※この作品はR-18です。

狩人はバッチをつけていた BAD END   作:muzineki

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23:犬の仕事

高層ビルが立ち並ぶ、深夜のオフィス街。

雲間から射す月灯が、屋上から屋上へと軽快に舞い渡るレオタード姿の美女を、淡く照らしていた。

 

「たあっ!」

 

幅跳びを始めたマンションから数えて8棟目のビルに、瞳はフワリと着地した。

そしていったん息をつく。

 

「確か、このビルのはず」

 

屋上のフェンスに乗り出した瞳は、夜風に黒髪をなびかせがなせてビルの下を見た。

時刻は午前2時。

昼間は賑わうオフィス街も、今は人通りが少なく、瞳に気が付いている者は誰もいない。

 

(ターゲットがあるのは、ここの4階、か)

 

瞳は大胆にV字カットされた胸元から、ビルの見取り図を取り出した。

とある暴力団の事務所から、覚醒剤の顧客リストを盗む。

それが特命課から与えられた任務であった。

 

(顧客に有力議員の後継者いるので、内々に処理したいからということらしいけど……気が進まないわね)

 

瞳は深くため息をつくと、頬を叩いて覚悟を決めた。

不本意であっても、犬である瞳は命令に従うしかない。

長い脚でフェンスを飛び越え、細いワイヤーを使って15階建てのビルを滑り落ちる。

 

「ここ……か」

 

4階にある窓を見つけた瞳は、ワイヤーにぶら下がりながら素早くサッシ窓を開けた。

そして音もたてず、暗い部屋の中へと滑り込む。

 

(さて、どこにあるのかしらね。この程度は事前に調べて欲しいんだけど……)

 

心の中で愚痴を言いつつ、瞳は事務所の中を探る。

壁に掛けられた代紋の額縁を外すと、裏側には金庫があった。

ダイヤル式のカギがかかっていたが、この程度はキャッツアイにとっては無いも同然。

すぐに開錠し、中から顧客リストのファイルを盗み出した。

 

「てめぇ、何やっている! 動くな!」

 

声と同時に、瞳がはっと振り向く。

そこにはいかにもヤクザといった風体の男たちが3人いた。

彼らの手に拳銃があるのを見た瞳は、胸元から素早くキャッツカードを抜く。

 

「はっ!」

 

カードの投擲により、あっという間に男たちの手から拳銃が叩き落される。

彼ら怯んでいる間に、瞳は一気に間合いを詰めると、鳩尾に拳を叩き込んで失神させた。

残る二人も首筋に足技を叩き込み、瞬く間に倒してしまう。

電光石火の早業であった。

 

「出口を押さえろ!」

 

「絶対に逃がすな!」

 

部屋の外から騒がしい声が聞こえる。

足音からして、来るのはざっと10人だ。

 

(あの数はさすがに厳しいわね、となれば手段は一つ)

 

瞳は考えると同時に、窓へと向かって突進した。

そして両手を顔の前でクロスさせ、ガラス窓へ向かって飛び込む。

 

ガシャン!

 

割れたガラスがビルの外へと飛び散る。

同時に瞳の身体は宙に浮き、重力に従い自由落下を始めた。

 

「ば、馬鹿な、ここは4階だぞ」

 

「下はコンクリートだ、あのアマ、自殺する気か!?」

 

上からヤクザの声を聴きながら、瞳は空中でくるりと1回転して体制を立て直した。

そしてつま先から地面へと着地し、身体の柔らかさとバネで落下エネルギーを和らげ、体を丸めて地面に転がり衝撃を全身で分散させる。

コンクリートの道路に立ち上がり、身体の埃を払う瞳の身体にはケガ一つない。

彼女は何事も無かったように、その場から走り去った。

 

「し、信じられねえ……この高さから飛び降りて無傷だぞ、あの女」

 

「まるで猫みたいだ……まさか、あれがキャッツアイなのか……」

 

4階の事務所から、ヤクザたちは為すすべなく女の後ろ姿を眺めている。

レオタード姿の女は、そのまま夜の闇へと消えていった。

 

 

 

1時間後、夜の街をシルバーメタリックのクラウンが疾走していた。

ハンドルを握るのは、特命課に所属する大柄な刑事。

穴倉で瞳をさんざん痛めつた、逮捕術の達人の男だ。

後部座席には氷室が座り、その隣にはレオタード姿の瞳が座っている。

 

「どうしたのだね、そんなに小さくなって。覆面パトカーの乗り心地が、そんなに気に入らないのかね?」

 

氷室は薄笑いを浮かべると、瞳の肩を抱いた。

全力疾走で逃げてきた瞳は、汗ばんでいる。

首筋や鎖骨、キャミソールからこぼれ落ちそうな胸の谷間には、無数の汗が浮かんでいた。

 

「この格好でパトカーに乗せられて、堂々とできる度胸は無いわよ。それより今度は、私をどこへ連れて行くつもり……」

 

怯えた目つきを氷室へと向ける瞳。

さっきまでヤクザ相手に大立ち回りを演じた、颯爽とした女怪盗の姿はそこにはない。

細い両手首には銀色の手錠が嵌められていて、腰縄にしっかりと繋げられている。

その姿は警察に逮捕された惨めな泥棒そのものであった。

 

「ははは、すまないな、だがこれから行く場所には、その格好が最も都合が良いのだよ」

 

そう言って氷室は、レオタードの胸元と股間に同時に手を伸ばす。

振り払う事が許されない瞳は、尖り切った乳首と、汗に濡れた股を弄られ、熱い吐息を履いた。

 

「あん……あっ……はぁん……」

 

氷室はレオタードの生地の上から豊かな乳房を揉み、瞳の唇を奪う。

口内に舌が入って来るのを感じ、瞳は甘い息を憎い男の喉にかけてしまう。

 

「うん……んんっ……むぅん……」

 

それは貪るようなキスであった。

内海刑事としたような幸福感は無く、ただ汚らわしい唾液だけが口内に残る。

口と身体を弄ばれながら、瞳は少しでも早く目的地に到着することを願い、車の外へと視線を動かす。

眼に入ったのは、桜田門前にある独特の三角形をした高層ビル。

瞳が特命課に逮捕された因縁の地、警視庁本部庁舎であった。

 

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