※この作品はR-18です。

追放の破戒僧は女難から逃げられない   作:ミステリードール

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もう驚かない

「いつの間に・・・」

 

 

シュウはアリエスが高速で展開した魔法障壁によって、鳥かごに閉じ込められたような状態になっていた。

 

 

「むぅ・・・」

 

 

魔法障壁に手を触れるシュウ。

アリエスと同じ聖魔法の心得があるシュウならば、構造さえ解析出来てしまえば中和して障壁を消滅させることが出来るのだが、思った以上に複雑な術式で組まれていて解析には時間がかかりそうだった。

 

 

「特別製の障壁を展開しました。いかにシュウ先輩でも簡単には解析できませんよ、これ」

 

 

シュウの行動を先読みしたようにアリエスがニッコリと笑って言う。

 

 

「魔法障壁の組み合わせで、対象を檻のように閉じ込めることが出来る・・・シュウ先輩にそう教わって以来、いつか貴方を閉じ込められるように頑強で複雑な障壁の開発を頑張っていたんです。努力が報われましたね!」

 

 

手をパンと合わせて得意そうにカミングアウトするアリエスだが、シュウとてこの日はこれ以上に衝撃的なカミングアウトを散々ぶちまけられてきたのだ。もう何を聞いても驚かないぞと、平静を装って次の手を考案する。

 

 

「言っておきますが、地面を掘っても無駄ですよ」

 

 

次の手を考えるシュウに、アリエスが先回りするように言った。

ピクッとシュウの体が反応するのを見て、アリエスは嬉しそうに目を細める。

 

 

「障壁で囲っても地面を掘られたら意味がない・・・それもシュウ先輩が教えてくれたことですよね。だからきちんと地中20メートル先までびっしり障壁は展開されてますよ」

 

 

「そこまでやる必要あります?」

 

 

ツッコミを入れながらも、地面を蹴って破壊し、そこから脱出できないか画策していたシュウは先手を打たれて動揺していた。

アリエスはかつてのシュウの回復術の弟子であった。

その弟子の思いがけなさ過ぎる成長に嬉しい気持ちが全くないわけではないが、その成果が今ことごとく自分を苦しめていることにシュウは何とも言えない気持ちになった。

何しろシュウのことを理解しすぎている元弟子によって、まさに手も足も出ない状態にされているのだから。

 

 

「シュウ様!」

 

 

シュウのピンチに、フローラが助けるために駆け寄ろうとする。

 

フローラはシュウが閉じ込められてからの少ない時間の中で、可能な限り高速で魔力を充填し、再び先ほどのように障壁をセイント・レーザーで切り刻み無効化しようと考えていた。

先ほどは発動までに時間稼ぎが必要だったのに、愛のためとはいえ凄まじい成長ぶりである。

この爆発的な成長もまたフローラの聖女としての資質の高さを裏付けていた。

 

だが、そんなフローラの行く手を阻む者がいた。

 

 

「当身」

 

 

「ぐふっ」

 

 

いつの間にかフローラの背後に立っていたサーラが、フローラの後頭部に拳骨を落とした。

シュウに吹っ飛ばされたものの、実際のところのダメージは少なかったサーラは、凄まじい速さで現場まで戻ってきていたのだ。

 

 

「お前も」

 

 

「ヒヒンッ!」

 

 

ついでに近くにいたホワイトキングも拳骨で眠らせるサーラ。

これでシュウ達は完全に逃げる手段を失った。絶体絶命である。

 

 

「さぁシュウ先輩。これでようやく私達一緒になれますね」

 

 

アリエスとサーラが薄ら笑いを浮かべながら、シュウにジリジリと近づいてくる。

背筋がゾワッとしたシュウだったが、恐怖に飲まれるわけにはいかないと奮い立たせ、キッと二人を睨みつけた。

 

 

「何故今更私にそこまで固執しますか!?ライルと共に追放したではないですか!!」

 

 

シュウはもっともな疑問ぶつける。

ライルと共にパーティーを追放しておいて、その翌日にシュウに固執しだすのは矛盾しているので当たり前である。

 

 

「追放のことは悪い・・・でも、そうしなきゃいけない理由があったんだよ」

 

 

ばつが悪そうに眉尻を下げるサーラ。

 

 

「そうしなきゃいけない理由?それは一般人を巻き込むほどのものなのですか!!?」

 

 

しょぼくれるサーラを見て、シュウの中で怒りが再燃した。

破戒僧を自認するとて、元勇者パーティーの一員・・・否、人として最低限のモラルは持っている。

如何なる理由があったとて、無関係の他人を巻き込むような力を振るうべきではないと考えているのだ。

だからバンカーバスターを躊躇いなく使ったサーラ、そしてそれを容認していたアリエスのことがシュウは許せなかった。

 

 

「怒らないでくださいよシュウ先輩~ もちろん私達だって最低限のモラルはありますよ」

 

 

苦笑いしながら宥めてくるアリエス。

一服盛って何度も性交するような彼女達に、本当に最低限のモラルがあるの?うっそだろお前!とシュウはツッコミそうになった。

 

 

「私の回復術があれば、バンカーバスターで怪我人が出ても瞬時に治すことが出来るんです。まぁ、今回はシュウ先輩がそれを防ぎましたけど」

 

 

「な・・・に・・・?」

 

 

「シュウ先輩に鍛えてもらって、実は内緒でしたけど回復術もメキメキ上達してたんですよ?超広範囲で一度に最大255人まで全回復出来るほどの回復魔法が使えるようになっていたんです」

 

 

「は・・・はぁ!?」

 

 

アリエスが胸を張って言うが、シュウはすぐには信じられなかった。

シュウは魔力量が少ないが、回復術の腕前そのものは、実はアリエスより上だ。

だが、255人もの人間の治療を即座に全回復させるだけの回復術は使えない。というか魔力が全然足りない。出来るわけないアホか。

 

 

「これ知られるとライルさんにこき使われそうだから、黙ってたんですよ。奥の手ってやつですね」

 

 

てへりと舌を出して笑うアリエス。

 

実際に使うかどうかは別として、それだけの能力があれば『光の戦士達』はより躍進できる機会があったのでは?と考えると・・・

 

 

(一体この子のどこにモラルがあるんだ・・・?)

 

 

可愛い後輩だと思っていたアリエスの一面に、もうこれ以上ドン引きすることはないし驚かないと思っていたシュウは更に記録を更新することになってしまったのだった。

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