狩人はバッチをつけていた BAD END 作:muzineki
「ウフフ、氷室課長が『任せる』、ですって」
「許可は出ましたね。なら私たちのやり方で、留置をしましょう」
佐藤刑事と平松刑事の二人が、ニヤニヤ笑いながら顔を見合わせる。
両手を後ろ手に拘束された瞳は、背筋が冷たくなるのを感じた。
「さて、相手はあのキャッツアイです。両手の拘束だけでは、少し不安ですね」
藤刑事はいったん部屋から出ると、道具を持って戻って来た。
それは金具がついた首輪と、両端にベルトがついた金属の棒であった。
「な、何なの! まさかそれも使って拘束する気?」
「当然ですよ4番、私たち二人でも貴女を管理できるよう、厳重に拘束させてもらいます」
佐藤刑事は瞳の両足を開かせると、金属棒のベルトで両足首を戒めた。
足首を金属棒の両端に固定された瞳は、股を大きく広げた状態で拘束されてしまった。
「これで文字通り、手も足も出なくなりましたね」
「でも私たちは油断しないわよ、次はこれね」
続いて平松刑事が瞳の首に首輪を嵌める。
そして瞳を床に座らせ、首輪のリングに短い鎖を取り付けて、足枷の金属棒に繋いでしまう。
「あうっ!」
首輪を後ろに引かれた瞳が呻き声をあげる。
足を大きく開いたまま正座を崩すような姿勢で、瞳は身体を固定されてしまった。
両手と両足は枷と鎖で厳しく戒められ、少しも動かすことができない。
背中の後ろで首輪と足枷を繋がれているせいで、胸を反らす姿勢を常に強いられ、立ち上がることもできない。
「ここまでやれば、さすがのキャッツアイも逃げられないでしょうね」
「本当にいい格好よ、キャッツアイ」
平松刑事は薄く笑うと、瞳の身体を撫で始めた。
そしてレオタードに浮かぶ瞳の乳首を見つけ、指でキュッと摘まむ。
「い、痛い! 何をするの!」
抗議する瞳だが、平松刑事の手は止まらない。
レオタードの下に手を潜り込ませ、直接乳首をしごきはじめる。
逃れようとする瞳だが、厳しく戒められた身体では抵抗できない。
身をよじれば、足枷に繋がれた鎖が首輪を引っ張り苦痛を与える。
「や、やめてっ! いやぁっ! 」
ここまで被疑者として命令に従ってきた瞳であったが、これにはたまらず抗議の声を上げる。
「な、何をするのよ! こんな事をするなんて、特命課は変態刑事の集まりなわけ!?」
「あら、変態刑事は酷いわね。それと睨みつけるのはやめて。貴女みたいな大悪党に威嚇されると怖くなるわ」
「4番、威嚇行動はやめなさい。罰として貴女にはこれも付けてもらいます」
そう言うと佐藤刑事は、瞳にゴム製のアイマスクを被せた。
瞳は身体の動きだけでなく、視覚さえも奪われてしまった。
「い、いやっ! 私はまだ被疑者なのよ、こんな行為が許されるの!」
「ウフフ、許されるのよ。警察にさんざん恥をかかせてきた貴女は、特別扱いなの」
そう言うと平松刑事は、スタンガン付きの警棒を瞳の顎の下に入れた。
そしてクイッと頭を持ち上げる。
胸元にも佐藤刑事の警棒が突き付けられていた。
首筋と胸から感じるスタンガン付き警棒の冷たさに、瞳は足掻いていた動きを止めてしまう。
「4番、貴女に対してはね、脱走と自殺さえ防げば、後は何をしても良いと上から言われているの」
「4番、次に抗弁したり、怪しい動きをすれば、実力行使で制圧します。これは脅しではありません。痛い目に合いたくないなら、我々に従いなさい」
佐藤刑事は説明しながら、警棒で瞳の胸を突いた。
そして柔らかい乳房にグリグリと押し付ける。
屈辱の行為に唇を噛む瞳だが、この状態で逆らうことなどできるはずがない。
自分が無力な囚人であることを、改めて思い知らされた。
その後、二人の女刑事は、留置場での細かいルールを瞳に説明した。
そして瞳に背を向け、部屋から出る。
音を立てて扉が閉じられ、外からカギがかけられた。
部屋の中には、枷と鎖で厳しく戒められたレオタード姿の女だけが残された。
(これから一体、どうなるんだろう……)
視界さえも奪われた瞳は、ただ一つ自由を許された頭の中で考えた。
このまま行けば、逮捕から48時間以内に身柄を検察庁へと送られることになる。
そして拘留延長の請求が行われ、どこかの女性用留置場へと移送されるのだ。
