ざわ・・・
この日、何度目かに起きたギルドのどよめき。
それは新たに三人組の女がギルドに入ってきたことがきっかけだった。
「おい、また変なのが来たぞ」
「今日という日は何かおかしくないか」
三人組の女。
それはドレーク帝国からはるばるやってきた、元『光の戦士達』のメンバーであるアリエス、サーラ、レーナだった。
三人とも見た目の麗しさから、普段からよく男達の目を引く・・・が、このときは別の意味で目を引いていた。
なぜなら、三人とも不自然な装いで顔を隠していたからである。
まずアリエスは、法術師のド定番の白いローブに、騎士が身に着けるようなフルフェイスの鶏冠付き鉄仮面をかぶっているというちぐはぐな恰好。
次にサーラはいつも身に着けている少し露出大目の女性用の鎧に、どこかの部族が祭事に身に着けそうな派手なデザインのお面で顔を隠している。
最後にレーナは、右目のところだけを残し顔面を包帯でぐるぐる巻きにしたミイラ女になっている状態だった。
魔法使いの黒いローブにトレードマークの三角帽子も相まって、明らかに異様ではあるが、なんか組み合わせとしてはむしろ三人の中で一番雰囲気が出てはいる。
この三者三葉の怪しさを放つ三人組は、とにかく人の目を引いた。
セレスティア(と、オーバーキル達)、ジード(パンツ一丁の)と珍客が来て「今日はもう驚くことはないわ」とギルドに居合わせた者達も、更にまた驚くことになってしまっている。
どこにでもあるありきたりな冒険者ギルドが、短時間のうちにベクトルの違う変人達が集う変な場となってしまった。
(くっ・・・やはり目立ってる・・・)
アリエス達は、ギルド内の人間から視線が集まっていることに流石に気まずい思いをしていた。
だが、アリエス達は帝国から犯罪者として追われている身であり、公の場では顔を隠さねばならないのだ。
そんな彼女達が何故恥ずかしい思いをし、リスクを負ってまでギルドにやってきたのか。それは当然、シュウの居所を知るためである。
アリエス達もジードと同じように、怪馬ホワイトキングを目印にシュウ達の追跡を行っていた。
だが、シュウ達はジードとの戦いの混乱のどさくさに紛れて完全に足取りをくらませてしまい、アリエス達も困ってしまったのだ。
そこでアリエス達はリスクを承知で、シュウ探しを冒険者ギルドに頼ることにした。
顔だけは見られることを避けるために、皆思い思いに顔を隠したが、どうにも隠密センスが皆無でとんでもなく目立つことになってしまっている。
「・・・」
カウンターに向かって歩くアリエス達に気圧されたのか、またも冒険者達は道を空けた。
「まじかよ」
セレスティアとジードを相手していたカウンターの職員は、アリエス達がまたも自分のところにやってくるのを見て死んだ目をした。
「人を探したい」
サーラがカウンターに金貨を置いてそう言った。
大金を出していきなり探し人の依頼。同じ状況が先ほどもあったことで、職員はピンときた。
「・・・もしかして、探し人というのはシュウという男ですか?」
もしかしてこのパターン・・・そう考え、ギルド職員はそう問う。
その瞬間、サーラ達不審者三人衆は一斉に「ビクゥッ」とあからさまに体を揺らして反応する。
「ど、どどどどどどど、どうして、どうしてどうしてそれをををををを」
「サーラ、動揺しまくってて話が進まないわ。貴方は引っ込んでて」
図星を突かれてこれ以上ないくらい動揺したサーラが使い物にならなくなったので、彼女のエリを掴んで後ろに追いやり、代わりにレーナが前に出る。
彼女らのリアクションを見て「図星か」と納得した職員は、とりあえず代わりに出て来たレーナと話をしようと思ったが・・・
「貴方、どこまで知ってるの?これはもう消すしかないわね」
「は?」
冷たい瞳で職員を見据え、立てた人差し指から「ポウッ」と小さな火の玉を出現させる。
レーナは自分の正体を知られてしまったと思い、職員を殺す気だった。
「なんでそうなる。そっちも動揺してるじゃないですか。引っ込んでてください」
冷静なフリして気が動転して職員に攻撃魔法を使おうとしているレーナを押しのけ、今度はアリエスが前に出た。
「すみません、お騒がせしました。私達は決して怪しいものではないのです」
全く説得力のない釈明をしながら、アリエスはカウンターに身を乗り出す。
「どうして私達が探しているのが、『シュウという、目が細いけど超絶イケメンの男性』であるとわかったんですか?もしかしてギルドで既に身柄を押さえているとか?」
期待を込めた目(兜をかぶっているのでわからないが)で職員を見つめるアリエス。あまりの圧に職員はのけ反る。
「いえ、そういうわけでは・・・」
先ほどジードから依頼があったからピンと来たわけだが、個人情報を明かすわけには行かないので職員が話せずにいると、興奮したレーナがアリエスを押しのけて前に出る。
「何か知っているのね!?話しなさい!話さないとただじゃおかないわよ!」
「いえ、何も知りません!」
レーナは職員の反応から、彼がシュウや自分達について何かを知っていると判断した。
「落ち着いてください。困ってるじゃないですか。乱暴はいけません」
職員に襲い掛からんとばかりに興奮しているレーナを、アリエスが諫める。職員には(見た目はともかく)アリエスが良識人の天使に見えた。
「けどこいつ、何か知っているかもしれないわ。そうね、私が禁忌とされた自白魔法で喋らせましょう」
レーナがさらりととんでもないことを言いだして、「禁忌?」と周りがどよめいた。
「魔法で発生させた触手が自白するまで対象の穴という穴を蹂躙する魔法なの。どんな屈強な男も雌落ちさせてしまうほどの執拗な攻めをするけど、怪我をさせることはないわ。これなら乱暴と言えないし良いでしょう?」
「う~ん、そうですね。それくらいなら」
普通にアリエスは普通に了承すると、職員含め周囲が「それ乱暴だから!」と一斉にツッコミを入れる。
禁忌だとか、暴力に対する感覚がおかしかったりだとか、見た目の怪しさ以上にとんでもないのが来たと誰もが思った。
「待て。君たち、シュウ先輩を探しているのか?」
シュウの名を聞き、反応をしないわけがないジードがアリエス達に絡む。
混ぜるな危険。
収拾がつかなくなりそうな状況に、ギルドの職員は「この悪夢早く終わってくれ」と思っていた。