『魅了の魔眼』を習得したライルは、意気揚々と拠点に戻った。
最初に会った女性メンバーでさっそく『魅了の魔眼』の効果を試してみよう・・・そう考えながら歩いていると、サーラの姿が目に入った。
(サーラか。良し、さっそく効果を試してみよう)
ライルはサーラに『魅了の魔眼』の効果を試してみようと狙いを定める。
「サーラ」
「ん?どうしたライル」
ライルはずいっとサーラに近づく。
サーラは「え?」と声を漏らしながらも怪訝な顔をして、少し身をのけ反らして詰められた分距離を取ろうとする。少しライルは傷ついた。
「サーラ、僕の目を見て」
「は?」
ライルの言葉に唖然とするサーラを、ライルは瞳に魔力を込めてジッと見つめた。
キィィィィン
瞳から魔力が放出されるのを、ライルは確かに感じた。
(どうだ!?)
ドキドキしながら様子を伺うと、サーラは目を見開いたまま、茫然としてただ突っ立っていた。
まるで時間が止まっているかのようである。
「やったか!」
ライルはガッツポーズをした。
チンキンに渡された『魅了の魔眼』の説明書に書いてあった通りの状態になったからだ。
『魅了の魔眼』はまず目を通じて魔力をぶつけ、相手の脳を麻痺させる。
そうして思考能力を一時的に低下させた状態では、魔眼の使用者の言いなりになる。それと同時に使用者への好意を強引に植え付け、愛していると錯覚させるという効力があるという。
サーラは今、脳が麻痺している状態・・・つまりはライルへの好意を植え付けられている上に、言いなりにできる状態になっているのだ。
「ごくっ・・・」
いつも自分に隙を見せないサーラが、今だけは無防備を晒していると思うと、ライルは興奮してしまう。
だが、ここは冷静にならなければならない。
今はまだ『魅了の魔眼』は実験段階なのだ。このスキルにも不慣れな中で、まずはどれほどスキルが効いて、どこまで言うことを聞かせられるか・・・それを少しずつ探っていかなければならないのだ。
(そうだ、まずは軽いことから要求していかなければ・・・)
ライルははやる気持ちを抑えながら、サーラに対してまずは軽いジャブのつもりでお願い事をすることにした。
「サーラ」
サーラの目を正面からジッと見る。
彼女の目はいつもと違い、何だか自分に対して熱い感情を抱いているかのようにライルには見えた。
高ぶる気持ちを抑えに抑え、どうにか冷静さを保って口にした言葉はこれだった。
「やらないか」
シャツをはだけさせながら、何故かついうっかりジャブのつもりで放ったストレートパンチ。
これに対してサーラの返した答えはこれだった。
「やるか!死ね!!」
グシャッ
サーラの豪快なストレートパンチが、がっつりとライルの顔面にめり込んだ。
ライルの言葉は、サーラにかかった術を解き、一瞬で正気に戻させるだけの嫌悪感を抱かせてしまったのだ。
「がふっ・・・」
ずしゃっ・・・
ライルは顔面を陥没させて床に倒れ、吹き出る大量の血が床に広がるが、サーラは介抱することもなくゴミを見るような目でライルを見下ろすだけだった。
「あ、あの・・・一体何を・・・」
通りかかったシュウが、凄惨たる光景にドン引きしてサーラに訊ねる。
「ちょっとライルが冗談言うからツッコミ入れただけだよ」
「ちょっと?ツッコミ入れただけ?殺人事件にしか見えませんが・・・」
「そんなことよりシュウ。物凄く不快な気持ちになったから、イイコトで上書きさせてほしいんだ。飲みに行こう」
顔を青ざめさせるシュウに、サーラは頬を紅潮させ甘えるように飲みに誘う。
「は?いや、しかしライルが・・・」
だが、戸惑っているシュウはライルから視線を外さない。
「大丈夫。何だかよく知らないが、動いているから良し!」
動いていると言ってもピクピクと痙攣しているだけだが、サーラはそれを「動いている→無事」という判定をし、強引にゴリゴリに押し切ってシュウと共に飲みに出かけていってしまう。
しかし流石勇者。常人なら頭が粉砕されて終わるだけの一撃を食らいながらも、ライルは歯を食いしばって必死で顔を上げ、去り行くサーラ達を遠目で見ながら思った。
やらかしたのは確かだが、セクハラ発言に対して瞬時に拒絶してストレートパンチ一閃を食らうとは、どれだけ自分は脈が無かったのかと。
これがシュウだったら絶対に違っただろ、と。
もう正攻法ではどうあってもサーラを落とすことなどできないということを、まさに文字通り痛感した。
元から躊躇する気などなかったが、ライルは今後『魅了の魔眼』を惜しみなく使い、絶対にメンバーを魅了してハーレムを築いてみせると心に誓う。
死にかけながらもとことん欲望に忠実なライルは、倒れ伏した状態のまま股間をギンギンにし、高笑いをするのだった。
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「・・・ヒェッ」
顔面から血を流し、倒れてうつぶせになった状態のまま笑うライルを見かけたアリエスは、あまりのキモさに法術師として回復させるという義務を果たさず踵を返した。