冒険者ギルドでアリエス達による大騒ぎがあってから一時間・・・
すっかりお開きとなってアリエス達やセレスティアがギルドを引き上げたその頃、ようやくジードは目を覚ました。
なんと自己再生のみで。
「ぬぅぅぅっ!?危うく死ぬところであった!」
勇者パーティーに属していた剣豪に頭を割られて、自力で生還したジードはつくづく化け物になりつつある。
が、ギルド職員やギルドを利用する冒険者も、全裸で頭から流血しながら床に突っ伏すジードを「無い物」として扱って空気にしていたので、彼らのメンタルもまた化け物級だったりする。
「ちゃんとあんたがいたところ掃除して、キレイにしてから帰ってくれよな。あと服を着て」
ギルド職員は、目覚めたジードをうっとおしそうにしながらそう言った。
ギルド内で暴れたのはもっぱらレーナとサーラなのだが、キモさ補正でなんとなくジードが主犯であったかのようにヘイトを集めている。
「ほらさっさとやることやって帰ってくれよ。あと服を着ろ」
ある種一方的に酷い目にあった可哀そうなジードにきつい当たり。だが、ジードはそれについては何も思うところはなかった。それどころではなかったからである。
「なんということだ・・・!私が、これだけの筋肉を誇るこの私がっ!あ
んな一方的に敗北を喫するなどっっ!!」
ジードは吠えた。
自分があっけなく敗北したことに衝撃を受けてのことである。
いかに規格外の筋肉を有しているとはいえ、元勇者パーティーに敵うはずもない。しかも相手は一人ではなかったのだ。
「そうだっ・・・私が負けたのは、卑怯にも二人で挑んできたからだ!事実あの魔法使いの女は私の筋肉を見ただけで気を失っていた!なのに脳筋のような女が不意を突いたことで、私が後れを取ることになってしまったのだ!!」
言い訳がましいが、自らの心を守るとはいえ、今回ばかりは正解を引き出すジード。
「くっ!やはり数は力だということかっ!!そして私の筋肉はまだ未熟っ!!私の筋肉が完成するその日まで、本意ではないが仲間と行動を共にせねばなるまい・・・」
「いいから服を着ろって」
「そんなことよりギルド職員!」
職員の真っ当な指摘を「そんなこと」と斬り捨てたジードは、目を血ばらせながら職員に迫った。
「私には仲間が必要だ!すぐに手配してもらいたいっっ!!」
全裸の筋肉ダルマに鬼気迫る表情で迫られた職員は、半泣きになりながらコクコクと頷くしかなかった。
-----
二日後・・・
「どうしてまだ私の仲間が揃わんのだ!」
ジードはパーティーへの勧誘されるか仲間になってくれそうな人物を待っていたが、結局誰一人とも彼に声をかけることはなかった。故に理不尽な怒りを担当してくれた不運な職員にぶつけている。
「そ、そんなこと言っても・・・」
職員はジードにそこそこの仲介料と手付金を貰っていたので、直球で言うことはなかったが、原因ははっきりしていた。このギルドでは既にジードの初日のイメージが強すぎて「近寄りたくない変態」と認識されているのだ。
「くっ・・・やはり今の美しくない姿がいけないのか・・・」
ジードは悔しそうに歯噛みし、表情を歪ませる。
本人はそう言うが、今のジードはパンツ一丁ではなく、帝都から持ってきていた普通の服を着ていた。一張羅(?)のパンツがレーナの魔法によって焼き払われてしまったからである。
「私の肉体美を布で覆わなければならぬとは!なんという屈辱!」と、ジードは嘆いた。一度裸族に慣れた人間は服を着ることに抵抗と屈辱を感じるようになるらしい。
パツ・・・パツ・・・ビキッ
ジードは普通の服の着ているが、筋肉の成長速度が異常らしく、帝都にいた頃の服が合わなくなってきていた。服がジードの筋肉に張り付いて、今にも裂けそうになっている。
「うひょ~エッチだ」
「スケベだな・・・たまらねぇぜ・・・」
今のパツパツの服を着ているジードは一部のホモには好評だが、それでも仲間になろうというやつはいなかった。レーナと争っているのを見られ、トラブルメーカーであるというイメージがすっかり浸透しているからである。
あとは筋肉が成長しすぎて、普通にキモイ。ちょっと人間に見えない。まともな人間なら珍獣扱い。仲間にしようとなどはしないだろう。
「くっ・・・このまま仲間が入らなければ、私自身が細胞分裂でもってもう一人増やし・・・」
ジードがとことん人間を辞めたような発言をしそうになり、危うい流れになったその時だった。
あるパーティーがギルドに入ってきたことで、空気が変わった。
勇者ライルが率いる『光の戦士達』である。