※この作品はR-18です。

追放の破戒僧は女難から逃げられない   作:ミステリードール

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レーナという女 その4

レーナはサキュバスの先祖返りにより、高い魔力と『魅了』のスキルが身に着いているが、『人を欺く能力』に長けたのもまた、先祖返りで得た恩恵の一つだった。

 

人を魅了し、惑わし、肉欲に溺れさせるサキュバスは、人の心に付け入る能力に長けている。

レーナはその能力を開花させ『認識阻害』という魔法を編み出した。

 

 

『認識阻害』とは、他者の視覚、聴覚など五感に強制的に介入し、正しい認識を阻害し、操作して惑わす魔法の一種である。

禁忌とされ厳しく取り締まられている魔法であり、禁忌とされてから数百年経過した今は、使用者はおろか魔術指南書すら消え、存在自体が知られていない。

 

それでも皇族や教会など、一部の支配者層間では形を変えて極秘裏に伝えられている。

だがそれはあくまで『何となくカリスマ性を感じる』『感動する演説だった』『言葉に重みがあり、説得力がある』と、本来ならそう感じないものに対し、印象を操作してそう感じさせる、錯覚させる程度のもので、そこまで強力なものではない。

ちょっとした言葉や刺激だけで目が覚めてしまうこともあるような、本当に軽い暗示のようなものだ。

 

 

しかし、レーナの『認識阻害』は現代にあるものどころか元祖のそれを超え、完全に別物と言えるほど強力だった。

一度魔法にかかれば、レーナの意思無しではあらゆる刺激をもってしても覚めることはなく、しかも視覚はおろか触覚、嗅覚まで本物の体験のように錯覚させることが出来る恐ろしいものである。

 

『認識阻害』というよりは、『認識操作』、あるいは『洗脳』に近いと言えようレーナのその魔法は、何人もの犠牲者を出していた。

 

 

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「そうね、まず貴方」

 

 

レーナは自分と関係があったと豪語する男達の中から、一人を選んで指をさした。

 

 

「お、俺・・・?」

 

 

さされたのはガタイが良く、屈強そうな男バートン。

先ほどレーナに対し、以前無理矢理に処女を奪った旨の発言をした男だった。

 

 

「最初に貴方に襲われたときはびっくりしたわ。だから可愛そうだけど、近くにたまたまいた山羊を私と錯覚させたわ」

 

 

「えっ・・・山羊・・・?」

 

 

「つまり、貴方が私だと思って抱いたのは山羊よ」

 

 

し~~~~~ん・・・

 

 

レーナが言い放った言葉は、バートンだけでなく、その場にいた多くの者の心に衝撃を与え、誰もが口を閉ざした。

 

 

「や、山羊・・・そういえば、あの場には山羊がいた・・・いや、まさか、そんな・・・確かに、あれから何度かレーナを抱いたが、翌朝には何故か山羊が毎度部屋にいたりとかしたが・・・まさかそんな・・・」

 

 

「なんで毎度山羊がいたのかもっと考えても良かったんじゃないですかね・・・」

 

 

茫然自失とするバートンに、思わずシュウがツッコミを入れるが、他の男達はまだショックから立ち直れていないのか、誰もが口を閉ざしたままであった。

バートンがショックを受け、地面に膝をついてぶつぶつ独り言を言っているのを見るに、どうやらいろいろと覚えがあるように見えた。

そこがまた、荒唐無稽なはずのレーナの言葉に不思議な信ぴょう性を持たせている。

 

 

「やべえよ・・・やべえよ・・・」

 

 

男達が騒めきだす。

それはそうだろう、自分がレーナを経験があると信じていた男達は、誰もが認識阻害の魔法によって惑わされていた可能性があるからだ。というか、流れとしてはその可能性が高い。

 

「認識阻害の魔法で錯覚させたのであって、実際に性交はしていない」など、普通なら出まかせを言っている、と一蹴するようなカミングアウトであるが、レーナと冒険をしたことのある人間なら誰もが彼女の魔法に対する探求心とその才能について知っている。

『認識阻害』という聞きなれない魔法を使用し、騙されていたと言われれば「もしかしたら」と思ってしまう。

 

 

「ビークス、貴方のことも覚えているわ。私に強いお酒ばかり勧めて、宿屋の自分の部屋に私をお持ち帰りしようとしたわよね」

 

 

次に指をさされたのは、ビークスという男であった。

記憶力の良いレーナは、すっかり変貌した男の顔も集中してみればすぐに人物像だけでなく、エピソードまで思い出すことが出来る。

 

 

「貴方の相手はたまたま通りかかった、同じパーティーメンバーのウェージよ」

 

 

「「はあっ!?」」

 

 

レーナに言われてビークス、そして同じようにレーナと関係があったとカミングアウトしたウェージが驚愕する。

 

 

「ウェージ、貴方が抱いていたと思っていたのはビークス。二人はリバーシブルでヤり合っていたのよ。私は一度だって貴方たちに抱かれたことはない。実際は私は二人がヤっているのを横で笑って見てただけなの・・・ごめんなさい」

 

 

「「ぎゃああああああ!!」」

 

 

ビークスとウェージが発狂して悲鳴を上げる。

 

 

「そういえば、レーナとヤった翌朝は最初はケツが痛かった・・・!」

 

 

「あれペニバンじゃなくて本当のイチモツだったのかよ・・・!?そんな・・・バカな・・・」

 

 

二人とも茫然としてツッコミどころ満載の独り言を呟いているが、衝撃的過ぎるカミングアウトに誰もがツッコミを入れるのをやめていた。

 

発狂する二人を見て、レーナはかすかに微笑を浮かべている。

サキュバスの先祖返りにより、レーナは『人を欺くことに少し快感を覚える』性格になっていた。

 

その美貌で数多のパーティーをクラッシュさせていたレーナは「悪魔」などと冒険者ギルドに揶揄されていたが、実は本物の悪魔であったと、この日から広まることになるのであった。

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