「ふむ・・・」
ジードはライル達の正面に立ち、値踏みするような視線を向けた。
彼とて仲間は欲しいが、誰でも良いというわけではない。変態でメンバーが集まらなかった分際でなんて贅沢な。
(なるほど・・・確かに弱いわけではなさそうだ)
ジードはライル達を見て、雰囲気からその実力を何となく把握する。
山籠もり時代に何度もトレーニングの一環で魔物と戦ったこと、そして何より一流の戦士であるシュウと拳を交えたことで、ジードにも戦士としての勘が宿り始めていたのだ。
(だがっ)
勇者であるしいくらか体は出来ているようだが、(ジードに比べ)まるで体の小さいライル。
まるで女人のほうに細く、お話にならないもやしっ子サブングル。
そもそも女で子犬のようにちんまりしたチヨメ。
そして何故か上半身裸だが、見せつけているものは脂肪に包まれただらしねぇスケベな体であるチンキン。
「フッ」
筋肉の質は明らかに自分の方が圧倒的に上であると、謎のマウントを取って見下した笑みを浮かべてしまった。
「ホッホッホ。チンキン君、こいつ何だかむかつくアル」
ジードの悪意を感じ取り、柔和な笑みを浮かべながら、青筋を浮かべて苛立たし気に言うチンキン。
だが、ライルは直感した。
(こいつ・・・見るからに強い!)
着ている服が破れそうなほど発達している筋肉。ていうか体は大きく、頭はそのまま。強そうな人間というかむしろ魔物?と見間違える姿だ。
これを見て弱そうだと思うやつがいたら目がおかしい。
「初めまして。私はジード。ただのジードだ」
ジードは自己紹介をする。
旅先で新たに仲間を集う際、自分が貴族であることを明かすのはトラブルを招くのであまりよろしくはないとギルド職員に教えられ、あえて身分を隠して家名は伏せた。
ジードからすれば普通の自己紹介だが、ライルには衝撃的だった。
(普通の人だ!)
普通の人。
ただそれだけのことがライルには衝撃的であり、感動した。チンキンもサブングルもチヨメも、(そしてライルも)皆普通ではないのだ。
ライルが求めているのは、自分の心の均衡を保てるだけのコミュニケーションが取れる人物・・・普通の人だった。それでいて強ければ言うことはない。
ライルにとって、ジードは自分が求めていてやまない人材だった。
ただライルにとって計算外があるとするならば、彼は全く普通の人間ではないというところだけ。ていうか変態だ。
結局のライルとジードは利害の一致(と錯覚して)によって仲間同士になったのだが、ライルの勘違いが露呈するのはすぐだった。
ジードに出発の準備があると言われ、翌日再度合流してから旅立つことで合意したライル達とジード。
翌日、待ち合わせ場所待つライルはソワソワしていた。
もうすぐ待望のまとも(?)な仲間が入って来る。体は少々奇形だが、人間は見た目ではない、中身だ!と呑気にライルは考える。
以前のライルなら世間体を気にしてメンバーの外見も拘っただろうが、見た目は可愛いが性別は男♂だったアイラの一件で彼も随分と成長して「人は見た目にあらず」と考えられるようになったのだ。凄い成長だ。
「すまない!待たせたな!」
待っているライル達の元に、大きな声を出しながらジードが駆けてやってきた。
「お!やっと来・・・た・・・」
ライルはジードの姿を見た瞬間、思考が停止する。
ジードは以前のようなパンツ姿に戻っていた。
町の仕立て屋に大金を渡し、嫌がっていたのを無理やり作らせた特注パンツだ。
まず素材が頑丈で、かつ伸縮性が極めて高い。
どのような激しい動きや物理的衝撃も吸収し、今度は火に燃えることもない。
この素材の特性を生かしつつ、自身の肉体美を極限まで晒したいという願いから、このパンツは布地面積をギリギリに設計されている。
つまり、イチモツはギリギリまで見えないが、ほぼほぼ全裸に見える紐のようなパンツというわけだ。
これを身に着けるのは・・・否、身に着けられるのは、まさに本物の変態だけだった。
ちなみにジードが「せっかくだからオシャレにしたいな」と訳の分からぬ注文をつけたために、黒の布地に対し金色で薔薇の形の刺繍が入っている。
「全裸!?全裸ナンデ!!?」
「安心すると良い。履いているぞ」
「イヤーーーーーーーーッ!」
まともな人間を求めて仲間を募りに行ったのに、更に変態を取り入れてしまったことでライルは発狂した。