クラスメイトの性癖叶えるまで、部屋から出られま10 作:松木ユキ
ある夏の日。俺はいつも通り高校に行き、朝から授業を受けていた。昨日夜更かしをしてしまったので、なんだか眠い。先生が話してるっていうのに、ついウトウトしてしまう。
「……ちょっと、レンくん!」
「……えっ?」
「寝たら目立つよ!」
隣から声を掛けてきてくれたのは、クラスメイトの久保田ほのかだ。相変わらずの黒髪ポニーテールを揺らし、こちらを心配そうに見つめている。ほのかは席が隣になることが多かったので、よく話す間柄なのだ。
「ああ、ごめんごめん」
「もー、また夜までゲームしてたんでしょ?」
「あは、まあそんなとこだよ」
「ちゃんと授業受けないと駄目だよ」
「分かってるよ」
これ以上話していると教師にバレそうなので、俺は前を向き直した。教科書を開き、シャープペンシルを手に取る。さあ、ちゃんと授業受けるか――
などと決意した俺だったが、気づけば再び夢の世界へと誘われていた。こっくりこっくりと舟を漕ぎ、目の前の世界がぼやけていく。ああ、ちゃんと起きないと……。
「……きて、起きてレンくん!」
「……ん、ほのか……?」
「ちょっと、大変なの!」
「……ええ、何が?」
「いいから、起きて!!」
俺はハッと目を見開き、体を起こした。いつの間にか床に寝かせられていたようだが、周りの景色がおかしい。ここ、教室じゃないぞ。どこだ?
「ほのか、ここはどこだ?」
「私たちも分からないの!」
「ええ?」
「気づけばここにいて、出口も何もないの!」
俺はあたりを見渡して、状況を確かめた。十五畳くらいの正方形の空間が、無機質な白い壁に囲まれている。四方のうちの一つに両開きの扉があり、特に鍵などはかかっていないようだった。
「ほのか、あれが出口じゃないのか?」
「……見れば分かるよ」
「え? とにかく見てみるしか――」
「おい、無駄だよレン」
荒々しい声がしたので、俺は後ろを振り返った。なんと、そこにはほのかを含めた十人のクラスメイトたちがいたのだ。みんな床に座り込み、じっとこちらを見つめている。いま俺に声を掛けてきたのは中川まなみ。常に不機嫌そうなギャルで、いつも通りの鋭い目つきでこちらを見ていた。
「無駄って、どういうことだ?」
「アタシも開けてみたけど、なんもなかった。ベッドと、ふざけたもんが置いてあるだけ」
「ベ、ベッド? なんのために?」
「それは……アタシは説明したくな――」
「レン殿、それはですねえ!」
次の瞬間、妙にテンションの高い声が聞こえた。その主は岡部ももか。メガネをかけたクラスで一番の女オタクで、「いかにも」な口調をしている。
「ももか、何か知ってるのか?」
「拙者も知らぬ間にこの部屋に飛ばされてたのでござるよ!」
「それで?」
「レン殿はお持ちでないようですが、拙者たちはこんな紙を握らされていたのでござる!」
そう言うと、ももかはこちらに小さい紙を見せてきた。そこには何か文字が書いてある。どれどれ……
「貴様の性癖を、大村レンという絶倫男が叶えてしんぜよう。ただし、全員の性癖が叶うまでその部屋から出ることは出来ぬ」
……は?
「つまりですねえ、これは『セックスしなければ出られない部屋』ならぬ『全員の性癖が叶うまで出られない部屋』なんでござるよお!」
ひたすらテンションの高いももかとは対照的に、俺は状況が呑み込めずに立ち尽くしていた。つまり、あのベッドは「そういうこと」をするための場所ってことなのか……? いや、意味分からん。他のクラスメイトたちも、不安そうな表情で周囲と話し合っている。
「アタシは嫌! こんな奴とヤるなんてごめんだからね!」
「むむむ、拙者もレン殿とこんなプレイをすることになろうとは思わなかったでござるなあ」
「レンくん、どうしようねアハハ……」
……こんなギャグエロボケアホチンカスハーレム性欲マシマシ漫画みたいなことが起こっていいのか? いや、起こっていいわけがない。だって俺は――
「あの、レン……?」
「ゆ、ユイ……!」
後ろから心細そうに俺の制服を掴んできたのは、北條ユイ。俺の幼馴染で、ずっと一緒に過ごしてきた。互いに口には出さないけど、恋人以上の関係だ。そんなユイを差し置いて、他のクラスメイトとエロいことなんて出来るわけが――
「レン、頑張ってね……!」
「え?」
「だって、レンが頑張らないと出られないんでしょ……?」
「そりゃ、そうだけど」
「私、応援してるから……!」
ゆ、ユイ? お前、幼馴染が他の女たちとヤろうとしてるんだぞ? なんでそんなに平常心なんだ。まさか、他に男でも出来たのか?
「ユイ、お前彼氏でも」
「え? 私はずっとレン一筋だけど」
「は?」
つまりどういうことなんだ……? 訳が分からない。頭を抱えて混乱していると、後ろから声を掛けられた。
「まあ、レンくん。仕方ないから、頑張ってちょうだい」
「い、委員長?」
「私だってこんなのおかしいと思うけど。でも、出られない以上は仕方ないわよね」
「……なんか意外だな、委員長はそういうこと興味ないと思ってた」
「えっ? いやちがっ、そんなことはないわよ!」
「本当かなあ……」
「ほら、さっさと始めましょう! じゃあほのかさん、まずはあなたからよ!」
「えっ、わたし!?」
「いっつもレンくんと話しているでしょう? トップバッターはそういう人間の方がいいわ!」
「えっ、えええっ?」
すると委員長はほのかと俺の手を引き、扉を開けた。そこにはたしかにベッドがあり、薄暗い照明がいやらしく部屋中を照らしている。
「じゃあ、お二人とも頑張って!」
「「ええーっ!?」」
委員長は俺たちをベッドの上に放り出すと、捨て台詞を残してバタンと扉を閉めてしまった。俺とほのかは思わず見合って、口をあんぐりと開けてしまう。
わけがわからぬまま、変な部屋に放り込まれてしまった。ここから、俺はクラスメイトたちと様々な経験を重ねることになる――