「わざとだっ!!」
話をずっと黙って聞いていたライルは、話が進むにつれて次第に体をプルプルとスライムのように震わせていたが、シュウが話を終えると溜めていた鬱憤を晴らすかのように叫んだ。
「・・・」
シュウは唖然としていたが、ハッと我に返って口を開く。
「えっと、わざととはどういうことですか?」
シュウのその質問が、ライルを更に刺激する。
「サーラとアリエスがシュウさんにやってることだよ!どこがラッキーだよ!偶然でも何でもない、わざとシュウさんにやってるに決まってるじゃないか!!」
ダンッッッ
ライルの叫び声とテーブルを叩く音に反応し、周囲から視線が注がれる。
「ちょっと、声が大きいですよ。あまり目立つようなことは・・・」
シュウは居たたまれなくなり、やや身を縮こませてひそひそ声でライルに言う。
話している内容が内容だけに、あまり聞かれてしまうと世間で注目されている勇者パーティーにとっては良からぬ影響を与えかねない。
だからシュウはライルに声をボリュームを落とすように言うが、頭に血が上ったライルはそれを意に介さなかった。
「大体なんなんだシュウさんは!ラッキースケベで良い思いをしておきながら、言うに事欠いて苦しんでるだと?僕がそれをどれだけ求めていたかも知らないくせに!!」
「そんなん知りたくもないがな」と言いたいのを堪えつつも、シュウは猛っているライルに一先ずは言いたいだけ言わせとくかと極力聞きに徹することに決めた。
今は何を言い返しても余計にこじれるだけだと考えたのだ。
「僕だってラッキースケベに憧れてたさ。けど、皆全く隙を見せないんだ!着替えに遭遇するはおろか、下着を見ることも叶わなかったわ!サーラにうっかりを装ってパイタッチしてみようと何度も画策したけど、かすりもしないで躱されたしね!」
「何度も画策したんかい!」
ドン引きだわ!
シュウはこれまでにライルが想像をはるかに超えて煩悩全開にしていたことに、大きくショックを受ける。
「それなのにシュウさんだけが下着はおろか裸体も拝んで、挙句にパイタッチ以上の破廉恥行為の数々をこなしてきただと!?僕には何もなかったのに!『勇者』で認定されているこの僕が!パーティーのリーダーが!まさか目が開いてるのか閉じているのかわからない細目のモブ顔の仲間に出し抜かれて『蚊帳の外』だなんて!このような屈辱があってたまるかーーっ!!」
「目のことはほっとけ」
細目のモブ顔認定されていたことを知ったシュウは、更にショックを受ける。
「勇者として、リーダーとしての重荷を、責務を、女の子と良いことがそのうちにあると思って、いつかは報われると思って耐えてきたのに、それなのに横からかっさらわれるなんてひどすぎる!惨いよ!こんなの絶対おかしいよ!糞が・・・くそがクソがKUSOGAAaaaaaa!!」
見ているシュウが戦慄するくらい、ライルは盛大に発狂した。ベクトルが違えど、シュウが苦しむのと同じくらい・・・いや、それ以上にライルは鬱憤と性欲を溜め込んできたのだ。
ハッとシュウが気が付くと、周囲で話を聞いていたと思われる他の冒険者たちが、目尻に涙を浮かべながらライルの言葉に頷いている。それとは別にチラホラと、シュウに悪者でも見るかのような冷たい目線を向けている男達もいた。
「・・・え、私が悪いのですか?」
ライルに悶々としている苦境について相談するつもりでいたのに、いつの間にか断罪されているような形になったシュウは、酔いもすっかり冷めて固まってしまった。