一年という期限を切られたセレスティアは、すぐに行動を開始することにした。
クレウスは泣きつけばどうにかなる気がしたが、ウィンクはやると言ったらやることはセレスティアは理解していた。期限を迎えれば本当に問答無用でジードとの縁談が進み、そのまま婚約となるだろう。
「それだけは絶対に嫌だ。何もしないまま、ただ運命を受け入れることは」
元はと言えばセレスティアの行動でジードはおかしくなったし、何もしないどころか『アドネイド式歓迎の儀』で屠ろうとすらしてみせたが、セレスティアはなおも抗おうと決めた。
「運命の相手をこれから見つけねぇと・・・」
セレスティアは爪を噛みながら、ぶつぶつと呟いて必死に考えを巡らせる。パートナー探しなどこれまでしたこともしようと思ったことも無かったので、どうすれば良いのか全く思い浮かばなかった。
「なるほど。お嬢はこれから積極的に相手の男を物色しに行くということッスね」
「言い方ぁ!!」
身も蓋もない言い方をするベティに抗議するが、今、アドネイド家においてセレスティアの味方は彼女だけである。
「あれだけの男なら、お嬢を任せてもいいかもしれん」
「お嬢、もう心も股も開くしかないのでは?」
「あれだけの筋肉を見せられたら、もう抗うことはできん・・・もう俺はすっかり雌にされちまった・・・」
オーバーキルの面々も、自分達の攻撃魔法を耐えきったことですっかりジードに心酔し、一部はホモとまでなってしまった。
外堀が埋められていく中、唯一の光明はベティのみ。セレスティアは縋るようにベティに意見を求めた。
「お嬢のリクエストは、打算無き人助けが出来て、それでいて旦那様より強い男ッスね・・・なんて贅沢な」
「ぐっ・・・」
セレスティアの求める男性像を聞いたベティは、率直に感想を述べる。正直なところ、普通に探したら簡単に見つかるようなタイプではなかった。
「こうなれば手あたり次第にやるしかねーッス」
「は?」
ベティが考えた男探しの方法は、セレスティアがか弱い女になりきって市井に溶け込み、自らの目で理想の男を見極めるというものだった。
「この帝都で治安が微妙なところに絞ってうろついていれば、お嬢みたいな器量よしなら否が応でもトラブルに出くわすッス。そこから助け出してくれる男がいれば、そいつこそが理想の男である可能性が高いッス・・・そんな男がいれば、ですが」
「んだよその行き当たりばったりな方法・・・けどもうそれしかないか・・・」
ベティが考えた方法はあまりに雑だが、それでもなりふり構っていられなかったセレスティアは、それを実行した。
デビューしたてのか弱い冒険者を装い、治安の微妙な酒場やギルド、路地裏に足を運ぶと、ベティの言うように本当にあっさりとトラブルに巻き込まれるようになった。
「よぉイイ女!丁度良いむしゃくしゃしてたんだ一発ヤらせろ!」
「ヤらないか?」
「よぉイイ女よぉ。フラフラ出歩くのもいいが、男とヤる強烈な一発もいいもんだぜ。俺が教えてやるよ」
目を覆いたくなるほど頭の悪い連中が連日、セレスティアに絡んだ。
万が一のときのことを考えて彼女には裏で護衛がすぐに飛び出せるようになっていたが、護衛達の出番は結局訪れることはなかった。
運が良いのか悪いのか、必ず助けが入ったからである。
「君、大丈夫かい?そう、それなら良かった。じゃあ、これからホテルに行こうか」
「俺、お前、助けた。今度は、お前が、俺の股間の苦しさを、助ける番!」
「ヤらないか?」
「君を守ってやりたい。君の穴を僕が先に蓋をしてしまえば、もう誰も君を襲うことは出来ないね。というわけで二人きりになれる場所に行こうか」
狙い通りにセレスティアを助けに来る男が現れたのは僥倖だった。
が、残念なのはその男達の悉くが、彼女に絡んだ男達と同等の馬鹿か下心を持ったクズばかり。セレスティアが理想とするような高潔な男など現れることはなかった。
思うように事が進まないことにセレスティアはやきもきする日々を過ごしたが、やがて状況は悪い方向に変わってきていった。
「お嬢、もうジードの野郎でもいいんじゃねぇッスか?今まで会ったきた男の中じゃマシな方じゃねぇッスか。筋肉もあるし」
唯一の味方らしい味方であるベティが、ついにジード側に侵食されてしまったのだ。
「お嬢、ジードは股間を鍛えてるッス。ていうことは刺激に鈍感である可能性があるッス。ナニのサイズは平常時で20センチオーバーとのこと。巨根の遅漏となると夜のほうが大変なのは予想出来るから、これからはアッチのテクニックの方を磨くことに専念したほうが後々楽に・・・」
「嫌ぁぁぁぁぁ!!」
セレスティアは耳を塞いでベティから逃げた。
唯一の味方をも失ったセレスティアは、自暴自棄に陥ることになる。
「・・・もう、もういいわ・・・ジードでさえなければ、私を助けに来た男ならもう誰だっていいわぁ・・・」
ベティが敵側になりつつある状況の中で、セレスティアは一心不乱に理想となる男を探し続けた。しかし、彼女の前に現れるのは来る日も来る日もどうしようもない男ばかり。
日々、クソみたいな男と接したセレスティアは疲弊し、精神も限界の限界まで来たところで、もうジードじゃなければいいんじゃないかとさえ思い始める。
そんなときだった。セレスティアがシュウに出合ったのは。