追われる身であるというのに、レーナはすっかり頭に血が上り、目の前のジードという恋敵(?)を潰すことしか考えていなかった。魔法使いらしかぬ取り乱しようである。
それだけ自分だけがシュウとエッチ出来ていない現状に、大きな大きな衝撃を受けたのである。自分の女としての魅力に自信があったのに、実のところ男にすら負けてしまっていたとあっては無理もない。(勘違いでも)
そのレーナの怒りは、よりによって絶対に問題を起こしてはいけない最悪な場所・・・ギルド内で攻撃魔法を使ってしまうところまで来ていた。
「ぬぅっ!?」
それは一瞬のこと。
ジードはレーナが自分の手を取ると、その瞬間に取られた手がボウッと燃え上がるように発熱したことに気が付いた。
「やめろ!」
サーラが叫び、レーナ達の間に割って入ろうとしたときだった。
ボンッ
ジードの体が一瞬にして炎に包まれる。
「うわああああ」とギルド内でギャラリー達の悲鳴が響き渡った。
「ちぃっ!」
アリエスは障壁魔法をジード達をすっぽり覆うように展開し、ギルド内に被害が及ばないようにする。
「あー、ギリギリ間に合いましたか」
アリエスは障壁で周囲への魔法の影響を遮断出来たことに安堵する。そこに炎に包まれたジードに対する慈悲はなかった。
「なんてことを・・・っ!」
サーラは歯噛みした。
レーナが使った魔法は、相手に接触しなければならない代わりに、詠唱時間をほぼほぼゼロに出来るもの。
炎とはお友達の火吹き竜ですら溶かしてしまうほどの超高熱を触った個所から発し、やがて相手を爆発四散させる『ドラゴンバスター』と名付けた魔法だった。
もちろん、こんな魔法を食らえば死は確実。
威力だけで言えば以前アリエス達に食わらせた『ダブルドラゴン』よりも高いのだ。
追われる身だと言うのに、騒動を起こし、人死にまで出しては面倒なことになる。例え見るに堪えない変態でも、人前で殺めてしまっては罪に問われる。
もうどうすんだよこれ!と、サーラはレーナの凶行に苛立った。
だが、ジードへの見た目からの嫌悪感から、殺してしまうこと自体には実は割とどうでも良いと思っている。見た目も発言もキモイのが悪いのだと。
ギャラリー達も
「詠唱無しで魔法を発動させただと!?」
「あの炎・・・なんて熱量だ!障壁で囲われてなければ今ごろこの建物ごと燃えているぞ!」
「汚物は消毒だ!」
と、騒ぎ立てているがジードへの慈悲はない。
ギルド職員も「面倒なことしやがって」程度にぼやくだけ。
そんな哀れなジードだったが・・・
「ふんっ!」
突如ジードがポージングすると、バシュウ・・・と音を立てて身を包んでいた炎が消し飛んだ。
「なっ・・・」
レーナは驚愕に目を見張る。
手加減したつもりはなく、むしろ必ず殺すつもりで発動させた魔法が、突如として無効化されてしまったのだ。その衝撃は計り知れなかった。
そして当のジードは、髪をチリチリにし、浅黒い肌になって黒い煙を「ゴホッ」と吐き出しながら言った。
「これが魔法か・・・健康的に日(火)焼けして肉体美に磨きがかかったが、傷一つついておらんわ」
得意気な顔をして仁王立ちするジード。
高威力の魔法をもろに受けてなお、空元気でもなく本当に平気な様子を見せる姿に、誰もが威圧感を覚えた。
「ひっ・・・」
レーナが小さく悲鳴を漏らす。
ジードは「自分の強靭すぎる肉体が彼女を怯えさせてしまった。なんて罪作りな肉体なのだ」と酔っていたが、レーナが怯えていたのはそこではない。
レーナの魔法で身を焼かれたジードは、パンツも灰に燃え尽きてフルチンになっていたのだ。
「あふぅ・・・」
パタリ
あまりの衝撃にレーナは失神した。
自分が初めて見る男のイチモツは、シュウのと決めていたのだ。それが自業自得とはいえ、世にも醜い筋肉変態ダルマのイチモツを見させられてしまった。
「ふん!なんと軟弱な。だが、私の美しい筋肉とその力を目にすれば無理もない」
何か勘違いをしているジードが勝ち誇る。
そんなときだった。
「ぶっ!?」
ジードの体に、凄まじい衝撃が走る。
サーラが剣でみね打ちにしたのだ。みね打ちと言っても剣豪サーラが力一杯打ち付けた一撃。鉄塊で横殴りにされたジードは、あまりの衝撃に吹っ飛んだ。
「むっ!な、なにをする!?」
だが流石はジード。サーラのみね打ちのダメージからすぐに立ち直ると、怒りの形相でサーラに向き直った。
「選手交代だ。この変態め!」
「はっ?えっ?」
ジードからすれば既にレーナとの勝負はついた。
だが、サーラからすれば仲間がやられた(?)のでその仕返しをしなければならない。
「ぶっ!?」
ジードはわけもわからぬまま、サーラのみね打ちを更に受け続けた。
シュウほどではないが、サーラの攻撃は速い。それに加えて剣を持っている分リーチも長い。
抵抗することも出来ず、ジードはただただサーラのサンドバッグになるしかなかった。
「死ね!変態!死ね!」
ジードへの嫌悪感から、サーラはいつしかレーナと同じく「殺してしまおう」と思うようになっていた。剣を振る手に自然に力が入る。
そのまま本当に撲殺してしまうのでは・・・ギャラリーしていた誰もがそう思ったその時
「待った待った!そこまで!!勝負は着きました!!」
ようやくギルドの職員がサーラを止めた。