マスコミの前で晒しものになるのは、おそらくその時であろう。
その後に待っているのは、日本中から盗人として非難を浴び、刑事に厳しい取り調べを受ける日々だ。
(取り調べでは、過去の全ての盗みについて徹底的に調べられるに違いない。私は姉さんと愛のことを、最後まで隠し通せるかしら)
瞳の頭に不安がよぎる。
キャッツアイが3人組の泥棒だということは、世間に知られている話だ。
姉妹である泪と愛が、キャッツアイとして疑われることは避けられない。
少しでも口を滑らせれば、二人にもすぐに手錠が嵌められるだろう。
仮に瞳が吐かなかったとしても、状況証拠で逮捕される可能性もある。
(一体どうして、こんな事に)
なぜ自分は金庫に閉じ込められるというミスをしたのか……
なぜ特命課の罠に気が付くことができなかったのか……
なぜ刑事の恋人でありながら泥棒など始めてしまったのか……
思い返せば後悔しか出てこない。
静まり返る部屋で、瞳の頬に一筋の涙が伝わる。
(外ではそろそろ、キャッツアイの逮捕を警察が発表した頃でしょうね)
瞳の脳裏に、朝のトップニュースで自分の顔と名前が報道されているシーンが浮かぶ。
続いて高校時代の友人や喫茶店の常連客がインタビューを受ける姿、ニュースキャスターや評論家が自分のことを批判する姿、自宅兼店舗の喫茶店にイタズラ書きをする不良学生の姿など、様々なものが現れては消えていった。
「うっ……うっ……うぅぅっ……あっ……あぁぁっ……あぁぁぁぁぁぁっ!」
慟哭、そして嗚咽。
室温管理がされている部屋は、決して寒くはないのに身体から震えが止まらない。
目隠しの裏から滝のように涙が溢れ、頬を伝って落ちる。
監視カメラに撮影されているのを自覚していても、瞳はそれを止めることができなかった。
その頃、氷室は警視庁の上層階にある部屋を訪れていた。
コン、コン
「氷室警視正です」
「入りたまえ」
重厚な木製のドアを開いて、氷室が中へと入る。
30畳ほどの部屋には大きな机があり、そこには腕組みをしている男がいた。
机の前に立った氷室は姿勢を正し、教科書通りの見事な敬礼をする。
「氷室くん、報告は聞いている。広域連続窃盗犯P112号、通称キャッツアイを逮捕したようだね」
「はっ! そして正体は容疑者リストにあった例の女、来生瞳でした」
男は椅子に深く腰掛けると、天を仰いだ。
そして大きくため息をつく。
「なるほど、君が危惧していたとおりの展開になったわけだ。まったく困ったことになったものだ」
「はい、このままでは警察に対する信頼はもちろん、我が国の経済にも影響が出る恐れがあります。それを防ぐためにも『ホットドック』を第三段階へ移行するご許可を願います」
口元を吊り上げて提案する氷室に、男はやや不愉快な視線を向ける。
「よろしいのかね、このまま計画を進めると、君のキャリアに傷がつくことになるぞ」
「かまいません、この国の安寧と市民の安全のためなら、私は命でも喜んで差し出す所存です」
「フン……」
男は小さく鼻で笑った。
目の前にいる男が、心にも無いことを言っているのは解っている。
そして警察に大きな影響力がある政治家と、個人的なコネクションがあることも知っていた。
(今回の作戦には『天の声』がある、ここで反対すれば、お偉方の不興を買う事になるな)
男は警視総監まで上り詰めた優秀な頭脳をフル回転させる。
自分の退官はもうすぐだ。
引退後の人生を考えれば、ここでお偉方に貸しを作っておくのは悪くない。
それに逆らえば、内定している公益法人の理事長のポストと、そこで得られる退職金を失うことになる。
長年コツコツ仕事をして得た老後のご褒美を、こんな事で台無しにするのは、真っ平ごめんであった。
「やむを得ん、許可しよう。ただし情報漏洩には気を付けるように」
「はっ! 特命課の精鋭が細心の注意を払っておりますので、ご安心ください。ところで犬鳴署の件について、ご相談があるのですが……」
「わかっている、そちらは私が手を回しておこう。しつこいと思うかもしれんが、くれぐれも注意するように」
「はっ!」
氷室が再び敬礼する。
その顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。