「な、なんだぁありゃあ・・・」
ギルドに悠然と入ってきたジードは、それはもうこれでもかと言うほどに人の目を引いた。
岩のようにゴツゴツした筋肉ダルマが、黒のビキニパンツだけを身に纏って歩いている。これで注目されないわけがない。
冒険者にはいろいろな者がおり、姿かたちも様々だが、ジードのようなナリをした者は流石にいない。もはやただの変態にしか見えない。
「今日はなんて日だ・・・」
セレスティア達のような異様な集団が来たと思ったら、更に変なのがやってきた。
対応しなければならないギルド職員達は、一体どんな用件なのかと戦慄した。彼らの経験上、変な出で立ちをしている冒険者は、用件までも変なものと相場が決まっているのだ。
「お、お前はっ!?」
セレスティアがジードの姿を見て驚愕する。
「おお、これはこれはセレスティア様。ご無沙汰しています」
ジードもセレスティアの姿を認めると、綺麗な動作で一礼した。礼は確かに綺麗だったが、そもそも姿が汚いので台無しだ。
変人は変人同士引かれ合う。
これは冒険者達の間で囁かれている言葉だが、まさに事実だったなとギャラリーと化した冒険者達は思った。
「お前っ!こんなところにまで追いかけて来たのか・・・っ!?」
その異様な姿もあってか、少しビビりながらセレスティアが訊ねると、ジードは首を横に振る。
「いえ、残念ですが、今日は別件でここに来たのです」
「は?」
いつもセレスティアのことを暑苦しい熱意ある瞳で見つめていたジード。
だが、このときは様子が違い、それに気付いたセレスティは大きな違和感を抱いた。
ジードはセレスティアにろくに目線をくれることもなく、彼女の前を素通りして真っすぐにカウンターに向かったのだ。
「なんでこっちに来るんだよ」
先ほどまでセレスティアの相手をしていた職員は、今度は見るからに変態のジードが自分のところにやってきたことに絶望してつい本音を漏らす。
ドンッ
顔面を蒼白にする職員の前に、ジードはゴソゴソの履いているパンツの中を探ると、十数枚の金貨を取り出してそれをカウンターに乗せた。
その瞬間、ギルドにどよめきが起きた。
「お、おい、すごい大金だぞあれ!」
「変態だけど金持ちかよ」
「待って、あの金どこから出した?」
「パンツから『金』を取り出すとは・・・う~ん、深い」←バカ
ジードがカウンターに置いた金額は、売れている冒険者でも中々見ないほどの大金だったので大騒ぎになった。
キモイほどに筋肉をつけた変態が、大金をパンツの中から取り出してカウンターに叩きつける。
こんな強烈な光景は一度見たら忘れず、夢に見ることもあるだろう。
先ほどまで賞金首の張り紙に注目していた冒険者達は、今やそこから視線を外しジード達の方へと意識を向けていた。
「これで人探しを頼みたい」
ジードが唖然とする職員に対して言った。
「人探し・・・ですか」
「うむ」
ジードは再びパンツの中をゴソゴソと漁ると、一枚の紙を取り出してカウンターに乗せる。
「探し人はそれに書かれている」
見ろ、と促された職員は「そこから取り出したものを手に取って見るの?俺が?」と顔面を蒼白にさせながらも、涙目で紙に目を通した。
『目は細いが、鍛え抜かれた美しい筋肉を持つ』
『筋肉に頼らず、素晴らしく完成された格闘術を駆使する』
『早く肉体(を通じて語り合う)関係になりたい』
「・・・」
職員はセレスティアの時と別の意味で呆れていた。
最後のは願望?ホモなの?いろいろとツッコミと入れたかったが、必要以上に関わりたくなくて口を噤んでしまう。
セレスティアも紙を覗き見て「こんな人探しがあるかよ」と小ばかにしたような笑みを浮かべるが、アンタも大差ない・・・というかアンタのがひどいと職員もオーバーキルの男も内心思っていた。
「探し人の男・・・その名をシュウと言う」
「シュウ・・・」
探し人の名を聞いても職員は上の空。早く解放されたい。
しかし、当然ながらにその名に反応したのはセレスティアだ。
「待て!なんでアンタが私のダーリンを探してるんだ!それに肉体関係になりたいって何?ホモなの?」
「そうではありません誤解があります。一言には表せない事情があるのです。ただ私は先輩と(筋肉フレンド的な)深い仲になりたいだけですよ」
「やっぱりホモじゃないか!」
セレスティアとジードがギャアギャアやり合うのを、職員達は「知り合いかよ」とげんなりした。面倒くさい集団が来てしまったと嘆く。
そこへ、またも騒動の元がやってくる。
元『光の戦士達』の女性陣・・・サーラ、アリエス、レーナがギルドを訪れたのだ。