ライルがまだ駆け出し冒険者だった頃、先輩冒険者に聞いた話の中で、特に旅の最中での女仲間とのラッキースケベについての話が一番興味があった。
「普段はそう意識していなかった子でもよぉ、ちょっと野営が続いて性欲が溜まったときなんかは、何かいつもより綺麗に、輝いて見えるもんなんだわ。んで、そんな子とちょっと着替え中とかで鉢合わせしちゃったりなラッキースケベがあるとよ・・・そらぁ、もうあれよ」
「・・・あれ、とは・・・?」
「勢いで押し倒しちまってよ・・・しっぽりそれ以来彼女は俺のセフレなンだわ」
「マジっすか!」
「冒険中も目を盗んでいろいろヤリたい放題なンだわ。楽しいぜ~ いろエロある冒険者生活ってやつは」
「くぅ・・・僕もいつかそんな冒険者になってみたいです!」
・・・後にその先輩冒険者は男女関係のもつれで刀傷沙汰になり、治療が遅れたことで冒険者どころか人生までリタイヤすることになってしまったが、ライルのラッキースケベへの関心は薄れることはなかった。むしろ先輩と違って俺、うまくやるぞとすら考えていた。
そして時が経ち、ライルは冒険者として名をあげ、メンバーをある程度選定できるだけの立場になった。
下心あると言われようが何だろうが、ライルは自分好みの女を積極的にパーティーメンバーに採用するところまで持っていく。あとは冒険の中で、ラッキースケベがあることを期待していた。
男女がずっと行動を共にするのだ。どれだけ気を付けたって、時にちょっとしたエッチなハプニングの一つくらいは起きるだろう。人間だもの。
旅のちょっとした心のリフレッシュに欲しいよね、そんなイベントが。
実はライルはそんな(邪で)小さな希望を胸に、過酷な旅を続けてきたのだが・・・
残念ながら、待てど暮らせどライルが期待していたようなエッチなハプニングはこれまでにただの一度だって起きなかった。
ライルとてさり気なさを装い、くまなく隙を探ったが、誰もただの一度とて女衆はエッチな隙など見せなかったのである。
(まぁ・・・そんなもんか。女の子だって気を付けてるもんな。うちのパーティーの子は優秀だし、隙だらけのアホな子と違うんだよ。仕方がない)
ライルは負け犬全開ながらもいつしかそんな風に割り切り、ラッキースケベに期待していた心にソッと蓋を閉めていた。
閉めていたのだが・・・っ!
「ラッキースケベに・・・苦しんでる・・・だって?」
ライルは信じられないといったように顔を強張らせながら、絞り出すように呟いた。
どれだけ待っても訪れなかったそれを、知らぬ間にシュウが経験していただって?馬鹿な!と、叫びたい気持ちでいっぱいだった。
「えぇ・・・こんな生殺し状態・・・私には毒が強すぎます」
力なくそう言うシュウは、何だか心なしかげっそりと瘦せ細っているようにライルには見えた。いや、実際によく見ると、目元に隈が出来ている。
シュウは情欲が強い・・・要はスケベだ。
だが、シュウはレウス司教より『光の戦士たち』内で様々な行為を禁止されている。
異性との恋愛はおろか、過度なスキンシップもNG。ライルの冒険の支障にならないように、和を乱さないことも厳命されている。
つまりは、ラッキースケベが発端でメンバー間がぎくしゃくしても駄目だし、勢いで男女の間柄になって高ぶった性欲を相手で発散することも許されない。
ラッキースケベなど、シュウにとって恐怖の時間以外の何物でもないのだ。男の修行かこれは?と問いたくなるレベルだった。
けど、そのくせラッキースケベがあるたびにシュウには強い性欲が溜まる。
シュウは自分の中で持て余しつつある激情を抑え込むのに、日々神経をすり減らしていた。
だが、ライルはそんなシュウの心など知らず、鬼気迫る勢いで問う。
「具体的に何があったんだい!包み隠さず言ってくれ!!誰と、どんなラッキースケベがあったんだっ!!?」
思わず叫んだライルに、酒場の周囲の客から白い目が注がれた。