の壁に大穴を空け、フルチンで外で大騒ぎしているシュウを見ての第一声は捕らわれた聖女ごっこの台本についてだった。脚本はフローラにとっては傑作だったようである。
ちなみにフローラが書き、シュウは修正した台本はジードの強烈なタックルがぶち当たった際に爆発四散した。
「というかシュウ様・・・一体何を・・・」
フローラの疑問は最もである。
まさか部屋に闖入者が現れたなどと思わぬフローラは、当初シュウがフルチンになり謎の暴走をして壁を突き破って外に脱走したと思っていた。私のことが我慢しきれずに暴走したのかしらー?と。
禁欲でいろいろ溜まり、ストレスの解放を寸前にハイテンションで思考がおかしくなっていたのだ。
だが、実際にボロボロになった部屋を見て仰天し、慌ててバスタオルで最低限隠せるところだけ隠して様子を見に来ると、なんとパンツ一丁の男と向き合っているではないか。
流石のこの異常事態にフローラの思考は冷静になった。
「まさか、我慢しきれずにそこの男の人と・・・っ!?」
いや、少し冷静ではなかった。
フローラはコントラストのない瞳でシュウを見つめながら、明後日の方向に勘違いをしだす。
「なんでそうなる!そんなわけないじゃないですか!」
「じゃあ一体何をしていたんですか!」
ぎゃあぎゃあとシュウとフローラが言い争いが始まろうとしていたが、それをジードが一喝した。
「女子は黙っておれっ!!」
ビリビリと空気が振動するほどの大声量に、流石のフローラもビクッと肩を震わせて押し黙る。
「今、私と先輩は肉と肉で語り合っているのだ!触れ合い、感じ合い、出たり入ったり(?)の濃密な肉体関係だ!女子なぞが入り込んで良い隙間など物理的に無い!引っ込んでいろっっ!!」
「やっぱりホモじゃないですか!」
ジードのわざとやっているとしか思えない誤解を招く発言に、フローラは青筋を立ててブチ切れる。
「こっちは禁欲に次ぐ禁欲でもういっぱいいっぱいなんです!貴方みたいなポッと出の変態にシュウ様を取られるわけにはいかないんです!そっちこそ下がっていてください!シュウ様に御用があるなら、ひとまず私とシュウ様がヤることヤり切った後でどうぞっ!!」
顔を真っ赤にしてぐるぐる目になり暴走気味にそう叫ぶフローラに、シュウは「御用なんて無いです!」と必死になって否定する。
ギャラリー達はホモと女の三角関係かよと珍しい見世物に興奮している。あろうことか憲兵も止めるでもなく「ふーん、エッチじゃん」と見物していた。
「黙れと言っているっっっ!!」
キーキー騒ぐフローラの声が耳障りで頭にきたジードは、威嚇する意味で左腕を横に振り払う。
ブオンッ
そのあまりの剛腕に、大きく風を切る音がした。
ブワッ
が、音がするだけでは終わらなかった。剛腕が空を切った衝撃で、突風が巻き起こったのだ。
「えっ、キャッ!」
突風によりフローラの体に巻き付けていたバスタオルが外れ、風に乗って飛ばされてしまう。
哀れフローラは人前で全裸を晒すことになってしまった。
「イヤーーーッ!」
悲鳴を上げてうずくまるフローラ。
おおっとどよめきが起こる中、シュウはどうにかフローラの体を隠せるものがないかと思い何かないかと探すが、そもそもそんなものがあればまず自分の股間を隠している。
「ぐ・・・ぐぐっ・・・」
ジードはフローラの方を見ていたが、やがて顔を真っ赤にして蹲る。
シュウはそのリアクションを見て「ホモに見えたけど女の裸には興味津々か?」と思った。
「このっ・・・変態っ!」
フローラは自分の裸を晒すことをして、視線まで向けてくるジードに対してキッと睨みつける。
愛しているシュウ以外に裸を見られてしまった。なんていうケダモノなんでしょう!許せないわ!そんなことをフローラは考えていたのだが・・・
「う、うぷっ・・・」
ジードのリアクションは、フローラの想像のそれと違っていた。
「ヴォエッ げろげろげろ・・・」
なんとジードは唐突に地面に向けてゲロを吐き出したのだ。
シュウ達やギャラリー達が目を点にして茫然としている中、ビチャビチャと吐しゃ物をまき散らしてからジードは涙目になりながら言った。
「み、醜い・・・っ!なんて醜い体だっ・・・!うぷっ・・・」
言い切ってから、ジードは再び井の中の物を地面にぶちまける。
「・・・は?」
青筋を立て、コントラストの無い瞳でフローラはジードを睨みつけた。