とある草原。
聞くに堪えない下品な歌が流れる中、二人の男・・・ジードとチンキンが魔物相手に奮闘し、文字通り血の雨を降らせていた。
「パワーッ!100パーセント中の100パーセントぉ!!」
「アタタタタタタタタタタッ オワッターーッアル!!」
奇声を上げながら敵を凄まじい勢いで殺していくジードとチンキンを眺めながら、ライルは猛烈にこみあげてくる吐き気を堪えていた。
ジード達が敵と戦う一方でライルの戦う相手は吐き気。しかもせっかくの剣も杖代わりにするなど、今のライルの姿はあまりにも情けない。
ちなみに、今回戦っている魔物は『ハンマ・オーガ』という、鬼のような顔をした人型タイプの魔物である。体はそこまで巨大ではないが、高い知能と凄まじい筋力を持ち、どこで覚えたのか人間が使うような格闘術を得意。
素早く動き、攻撃力も知能も高いという恐ろしい相手だ。群れ一つあればそれは小国一つの軍事力に匹敵するとまで言われている。
そんなハンマ・オーガを、『光の戦士達』が次々と屠っていく。それもオーバーキルで。
好戦的な性格で知られるハンマ・オーガも、異常な戦いぶりを見せる『光の戦士達』にすっかりビビり、パーティーの中でも比較的無力に見えたのかライルに狙いを定める。
「ガォォォォッ!!」
(なっ、チンキン達にはビビッているのに、僕のところにはまっすぐ来るだと!?)
ライルはプライドが傷ついた。仮にも勇者。パーティーの中でも最強の存在なのに。
「かかってこい!僕の刀の錆にしてや・・・ヴォエッ」
剣を構えて迎撃態勢を取るも、サブングルの糞歌がライルのコンディションを大きく崩し、強烈な吐き気を誘引する。
まずい、ライルは本能的に身構えようとしたが・・・
「ガルェ・・・?」
ズシャア・・・
ライルに向かっていた複数のハンマ・オーガの体に、いつの間にか無数の線が入ったかと思うと、次の瞬間には一斉にバラバラとなり地面に崩れ落ちた。
「・・・ご心配なく、もう終わってます故・・・」
茫然とするライルの背後から、突如として聞こえてきたのは、小さくて聞き取りづらいチヨメの声だった。
ライルに迫るハンマ・オーガを一瞬にして惨殺したチヨメ。もうこの子だけいればいいんじゃない?とすら思ってしまうほどの圧倒的な戦闘力をまざまざと見せつけられ、ライルは項垂れた。
新『光の戦士達』は、もはや向かうところ敵無しといわれるほどの快進撃を遂げている。
どんな強い魔物と戦っても、どんな難解なクエストに挑んでも、立ちどころにこなして成果を上げる。
旧メンバーが全て抜け、その穴を埋めることは不可能と言われていたが、今やその穴はしっかり埋められている・・・ライルからすれば、これは本来僥倖であるはずだった。
しかしっ!
「これ・・・僕いらなくね?」
新『光の戦士達』は、ライルがいなくても戦闘は十分に回っていた。
サブングルの歌でパワーアップされたジード達は、ライルが戦闘不能になってもその穴を埋めた以上の活躍を見せる。
「あわわわわわわ」
ライルはここ数日ほど、リムラーから小言を言われるようになっていた。
サブングルの歌でイカれた戦闘するのをもっと抑えろと言われたり、暴走するにしてももう少し見た目をどうにかしろとも言われる。
だが、それと同時に勇者ライルもちゃんと勇者として見られるように活躍しろと注文を受けていたのだ。
仲間が戦っているのに、ただ一人確かに吐き気を堪えて役に立たないでいるのは勇者として相応しい姿ではない。何なら冒険者でもない。
とりあえずサブングルを何とかしなければ。
これまでライルはどうにかしてサブングルをどうにか出来ないかと手を尽くしていた。
しかし、歌をそれとなく控えめにしろと言ったら、曲調は僅かに変わったものの結局仲間が狂うし、「音楽性の違い」を理由にパーティーを追放しても良いかとリムラーに聞くも当たり前のように首を横に振られる。
そして遠回しにパーティーを自主的に離脱するよう人づてに伝えても
「いやどす(´・ω・)」
ときっぱり断られてしまって八方塞がりだったのだ。
だが、これまで遠回しにサブングルをどうにかしようと思っていたライルも、そろそろ自分の立場がヤバいと考え、ダイレクトに思いのたけを伝えようと決心する。恥も何もない。お前の歌で俺は具合が悪くなるし、世間体がヤバいんだよとライルは伝えようと宿屋のサブングルの部屋を訪れた。
「サブングル!話がある!」
勢いに乗り、バァンとノックも無しに開いたその扉の向こうでは・・・
「あぁ~~~サブ様すごぉぉい」
ベッドの上で四つん這いになって嬌声を上げる裸の美女と、同じく裸になって腰を振っているサブングルがいた。
「わた~し~のチン〇はいい気持ち~ 硬いぞ~ タフだぞ~」
美声を上げながら、小気味いいリズムで腰を打ち付けるサブングル。
歌いながら性交する変態を茫然と見つめるライルは、口を半開きにしたまま硬直してしまう。
性交している現場に出くわしてしまうとは何たること。しかもサブングルが自分に尻を向けている構図で!と、嘆きたくなった。
「むっ!?勇者様どうされました?」
グリン、と後背位で腰を振っている状態のまま、サブングルはライルの方へ器用に顔を向けて問う。性交をやめるつもりはなさそうだった。図太い人間である。
「くっ・・・」
女と交わるとチ〇ポが爆発四散するという、帝国で結ばされた無慈悲な誓約により、今のライルは娼婦すら抱けていない。そんなすっかり溜まるものが溜まったライルには、今目の前で繰り広げられている光景はあまりにも毒だった。
結果、一瞬にして股間が勃起してしまう。
「おや、勇者様は溜まっておいでですか」
そんなライルの様子に側鎖に気が付いたサブングルは、ふむ、と頷いてから
「良かったら勇者様も混ざっていかれますか?」
と、素敵な笑顔で提案した。ちなみにこうしている間にも腰は振っている。器用でほんと図太い男である。
「ウホッ!マジで!?」
単純なライルは、誓約のことを一瞬で忘れて歓喜の声を上げた。性器が爆発四散してしまうことなど、すっかり忘れてしまっているようだった。ライルは素人童貞だったので、素人美女が抱ける状況になったことだけでも嬉しかったのだ。
しかし、事態は思わぬ方向へ流れた。
「ええ、どうぞ好きなようにお使いください!」
サブングルは微笑を浮かべて腰を振りながら、自らの尻をピシャッと叩いてそう言った。
それの意味するところは、女ではなく男であるサブングルの尻にホールインしろということである。
「えっっっっ!そっち!?」
ライルの怒張したイチモツは秒で縮んだ。
「もちろんですよ。他になにがあるんですか?」
「いやぁ、もう少し適切な場所があると思うんですけど・・・」
「ご心配なく。私のような超絶美形の吟遊詩人の一人旅・・・何も起こらぬはずはなく、道中何度か屈強な冒険者に手籠めにされていますのでこなれたものです。どうぞ遠慮なくお使いください!」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ライルは発狂する。
パーティーの問題児だと思っていたサブングルが、自分が想像するより遥か上の特級呪物であることを知り、流石に精神が正常さを維持することは不可能だった。