「な、なんだありゃあ・・・」
「・・・芸人の一団か?」
唐突として集団でギルドに入ってきたセレスティアとオーバーキルの面々は、非常に良く目を引き、騒然としていたギルドは一瞬にして沈黙に包まれた。
美少女を先頭に、中折れ帽をかぶったスーツ姿の男達がぞろぞろと現れたら誰だって驚いて三度見くらいする。
「お嬢、待っていてくれればいいのに」
「一刻も早く調べなきゃいけねーんだから、ただ待ってるだけってのは嫌なんだよ」
そんな会話をしながら、セレスティアとオーバーキルはぞろぞろとカウンターの前までやってくる。
冒険者には見えない貴族令嬢のような(一応貴族令嬢だが)外行きのドレスを身に纏う美少女。それに付き従う強面の白いスーツ姿の男達。
珍客も珍客!
あまりの異様な雰囲気に、誰もが黙って彼らにスッと道を空けた。
「何か御用でしょうか?」
セレスティアがやってきたカウンターにいた職員は、「何で俺のいるカウンターに来るんだよ」と内心不運を呪いながら、引き攣った笑みで応対する。経験上、こんな怪しい集団の接客は面倒そうだからしたくなかった。
いつもなら目立つような新入りがやってくると何かしら難癖つけるガラの悪い冒険者もいたが、この時ばかりは「関わりたくねぇ」と距離を取っている。
「人探しをしてるんだ」
セレスティアはそう言うと、シュウの特徴を描いた書類をスッと差し出した。
実はジードより早く、セレスティアの手の者・・・トンプソンの諜報部員がシュウ達の尾行していた。
彼らは元優秀な冒険者の斥候で、気配を悟られることなくホワイトキングの快足についていけるだけの能力がある。
まぁ、実際は青息吐息でスタミナ薬を飲みながらの任務だったのだが、それでも振り切られることなくシュウ達の追跡が出来ていた。
セレスティア達の到着までシュウ達のことは何があっても逃がすまいとしていた彼らだったが、ここでアクシデントが訪れる。
それはジードの襲来。
追跡者は二人いたが、まず一人が不審者同然に宿屋の壁に張り付いて外からシュウ達の様子を監視していたのが、ちょうどそのポイントにジードのタックルが突っ込んできたことで壁とともに体中の骨を破壊された。
もう一人は宿の近くで待機していたのだが、タックルで外まで吹っ飛んできたシュウのイチモツがタマタマ不幸にも顔面にモロに当たり、嫌悪感とイチモツの大きさによる敗北感とで精神を病んでしまった。
それにより、セレスティア達は一瞬にしてシュウの居所を見失うことになってしまった。
トンプソンの情報網はあらゆる国に張り巡らされているが、それでも帝国ではないこの国ではどうしても情報の質も鮮度も落ち気味で、シュウの居所がうまく掴めなかったのである。
仕方なく正攻法でも情報を収集しようと、冒険者ギルドにやってきたのだ。
「人探しですか・・・は、拝見します・・・」
担当職員は、セレスティアが差し出した書類を手に取った。
尋ね人はギルドの仕事の一つ。懸賞金をかけてまで探したい人がいる場合には、よく利用される。
セレスティアはこの町に滞在し、トンプソンとギルドの二馬力の情報収集力でシュウの情報をかき集めようと考えていた。
(これは・・・)
セレスティアの渡した書類に目を通した職員は硬直した。
書類には目は細いが、それ以外は出来過ぎなほどの、まるで舞台劇のポスターのような非のない美男子の姿絵が描かれていて、背格好など特徴もそこに付け加えられていた。
性格:男らしい 優しい 正義感が強い(一部抜粋)
特徴:包容力がある 強い(確信) 目が細目だけどイケメン 神々しいまでのイケメン(一部抜粋)
書類はあれこれと探している相手シュウについて、半ば・・・いや、ほど特徴というより願望だらけの見るに堪えないセレスティアの妄想の垂れ流しを書き記したものであった。
「・・・ん?結婚相談ですか?」
人探しではなく、こういう男を希望していると職員は受け取った。
「どこをどう見ればそうなるんだよ!」
何馬鹿なこと言ってるんだとブチ切れるセレスティア。
「・・・どこをどう見ればそれ以外に見えますか?」
何馬鹿なものを見せてくれてんだと呆れる職員。
「てめぇ!お嬢の書いたそれが見るに堪えねぇほど痛い妄想垂れ流しのメルヘンノートだって言いてぇのか!」
うっかり本音を漏らしながらも、怒りのあまり職員の胸倉を掴み上げるオーバーキルの男。
「お前そんな風に思ってたのか!」とショックを受けるセレスティア。
カウンター周辺は一瞬にして収拾のつかないドタバタに陥っていた。
そこに新たな火種がやってくる。
新たな人影がギルドの扉を開いた。
姿を現したのはビキニパンツ一丁のジードであった。