何かにつけエリーザがシュウを訪ね、プライベートを共有すると、自然と二人の仲も深まった。
エリーザはツンデレではあったが、それ故に素直になれない自分への焦りからか、猪突猛進と言えるほどにシュウへ会いに行く。シュウもまたそれを邪険にすることはない。
最初こそシュウは年下のエリーザを妹的な感覚で見ていたが、それもすぐに認識が改まっていた。エリーザの元からの美貌もそうだが、素直でないその性格の裏に自分への好意があることに気が付いたからかもしれない。シュウはエリーザを意識するようになり、やがてはシュウからもアプローチをするようになる。
毎日顔を合わせ、プライベートはほとんど一緒。とげとげしいエリーザとそれを軽く慣らすシュウその組み合わせは、傍からみても似合いのカップルではあった。
しかし、エリーザは素直になれなかった。
「そろそろ付き合わん?」の一言でも言えれば始まった恋人関係だが、そこに中々踏み切れなかった。
エリーザの拗らせは相当だったのだ。
そんな二人が結ばれたのは、やはり変化球がきっかけだった。それも特大の変化球だ。
「シュウ。私、聖騎士団に入ることになったわ」
デート(?)中、エリーザが切り出した。
「おめでとうございます!願いが叶いましたね!」
シュウは破顔し、自分のことのように喜ぶ。だが、エリーザの表情は曇っていた。
「エリーザ・・・?」
様子がおかしいことにシュウが怪訝な表情をしていると、エリーザは重々しく口を開いた。
「・・・その、お願いがあるのシュウ。その・・・私を抱いて欲しいの」
「・・・・・・はぁ?」
シュウは固まった。普通は誰でも固まる。
エリーザはハッとして、慌てて言った。
「か、勘違いしないでよね!そういうのじゃないんだから!」
「いや、それじゃ・・・一体どういうのなんですか?」
「えっと・・・その・・・」
ここまで言っておいて、エリーザはまだ告白するだけの勇気が無かった。告白以上のことを言っているはずなのに。
テンパり過ぎたエリーザは、しどろもどろになりながら続ける。
「その、私、聖騎士団に入るじゃない?」
「え、ええ・・・そうですね。そうおっしゃいましたね」
「その、聖騎士団って噂によると、風紀が乱れに乱れてて・・・女性騎士が手籠めにされたりとか、そういうのが結構あったりするらしいの・・・」
「は、はぁ!?聖騎士団が!!?」
シュウはエリーザの発言に腰が抜けそうになった。
聖騎士団は教会の中でも規律を重んじる組織だ。神官の汚職や、規律違反などを徹底的に力で取り締まる、どんな権力も通用しない究極の絶対正義。それに痺れる憧れる聖騎士団なのだ。その聖騎士団の風紀が乱れに乱れているなど、にわかには信じがたいことであった。
もちろん、これはエリーザの病的なまでに拗れた照れ隠しによるはた迷惑な嘘だ。だがエリーザは羞恥で自分の顔を真っ赤に染めながらも、口から次々と言葉が沸いて出る。
「も、もちろん、私も絶対にこの体をくれてやるつもりはないわ。でも、万が一のことだって無いわけじゃない。だから、その・・・最初くらいは、一応気の知れたシュウにって」
「・・・」
聖騎士がそんな乱痴気騒ぎをするのか?と、シュウは疑問に思う。
思うが、エリーザが本気で聖騎士を目指していたのを知っている。だからシュウには、エリーザが聖騎士のデマをわざわざ口にするとは思えなかった。
・・・とまぁ、シュウが考え事をしていたのも一瞬のことだった。
「ハイ喜んで!」
シュウはエリーザの手を取り、満面の笑みで応えた。
エリーザのことは元々女性として強く意識はしていた。そんな彼女が理由はともあれ誘ってきているのだ。これをあれこれ理屈で考えて跳ね除けられるなど、情欲が強くしかも童貞だったシュウに出来るはずがなかった。
こうして、シュウはエリーザと結ばれたのである。
だが悲しいかな、結局最後の最後までエリーザが素直でなかったがために、きちんと言葉で気持ちを交わすことが出来なかった。
しかし、このときの彼等には言葉など不要であった。
言葉にせずとも気持ちは一応は繋がり、何だかんだと二人は事実上恋人同士になったのだ。
だが、そんな二人の幸せが長く続くことはなかった。
ちなみに、シュウは後日聖騎士を一人捕まえ、エリーザの言葉を信じて勘違いしたまま乱れた風紀について物申したところ「貴様聖騎士を愚弄するか!?」と聖騎士団にリンチされ、危うくソッチの気のある聖騎士に制裁として掘られそうになったという。