※この作品はR-18です。

追放の破戒僧は女難から逃げられない   作:ミステリードール

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私のために争わないで (切実)

「サーラ・・・!」

 

 

レーナによる上級攻撃魔法『ダブルドラゴン』の炎の渦に巻き込まれ、灼熱に身を焦がして絶命したはずだったサーラが無事だったことにシュウもレーナも驚愕していた。

 

 

「手応えはあったはずだけど・・・」

 

 

レーナは更に飛びのき、サーラとより距離を取ろうとする。

 

 

「逃がすか!」

 

 

「火の鳥!」

 

 

サーラは逃がすまいと踏み込もうとするが、彼女の眼前に唐突に炎の壁が出現することでその行く手は阻まれた。『火の鳥』というレーナ得意の炎系の上級魔法が発動したのだ。

『火の鳥』の恐ろしさを知っているサーラは、それ以上は無理に踏み込もうとせず、舌打ちをしてその場にとどまる。

 

しかし、レーナはそこで終わりにはしなかった。

 

 

「死にぞこないがっ・・・今度こそ死になさい!」

 

 

完全に悪役にしか見えないセリフを吐き、レーナは右手の人差し指をくいっと曲げ、炎の壁を変化させた。

 

そして形作られたのは鳥。

『火の鳥』と呼ばれるレーナの創作魔法は、元は上級の炎系の魔法だが、炎を自在に変化させることによって炎を凝縮し、触れるどころか近づくだけで鉄すら溶かすものに威力を強化したものだ。

壁にして防御壁を展開することも出来れば、球体にも蛇の形状にも出来る。

 

だが、メイン形状は鳥の形である。

なぜ鳥にしたのかは「なんとなくカッコイイから」である。

火と呼ぶには強力過ぎる故に正確には「炎」と呼ぶべきだが「炎の鳥」はなんかしっくりこないからという理由で「火の鳥」。

 

だが、『火の鳥』が形と呼び名に気を遣ったただカッコいいだけの魔法ではないことはサーラも知っている。

『火の鳥』が鳥の形を形成すると、それは凝縮した超強力な炎が完全攻撃形態に変化したことを意味する。

石で形成されたゴーレムも、巨大なスライムも、一瞬にして蒸発するように姿を消してしまう『火の鳥』・・・それが自分に向けられたことの意味を、その危険性を、サーラは理解している。

 

 

「いや、そこまでやりますか!?」

 

 

シュウも『火の鳥』の威力を理解しているので、レーナの凶行に唖然とする。

街中で、それも仲間に対してそんな強力な攻撃魔法を使うなどドン引きである。

 

 

「死になさい!」

 

 

レーナはサーラに向けて『火の鳥』を放った。

鳥の形に変化した灼熱の炎は、サーラが受ければ骨まで溶かして蒸発させてしまう。万事休すのサーラだったが、彼女に向かっていた『火の鳥』は、命中する直前で急に上に向けて進路を変えた。

 

 

「なっ・・・!?」

 

 

『火の鳥』はまさに本当の鳥のように上空に向けて飛び、やがて姿が見えなくなる。たまたまそこを飛ぶ鳥が巻き込まれて焼き鳥にならぬことを祈るばかりだ。

 

 

サーラの前には、斜めに傾斜をつけられた魔法障壁が展開されていた。

正面からなら打ち破られる可能性のある『火の鳥』は、障壁に傾斜をつけられたことによって軌道を逸らされたのだ。

 

 

「こんな街中で危ない危ない。そういうのはナシですよ」

 

 

唖然とするレーナの耳に入ったのは、サーラと同じく炎に包まれて死んだはずのアリエスの声だった。

 

 

「アリエスッ!」

 

 

表情から余裕の色が消えうせたレーナは、声のしたほうへ振り向く。

まさかサーラだけでなくアリエスも?と、焦りの感情が芽生えていた。

 

 

「念のためにと、自動回復をかけておいて正解でした」

 

 

ギャラリーの中からヌッと姿を現したのはアリエス・・・と思わしきまっ黒のシルエットだった。

 

 

「ふんっ!」

 

 

アリエス?がフッと気合を入れると、体の表面の黒い分が一瞬にしてクロワッサンの表皮のように剥がれ、中身からアリエスの姿が現れる。

 

 

「えっ 何それは」

 

 

シュウが唖然として呟くと、アリエスは剥がれた黒いものを手につまみながら言った。

 

 

「さっきまで体を覆ってた、私のコゲ部分です。レーナさんのせいで炭みたいになっていたんですよ。本当に死んだかと思いましたよ」

 

 

なんてことにように言うアリエス。

炭みたいになったのなら、そのまま本当に死んでなければおかしいのではとシュウは思った。

 

 

「私の自動再生魔法は通常のより強力で、細胞の1パーセントが無事ならそこから再生します。ただ、完全回復まで数分はかかりますが」

 

 

「「怖っ!!」」

 

 

ドヤ顔で言ってのけるアリエスに、シュウもギャラリー達も思わず声を上げる。塵になろうが炭になろうが再生するとは、人間の域を超えた化け物ではないかと。

 

 

「あっ、そう。なら、1パーセントも残らぬよう一瞬にして焼き払ってやれば良いのね」

 

 

化け物じみた自動再生魔法も、レーナはあっさりと飲み込んで次の手を考えている。

ついていけないのはシュウ達含むギャラリー達だ。

 

 

「させるかよバカヤロー。その前にこの剣でお前を17分割だ」

 

 

サーラが剣をレーナに向け、刺すような殺気を向ける。

最初に殺されかけたとはいえ、サーラも本当にレーナを殺す気であることがすぐにわかるほどの強烈な殺気を向けていることにシュウは唖然とする。

かつて冒険者として一緒に戦っていたときですら、感じたことのないほどに強烈な殺気であるのにシュウはドン引きした。

 

 

「こういうこともあろうかと、レーナさんの魔法をどのように処理すれば良いかはあれこれ手を考えてあります。貴方みたいなメンヘラ処女ビッチなんて完封してやりますよ」

 

 

仲間であったというのにどういうことを想定したのかは知らないが、アリエスもレーナを煽る。彼女も一度レーナに殺されかけているので、かなりキレているのがわかるくらい顔にビキビキと青筋が浮きまくっていた。

 

ゆら・・・と、強烈な殺気のぶつかり合いに、周りからはその場の景色が歪んで見えた。

 

レーナ、サーラ、アリエスとヤバい女達が一触即発の状態で見合っている。

いよいよこれはヤバいとして、ギャラリー達は今度こそ全員がその場から慌てて逃げ出した。

 

 

(もう嫌だぁぁぁぁ!!)

 

 

頭のおかしい規格外化け物どもが、あろうことか自分を取り合って大暴れしようとしている。

この事実に耐えきれず、シュウも心の中で泣きわめきながらその場を駆け出した。

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