「うーーーーん・・・」
シュウは早朝に目覚めた。
この聖地で暮らすようになってから基本朝は早かったのだが、これまでのどの朝よりも早かった。
「ふむ、実にすっきりした清々しい朝だ」
シュウは満足げにうんうんと頷く。
夢の中のシュウは、日が昇りかけるまでリリカの肉体を堪能した。有言実行でハメ狂ったのだ。男汁も出すだけ出して、身も心も軽やかだ。
寝床に視線を向けても、当然ながらリリカはいない。やはり夢だ。
夢だが、実にリアルで素晴らしい夢だった。
「今夜もリリカさんが出てくるのだろうか・・・何とけしからん私。しかし、夢の中なので許してほしい・・・」
言葉ばかりの反省の意を込めてそう呟く。
「あぁ、次は酒を飲む夢がいいですね・・・酒を飲みながら博打を打ち、その締めに女性と交わうという夢が見たい・・・」
図々しくなっているシュウ。本当に言葉ばかりだった。
「さて、今日も一日がんばるぞい!」
シュウは意気揚々と今日も働きに出たのだった。
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「シュウ様」
「・・・フローラ!?」
異様に元気にシュウが労働に勤しんでから休憩していると、不意にフローラから声をかけられた。
夢の中でのこととはいえ、昨晩これでもかと言うほど他の女性と性交してしまったシュウは、超絶今更ながら気まずくなってしまう。
リリカに貰ったお茶の効能とはいえ自分ばかりが欲を発散し、フローラだけが我慢を強いられている。そんな状況に申し訳なくなったシュウだったが、ここで彼は異変に気付いた。
先日会ったときは目が虚ろで精神的に追いつめられているような雰囲気があったが、今のフローラの表情からはそれが読み取れなかった。
なんだか悟りを開いたかのような、実にすっきりした表情でシュウを見つめているのである。
「フローラ?その、随分とスッキリした表情をしていますが・・・」
気になってシュウはフローラに問う。
もしや自分と同じ発散法を?と頭を過ったが、彼女の答えは思いがけないものであった。
「はい、東方で修行を重ねたという女性から『般若心経』というものを教わったんです。これを唱えていると凄いんですよ。心がスーッと落ち着いて、無の境地になるんです。いろいろなものに固執していたのが、嘘のように心が穏やかになって・・・」
「・・・ふむ、私もそれは以前旅のときに一度聞いたことがあります。それほど効果があるんですか」
それほど効果があるのなら、試してみるのだったな。そうすればリリカさんのお茶の世話になることも・・・などとシュウは考える。
「はい。とっても効果があるのでオススメです~この生活が終わったら、三日三晩ガッツリとハメ狂いましょうね~~^^」
そう言って、ウフフ~と目を細めて笑うフローラを見て、シュウは悟った。
(いや、これは違う・・・溢れ出る欲を無理やり押し込めている感じだ・・・)
ちっともフローラは心を無になど出来ていない。むしろ今にも暴発しそうな感情を必死に抑え込んでいるのだ、とシュウは何だか猛烈に申し訳ない気持ちになる。
夢の中とはいえ、リリカ相手に好き放題発散したなどと知られたらどうなってしまうのだろう・・・シュウは背筋が凍る思いがした。
「そういえばシュウ様。ここに来て数日経ちますけど、いま世間は一体どうなっているのでしょうか。何も情報が無くてわからないのも、何だかもどかしいですね」
「・・・そういえばそうですね」
フローラの方から話題を変えられてシュウはホッとすると同時に、確かに気になるな・・・と思った。
これまでの逃亡生活では、シュウはどれだけ追われていても必ず新聞を入手して目を通すようにしていた。情報を掴むことが、自分達の逃亡生活でのヒントになるのではないかという考えからだ。
どんな田舎で数日遅れの物でも、かならず新聞というものは存在した。だが、この聖地では「修行の邪魔になる」として今は意図的に新聞の類はシャットアウトしてしまっている。故に外の情報が何も入って来ないのである。
今、世間では何が起きているのか?帝国の自分達に対するスタンスはその後どうなっているのか?追手の動向は?
匿ってもらっている身で贅沢な話であるし、聖地にいれば安全ではあるのだろうが、何もわからぬまま過ごし続けるというのも、シュウには何ともひどくもどかしく思えてならなかった。
「早く、日常が戻って来ると良いですね・・・」
フローラがポツリと漏らした呟きに、シュウは深く頷いた。
そう、早く日常に帰りたい。それはシュウも強く強く願っていることである。
聖女と駆け落ちするという茨の道を歩むと決めたとはいえ、頭のイカれた元勇者パーティーのメンバーや、筋肉自慢の変態や冒険者の群れに追われ続けるというハードモードが続くのは心底勘弁願いたいのだ。
「シュウ様が昼から賭け事を楽しみ、酒場でお酒を飲んでから帰宅して帰ったら私とスケベする。そんな平凡な日常・・・早く来ると良いですね」
「いや、それだと私がクズみたいじゃないですか・・・・・・・・・え、ほんとにそんな生活送っていいんですか・・・?」
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フローラと別れたシュウは、今日もリリカの元へお茶をいただきに向かった。
「いたいた・・・」
リリカは家の中で何か作業をしているらしく、シュウに背を向けている。
(昨日は彼女と楽しんでしまったんだよな・・・夢だけど)
若干の気まずさはあるが、夢は夢なのだと割り切ってしまえるシュウは豪胆である。
「こんにちは!」
夢のことが楽しみなシュウは、浮かれ気分でつい大声を張り上げてしまう。
「ひゃいっ!?」
シュウの大声にリリカはまさに飛び上がらんほどにビクッと体を震わせてから、恐る恐るといった感じに振り向いた。
その表情はこれまで彼女が見せたことのない、何か怯えたような表情だったが、シュウはそれには気付かない。
「すみません、本日も例のお茶をいただきに来ました」
「へ・・・?」
シュウが用件を伝えると、リリカは唖然とした表情を浮かべる。
「えっと・・・それだけですか?」
「・・・?えっと、そうですが・・・」
リリカの問いにシュウがキョトンとして答えると、リリカは小声で「え?本当にまだ夢だと思ってる?うっそだろお前・・・」とボソボソと呟くが、シュウには聞こえなかった。
こうしてシュウはまた淫夢?にふける。
しかし、そんなシュウに不吉な足音が近づこうとしていた。