「僕のことが・・・?」
ライルは耳を疑った。
レーナは確かに自分に気のある素振りを見せているように感じていたが、明確に言葉にされたことは初めてだった。
「でも・・・君はシュウさんの・・・」
「確かに一応は婚約者ということになってるわ。でも、それはお父様が勝手に決めただけのもの。それに、勇者であるライルに乗り換えるならそれは別に良いと暗に言われてもいるのよ」
「それは・・・」
ライルもレウスが何となく自分とレーナをくっつけようとしていたのは認識していた。
だが、シュウとレーナはなんだかんだでうまくいっているように見えたから、ライルは実際にレーナとそんな仲になるなんてことはないと思っていたのだ。
「ライルってとても強くて勇敢だし、顔も好みだし、普通にモテておかしくないもの。これから先、貴方が名を上げればどんどんライバルが増えると思うと我慢できなくて・・・今から私のこと、アピールしたくなっちゃったの」
上目遣いでレーナにそう言って迫られ、ライルは鼻の下を伸ばした。
元々いくらか好意があったところにきて、少数とはいえ『魅了の魔眼』をかけたことが後押ししたのかな?と考える。
やはり『魅了の魔眼』の効果は凄い!チンキン、余計なことも含めていろいろありがとう!と心の中で感謝した。
シュウめ、ざまぁみろと。
「僕だってレーナのことは良いなと思ってたんだ」
ライルはだらしなく顔をふやけそうになるのを堪え、キリッと顔を引き締めながらレーナの腰を抱いて言った。
「嬉しいわライル。気持ちが通じて良かった!」
こうしてライルとレーナは、秘密裏に恋人同士となった。
人目を盗んで愛を囁きあい、スキンシップもそれなりにしたが・・・それでも一線を越えることはなかった。一応はシュウの婚約者(内定)であるからだ。
レーナの父であるレウスも反対することはないし、それなら別に良いのでは?とライルが迫ると、一応は自分達がいるのは勇者パーティーなのだから、世間体は大事にした方が良いと諭された。
「確かに、勇者である僕が仲間の女を寝取るというのは世間体が良くないか」
『魅了の魔眼』を乱用しておいて今更である。
「私たちが結ばれるなら、やっぱり筋を通してからの方がいいわ」
筋を通すということは、シュウにレーナとのことを話すということだ。
となると、シュウは怒るか、そうでなくても居たたまれなくなってパーティーを抜けるかもしれない。
そうなると、どう隠そうとしてもパーティーメンバー全員にレーナとの関係が知れ渡る。
サーラとアリエスがショックを受けて、パーティーを抜けるか、あるいはせっかく築き上げた好感度がまた下がってしまうかもしれない。それは避けたかった。
レーナとのことをカミングアウトしても、自分から離れたりせず許容してくれる・・・それだけのサーラ達の好感度を上げておかねばならない。
「今はまだ・・・か」
ライルはレーナの気遣いに感謝しながらも、それでも悶々とした日を過ごすことになった。
一線は越えないにしても、レーナと愛を囁きあい、気持ちを確かめあうことで日々感情が高まる中で、ついには気が緩んでシュウの目にも留まりそうなところでもイチャイチャするようになってしまう。
もはや既に筋など通っていない。
サーラ達にももろバレであるが、ライルはすっかり浮かれていてそんなところにすら気が回っていなかった。
しかし・・・
気持ちが通じ合っているのはわかっても、それでも抱けないのは辛い。
かつてシュウがそうだったように、ライルもまた違う意味で苦しい日々を送っていたが・・・
告白から数か月後・・・ついにレーナが切り出す。
「シュウをパーティーから追放しましょう。素行とか叩けば埃が出るから、理由はどうとでもなるはずよ。追放さえしてしまえば、私達は堂々と結ばれることが出来るわ」
この悪魔の囁きを、今のライルに跳ね除ける胆力などあろうはずもなかった。