シュウ達はホワイトキングを駆り、今度こそ逃走を開始する。
シュウはチラリとサーラ達に目を向ける。
パーティー在籍時、なんかもう本当いろいろとあった彼女達。距離感は滅茶苦茶だったし、追放の際にはライルに同調していたけど、仲は悪く無かったはずだった。
そんなサーラとアリエスが、今はこれまで見せたこともないような殺気立った目でシュウを睨みつけている。というかオーラまで伝わってくる。
フローラとの駆け落ちをそんなに認めたくないのか?
ライルならまだ殺気を振りまいて襲ってくる理由も何となくわかるが・・・と、シュウは戸惑いを隠せない。
(ライルを本気で背中から斬りつけたり、やってることも滅茶苦茶だ。パーティー在籍時は、とてもそんなハチャメチャな二人じゃなかったはずなのに・・・
ん?あれ?でも結構不可思議な行動を取ったこともあったっけか?
それで性的に悶々とすることも多かったんだよなぁ・・・いや良く考えたらあの二人随分ハチャメチャだったわ)
「はっ!いかん、今は逃走に集中しないと!」
ライルほどではないにせよ、超一流の冒険者であるサーラとアリエスに追われることになっているシュウは、いろいろと以前のことを思い出して思考の渦に飲まれそうになるのを踏みとどまった。
ライルは(向こうで勝手に)どうにかなったが、依然としてピンチな状況に違いはないのである。
(とはいえ、彼女達が相手なら・・・)
シュウには勝算があった。
先ほどはアリエスの魔法障壁に囲まれて一時的に拘束されてしまったが、魔法障壁は術者の近くか、あらかじめ仕掛けを施した場所でないと展開はできない。だからもう先ほどのように障壁で囲われてしまうことはないし、それに・・・
バチッ
シュウの眼前で、あらかじめ自身を守るように展開しておいた魔法障壁が何かを弾く。
弾かれた物に目を向けると、それはサーラが投げたナイフだった。
(流石に、障壁を貫通する威力はないか)
サーラが動きを止めようと投げたナイフだったが、シュウ達を守ろうと展開されている魔法障壁が完全にガードする。
アリエスが展開した障壁のように、神官であるシュウ、そして聖女であるフローラは聖属性の魔力を持つ障壁を展開して防御をする。
聖属性の障壁は全属性の中で最も強い防御力を誇るが、これを類まれなる魔力を持つフローラが展開すると、勇者パーティーでも破るのは困難なほどの鉄壁となるのだ。
ライルの持つ聖剣アスカロンは同じ聖属性を帯びた刀身故に、フローラの魔法障壁でも「中和しながら切る」ような動きになり、攻撃を防ぐどころか足止め程度にしかならないが、今はもうそのアスカロンを振るうライルは戦闘不能になっている。
フローラがやったようにアリエスが聖属性の光線魔法で障壁を無効化させようにも、それを行うための魔力をチャージしている間にシュウ達は逃げおおせるだろう。
つまりは、フローラの展開する強力な障壁に守られながらであれば、サーラ達がいかに足止めしようとしてきたところで跳ね返すことが出来る・・・確実にこの逃走は完遂出来るというわけだ。
「っていうか、さっきのナイフ私の頭狙ってませんでしたか?!」
良く考えたらナイフが眼前で弾かれたということは、軌道は完全に脳天に向かっていたのだなとシュウは戦慄する。
「セイント・レーザー!!」
アリエスがフローラがやったのと同じ聖魔法の光線を放つが、短時間での発動故に魔力を溜めず、圧縮も足りてないそれはフローラが展開する強力な障壁を貫通することなく霧散する。
「今のも・・・障壁が無ければ全身を切り刻んでいたな・・・」
サーラもアリエスもシュウ達が傷つくのに一切に躊躇いがないのを察し、シュウは顔を青ざめさせた。
何が二人をそこまでさせるのだ。ある程度関係は良好だったと思うのだが、立場的なものもあるといえ、そうまで簡単に切り替えて徹底してこっちを攻撃できるものなのか?と。
怖い。
「大丈夫ですシュウ様!聖女の私の障壁は、絶対に破られることはありませんから!!」
フローラの言葉に「そうだよな、とりあえずは大丈夫だよな」と安堵するシュウ。
シュウも魔法障壁は展開できるが、いかんせん元の魔力量が少ないので、長い間展開が出来ない。故に障壁展開については基本はフローラ頼みだ。
そう、大丈夫なはずだった。
障壁に守られながら、サーラ達の追従を躱し切り、そのまま帝都を脱出することが出来るはずだった。
だが、ここでサーラはシュウが思ってもみない行動に出たのである。