「あんまりだーーっ!あぁぁぁんまぁぁぁぁりだぁぁぁぁぁ!!」
ダンッ
ライルがテーブルを力いっぱい叩き、人目もはばからず泣いている。
普段はええかっこしいで外聞を気にするライルだが、醜態に構わず感情を露にしてしまっているのは、酒に酔っているからというだけではないだろう。それだけ自分の話した相談の内容が、ライルの心を深くえぐってしまったのだとシュウは思った。
「たまたまです!わざとなわけがないじゃないですか!そんなことを本当にする女性がいたら・・・それはもう痴女ですよ、痴女!」
とりあえずシュウは、バカバカしいと思いつつも、必死に自分に降りかかったラッキースケベが故意的なものであることを否定しようと思った。
だが、ライルは受け付けない。
「わざとじゃなければなんだと言うのさ。僕は一度だってそんなことなかったのに、シュウさんだけがラッキースケベに何度も出会えるなんて!」
「それは・・・神がかった偶然です」
神官でありながら神の名をたやすく出すのはどうかであるが、そんなことを今のシュウが気にしている余裕はない。
「サーラがシュウさんの部屋に間違って入ってくるのは?」
「偶然です」
「アリエスが風呂場を間違えてくるのは?」
「・・・偶然です」
ダンッッッ
「あれ?流石に苦しいか?」とシュウが思い始めた頃、ライルはテーブルを叩く。
「シュウさんに一体神がかった偶然が何度あるんだよ!漫才やってるんじゃないんだぞ!!」
「ですよね・・・いや、でも・・・」
サーラ達が自分に対してわざとラッキースケベを仕掛けてくる・・・その理由がシュウにはわからない。
いや、本当はわかっているが、パーティー内の恋愛は禁止であるというレウス司教の言いつけのことがあるため、本能的にその可能性を除外しているのだ。まさに盲目状態である。
言いつけを守られなければ問答無用でサイコパススキモノ貴族♂の玩具になってしまうのだから、この防衛本能が働くのはある意味仕方がないと言えた。
「大体が、だ。サーラ達と二人きりで飲みに行けてるあたりで、もうおかしいんだよ」
「えっ?」
同じパーティーの仲間じゃないか。何かの折に一緒に飲みに行くことだってあるじゃないか、とシュウは思った。
ライルはハッと小ばかにしたように笑う。
「ジーザス!出たよそのカマトト顔。本当に知らないのかい?あの二人はとてもガードが固いんだ。これまでいろんな男があの二人に声をかけたけど、誰一人として乗ってこなかった」
「いや、まさか・・・」
シュウは頭を殴られたような衝撃を受ける。
少なくとも既に片手で数えられないくらいには、サーラ達と二人きりで飲みに行っているからだ。
「いやいや、そりゃ他の男ならまだしも、同じパーティーなんだからライルでしたら誘えば来るでしょう!」
「僕だって何度もシュウさんを出し抜いて誘ったさ。でも・・・」
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サーラ「一緒に飲んで噂とかされると恥ずかしいし」
アリエス「(サシ飲みは)ないです」
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「って具合にやんわり断られたんだ!」
「それのどこがやんわりなんですかね・・・って、出し抜いてって・・・」
(そこまでしてサーラ達と仲良くなりたかった・・・?いや、無理もないか)
シュウは考える。
今のパーティー『光の戦士達』の女性陣は、剣士サーラ、魔法使いレーナ、賢者アイラ、そして法術師アリエス。
レーナはライルとねんごろになる分には問題ないとレウスの思惑は見えるが、それでも滑り止めとして考えているのか一応立場としてはシュウの(内定)婚約者。
アイラはライルに従順だが、基本的に無口で何を考えているかわからないので、女性とコミュニケーションを取りたがるライルとは相性が良いとは思えない。
となると、ライルにとって今自分に近しくて狙いやすい女性はサーラとアリエスだ。
しかしラッキースケベは置いておいて、冒険を楽しいものにするためにその二人と仲良くしたいのに、まるで二人とも靡かず隙がない。
ライルはそれでもじっくり攻めていこうと考え機を伺っていた・・・が、それを横からモブだと思っていた仲間にかっさらわれた。
美丈夫で超一流の冒険者・・・勇者であるライルのプライドは深く傷つけられたことだろう。(身勝手な思い込みからだが)裏切られた気持ちになるだろう。
シュウはようやくライルの置かれた状況、そしてそのメンタルが少し(あまりわかりたくもないが)わかった気がした。
そして一つのことに気が付いてしまう。
(まずい、このままにしておくと絶対にまずい!)
と。