かつてレーナと関係を持った(と思っていた)男達による、レーナに対する暴露大会が始まったかと思いきや、今は彼女の手による公開処刑が始まり、辺りは騒然としていた。
レーナは最初に血祭に上げた男達とは別に、次のターゲットを見つけては残酷な現実を突き付けていく。
「貴方の相手はタンク(盾役)のハンク」
「ええっ!?」
「貴方もハンクよ」
「うえっ!?」
「貴方も」
「なんで皆ハンクなんだよ!?」
「えっ?だって、タンク(盾役)が総受けなんて面白いと思って・・・」
「うぉぉぉ!?俺のタンクとしてのスキルのレベルが知らず知らず上がっていたのって、そのせいなのか!?(気のせい)」
レーナが口を開くたび、知りたくもなかった現実を突き付けられた男達が悲鳴を上げる。あと極一部の女性陣からも黄色いのが。
「魔法使いのマーリン」
「うわぁ!ウッソだルォ!?」
「宿屋のおじさん」
「なんやて!?」
「土方のおじさん」
「ああ^~」
「浮浪者のおっさん」
「無関係の人じゃん!」
「汚れ好きのお兄さん」
「なんだよそのチョイス!」
「壁」
「壁ってなんだよ!!? ・・・いや、壁ならまだマシなのか・・・?」
「これが本当の『壁打ち』ね・・・?フフッ」
「いや笑えねぇよ!?」
レーナは微笑を浮かべながら、次々と男達を絶望に叩き落していく。
最後はあまりに数が多すぎるせいか、「もうまとめてしまうか」と呟いてから、声高らかに宣言した。
「とにかく、私と関係を持ったと思ってる男は、『認識阻害』で同じパーティー内、もしくは無関係な男か、動物と交わっているわ。詳しく知りたい人は私のところに来なさい。以上」
「「「知りたくねぇよ!!」」」
ギャラリーに埋もれていた大半の男達が一斉に叫ぶ。
暴露大会に参加せず、ひっそりとギャラリーに混じっていた男の中にもレーナと関係を持った(と錯覚させられた)者が多くいた。
故に、レーナのカミングアウトは場を一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図へと変える。
「俺を殺してくれーっ」
「女見てもイマイチ欲情しなくなったのはそういうことかーっ」
「人の心はないんかーっ」
暴露大会の参加者は既に身を落としていた者がほとんどだったが、黙ってギャラリーの中にいたのはそうでもない者達ばかりだった。
レーナとのことで一度は身を落としたものの立ち直ったり、しれっと忘れたり、とにかく新たに再出発を果たすことの出来た男達だ。
そんな彼らは、巻き込まれる形で知りたくもなかった事実を知ることになり、再び地獄に突き落とされた。
「な・・・なんで男や動物と錯覚させたんですかね・・・」
すっかりドン引きしたシュウが訊ねると、レーナは眉尻を下げて答える。
「私だって流石にわきまえてるわよ。無関係な女性を巻き込むようなことはしないわ」
「無関係な男は良かったんですかね・・・」
「いいのよ。だって男は馬鹿なんだもの」
そう言ってフゥとため息をつくレーナは、発狂して騒いでいる男達に目を向けた。
そして頬を紅潮させ、うっとりとした表情で言う。
「ほら見て?男達ってくだらない生き物だけど、ああやって惨めに嘆いている様を見ると面白可笑しくて見ていて飽きないじゃない?」
「じゃない?って、同意を求められても全然同調できませんよ!ていうか私も男なんですけど!」
冗談でもなんでもなく、レーナが本気でそう言ってると思ったシュウは、改めて彼女が狂っていると認識した。男を弄んで楽しむのはサキュバスの本能みたいなものであるが、シュウはレーナがサキュバスの血を引いているなどとは知らない。
「シュウは男でも、他の男とは違うわ」
フッと、それまで笑みを浮かべていた表情を真顔にし、レーナはシュウに向き直る。
ブワッと、そこで一瞬にして空気が変わったのをシュウは感じた。
「シュウは別格よ。私が身も心も委ねていいと思った相手は、貴方が初めて。貴方だけよ。素直になれなくてごめんなさい。だけど、気持ちは本物なの」
「レ・・・レーナ・・・!」
ジッと情熱的な眼を向けられ、シュウの心がグッと鷲掴みにされる。
男を玩具程度にしか見ておらず、モラルも何もないイカれたレーナだが、そんな彼女が自分だけは特別視して、全てを許してくれている。その事実が、少なからずシュウの心を惑わしていた。
実際はこれもレーナが無意識のうちに発しているサキュバスの『魅了』なのだが、シュウは精神的な疲れもあってかなりグラッと来かかっている。
・・・が
「ああああああああぁぁぁぁぁ!!」
「今すぐ肛門科受診しなきゃ!(使命感)」
「俺がお前と穴兄弟どころかそもそもヤってたなんてそんなことあるかよ!道理で喧嘩別れした後も何故かお前のことが忘れられないわけだよふざけんな!!」
「あんだとぉ!?それを言ったら俺だってお前のことが(略」
「畜生!もう壁のこと冷静に見てられねーよ・・・!」
外野の聞くに堪えない汚い騒ぎに、シュウはハッと我に返る。
この地獄の中では甘い空気など続くはずもなく、シュウは一瞬にして心を落ち着かせることが出来た。
レーナが「チッ」と舌打ちするが、もうやり直せるような空気ではない。
(とにかく、レーナをどうにかしてこの場から離れなければ・・・!)
シュウは考え、そして少し時間をかけてから、ようやくある決心をしてレーナに向き直った。