(・・・新聞記者?新聞記者がどうしてこんなタイミングで・・・!)
この誂えたかのようなタイミングで唐突な新聞記者の登場・・・
騎士達はただ戦慄しているが、シュウは違和感を感じていた。
まずカメラの存在である。
カメラは瞬時に影像を残すことが出来る便利な道具だが、持ち運ぶには不便なほど大きく重い。そして何より非常に高価なのだ。取材の最中に落下させたりぶつけたりするとそれだけで大きな損害になるので、新聞記者とてそうそう持ち歩くことはない・・・というか上からの許可が出ないだろう。
カメラを用いるとすれば、使う価値のあるだけの記事が望める時だけなのだ。シュウはマスメディアの専門家ではないが、それくらいのことは知っていた。
世界でも幅を利かせている聖神教会の象徴といえる聖女・・・のスキャンダルをネタとするならば、確かにカメラを持ってくるのは不自然ではない。
だが、記者がこの場に現れたのはあくまで偶発的なものであるはずだった。だからカメラをこの場に持ってきていることは不自然極まりないのだ。
まるでここに来れば間違いなくとっておきのネタが拾えるとわかっていると言わんばかりではないか、と。
「まさか・・・」
シュウは自分の隣でシーツにくるまっているフローラを見た。
フローラは特に言葉を発しなかったが、シュウに向かって意味ありげな笑みを浮かべる。
(やはり・・・これはフローラの手引きによるものっ!!)
そう直感で気付くと、慌てて新聞記者の方へ目を向ける。
新聞記者はフローラと何かアイコンタクトを取っている・・・ようにシュウには見えた。
「待て!写真は駄目だ!」
カメラの用意をする記者に対し、我に返った騎士達は慌てて止めようとする。
しかし、記者は帯刀している騎士に対しても毅然とした態度で言い返していた。
「おや?聖騎士様ともあろう方々が、取材活動の妨害ですか?」
記者の言葉に、騎士達は「ぐっ」と言い淀む。
聖神教会は公明正大をアピールするために、新聞社の取材に対しては基本的にオープンな立場を取っている。
一応それは表向きのことで、実際本当に危ないネタに関しては圧力をかけることもあるのだが、それらを判断するのは教会でもそれなりに上の立場の人間である。少なくとも一般的な聖騎士が現場判断でどうこうして良いものではなかった。
基本的に神官も聖騎士もいつ何時新聞社の取材を受けることになっても良いように、普段の行いは気を付け、人の目を気にするようにと厳しく言いつけられている。
シュウは神官の頃から「そんなの知りません」とこっそり好きなようにやっていたが。
「ささ、どいてください。撮影の邪魔ですから。邪魔されるのでしたら、そのことを包み隠さず公にします」
記者が強気な態度でそう言うと、騎士達はお互いに顔を見合わせた後、渋々後ろに下がる。
新聞社の取材を邪魔したことが記事にされると、聖神教会のイメージに大きな影響を与えるために、騎士達は言うことを聞くしかない。
聖女フローラのスキャンダルとのことを天秤にかけたが、既に宿屋の女将は他人に話してしまっているというし、ここで取材を妨害すると巡り巡って悪い方向に転がるだろうと判断したのだ。
というか、ここまでいろいろ重なってしまえば現場だけで完璧な判断をすることは難しい。
騎士とて「もうどうにでもなーれ」という心境である。
「あ、そこの恋人さん。お兄さんの立派なモノが映るとまずいから、ちょっとシーツで隠して貰えますか?」
撮影する直前に、記者がそう注文する。
「えっ、あぁ・・・」
そういえば全裸だった・・・とシュウは今更ながら自分の姿を思い出す。
「あともう少し驚いた感じの表情をつくってもらっていいですか?いかにも記者が突撃したばかりで驚いたーって感じで。あと、二人とももう少し近づいてもらって・・・そう・・・」
細かい注文をあれこれ受けながら、シュウとフローラは記者に言われるがままに表情を作り、ポーズを取った。
「良い感じですね。それでは撮りますよ?せーの・・・」
((何だこの茶番は・・・))
シュウと騎士達の心が一つになった。
フローラと記者が繋がっていることは明白だったが、それを指摘したところで何が変わるわけではないから黙っている。
バシッ と大きな音と閃光がして、
教会からの追随の手を逃れるフローラの考えその1・・・ 可及的速やかな既成事実の公表、である。