「レウス司教が己の利益のために聖女様を利用し、その障害となるシュウ様との関係を邪魔したということですか?それが事実であるならば、なんと酷いことを(棒読み)」
「いえ、それだけではありません。レウス司教は実はゲイセクシャルでシュウ様のことを想ってもおりました。それだけに尚更私との関係は許せなかったようなのです」
「「えっっっ」」
シュウ、騎士、女将の驚きの声が重なった。
フローラと記者はそのままやり取りを続ける。
「司教様がゲイ・・・ですか?」
「はい。まだそこまで広がってはおりませんが、そういう噂も教会内であると思います。とにかく、私は政略結婚などするつもりはありませんし、シュウ様もノンケなのでレウス司教を受け入れることは出来ません。ですが、それに怒り狂ったレウス司教は、シュウ様を『破紋』にしてしまったのです!」
『破紋』という言葉を聞いて、それを知る記者と騎士がぎょっとする。
「破紋って本当なのか・・・?そこまでのことを・・・」
聖神教会における『破紋』されることの厳しさを知っている騎士達は、ここでハッとしてシュウを見る。
「破紋・・・あの、聖神教の教徒としての資格を永久に奪ってしまう、あの破紋ですか!?」
「はい、ご覧ください」
記者の言葉に頷いたフローラは、隣にいるシュウにかかっているシーツをバッと予告なく取り払う。
「いやん」
シュウは突然にして丸裸をその場にいる全員に晒すはめになる。フローラは聖紋の消えたシュウの肌を見せるつもりだったが、ついでに股間の余計なものまで見えていた。
「あらやだご立派」
仰天する女将。
「確かにでかい」
マジマジとシュウが晒すはめになった一部を凝視する記者。
「なんで勃ってんだよ・・・」
呆れる騎士。
思い思いのリアクションで自分の股間を見られたシュウは恥辱のあまりその場から逃げ出したくなった。
「あ、ちょっと!そこじゃありません!もっと上の方見てください!」
皆の視線が違うところに注がれていることに気付いたフローラがシュウの股間にシーツをかぶせる。
「見てください。聖神教会の神官ならば、誰しも体にその身分と加護を証明する聖紋が肌にあるはずなのです。ですが、レウス司教は私怨によってシュウ様から聖紋を奪い取りました・・・つまり破紋にしたのです。長年教会に尽くし、受けるべくして聖神様の加護を受けていたシュウ様がこんなひどいことに」
フローラは悲痛な表情を浮かべながら、シュウにピタリと寄り添う。
「なんと酷い・・・」
破紋というものが聖神教会の教徒にとっていかに恐ろしいものかは教会に属する聖騎士達も知っているだけに、思わずシュウに対して同情の声が漏れた。
破紋とは二度と教徒に戻れない、加護を受けることができないという不可逆的な重い処置だけに、司教といえど私怨で行って良いものではない。
理由こそフローラの捏造ではあるが、実際にシュウを独断で破紋にしたことは事実なので、レウスは記者に知られたこの段階で世間的にはかなり厳しい立場に遭うことが確定した。
これだけでも大きな衝撃だが、この後のフローラの言葉が更に衝撃を与えることになる。
「ですから、私も自分にあった聖紋を打ち消しました。愛するシュウ様がこのような目に遭っておいて、私はもう聖神教会に身を置くことはできません。シュウ様と真実の愛を貫くために、聖女を辞め、自ら教会を脱したのです」
「は?」
フローラの言葉にシュウは唖然とした。
「私の肌を見て良いのはシュウ様だけですから、私の破紋痕を見せるわけにはいきませんけど」と恥ずかしそうに顔を真っ赤にするフローラ。
(予告なく私のイチモツを披露するのは良かったのか?)という疑問はおいておいて、シュウは自分の位置から見えるフローラに肌をマジマジと見つめる。
確かに本来ならあるはずのフローラの聖紋が無かった。
そんなバカなとシュウは思うが、聖女ほどの聖力の持ち主であれば、司教などの手を借りずとも自分で自分を破紋にすることもあるいは可能なのかと考える。
(そういえば夕べのアレのときも、思い出してみたら確かに無かったような・・・)
性欲を満たすのでいっぱいいっぱいで、本来なら気付くはずのものにシュウは気が付かなかったのだ。
(どれだけ発情していたんだ私は!)
綺麗な肌、小ぶりな胸、まだ成熟しきっていないがそれが良いお尻・・・行為の最中、シュウはそっちにばかり意識がいっていた。
「新聞社様にはゲイで短絡的で利己的なレウス司教のことの告発と、そして私とシュウ様がお互い一般人として出直し、真実の愛の第一歩を歩み始めたことを、世間の皆さまに広め伝えてくれたらと思います」
シーーーーーン
部屋が静寂で包まれる。あまりに重大な発表故に皆が言葉を失っていた。
そしてそんな中、フローラの言葉でシュウも固まっていた。
(って、私のために自分で自分を破紋した?もう聖女どころか教徒としても戻れないのに、それをやっただと・・・!?・・・お、重っ!!)
今更だが、本当に今更だが、シュウは自分がとんでもない女に捕まったことを自覚したのであった。