「わぁ……」
視界に映った全てに感嘆の声を漏らした。
落ち着いたアンティークな内装に、無造作に並べられたナチュラルモダンなオブジェたち。
天井からは階段状にペンダントライトがいくつもぶら下がっていて、空間をふんわりと橙色に染めている。
そんな芸術的な店内で楽しそうな女子トークが飛び交う。
こんなカフェ、雑誌の中だけじゃなかったんだ。
初めて上京した田舎者のように呆気に取られていた私の横で、澄まし顔の帆奈ちゃんはレジの店員に言う。
「予約した更紗ですけど」
「二名様ですね、お待ちしておりました! こちらの席へどうぞ」
「えっ、帆奈ちゃん予約してたの?」
私たちを席に案内する店員にとことこついていきながら、帆奈ちゃんがさりげなく口にした情報にビックリして顔を上げた。
「予約しないと席取れないでしょ」
さも当たり前のように答えるけど、この大盛況じゃ当日はおろか、前日の予約でも席が取れそうにない。
……そうか。帆奈ちゃんはずっと前から私を連れてこようと計画していたんだ。私の様子がおかしいと気づいて……。
「予約してくれてありがとう、帆奈ちゃん!」
気に掛けてもらえた嬉しさと同時に、もしかして全てを見透かされているんじゃないかという不安が胸の中で蠢く。それを悟らせるまいと笑顔を作り、案内された窓際の席に腰を下ろした。
立てられたメニューを広げて、帆奈ちゃんと一緒に見られるように90度回転させる。
「帆奈ちゃんは何がいい? ほら、このいちごのパフェ、すごくおいしそう」
適当にどれか一つ指差して反応をうかがった。
帆奈ちゃんの好みが知りたいという気持ち以上に、選んだものの値段に注目していた。
パフェ1つで1000円を上回る。私にとっては天文学的数字だ。
帆奈ちゃんがこれを選んだとしたら、私は後日お金を返すためにいよいよ他人への暗示に手を染めなければいけなくなる。
「瀬奈、いちご好きなの?」
「え? 私?」
「それ食べたいんでしょ?」
「あ……う、うん。好きだよ、いちご。でももうちょっと見てから決めるね」
1000円以上するパフェを注文するわけにはいかない。
慌ててページをめくり、定番メニューからここで一番安いものを探そうとする。
チーズケーキ、モンブラン、タルト、シフォンケーキ……一番安いスコーンまで500円以上だ。
詰んだ。
ここは帆奈ちゃんに先に決めてもらおう。
「どれもおいしそうで迷うなぁ。帆奈ちゃんは決めた?」
「……まだ」
「だよね~」
帆奈ちゃんと同じものにしようと思ったけど……仕方ない。
どれを選んでも高いのに変わりはないが、スコーンなら何日か食事を抜けばどうにかお金を捻出できそうだ。
ここは――――
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